「みずうみ」よしもとばなな

2006年01月08日(日) 21時05分
みずうみ
よしもと ばなな
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高校卒業と同時に逃げるように親元を出てきたちひろ。アパートの窓際に座って外を見ると、いつも外を見ている男の人がいる。会話はなくてもいつも気にしてる不思議な存在。その彼、中島君がうちに来るようになった。

登場人物はちょっと変わった親に育てられて、母親を亡くすのと同時に父親とも疎遠になったちひろ。とても聞けないような暗い過去を持っていて、今にもこの世から消えてしまいそうな中島君。そして中島君がすごく会いたいけど、会いにに行こうと思うだけで具合が悪くなってしまうみずうみの近くに住む兄弟、紅茶を入れるのが上手なミノくんと寝たきりで人の未来が見えるチイちゃん。

いつものように「スピリチュアル」な世界です。ピンと張り詰めた空気。寒い冬の朝。そうお正月の朝って感じでしょうか。今回の物語は好きです。

過去に起こった出来事にとらわれてしまい、今にも死にそうな中島君。ちひろと出会って、一緒にいるうちに、「大丈夫になるんだろうなぁ」と安心する私。その途端、「だけど長くは生きないと思う」とか言う中島君。ずっと、最後まで不安定な状態。恋愛感情というより、ひっそりと恐る恐る一緒にいる二人。中島君にずっと生きていて欲しいって強く強く願います。

よしもとさんの物語に出てくる人ってなんだか真正直。主人公がぐるんぐるん脳みそを回転させて言う言葉が相手にしみていき、「いまこの言葉をきちんと言えてよかった」って安堵と自己満足が感じられる。

ハッとさせられたのは「お母さんという生き物は、状況も関係なく、なず冷えた人をあたためて、お腹が空いている人に何か食べさせようと思う。」という言葉。私はまだまだお母さんになりきれていない。

「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸

2006年01月05日(木) 22時45分
酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記
恩田 陸
4062127636

飛行機が嫌いで「海外旅行処女」と言われていた恩田さんが取材の為に出かけたイギリス・アイルランドの旅。

恩田さんが続きます。何となく表紙が「地球の歩き方」っぽくて、薄いのに栞の紐がついてることに驚いた。

飛行機恐怖症の恩田さんが12時間かけてイギリスに行く。ビールを飲んでも酔わないし、緊張のあまり時系列があやふやになっている。自分の中にそれほどまでに恐怖に思うことがないので、実感がわかない。飛行機に乗る時と降りる時に出てくるイラストが笑えるのです。恩田さんの気持ちが出てます。

恩田さんの、いや物を作り出す人の発想に驚きました。アイルランド、タラの丘に立った恩田さんはそこで妄想を膨らまします。それを「世界のあちこちに、お話の欠片が放置されたり隠れていたりするが、それを首尾よく見つけ出せることもあるし、ちっとも見つからないこともある。私がやっているのは、きっとそういう商売なのだ」というのです。すばらしい。

文章もすごく面白おかしく書いてるし、文章の下に写真や恩田さんが後から付け加えた注釈が又面白い。「大村崑」の注釈が一言「オロナミンC」なのには笑いました。

「マルコの夢」栗田有起

2005年12月17日(土) 16時59分
マルコの夢
栗田 有起
4087747883

就職活動に失敗した一馬は、フランスで事業を営む姉に誘われフランスへ。キノコを配達に行った三ツ星レストラン「ル・コント・ブルー」でキノコ係に任命された彼。そこは「マルコポーロの山隠れ」というキノコ料理で名を馳せる高級レストラン。ある日オーナーに呼ばれ「マルコの在庫が1か月分しかない。原産地である日本でマルコを探して欲しい」と頼まれる。マルコとは?マルコと家族の関係とは?

またもや不思議な栗田ワールド。だけどこの間読んだ「酔って言いたい夜もある」で、栗田さんは「妄想するのが大好き」っておっしゃってた。きっと頭の中にある物語のひとつなんだろうなぁ。この対談の中に「母を訪ねて三千里」が子供の頃から大好きだったって書いてありました。だから、タイトルを見てから私の頭の中には「母を訪ねて三千里」のテーマソングが流れていました。パリから日本に探しに行く一馬が「マルコよマルコ、おおマルコ〜」と言う場面。やっぱりちょっと意識してるよね?

登場人物が個性的。レストランの見習いの二人。メガネは必ずレンズを自分で割ってからかけるギョームと素敵な女の人を見ると紙と万年筆を取り出してサインをお願いするピコリ。パリで暮す一馬は毎日「ポ・ト・フ」(この・が好き)を作って食べてるし、母は久しぶりにパリから帰ってきた息子に「スーツケース捨ててきてっていったでしょ!」と情けなさそうに叫ぶ。

「港町食堂」奥田英朗

2005年12月13日(火) 22時14分
港町食堂
奥田 英朗
4103003510

「奥田さんに港町を探索してもらって紀行文を書いていただきたいんですよ。それで、港には毎回船ではいりたいんです」というユカ編集長の言葉から始まった企画。「旅」という雑誌に連載されたもの。

奥田さんのエッセイ初めて読みました。面白い。作家のエッセイってみんな面白いのかしら?なんでもないものをおもしろおかしく書けるから作家なのかな。途中「小説家を信じちゃいけませんぜ。楽しくて危険な嘘を売ってあるくのが、わたしの商売なのである」って書いてありました。そしてその「嘘」を買って(借りてますが)楽しむのが私。「嘘下さい」

旅したのは高知、五島列島、宮城・牡鹿半島、韓国・釜山、日本海、稚内・礼文島。稚内以外は、飛行機で行ったらすぐに着く場所なのに、わざわざ船に乗り出かける。海の近くなので魚介類と思いきや、同行する若者につられて朝からカツカレーなんか食べている奥田さん。三度三度の食事にスナック通い。観光もしているだろうけど、食べ物の話ばかりで読んでる私のおなかも一杯です。

カメラマンも同行していたようだし、雑誌に連載されていた時にはきっと写真が一杯だったと思うのに、本になったら小さな小さな白黒写真がちょこっと載ってるだけ。綺麗な景色、美味しそうな料理を見たかったなぁ。

「毛布おばけと金曜日の階段」橋本紡

2005年12月12日(月) 23時50分
毛布おばけと金曜日の階段
橋本 紡
4840222517
姉のさくらと二人で暮らす未明。なんでも完璧にこなす姉だが、お父さんが亡くなった金曜日になると階段の踊り場で毛布をかぶりおばけになってしまう。姉妹と姉のボーイフレンド和人の物語。

「猫泥棒と木曜日のキッチン」は橋本さんの「曜日シリーズ」だって書いてありました。ならば読んでみないと!って思いました。図書館で場所が見つけられず、聞きました「電撃文庫ね…あちらです」ってヤングアダルトコーナーに連れて行かれました。そして表紙にビックリ。うーん。オタクですか…

同性の同級生を好きになってしまった未明。自分をはっきりと表さなかった未明が好きな同級生が転校する事を知って思い切って告白しに行く。5歳年上の恋人を持つ和人。バイトをしてデパートで高価な指輪を買おうと思う。最終的に渡したものは…普段はしっかり者のさくら。だけど父が死んだ金曜日には階段の踊り場でおばけになる。妹の未明、恋人の和人は姉を励ますように、階段に大量の食べ物を持ち込み食べる。和人の父親の不倫や小さな男の子が出てきたりして、物語としては面白かった。だけど絵が…途中の挿絵も全部表紙と同じ絵なんです。途中で「いたいけな」なんて言葉が出てきてしまい、私の頭の中には「オタク。オタク」って言葉がグルグル。だめかも…

「猫泥棒と木曜日のキッチン」橋本紡

2005年12月08日(木) 23時12分
猫泥棒と木曜日のキッチン
橋本 紡
4840231583

母が家を出て行き、5歳の弟コウくんと二人で生活する17歳のみずき。母がいなくなってから近所で車に轢かれた子猫の死骸を庭に埋め始める。5匹目の轢かれた猫をダンボールに入れようとしたときに出会った健一。木曜日には健一君と一緒に夕食を食べる。

みずき。最初の父は病死、2番目の父親は蒸発。そして恋多き母も家出をした。5歳の弟の面倒を見て、スーパーの特売品を買い、しっかりと主婦をする高校生。突然いなくなってしまう家族を「人生ってそんなもん」と心を閉ざしている。すごく強い。高校の先生に憧れ、楽しく話が出来たら幸せ。自転車のチェーンに油をさしてもらって軽くなったから嬉しい。そんな高校生っぽい姿も「懐かしさ」というより、「へぇー」と新鮮に読んでしまう私って随分年を取ったのでしょうか?

一方健一は母がおこした追突事故でたまたま左足の靭帯断裂。大好きだったサッカーをやめなければいけなかった。「現実をうけいれた」つもりではいるが、周りの同情が気になる。足の事をまったく気にせずに接してくれるみずきの事を好きになる。

そんな二人のがんばる姿がなんだかすごく悲しかった。あとがきに「子供って、そんなに弱いかな?」ってありました。確かに子供=弱者じゃないとは思うけど、このみずきの母親ってどうなんだろう?自分の恋愛の為に子供を放り出す?又戻ってくる?

健一とコウくんのサッカー。三人で食べる夕食など、あたたかな雰囲気です。が、みずきの家庭環境「不幸」のオンパレードがやりすぎなんじゃないかって思いました。

「みんな一緒にバギーに乗って」川端裕人

2005年11月10日(木) 18時22分
みんな一緒にバギーに乗って
川端 裕人
4334924697

新人男性保育士を中心にした保育園の物語。

男の保育士。うーん。子どもを公園に連れて行った時に、保育園の散歩と一緒になることがあります。そこで一度だけ若い男の保育士を見たことがあります。膝寸のパンツで子どもに「おーい。そっちにいくなぁー」とのんびりと声をかけ、他のベテランの先生にはなにやら言われっぱなし。なんだかとても頼りなさげで、大丈夫なのか?と勝手に心配してました。もし自分が保育園に子どもを預けて男の保育士さんだったら…私の子どもは男の子なので力いっぱい遊んでもらえたら嬉しい気がするけど、自分の子どもが女の子だったらオムツ替えをしてもらうのは抵抗あります。

物語はそんな男の保育士田村竜太の仕事に対する葛藤、どのような立場になるべきか、親の偏見をどう取り除くか、同じく男の新人秋山君の付き合ってる彼女の親の偏見、女の新人ルミの自身のなさ、ベテラン保育士大沢の仕事と結婚、男性保育士の草分け的存在元気先生の理想などについて、保育園の一年を子どもと親とのふれあいを通して描かれています。

保育園についてすごく詳しく描かれている様な気がします。子どもは幼稚園に入れてますが、私自身は1歳の頃から保育園でした。先生って大変なんだなぁと思いました。そして子供の頃お昼寝の時間が大嫌いで「ちゃんと眠れたおりこうさんにはシールをあげる」と言われ、昼寝の出来ない私はシールを一度ももらったことがなかった事、ぐっすり眠ってシールをもらえる子を「赤ちゃんだなぁ。」なんて見下してた事、本当はすごく羨ましかった事など思い出しました。

「魔王」伊坂幸太郎

2005年11月08日(火) 19時08分
魔王
伊坂 幸太郎
4062131463

両親を交通事故で亡くした兄弟「魔王」が兄安藤の物語で「呼吸」が弟潤也の事を妻の詩織が語る。

へぇー。今まで読んだのとは全然違う感じ。人の政治に対する無関心さ、そしてネットやテレビなどの情報の信憑性の有無、そして一度一つの方向に向かってしまった群集の恐ろしさなんかを考えてしまいました。「今の大人がかっこよければ、(若者は)誇りに思う。」には潤也と詩織と同じように「そうかもしれない」って思いました。私はかっこいい大人じゃないなぁ。

いつも何かを考えてる兄、安藤。ことあるごとに「考えろ考えろマグガイバー」と子供の頃見た「冒険野郎マクガイバー」のセリフを自分に言い聞かせてる。自分に腹話術の能力があるかもと思ったときにも色んな方向から検証する。それに対して弟、潤也は何も考えずに直感で行動する。兄が死んでから詩織とのじゃんけんに負けたことがないことに気がついて、詩織と二人競馬をしに行く時も、ただ行き当たりばったりに実験をする。そんな対照的な兄弟二人の仲がいいのが好ましい。夢の中で「兄が犬の側に駆け寄って眠るように眠る兄の死を『人の死に方が書いてある本』で見た」潤也。兄が自分を残してどこかに行ってしまう事がすごく心配。一方兄は、心臓が苦しくなった時などに自分が青空を飛ぶ鳥で、地上から弟が双眼鏡で自分を見てる姿を見る。そんな兄弟。

最近、一つの本の中で短編が少しずつリンクしてるものをたくさん見かけるけど、伊坂さんは他の本とリンクしてるから面白い。今回は彼ですね。前回の本読んでいてよかった。

なんだか続きが気になる。潤也君は「お金は力だ」って言ってますが、その大金をもってどうするつもりなんだろう?これでも雑誌「エソラ」に載ったものに加筆したようです。続きはないのね…「消灯です」

「マチルダは小さな大天才」ロアルド・ダール

2005年10月29日(土) 19時41分
マチルダは小さな大天才 ロアルド・ダールコレクション 16
ロアルド・ダール クェンティン・ブレイク 宮下 嶺夫
4566014258

3歳前から字を読む事が出来るマチルダ。両親はそんなマチルダを「悪ガキ」と決めつける。学校では女校長が高圧的な態度で生徒を牛耳っている。そんな大人たちに立ち向かう天才少女マチルダ。

中古車に細工をして売るお父さん、そんな父親が許せなくて懲らしめようと思い帽子に接着剤を塗ったり、整髪剤の壜に母親のヘアダイを入れたりします。学校では「小さい子供は大嫌い」「自分に逆らう者は許さない」そんな女校長のミス・トランチブルが学校を牛耳ってます。友達がしたいたずらを自分がやったと勘違いされた時、目の奥が熱くなり不思議な力が涌いてきます。そのことを相談した担任のミス・ハニーとミス・トランチブルの関係を知ったマチルダ。かわいそうなミス・ハニーを助ける為不思議な力を使って校長を懲らしめます。子どもの事を一人に人間としてきちんと扱わない大人達を冷静に観察して懲らしめるマチルダ、気分爽快です!

マチルダとミス・ハニーが最初の授業中にした会話。「『ライオンと魔女』がおもしろかったです。わたし、ミスター・C・S・ルイスはとてもいい作家だと思います。でも欠点があります。物語にこっけいみがないんです」「ほんとうにそうよね」…「あなたは、子どもの本はみんな、こっけいなところがないとなければいけないと思うの?」「そうおもいます。子どもって、大人ほどまじめじゃないんです。笑うのが大好きなんです」これがダールのモットーなんだって思いました。だから児童書なのに校長が生徒を捕まえて2階の窓から投げ飛ばしたり、おさげに結った髪を握って砲丸投げみたいにグルグルまわして投げ飛ばしたりし。校長に罰としてホールケーキを食べるように言われた子どもがケーキを全部食べたりするんだって思いました。

「村田エフェンディ滞土録」梨木香歩

2005年10月09日(日) 14時26分
村田エフェンディ滞土録
梨木 香歩
4048735136

今から百年ほど昔、初めて土耳古(トルコ)に歴史文化研究のために留学した村田の滞在録。1899年のイスタンブール。村田が下宿している屋敷の女主人、英国人のディクソン夫人、下宿人の世話をするトルコ人のムハンマド、ドイツ人のオットー、ギリシア人のディミトリス、そして鸚鵡との生活。

1899年、トルコのイスタンブールのお話。ドイツの独逸やヨーロッパの欧羅巴はわかるけど、トルコが土耳古だったりギリシャが希臘になってたりする漢字使いに気分はすっかり100年前です。時代背景もよくわからない昔のトルコにすんなりと入り込んでしまいました。

国境も宗教も違う人たちが一緒に暮らす。考えも違うし、国の情勢少しずつかわって来る。そんな中で友情をはぐくむ村田と下宿人たち。そして色々な目的でトルコに滞在する日本人との交流。そんな村田が大学からの要請で急遽日本に帰るラスト。ディクソン夫人からの手紙が悲しいです。

トルコ人のムハンマドがもらってきた鸚鵡。料理のにおいが食堂に満ちてくると「失敗だ」と一声高く叫ぶ。そして日本に送られてきた後、村田の前で言った「友よ!」など、言葉がわかっているような絶妙のタイミングで喋る。「It’s enough」が気に入ってしまい、マイブームです。何かにつけて頭の中で「It’s enough」って叫んでます。

10年ほど前、自分が留学してた時の事を色々思い出しました。色んな国の人がいて、いろんな宗教があり、色々な考えの人がいる。日本人が病気になったといえば、日本食を持っていってあげたり…今は会うこともない人達。どうしているのかなぁ。
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