神無月の宴事、その真意を知る勿れ

November 25 [Sat], 2006, 12:19
「ん?」
「・・・・そんなつまらない理由で俺は・・・・俺は昌浩から引き離されたのか・・・・・!?」
 地底から響くような声音に、大神がザッと後ずさった。神将もほとんどがそれにならう。掲げられた右手には炎蛇が巻き付いてあぎとをクワッと開き、あるはずのない眼光を煌めかせる。
 炎が作る影から紅蓮の絶対零度の笑みが覗いた。
「いくら大神とはいえ、容赦しない」
「イヤァァァァ!!お、奥さん!奥さーん助けてーー!!」
 大神はまたもや半泣きで妻を呼ぶ。集まっていた神達がその光景を見て一瞬固まったが、しかしすぐに何も見なかったと顔をそらしてまた酒を酌み交わし始める。
 やはり自分たちの頂点に立つ神がこんな情けない神だとは認めたくないのだろう。
 泰然としていた天空がやれやれと嘆息し、杖で地面を数回叩いて紅蓮の注意を引くと、閉じられている目を向けて窘めた。
「いい加減にせんか、大人げない。たかだか三日の辛抱。それぐらい我らにとっては瞬き一瞬の時間であるのに」
「その間に昌浩に何かあったらどうしてくれる」
「何もありゃあせん。それとも何か。お前はあの子をそんなに信用できんのか」
「う・・・・・」
 言葉に詰まって目線を下げた紅蓮に天空はたたみかける。
「お前が信用しなければ、あの子もお前を信用しまい」
「・・・・・・」
 一拍おいて、絡まっていた炎蛇がスゥッと消えた。それと同時に殺気も消沈する。
 ホッと天空は胸をなで下ろし、他の神将も目尻を和らげる。だが一番安堵していたのは他でもない、大神だ。
「うっうっうっ、怖かった・・・・・」
 すごすごとむせび泣きながら高座に戻ってきた大神を見ると、しっかりしろよと言いたくなる。丸まりがちな背を叩いて背筋を伸ばさせ、しまりのない顔を軽くはたいて目を覚まさせたくなる。
(もう、本当にイライラしてくるわねっ!)
 紅蓮に気圧されて青くなり白虎にしがみついていた太陰だが、収まると元の元気を取り戻しキュッと柳眉をつり上げた。しかしいつものように即実行ということはさすがにせずに、じっと我慢する。
 大神は正座し直すと、ふにゃりと相好を崩した。
「助かりました大老。あなたのような人が側にいてくれたら、私は奥さんにあんなに怯えずにすむのですが」
「それはあなたがしっかりとなさればよろしいだけ。わしのような爺がいても、おそらく邪魔なだけでしょう」
「そんな」
 目を一本にして微笑んだ大神は、ふいにその笑顔のまま硬直した。
「?」
「あ・・・・・」
 笑った口から恐怖に引き連れた声が漏れる。神将達が何だろうと思っていると、大神の背後でゆらりと揺れる黒い影を認め、一斉に身構える。
 影は三つ。右側の影が最初に口を開いた。
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