ひとを見る目

November 28 [Sat], 2015, 6:15
 なんだか眠れないうちに朝を迎えようとしているので、与太話でも。

 2007年に、『サイバージャーナリズム論』という本が出版された。

サイバージャーナリズム論 「それから」のマスメディア (ソフトバンク新書)
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 この新書なのだけれど、そのほとんどが共著者がそれぞれの著書で展開されている論考の再掲という、良く言えば雑誌的、悪くいえば金返せ的な内容で、当時の自分としては憤慨したものだった(摂エントリー参照)。
 それで、ここで共著者に名を連ねているスポンタ中村氏なのだけれど。当時、ジャーナリズム論を盛んにエントリーで展開されていたブロガーで、失礼ながら言論の世界では無名の存在だった。彼の主張は、はたから見ても夢想的だったのだけれど、後に『TechWave』を立ち上げることになる湯川氏が呼ぶ形でディスカッションのパートに参加することで、本書の「共著者」に名を連ねた、というわけだ。
 私の率直な感想として、「ひとを見る目がないなぁ」と思っていたわけなのだけど、ある方が湯川氏のことを「イカもの好き」と評していて、なんとなく腑に落ちた。『ブログがジャーナリズムを変える』という本まで出し、その存在がメディア環境の打破につながる可能性に賭けていた湯川氏にとって、中村氏に通じる何かがあったのだろう。

ブログがジャーナリズムを変える
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 こんな昔話(といってもまだ8年前のことだけど)を蒸し返したのは、津田大介氏が最近なんだか『Twitter』で炎上気味になる機会が多いみたいだから。特に、SEALDs絡みでやや「アツく」なっているような印象を受けている。

 津田大介、SEALDsの資金に疑問を持った人に突如謎の言いがかりをつけるの巻+おまけ (Togetterまとめ)

 個人的に、SEALDsに肩入れ(というと否定されるかもしれないけど)するのは、やはり「ひとを見る目がないなぁ」と思わざるをえないのだけど。これって湯川氏と同じで、津田氏も「イカもの好き」で、彼らの「純朴な社会変革の志」に惹かれるところがあるのかもしれないし、津田氏が20代の頃に出来なかった何かを果たそうとしている存在に見えるのかもしれないなぁ、とはたから見ていて思ったりする。まぁ、ただの妄想で感想ですが。

 しかし。つくづく「ひとを見る目」というものは第六感的で、「養う」というよりもある方向で共振するようにどうしようもなく動いてしまうものなのだなぁ、と感じざるをえない。佐々木俊尚氏あたりもイケダハヤト氏に目をかけていた時期があったし、他の方々にしても「えっ」というひとに肩入れし出すことがあるから、こればっかりはどうしようもないのかもしれないね。

 ただ、ソーシャルメディアがここまで普及した中で、特に政治的な存在への過剰(に見える)ピックアップをすると、周囲からのツッコミも入るし、醒めた視線も集まることになるのはある程度仕方がないだけでなく、その肩入れが原因で、そのひと自身が凋落するきっかけになる可能性は、前より高くなっているように感じる。
 津田氏ほどのひとが、この程度のことで致命的な躓きになるとは考えにくいかもしれないけれど、湯川氏がパッとしなくなったのは「サイバージャーナリズム」からだし、なんとなく雲行きあやしく思えてしまう。余計なお世話だと重々承知しているのですけれどね。

 なんだかとりとめのない上に歯切れの悪い感じになってしまったのだけど。まぁ、何というか、他人の「ひとを見る目」って、よくわからないことが多いよなぁ、という話でした。
 ひとのこと気にしている場合じゃないし、作業カツカツだし、今日も生きていこう!

 

追悼・バイソン・スミス

November 23 [Wed], 2011, 22:55
 訃報を知った時、しばらく言葉を失った。先日までNOAHのグローバルリーグ戦で、パワーと持ち前の握力が猛威を振るっていたというのに。

バイソン・スミス選手が急性心不全のため、
現地時間11月22日 プエルトリコにて永眠いたしました。
ここに生前のご厚誼を深謝し、謹んでご通知申し上げます。

本日、11月23日・花巻市なはんプラザCOMZホール大会にて黙祷、
お別れの場として、11月27日・有明コロシアム大会にて献花台を設置し、
10カウント弔鐘を鳴らし、故人の冥福を祈ります。


 相手選手を逆立ちにして両腕で抱えて腕を両足でホールドさせた状態でホイップしながら前のめりに叩きつけるフェイスバスター、バイソンテニエルというフィニッシュホールドが大好きだった。

 最近で印象に残った試合は、2010年9月の日本武道館でのモハメド・ヨネ戦。
 花道での攻防に競り勝ち、エプロンに向けて断崖式のバイソンテニエル!ヨネを担架送りにしたあの衝撃と戦慄は忘れられない。

 二度、GHCタッグのベルトを巻いたが、シングルのベルトには二度挑戦して戴冠はならなかった。
 リングシューズに、アメリカ国旗と日の丸をあしらう、大の親日家だった。そして、三沢光晴最期の試合の、対戦相手でもあった。

 生前、三沢さんは選手に消耗を強いるリーグ戦の開催に消極的だった。彼が亡くなった後に開催されるようになったグローバルリーグが終わった直後に、このようなことが起こると、三沢さんの慮りを想起せずにはいられず、またそのような厳しい闘いを連日繰り広げるレスラー達への畏敬の念を新たにするのだ。そして、誰もが無事でありますように、と願わざるを得ない。

 三沢さんが亡くなった時、彼に米国で見出され来日するようになったバイソンは「Forever」と短く哀悼した。
 彼に倣い、Parsleyもこれまでの激闘へのねぎらいと感謝の念をこめて、彼のテーマ曲IRON MAIDENの『Rime Of The Ancient Mariner』を流しながら、プエルトリコに向ってこうつぶやこう。

 「Forever, Bison Smith」と。


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森ガールはどこに消えたのか?

October 26 [Wed], 2011, 23:30
 2009年から数度、エントリーを挙げているためか(このエントリーとか)、「森ガールウオッチャー」と見られているParsleyは、最近「森ガールってさ、どうなったの?」と複数の方に聞かれた。確かに、言葉自体を耳にする機会が明らかに減っている。
 刊行物も宝島社の付録つきムックと『papier*』(角川グループパブリッシング)が残っているくらいで、数多く出されていた各誌の増刊号は刊行されなくなったし、『spoon.』のように、一冊まるごと森ガールの特集をするようなこともなくなった。
 mixiの森ガールコミュニティを見ても、管理人のchoco**女史の運営方針もあって(何しろ私は申請したのに入れていない)、33000人という数字の推移は変わらないし、これを補完するコミュニティも2つあるにはあるけれど数字的には25000人前後というところ。バリューゾーンとして、これ以上の広がりは見られない。

 結局のところ、私が当初から懸念していたように、森ガールが服だけでなく音楽や映画などを消費する存在に留まり、文化の担い手が現れることがなく、またイコンとなるべきキャラクターも登場しなかった、というのが、「消失」の原因として挙げられるだろう。
 
 では、当の森ガールはどこに行ったのか。それは森に帰ったわけではもちろんなくて、「森ガール」という総称から別のクラスタに移った、と考えるべきだ。大まかに分けて二つの流れがある。

 一つは「ゆるふわ」という表現に代表されるような、ナチュラルスタイルへの回帰。このファッションは比較的敷居が低く、earth music & ecologyLOWRYS FARMPAGEBOYE hyphenといったブランドは、ユニクロより若干高い程度の価格帯で、「手が出しやすい」ラインになっている。
 また、身長170cmちょっとの乙女男子のParsleyでもMサイズが余裕で入るような、ゆったりとした作りのインナー・ボトムなので、体形をそれほど気にしないでも似合う、というのは何気に重要なポイントだろう。

 そして、もう一つが、ジャンルの細分化。例えば手芸が好きなひとは「森ガール」でなく「手芸女子」になるし、カメラ好きは「カメラ女子」、散歩好きは「お散歩ガール」…というように、趣味別に分割されていった、というのが2010年末より現在までの流れになる。要するに森ガールを趣向別に切り刻んでよりターゲッティングして行こう、というマーケティング側の意向にメディアも乗っている、ということになる。

 というわけで、ファッション文化を示す意味での「森ガール」という言葉は役割を終えた、と断じても差し支えないのではないか、と思う。結局のところ、ファッションの域を抜けられず、生き方・スタイルというところにまで高じることが出来なかったし、時代もそれを要請していなかったのだろう。


追悼・シンボリルドルフ

October 04 [Tue], 2011, 23:25
シンボリルドルフの時代―同時代の優駿たち (MYCOM競馬文庫)
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 シンボリルドルフ。おそらくParsleyがはじめてサラブレットと競馬というものを認識した名前だった。うっすらと、2004年の菊花賞を勝ち、「三冠達成」のニュースを聞いたのを覚えている。
 次にこの名前を意識したのはアニメ版の『機動警察パトレイバー』だった。レイバー第二小隊の後藤隊長がだらしなく足の指を動かしながら競馬新聞を読むのが、このアニメの常だったが、その第43話でコンビナートで暴れるレイバーに乗った犯人の名前が「ルドルフ・シンボリ」だったのだ(後に『じゃじゃ馬グルミンUP』を世に出すゆうきまさみらしい)。そこで、「あれ、それってシンボリ・ルドルフじゃなかったっけ」と思ったのが、セカンドインプレッション。

 『ダービースタリオン』にハマってからは、ルドルフ産駒でGT馬・顕彰馬を生み出すことに血道を注いだ。パーソロン系に合う繁殖牝馬がなかなか見つからず、900万円という高い方から数えた方が早い種付け料を工面しつつ、父と同じ弥生賞・皐月賞・ダービーと勝ち進む馬が誕生した時は狂喜したものだ。

 彼の偉大さに初めて気付くのは、実際に馬券を買うようになってからだ。GT、それもクラシックを勝つということの難しさ。それを三つも、しかも無敗で制したということ。ウインズ後楽園の視聴コーナーでレースを観て、戦慄したことを思い出す。

 シンボリルドルフはひとの運命をも変えた、ということを忘れてはならない。騎手時代はダービーを制することのなかった野平祐二調教師にダービーの美酒の味をプレゼントしたし、彼の主戦、ということで岡部幸雄は名手の名を欲しいままにすることになる。そして、調教助手として名を連ねるのは、後の名調教師である藤沢和雄…。タイキシャトルのジャック・ル・マロワ賞制覇の源流にも、彼の存在が見え隠れする。

 種牡馬としては、トウカイテイオーという名馬を出したが、リアルシャダイ・トニービン・サンデーサイレンスの時代になった後は、ルドルフ・テイオー父子はなかなか活躍馬を送り出せなくなっていった。そんな中、トウカイテイオーの仔であるトウカイポイントがマイルCSを制したが、非常に残念なことに彼はせん馬だった。父系としてのルドルフの血脈は途絶えたが、ヤマニンシュクルやタイキポーラといったテイオー産駒の牝馬たちが、母系から彼の血脈を繋いでいくことになるのだろう。

 2000年10月に刊行された『Number+ 競馬 黄金の蹄跡。』では、故大川慶次郎氏と井崎脩五郎氏が「史上最強馬」を決める対談が収録されている。無敗馬マルゼンスキーを挙げた井崎氏に対して、「競馬の神様」はルドルフが一番強かったと譲らなかった。

 無敗馬はもっと競馬をしたら負けていたかもしれないという含みがあるわけです。それよりも、やって実際に2着に頑張ったという偉さを、僕は認めたいような気がするんだけどね。(P84)

 今頃、天界では大川氏とルドルフは久々の対面を果たしているに違いない。その時、大川氏はどんな言葉を掛けたのだろう?
 まだ地上にいる私たちに知る術はない。

 だから。全ての馬券野郎も、今日だけは、多少の感傷を自分に許して、ルドルフのために献杯をしよう。そして、また競馬に向うことを誓いたいと思う。


ボーカロイドはスウィングガールの夢を見るか

September 21 [Wed], 2011, 23:18
 世間的、というかオリコンチャート的にいえば、2011年はAKB48の『フライングゲット』の年、ということになるのだろうけれど。
 おそらく10年後から俯瞰して見た場合、2011年は初音ミクの『FREELY TOMORROW』の年ということになるのではないだろうか?



 7月31日にアップされたこの曲は現時点で123万回再生されている。この曲自体、「初音ミク」というボーカロイド現象(と、あえて呼ぶ)の集大成的な作品として位置づけられるし、機械的なサウンドの「ぬくもり」というYMO以来のテクノポップの正当な後継者と呼ぶことも出来るだろう。何より、詩曲のポジティブさが、社会的な観点からもっと注目されてもいいと個人的に思う。

 この曲があっという間にスタンダードナンバーになっていくのは、「歌ってみた」があっという間に沢山投稿され、「着うたフル」で配信されるようになったこと(参考)ことでも明らかだ。
 そんなフォロアー達の中でも、ちょっと異色だったのが、yonemikuという女性がミクのコスプレをしてテナーサックスで『FREELY TOMORROW』を吹いている動画。たまたま知り合いの音楽事務所の育成中の娘さんだったのだけど、これが上手いんです!



 『初音ミク』がクリンプトンから発売されて4年。数々の「名曲」も増えてきた。そうなると、各地の吹奏楽部でボカロ曲が演奏されるようなってもいいような気がするなぁ、と思ったら、やっぱりちゃんと楽譜集売っているんですね。「ブラック★ロックシューター」「ワールドイズマイン」など12曲が収録されている。残念ながら、大バンドでの演奏の動画は見つけられなかった。どこかの文化祭で演奏されているのかしら。

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 いずれにしても、さまざまな天災に見舞われている2011年。そのつながりを維持したり取り戻すきっかけとしての音楽という位置づけは、今後ずっと大事になる。タイトルでは『スウィングガール』を挙げたけれど、あの映画は漫然とした日常を「気付き」を経て能動的に書き換えていく、という話だ。
 もっと前の作品だと、1996年制作のイギリス映画『ブラス!』だと、社会的な「うんざり」とした中でも「生きる力」を失わないよう、皆でバンド演奏をする、という話を切実だが滑稽に描いた作品だ。
 今のところ、2011年の音楽は、個人個人がネット上にアップする曲が、「誰か」に響くという、個対個でのみ機能しているように感じられる。これが、多対多になるとしたら。それにボーカロイドも一枚咬むとすれば。これほどハッピーなことはないじゃん、と思うのだが、どうだろうか??

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『Enigmarelle -亡骸への焦燥-』を観てきた。

August 25 [Thu], 2011, 23:41


 初台にある画廊・珈琲Zaroffは、澁澤龍彦や寺山修司が好きという方や、西洋美術・写真に関心がある方は、注目しておいて損はないスポット。毎回店主のキュレーションが秀逸で「ここでしか観れない」という展示を多く開催している。また、ココアがいくつもの種類を取り揃えているカフェは、東京広しといえどもここぐらいなのではないだろうか。

 そんなZaroffで、剥製とガスマスクと人形をコラボした展示をする、という情報を耳にして、前から気になっていた。革工芸の三上鳩広女史、剥製展示のヒキムスビ女史、人形作家の萌女史と、いずれも20代の女性作家の手になるというところも、興味を深くした。
 ということで、展示初日の8月25日に足を運んでみることにした。
 
 2Fに入ると、視界にではなく、革特有の匂いと、わずかな薬品の匂いに意識が奪われる。次の瞬間、目に飛び込んできたのが、四肢を切断された人形に、顔と左足が革で覆われた作品。タイトルに「亡骸」とあるだけに、生気のなさ、無機質な印章を与える人形を、革で一部分を隠すことにより、「物語」が付加されている。



 繊細に配置された展示の中で、部屋を圧倒する存在感を放っていたのが、二人分の頭が入るように作られたガスマスク。実際に女の子二人が着用した写真もあったのだが、擬似的なシャム双生児になれる素敵なプロダクト。そして、吸入口に詰められた植物のおかげで、余計に異形のものへと誘っているように感じられた。
 また、奥に飾られていた、草花が苔のようにこびりついているマスクも印象的で、ちょっと被ってみたかった。



 ヒキムスビ女史の剥製は兎や鼠で、真っ白な毛並みなのが、夢のようで、幻想的。だが、彼らに込められた「毒」は強い。特に、右側から見ると何の変哲もないのだが左側に回るとむきだしの骨が露になっている子と、箱の中に収められていて、目や首の辺りや後ろ足の腰の位置に歯車が埋め込まれ、周囲に残骸が散らばっている子が、「モダンな悪夢」を覚えて、この子たちが現在の状態になるまでの過程が逆巻きにフラッシュバックするような、そんなイメージを抱かせる作品たちだった。

 今回は所要の関係で1時間弱の滞在だった。会場にはソファーがあって、ゆっくりと作品たちと対話の時間を楽しむことができる。会期は30日まで。もう一度、彼らに会いに行くのもいいかもしれない。


文章系同人のミライ

July 20 [Wed], 2011, 5:22
 前回の文学フリマ大交流会で、大塚英志先生と市川真人先生の対談を企画して実現しちゃった私ことParsleyなんだけど、ここで大塚先生がお話されたことに関して、私自身思うことがあったのに何も書いていないことを思い出したので一応記しておこう。

 ※ちなみに、この対談はニコニコ動画のプレミアム会員になれば視聴出来ます。



 ここでアジェンダとして挙げられたことに、「文学の優位性」と、「文章系同人の地方展開」がある。
 まず前者は、今の若い子にとっては数ある表現のうちの一つ、という位置づけになっている。つまり、音楽やマンガ、イラスト、ダンスなどのパフォーマンスといった表現は、全てフラットになっている。まして、ライトノベルが純文学より下に位置づけられているわけでもない。
 結局のところ、「文学の優位性」を敢えて挙げるのは、「市場での敗北」を経験した文学界隈のひとたちの、新しいインセンティブ設計の試み、もしくはこころのよりどころとして機能している、と考えるべきだろう。
 インターネット世代以降は、文芸誌に原稿を送らなくても、ホームページを自分で作れば発表・掲載できる(しかも確実に)。そして、ケータイ世代になると、魔法のiらんどなどのようなプラットフォームができて、よりカジュアルに表現することが可能になっている。
 そこで登場した「小説」はこれまでの表現法とは若干違うかもしれないけれど、結局のところ日本語での文章表現という意味においては「文学」たるものだと個人的には考える。

 で、ここで一つ、「市場としての文章系」というアジェンダが新たに浮かび上がってくる。つまり、文章を「売る/買う」ということ、「発表する/読む」ということがもはやイコールでないという当たり前の事実とどう向き合うか。
 つまり、今の若い子は、あえて芥川・直木賞を目指したり、紙に印刷して同人誌即売会で頒布したりする「楽しさ」を知らずに、ネット上に文章を発表し続けることが出来る。
 この「楽しさ」をインストールするための具体的な方策を、私個人は簡単に思いつかないのだけど、そのコミュニティが楽しそうに映るかどうかが、そのカギを握っているような気がする。逆にいえば、今は商業誌にしろ、文章系同人にしろ、「クラスタ」どまりで「コミュニティ」は形成されていないように思える。

 さて。大塚先生のおっしゃっていた「文学フリマ」の地方展開について。
 実際にクリルタイミニコミフリマ@名古屋というイベントを運営した経験でいえば、文章系同人の市場規模で、政令指定都市レベルの場所でイベントを開催するのは採算的にかなり厳しい。広義の「読書をするひと」に対してアプローチするのが難しいのは当然として、「自分で表現活動をしているひと」に対してリーチするのも相当に大変だ。
 つまるところ、地方都市においては、「文学クラスタ」という存在自体が地下に潜行しているか、存在していない。よくよく考えてみれば、阿部和重先生の『シンセミア』が山形で特別多く売れている、といった話は聞かない。
 そういう状況で「市場」を掘る活動をするには、それなりの資本とそれなりの計画をもって、中長期的に行うべきことなのだけれど、それを試みている団体もしくは個人は現状では見当たらない。

 ここまで書いてみて思うのは、「文章系同人」という市場が、東京(文学フリマ)でも500ブース超/来場約4000人という規模にすぎない、ということだ。
 これがニッチに終わるのか、さらに拡がるのかのカギは、いかに「文章系」というところにこだわるのをやめてより自由になれるか、というところにかかっているように思える。
 つまり、よりマンガや音楽、イラスト、デザイン、ゲーム等といったものと、つながりを持つことが出来るか。そして、それを包括する形でコミュニティができるか、というところになるだろう。コミケがあれだけの市場規模を獲得しているのは、それに成功しているからだし、メディアミックスに慣れた消費者側にも、ある一つの表現形態のみで満足させるだけのコンテンツの強度を持たすことは、相当緻密な設計が要求されて誰にでも出来ることではない。
 さらにいうと、M3デザインフェスタコミティアに出典しているクリエイターからは文学フリマ・文章系同人のクラスタが魅力的に映っていない、という現状には、真剣に危機感を持つべきだと個人的には考える。

 逆にいえば、私Parsleyがやりたいことって、つまるところそういうことになるかなー。
 まぁ、無理せずやれることをやってみよう、と思います。

 

「本」を巡るコミュニティの勃興と蛸壺感の克服

June 29 [Wed], 2011, 23:36
spoon. (スプーン) 2011年 06月号 [雑誌]

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別冊spoon.「ツイッター読書会」 62483‐91 (カドカワムック 388)

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 『spoon.』が、二月で本誌・増刊で、「読書」をテーマにした特集を持ってきたのは、昨年から今年にかけての、読書のコミュニティに焦点を当てる、とてもタイムリーな企画だったと思う。

 Parsleyも6次元アール座読書館高円寺書林のような、中央線文化圏色の濃いブックカフェは嫌いじゃないというかむしろ好きなのだけど。

 それだけに残念だったのが、6次元で開かれた「ツイッター読書会」の内輪感。閉鎖性というと攻撃的にすぎるけれど、ハイセンスゆえの一般人への参入障壁みたいなものが感じられて、それは巻頭言でのtwtterによる「シェア」の概念とはバディングする要素になっているように思えた。

 Parsleyにとっては、「twitter読書会」というネーミングは、ゆりいかちゃんがやっている企画(参照)の方が先で、しかも次々に新企画を実施しているし、いつのまにBOTまで出来ていた。
 彼のやっていることと、6次元での読書会はリニアに繋がっているはずなのに、その間には分厚い壁が横たわっている感じがするのは、ちょっと不幸なことだと思う。

 あと、東京カルチャーカルチャーのプロデューサーのテリー植田氏が主催されているブクブク交換も最近各地で開催されるようになった。持ち寄った本について持ち主がスピーチする、そして気に入った本を交換するというのは、一つの本を読むのとはまた別のコミュニケーションの形態だけど、こちらも、tiwtterやfacebookがひとが集まるハブとして機能していて、やはり別冊『spoon.』の記事とリンクする動きだと考えていいだろう。

 このような読書会や本の交換会では、Webが有機的に繋がりあってコミュニティが出来ている、ということを、電子書籍まわりのひとはもっと考える必要があると思うし、各地で勃興している読書会・交換会がアーカイブ化して別の読書会とコラボなり新たな輪が出来るなり、そういった線があればより面白くなるはず。
 本来は、『spoon.』のような雑誌が、その「線」を作る役割を果たしてきたはずなのだが、逆に蛸壺化しているように見えるのは残念だしもったいない。
 こういった流れが加速するためにも、横の線を引く存在が現れることを期待せずに期待してみたいなぁ、と思うのでした。

『GAME OVER 00』からSTARTするもの

May 04 [Wed], 2011, 23:45


 さいきんゲーソンDJとしてすっかり有名になったMasao氏が出演するということで、MOGRAの『GAME OVER 00』には前々から行くつもりだったのだけど、『スペースインベーダー インフィニティジーン』の(Parsley的には『ニジイロエンソク』の)石田礼輔氏やZUNTATACOSIO氏まで登場するというスゴいイベントに。そして行ってみるとほんとうに「GAME」を「OVER」するレベルだったので、簡単にメモしておく。

 石田氏とCOSIO氏のトークでは、作り手の側からの『スペースインベーダー』における『インフィニティジーン』の位置付けが語られた。なんといっても、シューティングゲームの始祖であり、世界で数十万台売れた初のアーケードゲーム。その歴史を遡るだけで一つのサーガではあるのだけれど、携帯で発表しiPhone版が海外で評価、そしてPS3に移植されたという流れは、それが「過去」のものではなく、現在進行形だということを再認識させられた。
 「インベーダーそのものにスポットを当てた」というだけあり、『インフィニティジーン』は最初は初期『インベーダー』を彷彿とさせる横の動きのみのシンプルなものから、ステージが進むごとに縦の動きが加わり、3Dになっていく。このアートワークもミニマム&スタイリッシュで個人的に非常に興味深かった。
 そして、音楽も、最初は抵抗器っぽいドラム音のみだったのが、シンセベースが加わり、最終的に全ての素材をリミックスするという、30年の歴史をオマージュする作りになっている。某ゲーム誌ではジャンルを「テクノ」と分別されたそうだけど(笑)、それだけ「音」が印象的だという証左なんじゃないかな。

 特に印象的だったのは、最後に石田氏が「ゲームミュージックが一線引かれているのが許せないし許さない」とおっしゃっていたこと。
 私もゲーソンが音楽雑誌で語られているという話は聴いたことがないし、批評的にも、流通的にも、「ないもの」とされている。
 しかし、『奇刊クリルタイ5.0』のネットDJ座談会でも『beatmania』がキーになっていたり、我々の世代から下は誰もがゲームミュージックの影響下にある。最近ではSEXY-SYNTHESIZERを代表されるように80年代の8bit系サウンドをレコメンドするユニットも増えた。水面下ではそのサウンドは広く浸透している。
 そういった意味でも、『インフィニティジーン』を「音楽で世界観を表そうというのがあった」という石田氏のお言葉に共感を覚えるし、「GAME MUSIC STRIKES BACK!!」(ゲームミュージックの逆襲)というキャッチも現在性が高いな、と思う。

 あと、COSIO氏が「ライブペインティングならぬライブゲーミングがしたい」ということで、COSIO氏のDJに併せて石田氏が『インフィニティジーン』をプレイするというパフォーマンスが実現。結果的にクリアならずだったけれど、観ていてとても面白かった! e-Sport的だし、普段の「GAME SONG DJ BAR」でもたまにやってみるといいと思う!!

 そんなこんなで。ゲームミュージックを俯瞰的に批評する、というテーマと、「ライブゲーミング」というe-Sport+DJという新たな可能性が提示された『GAME OVER 00』。
 たぶん、ここからはじまる何かはあると思うし、特に前者に関しては、個人的にもう少し意識的に聴いていきたいな、と感じさせられた。

 そういえば、最後にtom2氏が5月6日から7日にかけて24時間ゲーソンかけまくるUSTするみたいなこと言っていた気もするけれど、徹夜メシ抜きで踊り倒して疲れていたのでよく覚えてないや。ま、twitterか何かで告知があるでしょう。



 

乙女男子学園入学式に行ってきたよ!

April 23 [Sat], 2011, 23:25


 乙女男子学園。その名を知らぬ方にご説明すると真珠子先生のプロダクトで、先生が「乳母車に乗りたい!」ということで我こそはと名を上げた乙女男子達が集って、リボンを書いたり書初めをしたり1月に実施した。詳しくは真珠子先生のブログ記事を見て見て!

 先週、先生からDMで「ワークショップはじめたよー23日には祖父江校長の入学式もあるよー」と直々にお誘いがあって、残念ながらかばんを即興で作るというワークショップにはお邪魔できなかったのだけど、今日の入学式には無事に参加することが叶いました!!
 しかし、「祖父江先生」って、吉田戦車先生の『伝染るんです。』の装丁を手がけられた、あの祖父江慎先生ですか!?
 
 会場に着いたら、祖父江先生待ちで、1階も2階も入校生の皆さんでいっぱい!!小一時間ほどゆるーい空気の流れを楽しんでいると、どこからともなく傘を差した祖父江先生が歩いてやってきた! 傘が上手くたためない先生。超萌える。思わず近くにいた自分が傘をまとめて差し上げました♪

 入学式は、まずワークショップでのバッグに祖父江先生から高評を頂くところからはじまった(あー自分も参加するんだった、と後悔)。それから真珠子先生から入学証を頂きました。その後、校歌を即興で、「バラバラに」歌い、みんなで記念撮影をして、無事式は終了した。

 前に、お嬢様学校少女部卒業式典に列席した際にも感じたことなのだけれど(拙エントリー参照)、これから、アートとコミュニケーションの関係というのは、どの作家さんにとってもこれまで以上に大切なファクターになる、と感じた。何かを作る体験を共有することにより、作家さん自身にとっても生まれてくるインスピレーションが変容するだろうし、それによって、そこに集うひと達にとっても得がたい体験を得ることになるかもしれない。
 何よりも、同じ空間を醸成しているという事実から、まったく別の何かが、作家さん自身以外からも誕生するかもしれない。そのような雰囲気を作る、ということもアーティストの「仕事」の一つになっているのではないかなぁ、と思ったりした。
 そういった中では、オーディエンスがオーディエンスのままでは許されず、何らかの雰囲気への関与が求められる、とも。

 parsleyとして嬉しかったのは、祖父江先生が私の名前に気を留められて「パセリは好きですか?」とお尋ねになられたこと。もちろん元気に「だいすきです!」とお答えしました。
 そして、祖父江先生と、真珠子先生の2ショットをチェキで撮影させて頂いた。
 たぶん、記憶と記録に残ることをして、はじめて二度とない時間への痕跡を残したかったのだと思う。

 それにしても会場の裏に飾られていた龍の絵、素敵でした。いつか、また、どこかで、お目にかかれますように。



 

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