「ハートブレイク・レストラン」松尾由美

2006年02月23日(木) 22時52分
ハートブレイク・レストラン
松尾 由美
4334924786

28歳のフリーライター、寺坂真以。仕事場を持つだけの収入がない真以は気分転換のため近所のファミレスに行く。ここは駅から遠い立地のせいか、働く人が陰気なせいか、たいてい空いていて、長居する常連も多い。和服で真っ白な髪をお正月のくわいのような形に結っているおばあちゃんもその一人。ある日、今書こうとしてる不思議な話を友人に携帯で話した後、そのおばあちゃんが「僭越ながらお力になれるかもしれないと思いまして」と声をかけてきた。

6つの短編です。真以の周りで起こったり、聞いたりした不思議な話を、ファミレスで聞いただけのおばあちゃん・平田ハルさんが謎解きしていきます。仕事場にしてる真以もそのお店の常連ですが、ハルさんも常連。いつも同じ席に座っています。そして店長をはじめ、働いてる人はファミレスらしからぬ陰気な雰囲気を持つ。ハルさんの正体は1話でわかるのですが、ネタバレなのかな?書かないでおきます。

面白く読んだのですが、毎回真以はライターで…ファミレスの立地条件が…ハルさんとはどういう人で…と説明が入ります。雑誌に飛び飛びで連載してたらそれも仕方ないと思うんです。単発で読む人もいますから。だけど、1冊の本として読むとちょっと気になる部分でした。

あと、どうも20代の女の人が主人公の物語、私には甘すぎるんです。途中から話が恋愛方向にいってしまったからでしょうかね?「甘い」って感じる自分が悲しいです。結婚して子供を生むまではきっとすごく楽しんでいただろうに…。年を取って経験してよくなる事もあれば、色々知ってしまったから忘れてちゃった気持ちっていうのもあるんですね。

1話のラストで真以に申し訳ないって言うハルさんはすごくかわいいです。又ハルさんに会えたらいいのになぁって思います。そして又一人、気になる作家さんが増えてしまいました。

「ペンギンの憂鬱」アンドレイ・クルコフ

2006年02月21日(火) 21時58分
ペンギンの憂鬱
アンドレイ・クルコフ 沼野 恭子
4105900412

動物園から引き取ったペンギン・ミーシャと一緒に住む、売れない小説家ヴィクトル。新しく引き受けた仕事はまだ死んでいない人の追悼記事を書く事。お金と共に預けられた少女、友人になった刑事、その姪のベビーシッター…。周囲に不穏な空気が流れつつも、手に入れた安らかな生活の先にあるものは。

不思議な物語でした。舞台がソ連崩壊後の国家ウクライナの首都キエフ。どこにあるのかわかりません。だけど、ペンギンのミーシャが家にやってきた理由が「えさを与えられなくなった動物園が、欲しい人に譲るといったので貰ってきた」だったり「コニャック」を飲んでいたり、お金さえあれば望むことが何でもできそうなあたりが、私が想像する旧ソ連っぽかったです。

物語はとても静かに進んでいきます。自分書いたまだ死んでいない人の追悼記事が採用されても、鍵をかけているのに朝起きたら家の中にある手紙にも、突然置いていかれた最近知り合ったばかりの人の娘にも淡々と対応する主人公。考える事をやめて受け入れるだけの主人公が最後の最後に大きく動きます。大胆な行動に驚きかされ、物語はそこで終わる。

ミーシャは皇帝ペンギンで1メートルとあります。次男がたぶん1メートル位。結構大きいんだ。生まれつき心臓の弱い、憂鬱症のペンギン。言葉は全く喋らないのに、主人公が座っているとその膝に身体を押し付けてみたり、バスタブに冷たい水を入れてる音を聞きつけてペタペタとやって来て水がたまるのを待ちきれずにバスタブに飛び込んだり。鏡をジーっと見たり。存在感があるんです。手術成功したのかな?ってすごく気になります。

物語の中に「果実酒」だの「コニャックを50グラム飲みましょうか(ウクライナの人はgでお酒を量るんですか?)」「シャンパン」なんて出てきたら、お酒飲まないわけにはいかなくて…いつも以上にまとまりのない文章です。

「ひなた」吉田修一

2006年02月11日(土) 22時19分
ひなた
吉田 修一
4334924832

新堂レイ。大路尚純。大路桂子。大路浩一。それぞれが一人称で語る春・夏・秋・冬の出来事。

元ヤンキー、新卒で有名ファッションブランドHの広報に採用された進藤レイ。レイの恋人で大学生の大路尚純。彼の兄で信用金庫で働き演劇サークルに所属する大路浩一。浩一の妻で雑誌の編集部に勤める大路桂子。そして浩一の昔からの親友で離婚間近の田辺。

JJで連載されてたものを大幅加筆・訂正しているようですが、設定がいかにもJJらしい。女の人は「H」社の広報(ずっと「H」社で通してたのに、一度だけエルメスって出てきてますが…替え忘れたのかしら?)や雑誌編集者。誰もがなれるわけじゃない職業で輝いてる「デキル」女。一方男の人は就職活動してない大学生、信用金庫勤務、サラ金にお金を借りてる失業者。浮気するでもない。あぁ、情けない。

4人が淡々と日常を語ります。すごく大きな出来事があるわけじゃなく、普通なんです。ラストだって日々私たちが暮らしてる実際の日常のように最後まで何も解決しない。だけど、4人それぞれが「彼女」「彼」「夫」「妻」以外に見せるプライベートな一面がちゃんと描かれていて、すごく面白かったです。

夫婦の関係、そして「妻」でいる事の不安について考えてしまいました。家族を送り出した後、家で家族の帰りを待ってるときに「なんでこうやって普通に待ってられるんだろう」って不安になった桂子の母の話や、ラストの「自信ない」って言い合う浩一と桂子。日々忙しくしてるときには全く考えないけど、フとした拍子に考えてしまいそう。考えたくないから、忙しくしてるのかもなぁと思いました。

「はるがいったら」飛鳥井千砂

2006年02月06日(月) 21時37分
はるがいったら
飛鳥井 千砂
4087747921

両親が離婚して離れて住む姉・園と弟・行。二人が幼い時に拾った犬・ハルは老犬となり、寝たきりになってしまった。姉弟のある春の物語。

犬の名前が「ハル」そしてタイトルが「はるがいったら」あぁ、また「泣ける本」なのか?って心配しましたが、全然!読んだ後色々考えさせられるいい本でした。

姉の園はデパートで受付嬢をしている。完璧主義者。自分で決まりを作りストイックに守っていく。洋服を素敵に着こなす為に痩せ過ぎっていわれる位に痩せ、出かける時の洋服は隙がないくらいに決めている。弟の行は高校生。小さい頃から体が弱く留年している。両親の離婚後、父の再婚相手とその連れ子と暮らす。何事もそつなくこなすが、すべてをあるがまま受け入れる性格。

自分が考える「私ってこう見られてるんだろうな」って想像や「あの人ってこういうタイプ」が他人から見たら全然違うって事に気がつく姉弟。よく知ってるつもりの親子・兄弟でもお互いが実際に考えてる事ってわからないんだって強く思いました。

園が勤めるデパートに水曜日に来る女の人。全身ピンクの服を着て、ガリガリに痩せている。回転と同時に入り、色んな階でピンクの物を手にとっては店員に声をかける。そんな女の人を見て「「異常」と「正常」の境界線はどこにあるのか、とふと思った。」と言う園。あぁ、本当だって思った。

何かすごい事が起こるわけでもなく予想通りの結末なんだけど、園も行もちょっとだけ自分を知る。ちょっとだけ明るい方向に向いていけそうな予感。そんなラストがすごく心地よい。

「白夜行」東野圭吾

2006年02月02日(木) 19時05分
白夜行
東野 圭吾
4087744000

物語の始まりは昭和40年前半。廃ビルの一室で殺された質屋の主人。その被害者の息子での桐原亮司と、容疑者の娘の西本雪穂という 2 人の小学生。容疑のかかっていた雪穂の母親と愛人も不慮の死を遂げ、事件は迷宮入り。物語は亮司と雪穂、それぞれの成長を追う形で進む。殺人事件を担当した刑事の笹垣は19年間ずっとその殺人事件が忘れられず、桐原と雪穂を追い続ける。不可解な出来事が起こる陰には、二人の存在が見え隠れしていた。

ドラマ化されると知ってあわてて図書館に予約しました。が、一歩出遅れてしまい本が来たのがドラマが3話終了してから。この本はドラマの前に見たかった。読んでいるとリョウは山田孝之、雪穂は綾瀬はるか、そして笹垣が武田哲也になってしまうんです。イメージが固まってしまうのはよくない。それに、本だとビルの中で起こった事は最後の最後までわからない。しかも、それも19年間事件の真相を追っていた笹垣の想像でしかないんです。だから後は読者の頭の中で色々考えることなのに、ドラマでは1回目の最初にそのシーンが出てきます。何が起こったかわからずに本を読んだらもっと楽しめただろうなって思うと、本当になんで本を先に読まなかったのか悔やまれます。

それにしても東野さんすごいですね。亮司と雪穂が直接会ってる場面なんてひとつも書かれていない。周りで起きる色んな事件に二人が関与しているんじゃないかって事はすぐにわかるけど、それはあくまでも周りの人が語る二人からの想像です。最後のほうで雪穂が部下に言う言葉「あたしの上には太陽なんてなかった。いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。太陽ほど明るくはないけれど、あたしには十分だった。あたしはその光によって、夜を昼と思って生きてくることが出来たの」が印象的でした。それで「白夜」なんですね。光がなくなった雪穂、これからどうするんだろう?

「HEARTBEAT」小路幸也

2006年01月21日(土) 22時40分
HEARTBEAT
小路 幸也
4488017150

彼女との「十年後に会おう」って約束があったから、辛いことがあったニューヨークから帰って来る事が出来た。約束の場所に行ってみたら夫と名乗る人がやってきて「3年前に失踪した」と言う。探そうと思った時に思い出した高校時代の同級生の名前。

元高校の同級生の委員長こと原之井、不良娘のヤオ。修学旅行中に埋まってる一億円を発見する。そして二人に共通の友人、巡矢。この三人が背負う話が一つ目。元男爵家で財閥の五条辻家の直系のユーリこと裕理(ひろまさ)。お屋敷で起きる幽霊の謎を解明しようとするユーリの同級生のエミィとハンマが二つ目の物語。「Boy’s SIDE」委員長とユーリ「Girl’s SIDE」エミィとヤオ「Last Man’s SIDE」巡矢によって、二つの物語の過去から現在までが細かく語られていく。

なんだかせつないです。いろんな人の色んな想い。二度とかなえられない想いを胸に生きていく人々。オチはつい最近読んだ本と同じなんだけど、こっちのほうがジーンときます。その最近読んだ本のコメントで「HEARTBEAT」を薦めてくれたりあむさんすのさんの遊び心がにくいです。似たようなオチなのに読んだ後に感じた事が全然違っていて、すぐに読めてよかったとさえ思いました。

「僕と先輩のマジカル・ライフ」はやみねかおる

2006年01月18日(水) 20時25分
僕と先輩のマジカル・ライフ
はやみね かおる
404873508X

T大に合格し、一人暮らしを始めたカタブツの快人。1ヶ月4万ですごす為に選んだ下宿「今川寮」には不思議な人たちが沢山住んでいた。中でも飛びぬけて不思議だったのが大学8年生の長曽我部先輩だ。気がついたら幼馴染で霊感が強い春奈と一緒に「まやかし研究会」に入部させられていた。

「青に捧げる悪夢」に入ってた「天狗と宿題、幼なじみ」の快人と春菜が大学生になった物語です。小学生の二人の力関係がそのまま。生真面目で融通の利かない快人は大学生になっても6時起床・9時就寝の毎日。心を落ち着かせる為に「般若心境」の写経なんかをします。頭の回転が速く要領がいい春奈は全然授業に出ないのに、苦労しないで試験に受かる。二人の関係がなんだかいいのです。

大学8年生の長曽我部先輩。首や腕にオカルトグッズを沢山つけ、胸には自分でマジックで書いた紋様がある。風呂に入ったりして紋様が消えると先輩の顔が優しくなって別人のようになる。冬には冬眠するのでテストが受けられず8年間も大学にいるらしい。先輩の存在がオカルトです。


物語の謎はきちんときれいにまとまってるんだけど、私の謎は深まるばかり。「今川寮」の人たちがどうして長宗我部先輩を恐れているのか気になる。長宗我部先輩でさえ上から6番目の「課長」の「まやかし研究会」って何だろう?「今川寮」の人たちのことももっと知りたい。続編はあるのでしょうか?

「カッパのカータン」なんて懐かしい!はやみねさんも「ぴんぽんぱん」世代なんですね、きっと。

「Presents」角田光代

2006年01月15日(日) 20時10分
Presents
角田 光代 松尾 たいこ
4575235393

女性が一生のうちにもらうプレゼントをテーマに12の文章を角田さんが絵を松尾たいこさんが書いたもの。

おなかにいる赤ちゃんが最初にもらうプレゼント「名前」から最後がもうすぐ77歳になるおばあちゃんの「涙」まで12人の年代の違う人と心に残るプレゼント。いろんな話のいろんな場面に共感することができ、自分がもらったいろんなプレゼント、その時に感じたことなんかも一緒に思い出していました。女の人だったら、きっと自分だけの本「Present」が出来るんじゃないかな。

「鍋セット」大学進学のために東京に出てきた女の子。引越しの手伝いに来てくれた母親がわずらわしくも感じるけど、本当はずっと一緒にいて欲しい。家に帰る母親の後姿をずっと見ている主人公。この場面はずっと忘れないような気がします。

「涙」のおばあちゃん。老人介護施設に入ってるのですが、眠ると自分が誰で、何歳で、どこにいるのかがわからなくなるんです。なんだか「厭世フレーバー」のおじいちゃんを思い出しました。ボケってそういう風に自分が誰で、相手が誰だかわからなくなってしまうんでしょうかね?私の祖母は明治43年生まれ。会いに行けばいつも寝ています。昼寝をしながら夜もぐっすりだそうです。なんとなく人間って赤ちゃんに戻ってしまうんだなあって思ってたんですが、赤ちゃんじゃなく色んな年齢のいろんな人になってるのかも。今度会いにいったら聞いてみよう。

カバーがとてもかわいいのです。初回限定で特選ラッピングカバー。カバーを広げると包装紙になるみたい。私はもちろん図書館で借りたので広げられません。だけど、もし自分のものだったとしても、もったいなくて絶対に包装紙としては使えない。そしてしまっておいて、月日がたち紙が黄ばんで「あれ?この紙は…」ってことになりそう。

「日傘のお兄さん」豊島ミホ

2006年01月09日(月) 23時58分
日傘のお兄さん
豊島 ミホ
4104560022

「バイバイラジオスター」「すこやかなのぞみ」「あわになる」「日傘のお兄さん」「猫のように」5つの短編。

5つの短編、最後の話以外主人公が女の子。あぁ、こういうのわかるなぁっていう文章が沢山出てきました。ちょっとエッチなシーンも違和感がない。女の立場なんです。ってことは男の人にはあまり面白くない本なのか?

好きだったのは「あわになる」と「日傘のお兄さん」

「あわになる」は幽霊になった主人公が色々なものを忘れながらも、唯一忘れなかった中学の時に好きだった男の子、タマオちゃんの庭に宿る。同窓会に行った夜、タマオちゃんが自分の事を思い出して奥さんの胸で泣いた時、奥さんが自分のいる場所に視線を合わせる。それがなんとも怖かった。

「日傘のお兄さん」は最初読んでいたときには少し昔の話なのかと思った。だけどちゃんと現在で、なっちゃんが好きな「お兄ちゃん」は「ロリコンの日傘おとこ」としてネット上で話題の人。危ない線を越えそうで越えない。最後はすごくいい場所に落ち着いてよかったって思えた。

「本当はちがうんだ日記」穂村弘

2006年01月06日(金) 19時24分
本当はちがうんだ日記
穂村 弘
4087747662



色んなところで「面白い」って書いてあって気になり借りてみました。本当に面白い。うっかりお茶など飲みながら読んでいたら、鼻に水分が逆流してしまいました。

笑ってしまうのは、穂村さんの不恰好な自分像。・あだ名がなかった。・素敵になりたい。・小心、臆病、誰かに守ってもらいたい。・「オーラがないですね」とファンに言われた。・もらった年賀状を深読みする。などです。すべてが本当だとは思わないけど、自分の心の奥にある、普通だったら口にチャックして黙っている事を面白くそして鋭く書いている。そして、親と3人で暮らし「いつの日か」と思っていたはずなのに…いつの間にやら結婚してたのには驚きました。できるんじゃないのさ!

だけど、そんな笑える「情けない自分」以上によかったのが、「DVD]「それ以来、白い杖を持ったひとをみつめてしまう」「硝子人間の頃」「「ね」の未来」などがすごくよかった。
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