たけしの頭の中

November 23 [Tue], 2010, 3:00
次元さんにお借りした『TAKESHIS'』のDVDを観た。
2005年公開の映画で、監督・脚本・編集・主演を北野武が務めている。

芸能界の大物・ビートたけしは、ある日テレビ局で
自分と瓜二つの売れない俳優・北野と出会う。

…と、物語のあらすじとして活字にできるのはこの2行くらいで、
それ以降はただひたすらに「たけしの頭の中」が
ストーリーや整合性を無視して展開していく。
俳優のオーディション、偏屈なラーメン屋、タクシーの運転手、
銀行強盗、拳銃でドンパチ、タップダンスやDJ、
それはもう散らかり放題である。
だから普通の映画だと思ってストーリーを追ったり、
作品の意図するところを何とか理解しなければ、
と思いながら観たりしてしまうと、
なおのこと本作は楽しめなくなってしまう。
我々は「これは北野武の『夢』なのだ」
とある程度開き直ってその場面場面を楽しみ、笑う、
くらいが丁度いいのかもしれない。

オチから言ってしまうと全て「夢」、ということになってしまうのだが、
北野武のすごいところは、
これほどとっちらかった夢というか映像を
頭の中に思い描いている、ということではなく、
むしろそのとっちらかった頭の中をしっかりと一つの作品にまとめ、
実験的ではあるがエンターテイメントとして具現化し、
提供できる能力、それに尽きると思う。
誰だって夢の中では突拍子もないことを思いつくし、
才能と勘違いできそうな思考の飛躍だってできるのだが、
いざそれを語ったり映像にしたりすると
案外つまらなくなってしまうものである。
だって夢でしょ、でお終いだ。
ところが北野監督は、彼の頭の中を開陳して、
こちらを楽しませ、笑わせてくれるのである。

北野自身「観ている人を逆なでするような映画にしたかった」
と語っているように、分かり易くて後味がいいとは
とても言えない映画ではある。
が、北野武という映画監督がどのような人物なのかを把握する上では
非常に重要な作品なのではないか、と思うのである。
『HANA-BI』などに代表される巨匠、とは別の、
一流の亜流を撮り切るもう一つの彼の魅力が、
この作品には詰まっている。

そしてこういう映画は、観た後に「あの映画ってどうだった?」
と観たことのある人と色々しゃべりたくなる、
そういう魅力も持っている。
次元さんと会うのが楽しみだ。
  • URL:https://yaplog.jp/mayonakabodo/archive/1236
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次元
ああ、とうとう見てしまいましたか!(笑)
感想を活字にするのがこんなにも困難な作品は、そう無いと思います。
この作品を初めて見たのは公開初日の舞台挨拶付き上映のときだったのですが、あんまり寝ずに行ったんですよ。
でも、ある程度ぼーっとした頭のままで見てたのが、却って良かったなぁと思いました。
上映後、舞台挨拶のために登壇した岸本加世子が客席の様子をじっと確認したあとに神妙な真顔で「もの凄い映画を目の当たりにしてしまった、という感じが客席の皆さんから伝わってきます」と言っていたのが忘れられない。

彼の映画以外の作品・テレビ番組も含めて、私が接した彼の作品の中で、
人間「北野武」を、これほど生々しくさらけ出しているというか吐露している作品は無いです。
だから「人間」北野武に興味ある人には、どうしても手放すことができない作品なのではないか。
実際、私など何回見たか分からないくらい見てます。
で、毎回、ぐったりと疲れてしまう。

この作品、グロテスクなシーンは無いのに、どこか、グロテスクな映画を見てしまった後のような感覚に陥る部分が私の中にはあります。
一つひとつが強烈過ぎるんですよね。
寺島進扮するチンピラに「お前なんかオーディション受かるわけねーだろ、早く行け!」って蹴られるときの武の表情とか、もう見てられないくらい鬱の顔です。
周りをほとんど敵に囲まれて銃を向けられて「どうする?」と言われて、それでも無我夢中で撃ちまくるラストシーンとか、
精神的にどこか追いつめられていないと撮れないと思います。

「座頭市」のあとの「TAKESHIS'」、
きっとまた振り子が大きく逆に振れたんだな、という印象です。
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