「Love Letter」

2006年02月27日(月) 22時13分
Love Letter
石田 衣良/島村 洋子/川端 裕人/森福 都/前川 麻子/山崎 マキコ/中上 紀/井上 荒野/桐生 典子/三浦 しをん/いしい しんじ

11人の作家が「LOVE LETTER」をキーワードに書いたアンソロジー。やっぱりすごいですね。こんな風に物語が膨らむのかって思うものばかりでした。これ、キーワードを隠して本にして最後に「キーワードは何でしょうか?」ってクイズにしたら答えられるかなぁ。

「ありがとう」 石田衣良
ありがとう、ミオカ。僕から美丘へのラブレター。

これはもう、まさしく正統派のラブレター。運命的な出会いから、決められていた別れまで。よくある話なのですが、石田さんやっぱりうまい。これが石田さんの短編集になると、うますぎて出来すぎてて何も残らないんですけど、11の物語のはじまりにぴったりの話でした。

「空」 島村洋子
画家になる為スペインに行った彼を待つ妹。そんな妹をちょっと意地悪な目で見ている姉。週1回届いてた絵葉書が途絶えた。スペインに旅立つ姉妹。

絵葉書が届かなくなって、出かけていったスペイン。大家によれば、女が時々来ていたという。その事について「説明してもらわなくていいの?」と聞く姉に「説明してもらいたいよ。だけど問い詰めたら人間って嘘つくじゃん。私、嘘がききたいわけじゃないから、待ってる」って答える妹。強い!大きい!

「ラブレターなんてもらわない人生」 川端裕人
平凡に生きる事が目標の男・茂森幸太。ネット上にシゲモリコウタ宛のラブレターがあった。モデルをやってるゆか?ラブレターを貰った?本当に僕なのか?

「再会」 森福都
高校の同級生がノーベル賞を受賞した。久しぶりに会う受賞者の妻と私。私が昔書いた手紙への彼女からの返信とは。

これは手に汗握る物語でした。じっとりと絡みつく同性の感情の怖さ。もう抜け出す事はできないのね…

「ミルフィユ」 前川麻子
好きになった人には一緒に暮らす恋人がいた。奪うつもりなんて全くない。でも…

前川さん、こうやってアンソロジーに入ってるのしか読んだ事がないのですが、読むたびに胸騒ぎがします。主人公の気持ちに入り込みすぎちゃって怖いのです。自分の中にある「悪魔」が大きくなって言っちゃうって言うのかなぁ。ラストの手紙も「そんな事して…」って思う反面「やってくれるじゃない!」って。私危ない?

「音のない海」 山崎マキコ
性的虐待を受けて育ち、虐待をされることでしか愛を確かめられい女性の一人語り。

これは辛い物語です。現実にある話だと思いますが、こんな形の「ラブレター」はいらない。辛すぎます。

「水槽の魚」 中上紀
リビングにある水槽の中の魚が羨ましい女。アジアの国の美しい湖に旅をする。

「虫歯の薬みたいなもの」 井上荒野
偶然会った中学の同級生から聞いた、昔ちょっとだけ付き合った男の子の噂。十三年ぶりに訪れる少女時代を過ごした町。

「竜が舞うとき」 桐生典子 
オーロラを待っている君。君に捧げる手紙。

これは石田さんの逆パターンですね。哀しさの中にある光が見えるラストなんだけど、石田さんの後じゃぁどうも…もったいない。「きみ」に語りかけてるのが誰なのかがわからないまま物語が進んでいくので、ちょっと判りにくかったような気がします。

「永遠に完成しない二通の手紙」 三浦しをん
僕の部屋で好きになった女の子に手紙を書く寺島。

最初の文章が「すべてが滅菌されそうなほど、寒さの厳しいある昼下がりの事だった」です。滅菌されそうなほどの寒さって…しをんさんの世界が広がっています。好きだなぁ。「再会」のようなねっとりした感じがなくていいです。「俺がずっと一緒にいるよ」の台詞には私も「え?」でした。うまいなぁ。

「きまじめユストフ」 いしいしんじ
手紙泥棒の男。盗んだ手紙に蒸気を当て開封して、お金を盗んだり、詐欺を働いたりしてる。ある日盗んだ手紙の一つが幼馴染が出したラブレターだった。

いしいさんらしい、独特な世界。主人公の名前がザミャーチンで幼馴染がユストフですから。ここじゃない、だけどどこかにありそうな場所。いしいさんの本って読んだ後、頭の中にそれぞれの話の世界がいつまでも残っていて、何かの拍子にひょっこり現れます。
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