「そら色の窓」佐々木美穂

2006年02月28日(火) 21時45分
そら色の窓
佐々木 美穂
4569634397

イラストレーター佐々木美穂さんのエッセイ。

次男と行った近所の図書館。恐竜の本に夢中になる息子をおいて、図書室内(小さな分館で児童書が沢山あって図書室って雰囲気なんです)をブラブラ。きれいな水色の表紙がきれいだなぁと手に取りました。うん。正解。

暮らしの中で見つける幸せや過去の記憶。そんな事がゆったりと書かれています。毎日あわただしく生活してる自分を反省。

「満月の夜」が印象に残りました。「もうすぐ満月だね」そういうことを気にして暮らしてる人が、私の周りにはわりといる。と佐々木さんは書いています。私も満月の夜は好きです。電気がついてるかのように明るいんですよね。だけど7月初めの満月だけは切ない気持ちになるんです。私の子供は二人とも6月の中旬生まれ。慣れない育児の不安が子供にも伝わるのか、泣いてばかりだった長男。満月の夜中3時頃。真っ暗な部屋で布団におろすと泣く子供を抱きかかえながら「世界中で起きてるのは私だけなのかもしれない」って不安に途方にくれながら、窓からさす月の光を見ていました。今考えてみたら、夜眠れなかったら昼間眠ればいいのに…って笑っちゃうんですけどね。本当に余裕がなかったんです。満月の夜はそんな日々を思い出します。佐々木さんが本の中で紹介してる映画「満月の夜」を見てみたいと思いました。

佐々木さんの文章と一緒にイラストやコラージュが載ってます。線はまっすぐじゃなくて、時々にじんでる。色は全体をぴっちり塗ってるわけじゃなく、はみ出してたり、隙間があったり。そういうのがセンスなんでしょうね。

「Love Letter」

2006年02月27日(月) 22時13分
Love Letter
石田 衣良/島村 洋子/川端 裕人/森福 都/前川 麻子/山崎 マキコ/中上 紀/井上 荒野/桐生 典子/三浦 しをん/いしい しんじ

11人の作家が「LOVE LETTER」をキーワードに書いたアンソロジー。やっぱりすごいですね。こんな風に物語が膨らむのかって思うものばかりでした。これ、キーワードを隠して本にして最後に「キーワードは何でしょうか?」ってクイズにしたら答えられるかなぁ。

「ありがとう」 石田衣良
ありがとう、ミオカ。僕から美丘へのラブレター。

これはもう、まさしく正統派のラブレター。運命的な出会いから、決められていた別れまで。よくある話なのですが、石田さんやっぱりうまい。これが石田さんの短編集になると、うますぎて出来すぎてて何も残らないんですけど、11の物語のはじまりにぴったりの話でした。

「空」 島村洋子
画家になる為スペインに行った彼を待つ妹。そんな妹をちょっと意地悪な目で見ている姉。週1回届いてた絵葉書が途絶えた。スペインに旅立つ姉妹。

絵葉書が届かなくなって、出かけていったスペイン。大家によれば、女が時々来ていたという。その事について「説明してもらわなくていいの?」と聞く姉に「説明してもらいたいよ。だけど問い詰めたら人間って嘘つくじゃん。私、嘘がききたいわけじゃないから、待ってる」って答える妹。強い!大きい!

「さよなら妖精」米澤穂信

2006年02月26日(日) 22時40分
さよなら妖精
米澤 穂信
4488017037

1991年4月。高校3年生の守屋と太刀洗は、雨宿りをしてたユーゴスラヴィアからきた17歳の少女マーヤと出会う。日本の事を勉強する為に知人の所に滞在するはずだったのだが、その知人が亡くなっていて途方にくれていた。守屋たちの同級生、白河のところに居候をすることになったマーヤ。マーヤが去った1年後、消息を知りたいと集まった守屋達はマーヤと過ごした2ヶ月を思い出す。

主人公の守屋は熱中するものもなく淡々と生活する高校生。女を感じさせない気楽な話ができるセンドーこと太刀洗や弓道部の友達以外、友達と呼べる人は数少ない。そんな守屋が出会ったマーヤ。自分たちの国「ユーゴスラビア」を作ろうと世界を旅して回り、日本に滞在する2ヶ月の間に日本について知ろうと、メモを片手に色々質問します。夢中になれるものを持っていない守屋。ちょっと冷たい雰囲気のセンドー。「自分の手の届く範囲の外に関わるのは嘘だと思う」と言う文原。優しい白河。ちょっと高校生にしては知識豊富で大人っぽい部分もあるけど、みんな一生懸命なのが素敵。これ青春物ですよね?ラスト、こうなるんだろうなぁと予想できる範囲でしたが、それでもじんわりと哀しかった。

設定が1991年から92年。携帯は金持ちの持ち物、インターネットもなかった。そんな時代が懐かしくなる物語でした。設定が現代だったら「はぐれた時には携帯で連絡」だなぁとか「調べ物するにはネットで検索」だなぁとか「手紙書くねじゃなくてメールするね」になるんだろうなぁって思いながら読みました。

「執筆前夜」

2006年02月25日(土) 23時45分
執筆前夜―女性作家10人が語る、プロの仕事の舞台裏。
CW編集部
4797481706

作家を目指す人、クリエイターとしての活動の幅を広げたい人達に向けて、プロの作家から創作のヒントや、仕事の舞台裏について聞く為にスタートしたWeb連載を本にしたもの。

作家になりたいって思ったこともないのですが、好きな作家さんの名前が沢山登場してたので読みました。

10人の方に「作品を書くきっかけ」「デビューの経緯」「書き続けるこつ」などを質問しています。物を書くことを仕事にしている人達だからでしょうか、みなさん自分をキチンと知っていて、仕事である「書く」事についてちゃんと考えてる。「書き続けるこつ」は作家を目指していなくても、生きていくうえで大切な事なんじゃないかなぁと思いました。

そんな訳で印象深かった言葉をピックアップ。

恩田陸
気持ちのいいお話は、だいたいもう何パターンかにきまっている…だから、あとはもう演出をどう変えるかだけだと割り切っているんです。

三浦しをん
出版社の就職試験の時に書いた作文がきっかけでエッセイを書き始めた。それが「しをんのしおり」人間は締め切りがないとだめ。

角田光代
「エコノミカル・パレス」以前は「私」と「見えるもの」一枚の絵だったけど「空中庭園」からは彫刻みたいに、足りないものは別の世界から持ってきてつける。作業が全く違う。忘れるような事はたいした事じゃない。覚えている事を大切に。

酒井順子
締め切りを守る。まあいいや、とか思わない。

加納朋子
「ななつのこ」は北村薫さんへのファンレターのつもりで書いた物語。投げ出してしまったら、それきりで終わってしまう。

「ガール」奥田英朗

2006年02月24日(金) 22時36分
ガール
奥田 英朗
4062132893

30代女性。仕事はきちんとこなし、主張もきっちりとする。女の子でもなくおばさんでもない。そんな5人の女の元気がでる物語。

30歳で独身、仕事はできる。結婚という選択を捨てたわけじゃないけど、彼がいる訳じゃない。未来が見えなくて、だけど自分はどんどん年を取って…そんな人達が登場します。30代ってそんな年頃なんですよね。私は「30歳になったら家を出よう」って思ってまして、付き合ってた彼に「独り立ちする」って言ったら「一人暮らしはよくないから結婚しよう」と言われ、主婦になりました。だけどその時「ふーん」って言われていたら、この本に出てくる人達のうちの一人だった訳です。ドキドキしながら読んでしまいました。奥田さんって女なんじゃないか?って疑ってしまぐらい女の気持ちをすごくリアルに描いてます。

「ガール」に出てくる「もうガールじゃなくなった」って台詞、すごく上手い。30代って少しずつ女の子からおばさんになっていく自分に慣れる10年なんでしょうかね?「若々しいって事は若くないって事」というような文章がありました。私も子供を生んで長かった髪を生まれて初めて短くした時5歳年下の子に「なんだか若々しくなりましたね」って言われたんです。その時に「若々しいねーとうとう言われる年齢になったのか」って思ったものです。

「ハートブレイク・レストラン」松尾由美

2006年02月23日(木) 22時52分
ハートブレイク・レストラン
松尾 由美
4334924786

28歳のフリーライター、寺坂真以。仕事場を持つだけの収入がない真以は気分転換のため近所のファミレスに行く。ここは駅から遠い立地のせいか、働く人が陰気なせいか、たいてい空いていて、長居する常連も多い。和服で真っ白な髪をお正月のくわいのような形に結っているおばあちゃんもその一人。ある日、今書こうとしてる不思議な話を友人に携帯で話した後、そのおばあちゃんが「僭越ながらお力になれるかもしれないと思いまして」と声をかけてきた。

6つの短編です。真以の周りで起こったり、聞いたりした不思議な話を、ファミレスで聞いただけのおばあちゃん・平田ハルさんが謎解きしていきます。仕事場にしてる真以もそのお店の常連ですが、ハルさんも常連。いつも同じ席に座っています。そして店長をはじめ、働いてる人はファミレスらしからぬ陰気な雰囲気を持つ。ハルさんの正体は1話でわかるのですが、ネタバレなのかな?書かないでおきます。

面白く読んだのですが、毎回真以はライターで…ファミレスの立地条件が…ハルさんとはどういう人で…と説明が入ります。雑誌に飛び飛びで連載してたらそれも仕方ないと思うんです。単発で読む人もいますから。だけど、1冊の本として読むとちょっと気になる部分でした。

あと、どうも20代の女の人が主人公の物語、私には甘すぎるんです。途中から話が恋愛方向にいってしまったからでしょうかね?「甘い」って感じる自分が悲しいです。結婚して子供を生むまではきっとすごく楽しんでいただろうに…。年を取って経験してよくなる事もあれば、色々知ってしまったから忘れてちゃった気持ちっていうのもあるんですね。

1話のラストで真以に申し訳ないって言うハルさんはすごくかわいいです。又ハルさんに会えたらいいのになぁって思います。そして又一人、気になる作家さんが増えてしまいました。

「いじわるな天使」穂村弘

2006年02月22日(水) 23時01分
いじわるな天使
穂村 弘 安西 水丸
4757211821

1994年に刊行された『いじわるな天使から聞いた不思議な話』を改題して復刊したもの。15話の物語。

復刊なんですね。全く知らずに読んでいて「なんとなく80年代後半から90年頃、昔のにおいがする」って思ってたんです。穂村さんだから「昔」らしさがジワジワとにじみ出てるのかと思ったら、本当にあの頃に書かれた物語だったんですね。

物語は可愛らしくて、毒がある。中にはラストまで読んでも「ん?何?どういうこと?」って思っちゃうのもあるんですが、その余韻が又いい感じなんです。

「ユニコーン・イン・シュガーキューブ」のユニコーンが「跳ぶ」感じがすごく素敵。角砂糖、今あまりみかけませんね。ユニコーンはどこにいるんだろう?

「宇宙船で女の子をいじめる方法」「逆サンタクロース」「ミスターカシスの道化師捜し」「超強力磁石」「クロスワードの罠」「ブラザー・タルトン」「眠りにつく図書室」「セイレーンの呼び声」「潜水艦長の秘密」「早撃ちキッド」「ユニコーン・イン・シュガーキューブ」「ダンデライオンの剣」「僕の夏休み」「微笑むポパイ」「ゼンマイ仕掛けの飼育係」

「ペンギンの憂鬱」アンドレイ・クルコフ

2006年02月21日(火) 21時58分
ペンギンの憂鬱
アンドレイ・クルコフ 沼野 恭子
4105900412

動物園から引き取ったペンギン・ミーシャと一緒に住む、売れない小説家ヴィクトル。新しく引き受けた仕事はまだ死んでいない人の追悼記事を書く事。お金と共に預けられた少女、友人になった刑事、その姪のベビーシッター…。周囲に不穏な空気が流れつつも、手に入れた安らかな生活の先にあるものは。

不思議な物語でした。舞台がソ連崩壊後の国家ウクライナの首都キエフ。どこにあるのかわかりません。だけど、ペンギンのミーシャが家にやってきた理由が「えさを与えられなくなった動物園が、欲しい人に譲るといったので貰ってきた」だったり「コニャック」を飲んでいたり、お金さえあれば望むことが何でもできそうなあたりが、私が想像する旧ソ連っぽかったです。

物語はとても静かに進んでいきます。自分書いたまだ死んでいない人の追悼記事が採用されても、鍵をかけているのに朝起きたら家の中にある手紙にも、突然置いていかれた最近知り合ったばかりの人の娘にも淡々と対応する主人公。考える事をやめて受け入れるだけの主人公が最後の最後に大きく動きます。大胆な行動に驚きかされ、物語はそこで終わる。

ミーシャは皇帝ペンギンで1メートルとあります。次男がたぶん1メートル位。結構大きいんだ。生まれつき心臓の弱い、憂鬱症のペンギン。言葉は全く喋らないのに、主人公が座っているとその膝に身体を押し付けてみたり、バスタブに冷たい水を入れてる音を聞きつけてペタペタとやって来て水がたまるのを待ちきれずにバスタブに飛び込んだり。鏡をジーっと見たり。存在感があるんです。手術成功したのかな?ってすごく気になります。

物語の中に「果実酒」だの「コニャックを50グラム飲みましょうか(ウクライナの人はgでお酒を量るんですか?)」「シャンパン」なんて出てきたら、お酒飲まないわけにはいかなくて…いつも以上にまとまりのない文章です。

「クリスマス・プレゼント」ジェフリー・ディーヴァー

2006年02月20日(月) 23時07分
クリスマス・プレゼント
ジェフリー ディーヴァー Jeffery Deaver 池田 真紀子
416766187X

帯に「どんでん返し16連発」とあるディーヴァー初の16の短編集。

前書きに「短編小説は、たとえるなら、狙撃手の放った銃弾だ。速くてショッキングなものだ。そこでは、善を悪として、悪をさらなる悪として、そして何より痛快なことには、究極の善を究極の悪として描くことさえできる」とディーヴァーが書いてあるとおり、「どんでん返し」の連発です。読み終わるごとに「うわー」「げぇー」ってため息です。ただ、16個続けて読むとその「どんでん返し」にもだんだん慣れてきて、あぁこう来るだろうなぁって予想できるものもありました。

リンカーン・ライムとアメリアが出てくる「クリスマス・プレゼント」は二人に又会えたって、それだけで嬉しい話です。シリーズ次作はいつ出るんでしょうか?

「三角関係」は「思い込み」って恐ろしいなって感じました。ラストまで読んで「モー」と主人公の関係を知ってから読み直すと、いろんな場面が違って見えます。だけどこれは英語だから成り立つ話なんだろうなぁって思いました。これが日本語で日本人だったらって思うと言葉遣いが不自然すぎます。翻訳者、不自然でなく、だけどばれないように訳すの難しかっただろうなぁと思いました。

16もあるのでタイトルを見ても内容すっかり忘れます。なのでいつものように簡単なあらすじを…

「誰よりも美しい妻」井上荒野

2006年02月19日(日) 21時45分
誰よりも美しい妻
井上 荒野
483871632X



誰もが振り返るような美女の園子は音楽家の夫・惣介と小6の息子・深との3人暮らし。美術館のような家、白馬の別荘、趣味で通うバレエ教室。愛してくれる夫。幸せすぎるくらいの暮らしだが、家族の心には「孤独」や「不安」「嫉妬」などが渦巻く。

なんとなく江国香織さんっぽいです。前に「だりあ荘」は江国さんっぽい雰囲気って聞きました。読んでみたいと思いつつ、新刊から先に読んでいて未読です。これは本当に江国さんっぽい。

きちんとコントロールされた生活。夫が生活のすべて、夫を中心として世界が回ってる園子。わがままで、子供。園子に依存しながらも、恋をする事によって園子への気持ちを再確認する惣介。そんな二人だけの世界を作り出す両親を見て育ち、ちょっと大人びている深。そんな三人の心の動きをが丁寧に描かれています。

私は女なのでやはり園子に親近感を覚えながら読んでいました。園子は惣介のことならなんでもわかる。彼の気分、今して欲しいこと、して欲しくないこと、そして夫が恋をしてるかどうかさえも。恋をしてる夫に、夫が連れてくる恋人に全く動じない。それを息子は「怠惰」だと言うんです。そして惣介の親友の広瀬は「痛々しいほど怠惰じゃない、というのは、ある意味で痛々しいほど怠惰なのかもしれない」と言う。「痛々しい」が園子に一番ぴったり来る言葉なのかもしれないです。痛々しいほど忍耐強い。

■プロフィール■
■なな■
■新しいブログに移転しました。ブログ名はおなじナナメモです。どうぞよろしくおねがいします。■
にほんブログ村 本ブログへ
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:naomi703sugar
読者になる
Yapme!一覧
読者になる