おまけ

February 18 [Sat], 2012, 13:28
おまけです。
僕が昔笑書いた将棋千一夜の一つ。
僕が通っていた将棋クラブをイメージして書いたことを思いだします。
もちろん、フィクションです。
将棋千一夜第九夜クニやん穴熊のクニやんは上機嫌だった。
相手がいくら考えこもうと一向に気にしなかった。
何しろ、相手の陣形は収拾がつかないくらいにバラバラだし、クニやんの王将はといえば盤の隅っこで金銀三枚に守られて鎮座ましましている。
クニやんはこんな時、横で指している人につい話しかけてしまう。
あんた、そんなもん考えることあれへんがな。
飛車の頭に歩叩いて角成り込んだらもう将棋は終わっとるやんそうや、三手の読みというやっちゃ。
それくらいわかれへんかったら十七級からやり直しやで十七級からやり直しというのがクニやんの口癖だった。
横で指しているサラリーマン風の二人はそんなクニやんのことばを迷惑そうに聞いていたが、言われてみれば成程、確かにそのとおりなので反烽ナきなかった。
クニやん、人の将棋にとやかく言わんと自分の将棋しいや見かねた席主が受付から叫んだ。
クニやんは昨年妻を亡くした。
47歳だったそうだ。
本人は亭主関白だと言っていたが、実際は奥さんに頭のまったく上がらない生活だったらしい。
時々、嫁さんがここに迎えに来たこともあったなぁ。
家は近いんやけど、電話でなんぼ帰ってこいゆうたって帰らへんかったからな席主は思いだすように教えてくれた。
そやけど、あんなに見えてクニやんはものすご愛妻家やってんで。
嫁さんのこと翌たらそおかぁ、そおかぁゆうて、そらぁほんまにうれしそうな顔しよんね。
そやそや、なんでクニやんてゆうか教えたろか。
嫁さんの名前邦子ゆうてん。
何かにつけてクニコ、クニコや。
そいでな、いつの間にか皆がクニやんて呼ぶようになったんやわ。
クニコはワシの宝もんやさかい、こないして大事に大事にしもてんねんそないゆうて穴熊に囲いよんねん。
そこまでされたら嫁さんも本望やったやろ私はもう一度クニやんを見た。
椅子の上であぐらをかき、ハイライトを口にくわえたまま腕組みをして盤面を093877睨んでいる。
言葉数も少なくなっているところをみると、今度は形勢が大分悪いみたいだ。
どないしたクニやん、大事なオカアチャンが他の男にやられそうなんとちゃうか席主の声に皆がドッと笑った。
金はる、取ってきよる、飛車成る、合いしよる、桂馬打つ、上に逃げるか、あかんなぁ、詰めへんがなブツブツ言いながらクニやんは椅子の上で座り直した。
こんなええ将棋負けたらほんまに十七級からやり直さなあかんで。
金はる、取りよる、飛車成る、合いしよるクニやんの独り言はなかなか終わりそうにもなかった。
おそまつさま。
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