『ブログ限界論』ログ(下)

November 25 [Sun], 2007, 18:50
 前エントリーに引き続き、11月23日のRTCカンファレンスVol.28『ブログ限界論』のログです。
 多少は割愛させて頂いていますが、地の発言を拾うよう努めていますので、長いです。

 全体の流れを把握したい方は、『チミンモラスイ?』様のレポ等を参照された方がより早く目的を達せられるのでは思います。
 それを踏まえてご覧頂ければ幸いです。

 <参照>
 『ブログ限界論』@RTCカンファレンス [前編](『チミンモラスイ?』様)
 『ブログ限界論』@RTCカンファレンス [後編](『チミンモラスイ?』様)
 「ブログ限界論」実況まとめ(『カイ士伝』様)

<ブログを面白くするには>

上原氏(以下U):最近の個人や企業の取り組みで、ブログを面白くしている動きの事例はありますか?
山崎氏(以下Y):ぶっちゃけていうとここ最近はないですね。こっちが教えて欲しいくらい。逆の面白くなくしているのは「やらせ記事」が増えていますね。逆方向の動きは増えている。悪貨が良貨を駆逐している段階。ここからがインターネットの真髄が問われるのではないか。
佐々木氏(以下S):二つあります。
まずアルファブロガーアワードにも推薦したんですけれど、『はてな匿名ダイアリー』。
最近「集合的無意識」というものが気になっていんです。要するにアルファブロガーが顕名化して、特定の個人を永続的に読むということでは面白みがあるのだけれど、「今日本で何が起きているか」ということを断片的に知りたいというもともとブログの役割からは微妙にずれている。日本社会は帰属感が強くて、実名でものを言えない社会であると。匿名化の方に引き戻して自由に言うという文化が出てくるというのはいいことなのではないかと。
匿名実名の流れは、もともとパソコンもニフティとか実名チックだった。フォーラムに入るのに挨拶をしないといけないとか体育会の柔道部みたいだった。それが嫌になって皆2ちゃんに走った。あそこは挨拶とか(決まり事が)何もなくて気持ちよくていいと思っていたのだけど、それでは殺伐とするよねということで、ブログやらmixiやらに戻っていく。そういう振り幅があって匿名の気持ちよさが見直されている感じが若干あるのではないか。

U:なるほど、面白いですね。
S:もう一つは、集合的無意識ということで言うと、最近の10代20代は携帯に向かっている。最近ケータイ小説について取材しているんですけれど、『魔法のiらんど』にアップロードされている小説は100万本ある。信じられない数じゃないですか? その中で9月の段階で34本が書籍化されていて、トータルの出版部数が850万部。一冊にすると20万部くらい、僕の本もそれくらい売れればいいのにって(笑)。
そういう状況なので、ブログの世界が儲からないって悶々と言っている間に、携帯の世界でそうやって集合的無意識の世界が出来上がっている。そのスフィアからマスメディアに逆流して文庫化したり漫画の雑誌したりコミック単行本に出したりサブコンテンツしたりして収益をもたらしてすごいことになっている。そういうところを捉えると、ブログのことばかりで考えていると、クローズな狭い世界で、仲良しグループで考えすぎなんじゃないかと反省したんですね。

U:なるほど。ブログ=インターネットという世界感の中にあるのですけれど、携帯はまったく別の世界観。ユーザの行動が全く違っている。
S:日本の携帯の場合アメリカと違って、CMSで書いているので別空間になっちゃっている。
PCの世界で起こっていることはITメディアだったりCNETだったり書いてくれるじゃないですか。でも携帯の世界で、例えば『魔法のiらんど』で起こっていることとか、モバゲータウンで何が起こっているかということは誰も知らない。まとめサイトもないし。そこにディバイドがあるんじゃないか。


小飼弾氏が「『魔法のiらんど』に参加している人達も自分が書いているジャンルについてのタイトルしか知らないんじゃ」という突っ込み)

U:そうですね。まとめる人がいなくて、ちょうど細分化されている。(会場全体に向かって)最近、ブログが面白くするような出来事って何かありませんか。
大西宏氏(以下O):マーケティングでは面白くなりつつある気がしますね。スモールビジネスの人達がかなりブログをはじめてきている。小さな飲食店や企業をやっている方は、お客さんや社会と新しい関係を作るということに、私は気がつきはじめた。
大きな仕掛けとしては、ノエビアさんが営業所の人のリアルな声を集めたサイトをやっているんですけれど面白いなぁと。企業の活動体力というものを感じる。

徳力氏(以下T):僕も話を聞いていてちょっと議論が佐々木さんとずれているかなと思ったのは、ブログというものの定義だと思うんです。コンテンツを生成して発信するという意味では、佐々木さんがおっしゃることはすごく正しくて、コンシューマーの情報送信が携帯に移って面白くなってお金がまわっているというのは事実あると思うんですけれど。
僕が受けているブログという文脈は、マクロ的な数量はどうでもいい。インターネットを使って、今会場にいるような人達とつながったり、知恵の交換をしたりすること。
僕がブログをはじめた頃にインパクトを受けた言葉が、『百式』の田口さんが、ITメディアの岡田有花さんのインタビューを受けた記事で「インターネットは脳のシプナスみたいなものだ」「みんながちょっとずつ頭がよくなる世界」ということをおっしゃっていた。専門家のひとが書くことを無料で読めて、検索で見つけられて、何かを発信すると誰かが受けて、頭がよくなっていく、と。それが僕のイメージしているブログなんですよね。
コンテンツが携帯にいくのは当然あるし、ブログというプラットホーム自体が携帯に移っていくのかもしれない。僕は仕事好き人間でビジネスで考えすぎなのかもしれないですけれども、ライフスタイルやキャリアをインターネット上で考えるインフラとしてブログに話を戻すとすると。
今、大西さんがおっしゃったような、企業側の人が会話に参加したいと思うかというと、日本ではちょっと停滞しているような感じがある。大企業で書く人はそんなに増えないし、選挙活動ではネットは使えない。
かたや先程山崎さんもおっしゃったように、スパムブログや自動生成ブログが増えているのがボディーブローのように効いてきている気がする。この間もひどいのを見つけましたよ。今は文章もとを自動で書き換えてしまうソフトとか今あるんですね。例えばブロガーとの会話をしたいと思っていても、ブログ検索するとスパムブログが大量に出てきます。意味ないよねと。この間NTTの同期に言われてすごいショックだったのは、『何あれブログって。物売ろうとしてウザいんだけど」と。彼の中のブログという文脈はアフィリエイト自動生成サイトになっちゃっているんですね。これは凄い問題だと思っています。
僕らがインターネット上でつながる可能性があるシステムがどんどん汚染しているものが強くなっている感じがするんですよ。それを『SPA』とかで堂々と「これは素晴らしいシステムです」という記事になっていたりする。あれは本当に許していていいのかというね、すいません、ちょっと熱くなっちゃいましたけど。

S:そのブログ検索結果はGoogleの問題なんですよ。
T:というと、結局僕らの思考のつながりはGoogleに命運をぜんぶ握られているという話になっちゃうんですね。米Googleではペーパーポスト系のサイトのページランクを0にするというジャブで出していたんですけれど、僕らが「Googleがんばってね」というふうになるのは、ちょっと悔しいなぁと。
S:だから、Googleに替わる情報収集しやすいアーキテクチャを徳力さん作って下さい。
T:皆さん、頑張って下さい。みんなでやりましょう(会場笑)
Y:もしスパムサイトからトラックバックが来たら、削除するだけでなくて、それをブログサービスに通報してほしいんですよ。一つやっているところは同じことを1000個くらい作っているので、一個の通報でどさっと消える。これは皆さんやって欲しいですね。
T:そもそもそういったブログをホストし続けるサービスがあるわけじゃないですか。短期的にはPVや登録数が上がるかもしれないけれど、それは自分たちの首を絞めていると思うんですよ。
S:スパムに腹立ててもしょうがないと思うんだけど。
T:いや、しょうがないんですけれど…。
U:仕組みについては、しっかりと考えていかなければいけないです。
T:僕がAMNという会社に入ったのは、もう時効だからいいと思うんですけれど、一年くらいずっと無理ですと断り続けていたんですよ。
やっぱり趣味でブログをやるのは楽しいじゃないですか。仕事にしたくないというのが本音であるんですね。
ただ、その時に日本技芸の御手洗さんに「僕らはインターネットからいろいろなものを得ているのだから、インターネットに対して還元する責任がある」と言われたんです。それは考えてことがなくて、それで結局こうやってAMNに入ったんですけれど。
それって僕だけじゃないと思う。皆さん全員そうで、何かやらないといけないんですよ。スパムブログを通報するのもかもしれないですし、それをよくないんじゃないかと言わなくちゃいけないのかもしれないし。僕は御手洗さんに言われるまでは、ブログというツールがあって楽しんでいます、それでいいでいいと正直思っていたんですね。アルファブロガーアワードも今回継続するのは清田さんに「継続する責任がある」と言われたからやりましたけれど、それまでは自分が自分の読みたいブログを探すためにやっていました。そういうことの積み重ねがあって、その時にはブログじゃなくなっているのかもしれないですけれど、よくしていかなければいけないんじゃないかと思います。


<最後に一言>

Y:個人的にはスパムブログは放っておけないですよ。割れ窓理論と同じなんで。業者は放っておいてもやるでしょうけれど、業者でもない人が真似をして小銭を稼いでいる。そういうことが重なって、今回の「ブログ限界論」でおっしゃられたような、インターネットにつながっている全員の無意識下において、熱意が下がっているのではないかという気が若干あります。
Googleなんかは全自動でやるのをよしとしていて、Yahooの場合は全部大量の人員で質の維持しようと。それぞれ別のアプローチで色々な問題の答えを出そうと試みている企業ではあるんです。ところが企業なので結局利益優先なんですよ。それ以外に、みなさん一人ひとりは何をやろうとしているのか。それとも、そういった問題意識はないですかと聞きたいですね。

S:ライブドアの時の盛り上がりはどうだったのか、ということについて一言だけ。
アメリカだと大統領選があってブロガーズミーティングを開いてヒラリー・クリントンが来たりして、ブログ言論からリアルに近づいてある種の運動化しているようなことが、日本では起きていない、ということに上原さんの不満があるのではと思うのですけれど。
確かに2005年はライブドアのニッポン放送買収問題や郵政解散があった。その二つの事件が画期的だった。日本のブログの空間を変えたと言い続けていたんですけれど。20〜30代のロストジェネレーション世代と60代くらいの団塊世代のおじさんとの世の中の見方が真っ二つに分かれていた。マスメディアの方はこぞって「ライブドアけしからん」「小泉は負ける」と言い続けていたのにもかかわらず、ブログの世界ではみんなライブドアのいいところがあるじゃないかと支持している人や小泉の支持をしている人もいっぱいいた。結果的にフタを開けてみると小泉は勝ったわけですよね。この時にアスアンドゼムみたいなことが起きて、ブログのパワーを見せ付ける原動力になって、ワクワクするものが確かにあって僕もそれを感じていた。それ以降、実はそういうことがない。
その間ブログが何もしていないわけではなくて、その後はそういった事件が起きていない。参院選があったんですけれどだれがどう見ても自民党が負けるしかないという状況で、意見の分かれる場所が最近起きていない。それだけの話であって、長い目で見るといずれ世代間対立が勃発するでしょう。今後、公職選挙法も改正されるでしょう。いろいろなきっかけをバネにしてブログの言論空間がパワーを持つ時期がくるんじゃないかと楽観的な期待はしています。

T:今日はしゃべりすぎてしまってすいませんでした。ちょっと感情的になってしまってお詫びします。
一つだけ。いいブログを探す仕組みの一つとして、アルファブロガーアワードをやっていますので、投票のご協力頂きたいと思います。12月7日にブロガーの忘年会にやるんですけれども、まだ申込み間に合います。是非よければ投票だけでなくどんなブログがよかったか自分のブログに書いて頂けると嬉しいと思ったりします。「俺の好きなブログバトン」をされている方がいたりするんですけれど、相手に伝えると続けるモチベーションになるでしょうし、お互い投票することで頑張っているブロガーのリストをサイトの方で作っていきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。


<質問タイム>

Q:途中から面白いとかいう話ではなくて、面白いものはあるのだけれどつまらないように見えないようにはどうすればいいかという話になっているように思う。話が逸れているというか無意味な話をしているような気がするんですけれど。ある程度自動的に出来る話を皆さんが語る必要がないと思うんです。
U:取り返しがつかないので勘弁してください。
小飼氏:ブロガーに限界があるので、(ブログを)否定したりしなかったりという話。

Q:ブログが広まったのはプラットホームが優れていたのか、コンテンツが優れていたのか。
T:僕はプラットホームだと思います。インターネットを個人が体験するのに分かりやすいプラットホームがブログだった。その結果いいコンテンツが出てきた例もあるという形かなぁと。
S:よいコンテンツをみんなが読みやすいプラットホームが出来たということですね。
Y:ウチの場合はブログという言葉が出てくる前から同じ形で更新していたので、2000年の段階で個人的にも直感的にも「これがもっと広まれば面白いものが増えていくんじゃないかな」という気が最初からしていた。だから、プラットホーム、コンテンツの順番ですね。
Q:であればテクノロジーで今挙げられた問題を解決していくという方向ですか?
U:そうですね…。テクノロジーで解決していきましょう!
私も個人的にプラットホームだと思います。CMS、トラックバック、RSS、その三つが取り揃えられていたことが画期的だったと思います。


O:ブログは書いている人より読んでいる人がはるかに多い。本名で書いていると、声をかけられることはすごく多くて。ネットとリアルでのつながりは既に生まれているのではないですか?
T:そうだと思います。一番最初の問題設定で「ブログはリアルでのし上がっていくための道具だったんじゃないか」みたいなオチになっていたが、それでもいいんじゃないかと。
結局ネットもリアルなわけじゃないですか。こういうところによく来られている方はネットワークが広がって本業のビジネスにつながることは当然あるはず。佐々木さんの本を読んでいる限りは、日本は(実名で発言することに)向かない文化なのかもしれないですけれど、両方をつなげられる人は明らかに得をしている。ブログはそういう効果を持っているツールだと思います。

K:アルファブロガーは実名が多くなっている。PVを増やしたり影響力を高めたいという人は上にあがろうという人は実名を出した方が得。
S:ブログって単なるプラットホームなので、別に目的は人それぞれで、リアルで上がっていきたい人はそれを目指せばいいし、絶対に会社の上司に知られたくない状況でブログを書きたいのならばそれでいいし。それはお好きなようにとしか思わないですけれど。
Y:個人的には、よく聞くような「あちらの世界」「こちらの世界」といった考え方にしろ、「現実」「仮想現実」にしろ、そういうことが問題だとは思えないです。インターネットを特別視するのは理解できない。現実の延長線上なんだということが当たり前になりつつある世界に今ようやくなってきたんだな、という感じはしますね。完全にシンクロした、現実=インターネットということですね。

Q:現実の社会とインターネットの社会が完全にリンクするならば、例えば立ち位置が変わった際に使うブログも変えるべきなのか。そのままにした際は世の中が受け入れてくれるのか?
U:私は悩んでます、というのが答えですね(笑)。
Q:僕も起業して部下を持つようになって、本当の悩みがブログに書けなくなっているので、そういう場合にブロガーってどう対応していけばいいのかなということをお聞きできればと思います。
S:知り合いに言えない悩みは「増田」に書けばいいんじゃないですか?(笑)
本当はリアルとバーチャルがシームレスに繋がっているのが理想ですけれど、日本はどうしても二重にならざるを得ない。会社のオフィスで話すことと居酒屋で話すことが違うのと同じ。そこはリアルの写し絵という以外にない。だから世界が変わらない限り、この二重構造は変わらないと思います。

Y:質問に関して言えば、個人の信念・ポリシーの問題だとしかいいようがないですね。
ただ、ここにいる方々や20代以上の人は生まれた時からインターネットがあったわけじゃない。だからある意味二重生活みたいな感じになってしまうんですよ。
ところが、携帯をパチパチやっている平成生まれの後ろのほうの人たちになると、生まれた時からインターネットがあって当たり前、という状況になる。多分われわれが感じているよりも、シームレスにインターネットとリアルがフラット化してしまう気がします。
だから、「ネットで叩かれる」ではなくて、単純に「叩かれた」になる。目の前で罵倒された場合はそんなにダメージはないと思うんですよ。だから「ブログ炎上」とかナイーブに感じるのはもしかするとなくなるのかもしれない。
社長になったらやるのも変えなければいけないのかなという悩みは、普通の現実生活の延長線上で今我々が感じているのと同じように対処するのではと、将来的には思います。

T:僕はNTTにいて特にIRだったので、もし今もIRだったならここにいないですね。即クビだったと思います。
多分、自分で選択しないといけない。どういう自分で見られたいかという話だと思うんですよ。
上原さんが炎上マーケティングの一人者としてブログを書き続けるのであれば、本音を書けばいいと思うんですけれど、「社長としてのイメージをもうちょっと考えてくれ」と社員に諭されて考え直すというのであれば、そういう(本音の言えないような)ブログになっていく。
確かに今まではつながり辛かったので、ネットでは本音を言えるという気持ちよさがありますけれど、発言した責任は残っているわけで、見つかって誰か認識された瞬間にいくらでも叩かれる要素は残っている。本当に「王様の耳はロバの耳」的なブログをやりたいのならば、「はてな匿名ダイアリー」や匿名ブログをやるのはありだと思いますけれど、見つかるリスクを考えるならばネットだけでなく「どういう人として見られたいか」ということを意識してブログをやらざるを得ないと思います。
ネットだと過激になりがちですけれど、ブログは人格が蓄積されていくので、匿名だろうが実名だろうか、どういう人か認識されちゃいますから。
会社と個人との間をどう埋めるかということは、みんな自分で考えないといけないんじゃないかな、と思います。

U:そういうものがシームレスな会社を作りたいですね。

  <了>
  • URL:https://yaplog.jp/parsleymood/archive/641
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