「おまかせハウスの人々」菅浩江

2006年03月04日(土) 22時56分
おまかせハウスの人々
菅 浩江
4062131498

人と人の繋がりをテーマにした近未来の短編集。

りあむさんのところで紹介されいて面白そうだったので借りてみました。SFってほとんど手にしません。昔星新一が流行っていた頃読んでいたくらいでしょうか。だけど時々出会うSFはいつも面白い。

この物語もちょっと未来、たぶん私は死んで少し経った頃の世界のような気がします。のびた君の所に来る前、ドラえもんが住んでいた未来の世界っぽいなぁと思いました。電話は話してる相手が見えてるし、メールも音声メール。どうやら読み上げてくれるらしい。重い食料品を買っても自走式キャリアカーが荷物を運んでくれる。ファンでショーンはスプレー式!楽そうです。どれもこれも本当に出来そう。そういう時代は本当に来るんじゃないかって思ってしまいます。

この世界、人工知能を持った機械が生活の中に浸透しています。幼児型ロボットだったり、相手の表情から感情を探るネクタイピン、体内に取り入れて病気を治す機械、そしてなんでもしてくれる全自動住宅。一見便利なものに、振り回されて生きていく人達。便利な世の中になっても、変わらない人間関係。どの話もラストの主人公を思うと背筋が凍る感じです。それでいいの?って聞いてみたくなります。

「アコギなのかリッパなのか」畠山恵

2006年03月02日(木) 23時45分
アコギなのかリッパなのか
畠中 恵
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元代議士・大堂の事務所で事務員として働く佐倉聖。元暴走族で、腹違いの13歳の弟を養い、大学にも通っている21歳。若手政治家の勉強会「風神雷神会」の会長で、現役時代に変わらぬ影響力を持つ大堂の元には弟子筋の議員から困りごとの相談が持ち込まれます。そんな困りごとの解決に駆り出されるのが聖。

主人公の聖は21歳なのに人生を達観してるというのか、落ち着いてるのです。文句をいいながら飼い猫の色が変わる謎、後援会幹部が殴打された事件の後始末、宗教法人へ入信した秘書が寄進してしまった絵画の奪還、ダイエットしてるはずなのに太る夫の謎などを解決し、そして飄々と日常の事務員下っ端生活に戻っていく聖に好感が持てます。他の登場人物も個性的で、いかにも政治に関係してる人々って感じで面白いです。

連続短編集。雑誌に掲載されたものに書下ろしを加えたもの。書き下ろしにまで毎回聖がどういう立場なのかを説明してますが、前に読んだ「ハートブレイク・レストラン」と違ってすごく上手。「又説明なの?」って言う気分になりませんでした。

「いじわるな天使」穂村弘

2006年02月22日(水) 23時01分
いじわるな天使
穂村 弘 安西 水丸
4757211821

1994年に刊行された『いじわるな天使から聞いた不思議な話』を改題して復刊したもの。15話の物語。

復刊なんですね。全く知らずに読んでいて「なんとなく80年代後半から90年頃、昔のにおいがする」って思ってたんです。穂村さんだから「昔」らしさがジワジワとにじみ出てるのかと思ったら、本当にあの頃に書かれた物語だったんですね。

物語は可愛らしくて、毒がある。中にはラストまで読んでも「ん?何?どういうこと?」って思っちゃうのもあるんですが、その余韻が又いい感じなんです。

「ユニコーン・イン・シュガーキューブ」のユニコーンが「跳ぶ」感じがすごく素敵。角砂糖、今あまりみかけませんね。ユニコーンはどこにいるんだろう?

「宇宙船で女の子をいじめる方法」「逆サンタクロース」「ミスターカシスの道化師捜し」「超強力磁石」「クロスワードの罠」「ブラザー・タルトン」「眠りにつく図書室」「セイレーンの呼び声」「潜水艦長の秘密」「早撃ちキッド」「ユニコーン・イン・シュガーキューブ」「ダンデライオンの剣」「僕の夏休み」「微笑むポパイ」「ゼンマイ仕掛けの飼育係」

「悪党たちは千里を走る」貫井徳郎

2006年02月18日(土) 22時48分
悪党たちは千里を走る
貫井 徳郎
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人生をドロップアウトして、今はケチな詐欺師の高杉。舎弟の園田と一緒に田舎成金を騙そうとやってきた。ところが隣の部屋にいた美人の詐欺師に正体をばらされそうになる。気を取り直して次の計画の準備をしていたところ、再びその美人・菜摘子と出会い、仲間に入れざるおえなくなる。着々と準備を進めていたところ、なんととんでもないお荷物が・・・

全体的に軽快なコメディタッチで描かれているのでとてもテンポよく読めました。3人が計画していた誘拐が思わぬ展開をみせ、慌てるふためく姿が面白い。ちょっとありがちな設定だったけど、いいんです。楽しかったから。

誘拐を企てる三人のキャラクターが好きです。主人公の高杉はお人よしで、金のために非情になり切れない三流詐欺師。いつもボケてるんだけど、時々鋭い洞察力を見せます。高杉をアニキと慕う園部は、外見はいかついが頭の回転がちょっと。何も考えていないようで、時々鋭い事を言う。そんな二人の前に現れた菜摘子。頭脳明晰、容姿端麗なんて言葉がぴったり。だけど人生に傷ついてる。そんな3人がテンポよく「ボケとつっこみ」していくんです。

前半部分で詳しくかかれてた巧の両親や警察の陰木や天王寺が途中でいなくなってしまったのが残念。警察は納得したのか?

貫井さん初めて読みました。この本はきっと貫井さんの本の中では軽いんでしょうね…次は「追憶のかけら」を読んでみたいって思います。

「いつか記憶からこぼれおちるとしても」江国香織

2006年02月15日(水) 22時22分
いつか記憶からこぼれおちるとしても
江國 香織
4022578025

女子高の高校一年生。同じ教室で時を過ごす10人の少女の6つの短編。

読んでいくと繋がりがないように思える6つの話だけど、雨の日に「マジック持っていない」ってクラスの子に聞いて回る高野さんがどの話にも出てくるのでクラスメイトなんだってわかります。そしてラストの物語は男の人が語る高野さん。それを踏まえてもう一度読んでみると違った印象です。

なんだか高校時代が懐かしくなりました。放課後のファストフード、授業中の手紙、仲良しグループでの食事、テスト後の答え合わせ、そして席替え。一人の時ってあったのかなぁ。一人でいる子っていたのかなぁ。あの頃って本当に毎日楽しく過ごしていました。

そしてすっかり大人になってしまった私が今回読んで(実は再読。私の記憶からすっかりこぼれ落ちていました)子供目線で鋭い事言ってるって思った文章が二つ。「ママの考えることはときどきよくわからない。これはあたしが子供すぎるのではくて、ママが年を取りすぎているのだと思う。…もし何かをわかるのに子供過ぎるのなら、いつかわかるときがくる。でも、なにかをわかるのに年をとりすぎているのだったら、その人はもう、永遠にそれがわからないのだ。」(「テイスト オブ パラダイス」)と「何月何日に、とか、何時にどこで、とか決めないと、成人たちにとっては約束とみなされないらしいっていうこと。十六年間生きてきて、私もそのくらいは学習した」(「雨、きゅうり、緑茶」)

「おやすみ、こわい夢を見ないように」角田光代

2006年02月09日(木) 23時15分
おやすみ、こわい夢を見ないように
角田 光代
4104346020

誰もが心の中に持っている他人に対する憎しみ、悪意、それをテーマに描いた7つの短編集です。

ある日気付かぬうちに芽生え、心の内でどんどんと膨らんでいく人の「悪意」や「憎悪」。この本は、そんな悪意に囚われてしまった人、他人の悪意を知ってしまった人などの心情をしつこく、しつこく描いた物語。

読んでいて晴れ晴れとするわけじゃないです。どちらかと言うと、きっちりとした結末がないラスト、この先の主人公が気になる。「Presents」では過去を振り返り今まで自分がもらったプレゼントを思い出しほのぼのとしましたが、こちらは全く逆。 読み終わって見ると、登場人物の持つ「悪意」や「憎悪」って「全然わからない」とは言えない。自分の心の中にもあるけど、普段は「そんなものもっていない」って思い込もうとしている「悪意」について色々考えました。

一番怖かったのは「うつくしい娘」です。子供が心の中にためていく憎悪。わかってはいるけど、それをどうする事もできない。自分が作り出したものだからこそ「いなくなったらいいのに」って思う気持ち。だけど自分の命より大切な存在だから「いなくなったら」って思った自分が憎い。これから自分の子供がどういう風になるのかすごく心配です。私は正しい方向をむいてるんだろうか?って。

そして「住所も名前もわからない、影の薄い女」が所々に登場します。バスに乗り合わせた人に「人を殺しに行く」といってたり、公園のベンチに居座る浮浪者でキックが上手だったり、新しいバイトの子だけど会話には加わらなかったり。そんな謎の女がいつまでも心に残ります。

「青空チェリー」豊島ミホ

2006年02月03日(金) 23時06分
青空チェリー
豊島 ミホ
4104560014

〈女による女のためのR-18文学賞〉読者賞を受賞した「青空チェリー」の他に「なけないこころ」「ハニィ、空が灼けているよ。」の2編を収録した作品集。

豊島さん、最新作からさかのぼってます。この本は単行本で読んだんだけど、文庫本は加筆改定されているらしい。どんな風になってるのか興味あります。

「青空チェリー」は驚きました。1週間に一度ある子供抜きで電車に乗って仕事に行く日。座って読み始めたのです。あれ?隣のおじさん覗いていないか?私の顔見てないか?一応私も生娘ではないので、電車の中で読むのだって平気なはず…「だけどやっぱり」って思って「なけないこころ」を先に読むことにしました。そしたらまた「いつ生理終わるの?」です。R−18文学賞ってこういうジャンルなんですか?

「青空チェリー」はそんなわけで家に帰ってから読んだのです。予備校に通う「あたし」は屋上から隣にたってるラブホを覗くのが趣味。ある日、ついついスカートの下に手を伸ばしてしまいそうになった時、男の子が屋上に来た。目的は一緒らしい。
なんだかアッケラカンとしてますね。「そして次の朝、あたしの八十二回目の生理が始まった。」って文章がすごく好き。

「なけないこころ」人生で最後の恋に落ちたのは12歳のときでした。彼と離れて5年間。二十歳の私は成人式の日に彼をつかまえる為、特別な何かをもっていなければいけない。
彼を思うときの口調がすごく奥ゆかしいのに、実際につかまえる為の特別なものとして友達(肉体関係つき)から色々教わろうと思う。そのギャップがすごくおかしかった。最後まで読んで何かが足りないって気持ちにはなりましたが、文庫本ではそこらへんがかわってるのかもなって、それはそれで楽しみです。

「踊るナマズ」高瀬ちひろ

2006年02月01日(水) 21時30分
踊るナマズ
高瀬 ちひろ
408774793X

「踊るナマズ」と「上海テレイド」の二つの短編。

「踊るナマズ」は主人公がお腹の中の胎児に語りかける少女時代の思い出。14歳の夏、学校の調べ者のため同級生の一真と訪れる元図書館司書水口さんの家。水口さんが語る地域のナマズ伝説を軸として、少女の性の目覚めが語られて行きます。

性に対する興味と恐怖。中学生のそんな気持ちがうまく表現されているなぁと思いました。元司書の水口さんが語ってくれる「ナマズ伝説」体調が悪いから少しずつ語るんです。小出しにされると印象深い。艶かしい雰囲気が倍になります。どこかにありそうな物語。だけどナマズ伝説が性教育って言うのはどうなんだろう?最後も予想してた通りの結末。まとめがちょっときれい過ぎる、美しすぎるって気がしました。ナマズを食べない地方の話はきっと実話ですよね。ナマズって神様の化身だったり、悪者になってみたり、昔から不思議な存在だったんでしょうかね?ナマズって言えばやっぱり「ポーの物語」ですね。「ナマズ」って聞くと「ポー」を思い出してしまいます。

「上海テレイド」は万華鏡作家・由利の所に仕事の依頼に行った主人公が由利に聞かされる物語。愛人だった母、小さな頃から周りの目は冷たく、ひとつしたの弟だけが心のオアシスだった。もってはいけない感情を持ったまま、触れることなく成長した二人。母が亡くなって1ヶ月、就職して家を出ていた弟が帰ってきた。

なんだか読んでいる私は仕事の依頼に行った主人公に同化して、聞き鳴くないけど、だけど気になる。一度読み始めたら最後までとまりませんでした。そして心が不安定になりました。弟への気持ちをもてあます由利。弟を困らせようとするのが子供みたいです。一線を越えてしまったある晩はなんだか「踊るナマズ」の村はずれの女とナマズがもう一度出てきたのか?これはナマズの子孫の物語なのかと思ってしまいました。

「愛がいない部屋」石田衣良

2006年01月29日(日) 22時10分
愛がいない部屋
石田 衣良
4087747905

東京神楽坂に建つ33階建てのマンション「メゾン・リベルデ神楽坂」そこに暮らす10人の女の物語。

年齢は30歳代から60歳代までの女の人(一人だけ男の人でした)。会話のない、一緒に寝ることのない夫婦。DV。夫に先立たれた人。思い通りにいかない育児。どこにでもありそうな満たされない主婦の物語。私の周りにもあるし、私だって「あぁわかる、わかるよ」って思うところは沢山あるんです。普通と違うのは、住んでいるのが東京のど真ん中に建つ高層マンション。住人はそれなりに裕福なんです。そのせいか読んでると「いいじゃない、それでもあなたにはその素敵なマンションがあるじゃない」なんて思ってしまいました。

最近よくある高層マンション。30階建てで各階に10戸入ってたとしたら、300世帯なんですよね。いろんな人がいるんだろうなぁ。都心ではないですが、うちからも高層マンションが3棟見えます。冬の朝、まだ暗いうちに起きたときなんかに窓の外を見て明かりがついてる家があると「お互い早起きだね、きょうもがんばろう!」なんて勝手に思ってます。

今回もさらっとした物語なので、10話のうちいくつ覚えている事ができるかなぁって感じです。石田さんの本はやっぱりIWGPが一番好きだなぁ。

「エンド・ゲーム」恩田陸

2006年01月27日(金) 19時10分
エンド・ゲーム―常野物語
恩田 陸
4087747913

「権力への志向を持たず、穏やかで知的な一族」常野の人々の物語「光の帝国」の中、ひとつだけ「裏返す」か「裏返されるか」やられたら終わりという殺伐とした印象だった「オセロ・ゲーム」のその後の物語。

高校生のとき初めて自分の能力に気がついた時子は大学4年生になった。父親は10年前に「裏返された」きり音沙汰なし。研修旅行に出かけてる母が旅行先で昏睡状態になったっと連絡が入る。母も「裏返されて」しまったのか?冷蔵庫にいつも貼り付けてあった父親が残した電話番号がない。電話するべきか散々迷った挙句電話をし、「洗濯屋」の火浦と出会う。「洗濯屋」とは「包む」ことや「洗って乾かして白くする」事をするらしい。こんな状態から救ってくれるという火浦の手伝いをするため長野に行った時子。

人が沢山集まる場所に極力行かないようにする。呼びかけられても容易に目を見ない。目が合ったときには「裏返す」用意をする。瑛子と時子の二人は一族に距離をおき、「あれ」におびえ、そして「あれ」は自分が作り出した妄想なのでは?と疑い暮らしています。二人が交互に時間も行きつ戻りつする前半部分は「オセロ」のように「白」と思ってたものが「黒」になり、だけどやっぱり「白」…と目が離せませんでした。雑誌の連載だったんですよね。1章ずつ次の号まで「おあずけ」なんて考えられない。

「あれ」が腐ったイチゴに見える母と銀色のボーリングのピンに見える時子。そんな「あれ」や火浦と出会ってから「家」に行く場面は、全然わからない世界なのに目の前に映像が見えます。恩田さんの頭の中にある映像が文章になって、そして私の頭の中にその空間が出来上がる。すごい事です。

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