なぜカレー屋のテーブルにはチリペッパーもコショウもないのか

2008年06月04日(水) 22時55分
うどん屋には七味が、ラーメン屋にはコショウが、トンカツ屋にはソースが、たいていテーブルの上にのっている。しかし、なぜかほとんどのカレー屋のテーブルにはチリペッパーもコショウもソースも(これはワシはいらん)ましてやガラムマサラもない。なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜ! カレー好きでよくカレー屋に入る私は、どうも納得がいかん。そういう店もたまにはある。しかし、なぜたまに、なのだ? ときどきとてつもなくそれらをふりかけたくなるのは私だけでしょうか? あなたもそうじゃありません?

そこで私は独自にその理由を考えてみることにした。

自信過剰説
カレー屋は自信過剰なのではないか? 自らの味にあまりに高いプライドを持っているために、その味を客が「いじる」など許しがたいのではないか?英国風、インド風、日本風などいろんなカレーはある。しかし、「大阪カレー」「東京カレー」などというご当地カレーはあまりなく、ラーメンとは大違いなカレーだが、それは「外国料理ですから」、「シェフが作っておりますもので」などという、カレー屋には庶民が食べるものとは一線を画したいというプライドがあるかもしれないではないか。帽子がその証拠だ。だけど、今どきカレーとラーメンでは値段もほぼ互角だよ。

発展途上説
いや、ひょっとするとカレー屋はたんに「まだ気がついていない」だけではあるまいか? 「しもた甘いカレーや」と思った客がチリペッパーなりコショウなりをかけたいと思っていることを。だったら教えてやらねばなるまい。伝統あるうどん屋やラーメン屋ではすでに常識になっていることが、新参のカレー屋にはまだつかめていないということも十分にありうる。レシートの裏にそっと書いてあげるというのはどうだろう? いや、裏では見ないだろうか。付箋紙に書いてお皿の下に貼っておき、片付けるときにはじめて発見、読んだ店主はああこんなかんたんなことになぜ今まで気がつかなかったのだろうとオノレを恥じ、ああこんなスバラシイことを教えてくれたさっきのお客さんありがとうありがとうありがとうとチリペッパーとかコショウを置くことになるのではないか?

経費節約説
それともカレー屋はケチなのかもしれない。カレーという手間ヒマかかる料理を供しているわりに値段が安く、また、ジャガイモだのニンジンだのタマネギだの肉だのと材料もたっぷり使うし、しかも何種類かのカレーを作り、その上じつはあまり得意でないトンカツとかチキンカツとか最近はから揚げとかのアゲモノまでし、場合によってはサラダまで作らねばならず、あまりに儲けが少ないために、うどん屋でもかけ放題の七味、ラーメン屋でもかけ放題のコショウ、その一瓶をテーブルに置きたくでも置けないのかもしれない。だとしたら可愛そうじゃないか。泣けるじゃないか。ケチなんて言って悪かった。ごめん。福神漬けだけでもその減り具合をビクビクしながらしょっちゅう見て、ああまだ残ってるなんてホッとしてたんですね。私はラッキョの方が好きなのだが、ラッキョだといくらでも食べれてしまって、だからラッキョ置いてるところは少ないんですね。「コショウ一振り5円」とか書いてあったらあまりにさみしいなあ。

存在論的問題説
ひょっとするともっと深いわけがあるかもしれぬ。調味料をテーブルに置いてしまったとたんカレー屋の存在そのものが成り立たなくなるような、深遠な理由があるやもしれぬ。いくつかの調味料をテーブルに置いてしまったとたん、もうカレーの「専門店」たりうる存在意義というものは胡散無償してしまい、なあんだコレ降るとあそこのカレーの味になるじゃん的な、実はコクとかウマミとか以前の、たんなる辛けりゃいい、カレーが食いたい、麺じゃなくてゴハンを大盛りでトンカツのせて、という客がかなりを占めているという絶望的な事実をつきつけられたカレー屋が、カレー屋をたたみたくなってしまうということがあるために、秘密のカレー屋団体がテーブルに調味料を置くことを禁じているのかもしれない。コショウとかガバガバかけられた日にゃあカレー屋やってられませんわとタマネギ刻みながら涙ながらに語るカレー屋の姿が浮かぶ。コショウなど置かない、それはカレー屋のギリギリの存在意義をかけたプライドなのだ。七味なんて置いてしまえば立ち食いうどん屋のカレーと同じになってしまう、どこがカレー屋やねん。

アホ客事件説
待てよ。うどん屋で七味を一瓶降るバカはあまりいない。ラーメン屋でコショウを一瓶かけるアホもおらんやろ。しかし、ひょっとするとカレー屋でチリペッパーを一瓶かけるヤツ、コショウを一瓶かけるヤツはゴロゴロいるのかもしれないぞ。世に何倍とかいう辛さ表示があり、オレは20倍に挑戦したとか自慢するヤツがいるが、ああいうのが存在しているということは、一瓶ヤロウだってきっと存在するに違いない。カレーを食うのがイベントだと思ってるのだそいつらは。そうか、きっとそういう心ない一瓶ヤロウのために、何度かサービスとしてテーブルに置かれたチリペッパーやコショウは一日でカラになってしまい、しかも店で吐くヤツ、真っ赤になって倒れて救急車を呼ぶヤツ、はては火を噴いて消防車までやってくるといった事件が次々に起こり、そのようなサービス精神は封印されてしまったのだ。

なぜテーブルにチリペッパーもコショウもないか。これでよくわかった。カレー屋の複雑なプライド、アホな客たち、その渡来の歴史性とイベント的な性格、それらが複雑に絡まりあってその不在を物語ったのだ。
だが、おそらくこの不在の物語はまだまだ奥が深い。
私はしばらくこの不在の物語をより詳しく調査し、いつか一冊の本にまとめ、世に問う予定である。
そして世のカレー屋が安心してテーブルにチリペッパーやコショウを置ける、そんな世の中にしたいと思う。
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