「誰よりも美しい妻」井上荒野

2006年02月19日(日) 21時45分
誰よりも美しい妻
井上 荒野
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誰もが振り返るような美女の園子は音楽家の夫・惣介と小6の息子・深との3人暮らし。美術館のような家、白馬の別荘、趣味で通うバレエ教室。愛してくれる夫。幸せすぎるくらいの暮らしだが、家族の心には「孤独」や「不安」「嫉妬」などが渦巻く。

なんとなく江国香織さんっぽいです。前に「だりあ荘」は江国さんっぽい雰囲気って聞きました。読んでみたいと思いつつ、新刊から先に読んでいて未読です。これは本当に江国さんっぽい。

きちんとコントロールされた生活。夫が生活のすべて、夫を中心として世界が回ってる園子。わがままで、子供。園子に依存しながらも、恋をする事によって園子への気持ちを再確認する惣介。そんな二人だけの世界を作り出す両親を見て育ち、ちょっと大人びている深。そんな三人の心の動きをが丁寧に描かれています。

私は女なのでやはり園子に親近感を覚えながら読んでいました。園子は惣介のことならなんでもわかる。彼の気分、今して欲しいこと、して欲しくないこと、そして夫が恋をしてるかどうかさえも。恋をしてる夫に、夫が連れてくる恋人に全く動じない。それを息子は「怠惰」だと言うんです。そして惣介の親友の広瀬は「痛々しいほど怠惰じゃない、というのは、ある意味で痛々しいほど怠惰なのかもしれない」と言う。「痛々しい」が園子に一番ぴったり来る言葉なのかもしれないです。痛々しいほど忍耐強い。

「つきのふね」森絵都

2006年01月26日(木) 20時35分
つきのふね
森 絵都
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主人公は中学2年生の鳥井さくら。親友の梨利とは48日前から話をしていない。梨利は髪を茶色に染め、学校を休んだりしてる。梨利の事を好きでいつもまとわりついていた勝田くんは梨利と私の後をつけましている。ちょっとした事件のときに助けてもらった24歳の智さんは心を病み、架空の宇宙船の設計図を描き続ける。

友達との喧嘩、将来の悩み、自分の弱さ、心の病気。いろんな事について書かれています。みんな何かしら悩みがあって、「植物になりたい」と思ったり、不良グループとつるみ犯罪に手を染めたり、ちょっとした心の揺らぎが対人恐怖症や強迫症になったりする。智のおじさんのいう言葉「人間、よくなるよりも悪くなるほうがらくだもんなあ」がすごく印象的でした。

だけどその傷ついた心を救うのは、誰かのちょとした一言だったり、たった1つの約束だったりする。落ち込んだり弱った時に、友達が言ってくれた目の前がパッと明るくなるような言葉を思い出しました。そういう言葉ってやさしいだけでなく時にはきつかったりするんだけど、すごく正しいくて明るい方向を向いてるんだよなって思いました。家族や友達にそういう言葉をかけてあげられるような人になりたい。

さくらが最後のほうで言う言葉「どんなに落ち込んだって、人はいつまでも植物のようではいられない。流れる時間やまわりの人たちがそれを許さない」は本当にいい台詞です。森さんの本っていつも色々考えされられます。

「となり町戦争」三崎亜記

2005年12月05日(月) 22時43分
となり町戦争
三崎 亜記
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となり町との戦争が始まる。ある日、「広報まいさか」に小さく載っていた「となり町との戦争のお知らせ」通勤時にとなり町を通る僕は開戦日緊張しながらとなり町を通るが、普段どおり何も変わらない。暫くしてたまたま見た広報で「戦死者」がいる事を知り、「戦時特別偵察業務従事者」に任命される。見えない戦争に関われば戦争とは何なのかがわかるのでは?と思った僕は就任式に赴く事にした。

今年1月に出版された本です。新聞に出ていて気になってたんです。なのに予約の連絡が入らず一度飛ばされてしまったりして結局1年近く待ちました。

不思議な設定です。戦争という非日常が、町の公共事業としてごく日常的に扱われているのです。予算が組まれ、戦争専門のコンサルティング会社と契約して戦争事業を運営している。戦争をすると町が活性化するらしい。「戦争」を「公共事業」にかえてみたら、実際にお役所でこういう意味もない「辞令交付式」や「報告書」が行われているんだろうなぁって想像できます。

となり町戦争係の香坂。わからないことを知りたいと思う主人公の北原さんの質問に用意された答えをキチンと回答する。となり町への潜入操作の為北原と偽装結婚する。その生活もきっちりと「業務分担」されていて、週一度北原の部屋にやってきて自分から服を脱ぐのも業務のうち。時々北原に見せる本の少しの心のゆれはあるにせよ、きっちりと「となり町戦争係」としての業務をこなしています。怖いです。

戦争が本当に起っているのか全くわからない主人公北原と一緒にすごく不安な気持ちになります。見えない戦争、感情のない登場人物。表紙の写真に影響を受けてる部分も多いのかもしれませんが、人間らしさが全くない、なんだか寒々しい印象だけが残りました。

「トンちゃん」中村葉子

2005年11月26日(土) 22時30分
トンちゃん
中村 葉子
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トンちゃんは子供の頃お父さんの事もお母さんの事もお兄さんの事も自分の事も「トンちゃん」と呼んでいた。私が眠ると町は夜になり、町の人の配役は家族も含め時々変わる。そんなトンちゃんの物語。

装丁が凝っていた、それだけの理由で気になり図書館で借りました。

町の人全員がエキストラ。町全体が自分の為だけに動いてる。自分が眠る時には町全体のスイッチが落ちて誰もいなくなる。前半部分はトンちゃんの一人語りです。夜誰もいない町を一人で歩くトンちゃん。澄んだ空気、何の音もしないそんな夜の風景が目に浮かびました。「なんで?」「私はだれ?」「どうして?」とずっと誰ともなく問いかけるトンちゃん。読んでる私も一緒に不安になったりします。

後半、トンちゃんが心の中で考えてることをなんでもわかってしまう女の人とアンティーク缶が好きでショップを持ってる彼が登場します。この女の人、存在してるのかトンちゃんの想像の人物なのか?さらに私の不安が高まります。カンカンが好きな彼との事を語るトンちゃんが唯一現実っぽくて少しほっとしますが、そんな安心もすぐに消えます。

氾濫するトンちゃんの感情、そして唐突に訪れるラスト。不思議な話だ。

「となりのこども」岩瀬成子

2005年11月03日(木) 20時02分
となりのこども
岩瀬 成子
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子供の視点で(一人は老女)描かれた7つの短編。

図書館で棚を見ていて何気なく手にした本。表紙の絵がほんわかしてかわいかったのです。

主人公は10歳位の子供。小さい子を相手にすればしっかりとして保護者にならなければいけない。大人の前では完全に服従して依存しなければいけない。そんなどっちつかずの子供の気持ちがすごく正確に書かれています。タイトルの「となりのこども」この本にピッタリです。

一番最初の話「緑のカイ」では自分だけに見える廃屋のプールの底に潜む全身緑の友達。友達から気持ち悪がられ、暫く足が遠のき、そして忘れてしまいます。ある晩、散歩途中に見かけた黒い影が「カイを忘れたのか?」と聞きます。子供のときってそうやって自分ひとりの世界を持っていて、そして突然そのことを忘れてしまうんですよね。この話を読んで「偶然とったこの本、正解だったかも」って思いました。

そして「二番目の子」がすごいのです。最近、友人の話を聞いていると小学生の女の子の戦いは大変らしい。大人ほど物事を隠さないので嫉妬やら怒りやら独占欲やらそんなものがストレートに表現されるらしいんです。そんな小学生の女の子の日常が描かれています。5人でゲームをしながら歩いていくのですが、一人の子を標的にして意地悪をしてみたり、「言った」「言わない」の喧嘩をして頬をたたいたり。それなのにすぐに仲直りしたり。子供ってストレートなぶん、後もスッキリです。女の子ってこういう事沢山やって、そして少しずつ自分の感情を隠していくことを覚えるんだなぁって思いました。何でもストレートに表現できた子供の頃が懐かしい。

この物語も登場人物が少しずつリンクしてます。やっぱりこういうのはやっているんでしょうか?

「探偵ガリレオ」東野圭吾

2005年10月30日(日) 21時54分
探偵ガリレオ
東野 圭吾
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物理学科助教授の湯川と捜査一課の刑事草薙が解決する一風変わった殺人事件。「燃える―もえる」「転写る―うつる」「壊死る―くさる」「爆ぜる―はぜる」「離脱る―ぬける」の5つの短編。

「容疑者Xの献身」を図書館で予約したのですが、どうやら「探偵ガリレオ」こと湯川さんが登場するシリーズ物らしいと知り、最初のから読んでみることにしました。

突然燃える髪の毛と赤い糸、失踪者にそっくりなデスマスク、心臓麻痺の死体の胸には細胞が壊死してる痣があった、海で突然起こった黄色い火柱、容疑者のアリバイを証明するのは幽体離脱した男の子の絵。そんな不思議な事件を解決する湯川。犯人は誰なのかはというのが重要なのではなく、どうしてそんな不思議な現象が起こったのかを証明する事がメインの物語。実際に起こる事はないんだろうけど、こんな仕掛けを5つもよく考え付くもんだなぁ。専門の人が読んだら湯川さんと同じように解決できるのかしら? 「爆ぜる」のナトリウムだけはわかります。薬学でも一応実験なんてものはあって、ナトリウムを使うときには先生が「危ない」って口煩かった覚えがあります。

この湯川さんは俳優の佐野史郎をイメージして書いたそうです。私は沢村一樹をイメージして読んでました。

「東京日記 卵一個ぶんのお祝い。」川上弘美

2005年10月27日(木) 12時27分
東京日記 卵一個ぶんのお祝い。
川上 弘美
4582832822

雑誌「東京人」に連載している日記の最初の3年分をまとめた本。

どっぷりと川上ワールドにひたりました。あとがきに「以前『椰子・椰子』という、嘘日記の本をだしたことがありました。本書は、本当日記です。少なくとも、五分の四くらいは、ほんとうです。」とあります。えー!五分の四は本当なんだって驚きました。川上さん、不思議な世界に住んでいるんだ。そうでなかったら、私とは物の見方が違うんだ。出来る事なら、一日でいいから行動をともにして、リアル川上ワールドを体験したいです。

二月某日「突然自分が無趣味である事に気がつく。」「持つべき趣味についてあれこれ検討する。」「悩みつくして、結局レース編みに決める」そして「レース編みをしなければ、という重圧に一日苦しみ」「レース編みが気にかかり落ち着かない。気を紛らわす為に食べ続けレース編みめ。と逆恨みする。」こんな文章が続きます。

あとがきに「武蔵野にて」と書いてあるし、吉祥寺の焼き鳥や「いせや」の名前なんかも出てきます。川上さん、武蔵野に住んでいるんだ。「いせや」似合いそうです。そこら辺の親父と一緒にあの汚い店でホッピー飲んでる姿が目に浮かびます。

確か男の子のお子さんが二人いると思うのです。時々子供の話も出てくるけど、全然リアルじゃない。生活観が全くないです。そういえば旦那さんの話は一度も読んだ事がない。そういう人なんだなぁ。

この長いタイトル不思議だったのです。新聞広告見ても「東京日記」なのか「卵一個ぶんのお祝い。」なのかわからなかったのです。あとがきにタイトルについても書いてありました。「敬愛する内田百間の同大の雑誌にも由来してるけど、並んでしまってはおこがましい気がして、表紙には「東京日記」とうい字は、小さく印刷しました。」とあります。まったく、川上さんらしい。

「東京奇譚集」村上春樹

2005年10月26日(水) 21時41分
東京奇譚集
村上 春樹
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「偶然の旅人」「ハナレイ・ベイ」「どこであれそれが見つかりそうな場所で」「日々移動する腎臓のかたちをした石」「品川猿」の5つの短編。

村上春樹、作家の中には「村上チルドレン」なんていわれる人達がいるし、熱烈なファンがいるような気がします。「村上ワールド」に魅了される人沢山いらっしゃると思います。私は…読んだ事ある村上春樹は、読んだ順に「ノルウェーの森」「ねじまき鳥クロニクル」「海辺のカフカ」「アフターダーク」「カンガルー日和」「不思議な図書館」位。しかも「海辺のカフカ」までは内容全く覚えてない。村上さんの本と言えば、ねじれた空間に入り込んでしまったって印象です。この本の最初のほうで「僕は確かにフィクションの中では大胆な作り話をする(なにしろそれがフィクションの役目だから)」と書いてあって、なんだかそれだけでも腑に落ちたきがして満足です。

で、今回の短編集。すごく面白かった。帯に「奇譚【きたん】不思議な、あやしい、ありそうにない話。 しかしどこかあなたの近くで起こっているかも知れない物語。」とあります。最初の文章が「僕=村上はこの文章の筆者である」で始まり、自分の身に起こった不思議な出来事を語り、それから物語に入っていきます。なんだか全部、どこかで起こっていそうな気持ちになります。村上さんの手にすっかりはまってしまいました。

確かにこの世には不思議な事はたくさん起こるともいます。村上さんのサイトでも奇譚について色々書かれていました。そんな不思議話がすきな村上さんの周りに沢山の奇譚が集まってくるんだ。

一番印象に残っているのは「ハナレイ・ベイ」。ひとり息子がハワイの海で鮫に襲われて亡くなった。そんな主人公サチが毎年息子の命日のあたりの3週間を息子が亡くなった海で過ごす。自分の運命をキチンと受け入れて生きるサチがすがすがしい。

「DIVE!!〈2〉スワンダイブ」森絵都

2005年10月04日(火) 19時22分
DIVE!!〈2〉スワンダイブ
森 絵都
4062105209

飛沫の物語。オリンピック強化合宿の選考会が行われ、腰を痛めた飛沫は突然故郷に帰ってしまう。

一気読みを進められたのですが、他に予約していて読まなければいけない本が沢山。だけど続きが気になるのでとりあえず、2を借りました。1週間ごとに発行されるマンガでも読んでる気分で…

初めての大会。そのダイナミックな演技は、荒削りではあるが一般の 人たちの注目も集める。そんなダイブの魅力を知る飛沫。だが、隠していたはずの腰痛が夏陽子にばれていて、強化選手からははずれてしまう。夏陽子との契約が果たせないと思った飛沫は津軽に帰る。自宅ではなく彼女の家で過ごす飛沫。そんな飛沫の元に強化合宿から帰ってきた要一と智季が夏陽子からの手紙を持って訪ねてくる。そして祖父の白波のダイブのビデオを見て決心をする。

忘れないよう、自分用あらすじ。さぁ、次はいつ読めるのでしょうか?現在本が7冊手元に。

「時のしずく」中井久夫

2005年09月28日(水) 22時48分
時のしずく
中井 久夫
4622071223

精神科医であり、詩の翻訳家でもある中川さんが、色々なところに寄稿した文章をまとめたもの。自伝的な話、震災の事、自分の読書体験、須賀敦子さんなど数人との事などのエッセイ集。

なんでこの本を借りたのかすっかり忘れました。新聞でみたのかもしれません。ぎっしりと詰まった文字に一瞬ためらったのですが、読み始めたらとまらなくなりました。

1934年生まれ。物心ついた時には戦争が始まっていて「将来は軍人さんになりたい」といわなければいけない時代。敗戦とともに中学に入学。そこでドイツ語を学ぶ。京大法学部に入るも、考え直し医学部を受けなおす。「ウイルス研究所」勤務のあと精神科医となる。医師としての患者への接し方、考え方がすばらしいと思った。こういう医者が沢山いたら薬漬けの精神病患者も減るのでは?と思ったが、それは薬局で薬を渡すだけの私の中途半端な見解なのでしょう。

精神学の専門書や外国の詩集を翻訳している人なので、本に関しての話が多かった。印象に残ったものを書いておくことにします。

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