「ガール」奥田英朗

2006年02月24日(金) 22時36分
ガール
奥田 英朗
4062132893

30代女性。仕事はきちんとこなし、主張もきっちりとする。女の子でもなくおばさんでもない。そんな5人の女の元気がでる物語。

30歳で独身、仕事はできる。結婚という選択を捨てたわけじゃないけど、彼がいる訳じゃない。未来が見えなくて、だけど自分はどんどん年を取って…そんな人達が登場します。30代ってそんな年頃なんですよね。私は「30歳になったら家を出よう」って思ってまして、付き合ってた彼に「独り立ちする」って言ったら「一人暮らしはよくないから結婚しよう」と言われ、主婦になりました。だけどその時「ふーん」って言われていたら、この本に出てくる人達のうちの一人だった訳です。ドキドキしながら読んでしまいました。奥田さんって女なんじゃないか?って疑ってしまぐらい女の気持ちをすごくリアルに描いてます。

「ガール」に出てくる「もうガールじゃなくなった」って台詞、すごく上手い。30代って少しずつ女の子からおばさんになっていく自分に慣れる10年なんでしょうかね?「若々しいって事は若くないって事」というような文章がありました。私も子供を生んで長かった髪を生まれて初めて短くした時5歳年下の子に「なんだか若々しくなりましたね」って言われたんです。その時に「若々しいねーとうとう言われる年齢になったのか」って思ったものです。

「クリスマス・プレゼント」ジェフリー・ディーヴァー

2006年02月20日(月) 23時07分
クリスマス・プレゼント
ジェフリー ディーヴァー Jeffery Deaver 池田 真紀子
416766187X

帯に「どんでん返し16連発」とあるディーヴァー初の16の短編集。

前書きに「短編小説は、たとえるなら、狙撃手の放った銃弾だ。速くてショッキングなものだ。そこでは、善を悪として、悪をさらなる悪として、そして何より痛快なことには、究極の善を究極の悪として描くことさえできる」とディーヴァーが書いてあるとおり、「どんでん返し」の連発です。読み終わるごとに「うわー」「げぇー」ってため息です。ただ、16個続けて読むとその「どんでん返し」にもだんだん慣れてきて、あぁこう来るだろうなぁって予想できるものもありました。

リンカーン・ライムとアメリアが出てくる「クリスマス・プレゼント」は二人に又会えたって、それだけで嬉しい話です。シリーズ次作はいつ出るんでしょうか?

「三角関係」は「思い込み」って恐ろしいなって感じました。ラストまで読んで「モー」と主人公の関係を知ってから読み直すと、いろんな場面が違って見えます。だけどこれは英語だから成り立つ話なんだろうなぁって思いました。これが日本語で日本人だったらって思うと言葉遣いが不自然すぎます。翻訳者、不自然でなく、だけどばれないように訳すの難しかっただろうなぁと思いました。

16もあるのでタイトルを見ても内容すっかり忘れます。なのでいつものように簡単なあらすじを…

「小春日和」野中柊

2006年02月14日(火) 19時50分
小春日和
野中 柊
4899980205

逗子に住む小学校2年生の双子、小春と日和。映画好きの母親の影響でタップダンスを習い始め、CM出演のチャンスをつかむ。

最初に「ふたりがふたごだということを気にしないで生きていけるように」とあるので、双子が似ているだけに辛い思いをする物語なのかと思いましたが、そうじゃなかった。堅実な父、ミーハーな母。いつもボーイフレンドの所に行ってる祖母とそのボーイフレンド。新しく生まれてくる弟。子供である事の幸せや不安。家族のそれぞれの立場。タップを始めてからの出来事が丁寧に書かれてます。まさに小春日和の一日って感じです。

双子が77年の早生まれ。私より1年先輩なんです。だから小学生のときの懐かしい雰囲気が出てるかって思ったんだけど、出てくる歌手が「ザ・ピーナッツ」。私にとっては、ただの化粧の濃い双子のおばさんってイメージだったので(とはいっても、解散当時は34歳で今の私より年下)なんだか共感する部分が少なかったです。

小学生のときに、いつも一緒でどんな事でも分かち合える人がいたら心強そうです。「双子だったらよかったのになぁ」とどうにもならない事を考えてみる。本の影響なのか心が子供に戻ってます。

「肝、焼ける」朝倉かすみ

2006年02月13日(月) 22時17分
肝、焼ける
朝倉 かすみ
4062132184

小説現代新人賞受賞作「肝、焼ける」を含む5つの短編集。

うーん。なんだか主人公の気持ちがちっともわからない。「肝、焼ける」で彼のポストに入れるメモなんて、読んでいて「いたたたたー」って思ってしまった。だめよ、ダメダメ。そんな事しちゃったら…コマドリさんにいたってはその生真面目過ぎる性格に呆れ、だんだん飽きてしまい、読みながら眠くなってしまいました。

って、ここまで内容色々思い出して書いてて気がついた!昔の私がいろんな所にいるんだ。そしてそんな自分の「痛い」部分は意識的に忘れているつもりになってるんだ。だから「わからない」なんて思いながら読んでいたんです。「わからない」んじゃなくて「忘れたい」なんです。

独特の文章は病み付きになりそうです。まず、描写がすごくリアル。主人公が見たもの、聞いたものを、そのまま教えてもらってる感じ。会話してるときの相手の顔まで見える。独り言まで聞こえてきます。

いまどきこんな言葉使うかぁって言葉が沢山出てきます「合点承知の助」だの「泥棒を捕らえて縄をなう。是すなわち泥縄式」「月下氷人のセミプロ」月下氷人がなんだかわからなくて調べてしまいました。

そして色んな所でプっとふきだしてしまう表現がある。「痩せてはいるのだが、運動なんぞはしないので、胸筋も、腹筋も、室温においたチーズのごとく、しまりがない」巧いなぁとニヤリ。「長すぎた春すぎたってこと?」「くどいよ、そのいいかた」は一緒につっこんでました。

「格闘する者に○」三浦しをん

2006年02月08日(水) 22時12分
格闘する者に○
三浦 しをん
4794209606

大学4年生の藤崎可南子。周りは就職活動始めているが、漫画に逃避する毎日。友人のニキちゃんとスナコも同じ調子。漫画が大好きなので出版社に志望を絞り就職活動をする可南子の就職活動、藤崎家のお家騒動、そして西園寺さんとの恋の行方。

テンポがよく、登場人物がみんな生き生きしてる。そしてなんだか漫画を読んでいるような気分になる本でした。主人公の可南子はエッセイで知る事が出来る三浦さんご本人にすごく近いような気がします。そしてタイトルがいいですね。漢字苦手なので「他人事」ではありません。気をつけなければ。

就職活動したことないので共感する部分は全くないのですが、「不合格通知」が届いたときの絶望感ったらすごいんでしょうね。自分が丸ごと否定されてしまったような気になりそうです。「平服でお越しください」って。就職活動した事なくても、一応普段着で行っちゃいけないのはわかります。だけど、会社側は「平服でお越しください」って書いておいて、来る学生の服装を見て何を判断するんでしょうかね?

弟の旅人が可南子のことを「姉ちゃん」「おねいちゃん」「おねえさま」と呼び分けます。私にも弟がいるのですが、私の弟も状況によって数パターンの「おねえちゃん」を使いわけます。そこらへんがきちんと書き分けられていたのが面白かった。

西園寺さんもエロじじいかと思ったら、すごく思いやりのあるおじい様だし、お父さんだってなんだかとってもつめたい人なのかって思ってたのに、登場してみたらかわいいやつだった。「ホモかも」って告白する二木くんもとても清潔感あふれる、本好きの男の子。みんな愛すべき人々なんです。

「月曜日の水玉模様」加納朋子

2006年01月19日(木) 22時20分
月曜日の水玉模様
加納 朋子
4087742148

タイトルが月曜日から日曜日まで7つの短編集。日常の謎を解いていく。

満員の通勤電車で丸の内まで通う陶子。毎朝同じ電車の同じ車両に乗るうち、途中で降りる青年に気がつきました。その彼の前に立てば、途中から寝ていける訳です。それで毎日彼の前に立つようになり、観察が始まります。持ってるスーツは3つ。ネクタイは5本のネクタイをローテーションしてます。スーツとネクタイがあってるかは別として15パターンの着まわしになります。黄色地に黒の水玉模様は月曜日のネクタイのはずなのに、火曜日にも同じネクタイをしている。そして途中で立たずに終点まで陶子と一緒に乗ってくる!そんな風に始まる「月曜日の水玉模様」その青年の名前は萩原広海といいリサーチ会社の社員。顔見知りになった二人が会社で、周りで起きた出来事の謎を解き明かしていきます。

「レインレインボウ」に出てきた陶子です。内容すっかり忘れていますけど、おばあちゃんと二人暮らしなことは覚えていました。色んな事をきちんと見極めしっかりしてる陶子の過去がわかる「木曜日の迷子案内」にはドキっとしました。

ほとんどの物語は陶子が語っているのですが、「水曜日の探偵志願」だけは萩原の視点で語られます。ぼんやりしているように見せかけて鋭い萩原。陶子への好意を抱く萩原と知っていながら冷たい陶子。少しずつ氷を溶かしていく萩原がいいです。この先が楽しみな二人。

前に読んだ「僕と先輩のマジカル・ライフ」の文章が中途半端というのか、子供向けだったような気がしたので、今回は同じように死人が出ない謎解きなんですけど満足度が大きかった。

「クリスマス・ストーリーズ」

2006年01月07日(土) 22時58分
クリスマス・ストーリーズ
大崎 善生 角田 光代 島本 理生
4048736671

奥田英朗、角田光代、大崎善生、島本理生、盛田隆二、蓮見圭一の6人が書くクリスマスイブの物語。

年が明けてから「クリスマス」の本です。カバーがキラキラしていてすごくクリスマスっぽい。なのに内容は「大人になる娘」だったり「不倫」「別れ」そんな内容ばかりなんです。今、私はあんまりこの手の物語を読みたくないんです。リアルすぎるのだ。あぁクリスマスイブに読まなくて良かった。

角田さんの「クラスメイト」夫が浮気をして、その浮気が本気になる。泣き叫んで、駄々こねて、いつも以上に明るく話したり。そんなところがすごくリアルで、いつもここにいるはずって思ってる夫にこんな風に言われたら、私も絶対にこうなるって思ったら怖かった。

島本さんの物語は働いている中距離恋愛の二人。「働く二人」がん?少し年齢が上がったのって心配に(心配する必要はないんだけど、何となく若い人たちを書いていて欲しいって願望があります)なりましたが、高校を卒業してすぐに就職していてホッとしました。この話が一番未来があってよかった。

盛田さんの「ふたりのルール」は前半部分は同僚との食事。そして後半部分は不倫相手とのクリスマス。主人公の温度の違いがすごくうまく表現されている。だけど、妻という立場としてはこういう女の人は嫌だなぁ。「ずっとずっとこのままでいい」なんてどういうことなの?って腹立たしく読んでしまいました。

「黒と茶の幻想」恩田陸

2006年01月04日(水) 21時45分
黒と茶の幻想
恩田 陸
4062110970

学生時代の友人だった、利枝子、彰彦、蒔生、節子。 大学を卒業して十数年、友人の送別会で懐かしい店に集まり、色々話をするうちY島へ旅をする事になった。旅のテーマは「美しい謎」

ずっと読みたいって思ってた本、やっと読めました。Y島(屋久島)の神秘的な森。綺麗な空気、濃い霧、夜の暗闇。屋久島に行ってみたくなりました。実際には行く手段がフェリーしかなさそうなので、乗り物酔いがひどい私には無理ですけど。

それぞれの名前がついた4つの章。それぞれの章が旅行が始まった時点から丸一日の行動、友達同士の肩肘張らない会話、「美しい謎」、閉ざされた「過去」などについて語られます。

旅のテーマは「美しき謎」。今手元に残されている僅かな断片から、過去にさかのぼり何があり、何が起きていたのかを考える。全員が納得できる答えが出たら解決。よくそんな事考えつくなぁって思うくらい、その謎が面白かった。

そして、4人に共通する一番の謎は「梶原憂理」。学生時代、利枝子の親友であり、利枝子と蒔生が別れる原因となった人物。梶原憂理とはどういう人物で現在どうしているのか?憂理の事が書かれている部分だけ、なんとなくひんやりとした空気が流れている気がした。みんなが過去の暗い思い出を思い出しているからなのかしら。

「くらやみの速さはどれくらい」エリザベス・ムーン

2006年01月02日(月) 21時25分
くらやみの速さはどれくらい
エリザベス ムーン Elizabeth Moon 小尾 芙佐
4152086033

舞台は幼児期における自閉症の治療が可能になった近未来。ルウは、その治療法が確立する前に生まれたため、障害を持ったまま大人になった最後の世代。だけど教育を受け仕事をし、腕の良いフェンシングの選手で、教会にも行っている。変化にはうまく対応できないけれど、本は読めるし、憧れの女性もいる。なのにある日会社の上司が、自閉症治療実験に参加しないと解雇すると言いだした。混乱するルウ。ルウが下した決断とは…

物語の殆どは自閉症のルウの視点で描かれています。実際の自閉症患者が物事をどのように考え、どのように感じているのか知るすべはいないので、これが本当の事なのかはわかりませんが、ルウがノーマルな人達の表情から相手の感情を注意深く読み取ろうとする様子、スラングに戸惑いながらも自分が記憶したその言葉の意味を考える様子、周りのすべての事を自分の頭の中でパターン化して理解していく過程などがすごく興味深かった。ルウのすっきりと統一された思考、積み上げられたパターンが心地よかったです。

すっかり入り込み、自分はルウの友達のような気持ちで、「治験なんて絶対にやめるべき」って思っていました。だけど、ラストを読んで「あぁ所詮私もノーマルな人なんだ」って思いました。ルウは人間関係を円滑に行うために、絶え間ない努力と苦労を、苦痛を味わっている。恋愛も出来ないし家族をつくる事も出来ない。ルウは本当の意味で「あるがまま」に生きているわけじゃない。そんなところを理解しないで、今の状態のルウがいなくなってしまう事を悲しむ。自閉症者とノーマルな人たちとの考え方の違いにハッとされられました。

「幸福ロケット」山本幸久

2005年12月23日(金) 23時02分
幸福ロケット
山本 幸久
4591089703

小学五年生の香な子。お父さんが仕事を辞め、お母さんの実家で働く事になったので小石川のマンションから葛飾区お花茶屋のアパートに引越してきた。めったに家にいなかったお父さんが晩御飯を作る日々。ちょっと気になる同じクラスの男の子、コーモリとの恋の物語。

タイトルに「ロケット」が続きました。今回はロケットには全く関係のないお話です。何の予備知識もないまま読み始めました。小学5年生の香な子の視点で物語が進んでいきます。香な子、「やれやれ」なんて文章があって、5年生というには考えがすこし大人びてるかなぁなんて思ったり。最初のほうにそんなことしたら、鎌倉先生の逆鱗(香な子はこの漢字を最近、読んだ本で覚えた。読み方は「げきりん」。あなたもいまのうちのおぼえることをすすめる)なんて文章が3回続けて出てきて、違和感を感じたりもしたのですが、さらりと読めて、かわいくて、切ない物語。

クラスで一番かわいいお嬢様町野さんに「隣の席の小森君とどこかに出かけたいから、橋渡しをして欲しい」といわれる。コーモリこと小森、普通の男の子でどうして町野さんが好きになったのかわからない。ある日、小石川の塾からの帰り道、風呂敷を背負ったクラスメイトのコーモリこと小森君と出会う。「母が入院している」と言うコーモリ。家にご飯を食べに来るようになり、少しずつ意識し始める香な子。いろんな出来事がかわいんです。そしてラストが切ない。2学期の終業式、突然別れが来る。東京駅まで走る香な子。駅のホームでお別れをする二人。

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