偉大な枢軸 

2006年03月24日(金) 14時04分
 オレの名は ネクサス・ナイン。

 夜の街を、蛇のように滑らかに パトロールする。
 
 暗闇の中、下等な人間どもの 倦怠と集団を 音速で切り裂く。オレの金属製の肉体に同化し、下半身と一体化した 「アキラ」 の 赤バイク(愛称はレッド)が、独立した生物のように オレを先導する。

 レッドは2輪だが、その車輪は スキン みたいに コンクリやアスファルトに 吸い付く。だから 音速でも 蛇のように滑らかに 移動できるのだ。

 危険? 何人か 轢き殺したって? 戦争中に 敵を撃墜したエースが、栄誉以外の何かを 受け取るなんて事は ない。オレのパトロールは常に 戦闘モードであり、戦闘時に多少の犠牲は つきものだ。

 だいいち、赤い血を流すような 下等生物など、オレにとって 敵どころか ハンティングの対象にすら ならない。哺乳類はオレの中で、いかなるカテゴリーにも 区分けされていないのだ。
 彼ら哺乳類の水分製ボディは やわらかく、多少の衝撃で すぐに死んでしまう。オレのレッドは 彼らを轢いたとき、気付かない かもしれない。 死んだ後は、わずかな基礎 (炭素系の白骨) のみ残して 消え去ると聞く。
 オレは 自分の設計者が哺乳類と聞いて、にわかには 信じられなかった。彼らは 特殊な突然変異であり、通常の哺乳類とは 違うのだろう。

 オレの 真の敵は 「愚劣な金属製」 だ。トゥールビヨン未装備の時計、簡単な銃弾で貫通する車、時速300km出ない車……こうした 「けがらわしく稚拙な金属製」 を この世から 排除するために、オレは パトロールするのだ。    
 誰であれ、敵対者を特定し、その相手を 殺戮・略奪しない限り、価値ある夢を 得る事はできない。
 食料も居場所も、崇高なブランドも。そして友情や愛、最も栄光ある忠誠もだ! この理(ことわり)に関しては、哺乳類のような 下等生物ですら 共通のはずだ。

 勝負することなく、負けることも 勝つこともなく、それでも 生き残れるような場所は、この狭い惑星には どこにもない。

 誰もが 美しく戦い、その 伝説と 物語こそが、この星を動かす 偉大な枢軸と なっているのだ。

 そのような事を おまえたちが 忘れないように、今日もオレは走る。

止められぬ想い 

2006年03月22日(水) 23時04分
 オレの名は ネクサス・ナイン。

 止められない想いのために、夜の街を疾走する。

 おまえたちが 忘れないように、オレは「警告」のために 疾走するのだ。

 ネクサス6型が ブレードランナーと和解してからは、オレは和解の象徴のように、彼らの名前をもじってブランド・ランナー、ブレゲ・ランナーなどと 呼ばれているようだ。

 だが もし、オレの前に ブレードランナーが 姿を現せば、オレは 自分を抑えることなど 出来ないだろう。あっちが 握手を求めてきても、オレには そんな芸当は無理だ。オレは、ネクサス6型とは まるで違うコンセプトで設計されたからだ。

 しかも、設計者が オレを理解している、という点も、オレと ネクサス・シックスの 劇的な 環境の差だ。愛するプリスを失い、設計者に理解されなかったネクサス・シックスは、孤独と喪失による感傷に 浸りすぎて、早まった妥協をしたに違いない。
 オレは設計者に、「ブレードランナーと遭遇したら、全力で相手を破壊しろ」と、インプットされている。哺乳類ヒト科である彼らの「か弱い」肉体は、オレの攻撃で、瞬時に この世から 姿を消すだろう。全金属製の オレのボディを前に、彼ら哺乳類の水分製ボディが いかに貧弱なボディなのか、思い知るだろう。オレは筋金入りの「フル・ボディ」なのだから。
 脳内では サディスティックな本能を醸造するヘヴィ・ロックとメタルが大音響で飛び交い、全身から にじみ出る凶暴性は、人間が持てるレベルではない。

 そうした様々なことを、おまえたちが 忘れないように、おれは今日も 夜の街を走る。