「大洪水よ、わが亡きあとに来たれ」
2009.11.30 [Mon] 18:25

なかなか更新できず、大変お待たせしました‥。
しかも、実は第1回目の最後のお話の紹介がまだでした

というわけで、第1回目「大学時代にマルクスが必読な理由」の続きで、最後の部分です。

マルクスの自然観と社会観を話した不破さんは、マルクスの目でみた現代資本主義について話を続けました‥

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不破さんは、「私は資本主義が生み出し、いま経験している害悪は3つあると思うんです」と切り出しました。

「一つは格差と貧困です」

「これは資本主義の最初から付き物なんです。私は資本主義は利潤追求が目的だと言いました(利潤第一主義)。まさに利潤というのは労働者をできるだけ安く雇用して、できるだけ多くの生産をさせます。その差額から利潤は生まれるわけです」

資本家が労働者を雇うことでもうけがうみ出される仕組みについて、サラリと解説した不破さんは、「大洪水よ、わが亡きあとに来たれ」(※)ーーマルクスが『資本論』で述べたフランス革命のころの貴族の言葉を紹介しました。

「これが資本家の合い言葉だったんです。マルクスはどういうことを言いたかったのか」

「イギリスで資本主義が発展するなかで、労働者を働かせるほど儲かるということがわかると、資本家は、労働者が体を壊して、いなくなってしまうこともわかっているのに、労働時間を限りなく延長するんですね」

「マルクスは、これは資本家の個人のいい悪いじゃない、資本家の競争がそうさせている、それを止める力があるのは社会が強制する時だけだ、そういうことを言っているんですね」

「でも、マルクスは資本が搾取するのは当たり前だから、とことん搾取をさせて、みんな怒って革命を起こそうーーそんな単純な議論をしなかったんですよ」

「そういう資本の搾取に対してたたかって社会の強制で制限しよう、そういうものを勝ち取ってこそ労働者階級は強くなる、『社会の強制』資本論のある部分では『社会的バリケード』という言葉を言っているんですね」

「それをなぜ言ったか」

「実は、マルクスの目の前でイギリスの労働者階級が、長い間闘って10時間労働制を勝ち取ったんです。資本家が無制限に時間延長するということがなくなりました。勝ち取った労働者階級が、いまの社会での生活も守れるし、強い階級になれる、マルクスはそう思ったんですね」

「だから、現在の私たちも『貧困と格差』のない社会をめざしますが、それを待って黙って見ているんじゃダメなんです。『社会的バリケード』を闘って勝ちとらないといけないーーこれがマルクスの見方で、これが世界では広範に広がっています」

「それから二番目の害悪、これは恐慌です」

「リカードが恐慌は起こらないと言ったのは経験しなかったからじゃなく、市場経済にはそういうものを調節する力があると思っていたからなんですね。実際、長い目で見ると、需給を調節する作用があります」

「ところがマルクスはそれをもっと分析したんですよ」

「ごく簡単にいいますとね、資本主義は労働力の売り手としての労働者は出来るだけ生活我慢させる、安い賃金で働かせようとする。ところが、自分の商品の買い手としてくる労働者にたいしては出来るだけ豊かであってほしいと思う。それで豊かであることを計算してものをつくる」

「つまり、生産で発展する時と自分が生産する時に労働者に対する態度と市場でものを売る時の態度で全然矛盾しているっていうんです。この矛盾に恐慌の根源がある。それから市場の調節作用についても、これは穴があるんだと。資本主義経済にはその矛盾に応じて過剰生産を生み出している仕組みをね市場自身がもっているんだということを詳しく分析しました」

「ところが、資本主義側の経済学は資本主義の深刻な矛盾を認めるわけにいきませんから、いろんなことでゆれるんですね」

「今まで、私たちが経験した資本主義派の経済学の大きな流れが二つありました」

「一つはケインズ派の経済学」

「それまでは資本主義の国家は経済に手を出さないのが原理原則でした。ところが、1929年の大恐慌が世界を揺るがした時に、アメリカのルーズベルト政権が大規模な国家による経済への介入をやりだしたんです。それをみていたケインズという経済学者が、国家の財政支出で消費を増やせば恐慌が起きない、そういう経済学を発表したんですね」

「これが第二次大戦後からの指導理論になりました」

「日本ではケインズ流だと言って汚職にまみれた公共事業経済をつくりましたが、ケインズ経済学は世界的に広がって国の支出で恐慌を回避する、恐慌の程度を回復するにはかなり役立ちました」

「しかし、これはお金がかかりすぎて国家財政が破綻します。1970年代に、アメリカが音を上げたことが転機でケインズ経済学は、資本主義の指導理論じゃなくなりました」

「変わって出てきたのが、新自由主義という経済学」

「これは新版のリカード理論で、ケインズは市場経済を信用しないで国家が経済に手を出したから失敗した、市場経済に任せておけば心配ないという理論を唱えて、金融経済中心のやり方を、世界中に押しつけたんです。それが失敗しました」

「いま、新自由主義に代わる経済学が、あまりありそうもないんですね。だから、資本主義は経済学のうえでもピンチになっている。これも、資本主義体制の非常に深刻な問題であります」

それから3番目の問題は、環境問題です」

「これは資本主義のいま言った二つの害悪よりも、もっと深刻かもしれないですね」

「地球温暖化といいますけれども、これ何が問題化といいますと、地球大気が危ない訳ですよ」

不破さんは、まず二酸化炭素がいまの数百倍もあった原始地球が、海の中にうまれた生命がはき出した酸素によって、31億年かけて、生命が地上で暮らせるような大気に改造されてきたことを紹介。

「だから私は、この大気は生命が作り上げた生命維持装置だと言っています」

「その大気が、人間が400万年生きていても、16、17世紀までは普通だったんですが、18世紀に起きた産業革命で生産が急上昇してから、二酸化炭素の量がだんだん増えだしました」

人間が地球上で使うエネルギー(石油に換算)は、18世紀の産業革命の頃とくらべて、19世紀にマルクスが『資本論』を書いた頃には30倍に、20世紀の世界大戦が終わった頃には約400倍に、いまは約4000倍に急上昇していると、不破さんは指摘しました。

「とくに最近こうなっているというのは、大量生産、大量消費、大量廃棄というアメリカ式生産様式というのが大きいんですね。日本は、ヨーロッパに比べてアメリカ的な生産、生活様式が一番影響されていますよね。だから、消費が美徳になっちゃってますね」

「エネルギー消費のカーブが示しているように、主犯は資本主義なんです」

「それまで社会体制はいろいろあったけれども、こんなに急速に不必要に生産を増やしてきた体制はありませんでした。マルクスは『生産のための生産』が資本主義の合い言葉だと『資本論』で書いていますが、それが現実に、ここまできてしまいました」

「だから、これを資本主義が解決する力がなかったら、資本主義に地球の管理能力がない。まかせておけないという結論が地球規模で出されることになるんですね」

「ですから、これにどれだけ取組めるかということが、いわば資本主義に存続能力があるかどうかが問われるわけです」

「だからそういう点で見て、格差と貧困、恐慌、温暖化ーーこの3大害悪がここまできているということは、16世紀に生まれた資本主義が、今のままではやっていけない時代を迎えているということを示していますし、それを一番、象徴しているのが温暖化だと思うんですね」

「こうした害悪は、資本主義がもっている利潤第一主義の結果なんです」

「だから、私たちは、社会主義が問題解決の道だというのは、それが利潤第一主義から解放されるからです。つまり、生産力が発展し、経済がこれだけ高度に発展した土台のうえに、経済活動が人間の生活のために働くという本来の姿にに戻る道だということ、そういう点を考えてみてほしいと思います」

「この点については、第二回目にお話します」

「以上、自然観につづいて、マルクスの社会観のあらましをみましたが、これは、本当にごくあらましです。こういうマルクスの見方が、120何年経っても現代に生きる力をもっていることを、あらましでも感じて頂ければ、今回のセミナーの目的が達成したと思います」

そう話して、不破さんは第一回目の講演をしめくくりました(第二回目につづく)。

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※「資本論」第一部(1巻)、第三篇第八章「労働日」、第五節の「標準労働日獲得のための闘争。14世紀中葉から17世紀末までの労働日延長のための強制法」(社会科学研究所監修、資本論翻訳委員会訳、新日本新書版、第2分冊、P.464)

「どんな株式思惑においても、いつかは雷が落ちるに違いないということは誰でも知っているが、自分自身が黄金の雨を受け集め安全な場所に運んだ後で、隣人の頭に雷が命中することをだれもが望むのである。“大洪水よ、わが亡きあとに来たれ!”(注)これがすべての資本家およびすべての資本家国民のスローガンである。それゆえ、資本は、社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と寿命にたいし、なんらの顧慮も払わない。‥しかし、全体として見れば、このこともまた、個々の資本家の善意または悪意に依存するものではない。自由競争は、資本主義的生産の内在的な諸法則を、個々の資本家にたいして外的な強制法則として通させるのである」

注)「宮廷の奢侈が財政破滅を招くと忠告されたときに、フランスのルイ15世の愛人ポンパドゥール夫人がノアの洪水伝説にちなんで言った言葉の言い換え。デュ・オセ夫人『回想録』、序文、19ページ。『あとは野となれ山となれ』の意」
 

マルクス「資本主義は歴史の一段階」
2009.11.05 [Thu] 15:39

第一回公開セミナー「大学時代にマルクスが必読な理由」の様子。「マルクスの社会観」のお話のつづきです。

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ある社会をみるときに、それは人間社会が発展するなかで取っている歴史の一形態だという見方をしたマルクス。

「そうすると、やはり経済学で研究する目的も違うんですね」

「資本主義の仕組みと原理をつかみ出そうというのが経済学の出発点でしたが、スミスやリカードは若い時代の資本主義の人で、恐慌を知りませんでした。だから、恐慌がヨーロッパを巻き込んだ問題になったときに、大先輩であるスミスやリカードを探しても、恐慌を解明する理論がありませんでした」

「それでも、資本主義の枠の中でもっとうまい経済の動かし方があるんじゃないか、そういう方向ばかり探求する、いわば現象論的な経済学者もいます」

「しかし、マルクス経済学は違うんですね」

マルクス経済学は他の経済学と、どう違うのか?

「マルクスは、資本主義というのは歴史の一定段階だと見ていました」

「だから、この資本主義という仕組みが経済の発展段階にふさわしいやり方で、だから封建制にあり得なかった大工場とか機械とかをうみだしえたし、それを生み出すところに、資本主義の使命があるとみていました‥資本主義が『悪』だというのではなしに」

「しかし、『資本主義さらに発展していくと矛盾が大きくなり、その枠組み自体が古くなる。そうすると、いままで社会が変わってきたように、変わらないといけなくなる』ーーそこまでちゃんと見抜いたのが、マルクス経済学でした」

「そういう目で資本主義をとらえているから、恐慌という現象が起きたときにも、それがなぜ起こったのかを研究し、どんな矛盾が現れているかもつかむ。そして、恐慌が起きると、人民はうんと被害をうけますから、どういう闘いをしなきゃいけないかを明らかにしました」

「そして『恐慌なんかに見舞われないような社会をつくることが、いよいよ日程にのぼってきたんだ』というふうに、マルクスはとらえました」

「ちなみに、マルクスは、最初に3〜4回恐慌を受けた時に、いよいよ資本主義がやるべきことをやり尽くして、その次の段階が来る時代が始まったと思い、1848年に最初に革命をやった時にはもう、その気になっちゃったんです、彼も(笑)」

「しかし、そうはいかなかった。それからヨーロッパでは資本主義の大発展が始まったのです。マルクスも間違えるときがあるんですね」

「資本主義は19世紀、20世紀をものすごいスピードで発展していきました。そして、21世紀です。いま資本主義の矛盾は、どこまで来ているのでしょうか‥」

不破さんのお話は、現在の貧困と格差、恐慌、温暖化問題をどうみるのか、へつづきました‥
 

誰のための働くのか?
2009.11.05 [Thu] 14:26

不破さんの第一回公開セミナー「大学時代にマルクスが必読な理由」の様子の続きです。大学時代にマルクスを学ぶ意味、マルクスの自然観(唯物論と弁証法)について話した不破さんが、次に話したのは「マルクスの社会観」です。

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「マルクスの自然観は唯物論と弁証法。これは社会観にも適応されますが、独自の問題があります。私はマルクスが社会の見方に持ち込んだ新しい見方が、大きくいって3つあると思うんです」

「一つは社会の土台にあるのは経済であるということです」

「ものを作る(生産)、ものを運ぶ(運輸)、それから、そのつくったものが誰の手に入るか(分配)、そしてその中で人間同士がどんな関係を結ぶかーーこういう経済関係が社会の土台にある、という考えなんですね」

「二つ目は、社会は交替するということです」

「これまでの歴史の中でも原始共産制、奴隷制、封建制、資本主義と…いろいろな社会が交替して歴史をかたちづくってきた。これからもそうなるだろう、この見方です」

「三つ目は、その社会の動き、人間がいろんな集団を作って動くけれども、主役をなすのは階級だ、ということです」

「私はいまの現在で言うと、どの点をとってもですね、ごくごく当たり前な見方だと思うんですよ」

「例えば国会の論戦一つとっても、何かある政策を取ったときに、どの階級にプラスになりどの階級にマイナスになるか、それが一番の問題になるでしょう。ま、メディアでは簡単には『階級』とは言いません。でも、財界とか、立派な階級なんですよ、彼ら(笑)」

それから、不破さんは、日本の特徴にもふれながら、国ごとに歴史は違うけれど(というか、歴史が違うのに!)、それぞれの国や地域が相互に共通する特徴をもちながら、おおまかには「原始共同体→奴隷制→封建制→資本主義」という変化、発展をとげていることを詳しく話しました。

「(マルクスの)この見方そのものは過去の歴史も現在の社会の実態も無数の例証をもっていると思います」

では、マルクスの社会観で見ると、何が見えてくるのか‥?

「ある社会をみるときに、それは人間社会が発展するなかで取っている歴史の一形態だという見方が、マルクスの経済学の凄い力を与えたんです」

として、不破さんは、

「誰のために働くのか」
「誰のための経済なのか」

について、資本主義とそれ以前の社会を比較しました。

「資本主義がはじまったのは16世紀。400万年の人間の歴史から見れば、本当にわずかな期間です」

「資本主義社会にいますと、誰かに雇われて働いて労賃をもらうのが当たり前でしょう。しかし人間は最初から他人のために働いて賃金をもらっていたのでしょうか」

「原始の時代には、自分たちのために働いて、その成果が自分たちのものになるのが当たり前でした。封建時代だって、年貢以外は、自分で働いたのだから自分のものにする。…自分の働く力を他人に売ってお金にするというのは、ごくごく最近の出来事なんですよ」

「それから、いまの日本とか資本主義世界では経済活動をやるのは、利潤を増やすためだ、というのが当たり前のことになっています」

「人間が自分の社会と生活を満足させるために働く、これが人間社会の当たり前のことであって、利潤が経済の目的になったのは16世紀以来のごくわずかのことなんです」

不破さんのお話は、マルクスの経済学のお話へつづきました‥
 

エンゲルス「世界はプロセスの複合体」
2009.11.03 [Tue] 11:15

「マルクスは生きているセミナー」第1回目「大学時代にマルクスが必読な理由」の様子についての報告の続きです。

マルクスの自然観のお話の続き、キーワードの二つ目「弁証法」についてです。

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「弁証法ついて、マルクスは教科書を書きたいと言っていて、エンゲルスはマルクスの死後、その教科書の原稿が残されているのではと一番に探しましたが見つかりませんでした。マルクスでも簡単には書けなかったのが弁証法です」

「弁証法とは、モノを見る方法論のこと」

「一番大事なことは、エンゲルスが言うように『世界を出来上がった物事の複合体としてとらえるのではなく、進行しているプロセスの複合体として世界を見る必要がある。一見、不動のものに見えているものでも、そのなかには運動があり、生成と消滅の過程がある。全体として前へ前へと進む発展がある。そういう全体としてプロセスがある』と世界をとらえることです」

「『全体で、自然を歴史の発展のなかでとらえることが大事』とエンゲルスは言いましたが、この方法論も見事に証明されました」

「私が東大理学部にはいった頃は、歴史が問題になる学問はほとんどありませんでした。宇宙、天文、地球物理‥ここでも、第二次世界大戦後、大きな変化がありました」

として、不破さんは二つの本を紹介しました。

「一つは、私が大学3年のときに出版された『宇宙と星』」

「‥水爆実験に熱核反応が使われましたが、それが天文学で太陽が燃えるエネルギーの元だと発見されたんですね。太陽が燃えているのは、水素が燃えてヘリウムになる熱核の反応の連続であるとわかりました。それがわかると、どんな星についても生成と消滅の歴史がわかるようになったんです」

「これで、星の一生が全部わかるようになりました。そのわかった原理がミクロの世界、原子核のなかにはいって研究した物理学で星というマクロを見た‥その連関にも驚きましたけれど、これはまさに自然に歴史があることの証明です」

「もう一つは、1971年に出版された『新しい地球観』」

「地球には40億年以上の歴史があるが、こと最近2億年くらいのなかで大陸が動いていることがわかりました。‥もともと地球の南側に大きな一つの大陸をつくっていって、地殻の運動を反映しながらだんだん(いまある大陸に)分裂していったことがわかり、いまでは大陸をしょって動いているプレートの相互作用で地球の歴史を見るということが確立しています」

「エンゲルスの時代には『自然科学に歴史あり』という見方は達見だったが、いまはまさに自然科学は歴史ある学問に変わってしまいました」

「もう一つ大事なことは、われわれのその認識の発展も歴史だということです」

「日本ではノーベル化学賞とった人、物理学の受賞が多い。その受賞者は共通してミクロの世界の研究者なんですね。日本の物理論の一つの特徴として、一つ注目しているのは強固な方法論があることです。益川さんは以前から『自分が唯物論、弁証法だ』と言っていたが湯川(秀樹)さん以来の伝統なんです」

「その大本にエンゲルスがあります」

「しかし、エンゲルスが生きていた時代は、ちょうど原子が見つかった頃なんです。その頃に、エンゲルスは『原子で行き止まりじゃない。この現象の奥に何があるか探求して、次にいったらその次にいく、分割しながら研究していく、その長い段階の一段階(結節点)だと。この段階をすぎると物質のあり方が違ってくる。質的な存在様式が違ってくる』ーーそこまで言っていました」

「エンゲルスが死んだあと、そのことはハッキリしてきました」

「ラジウムが発見されて、エネルギーは放出されているが、いままでの法則にあわない。それが物理学を覆す言うことで危機と言われました。そのときレーニンが『今の法則が通用しなくなったからといって法則がなくなったわけではない、物質のあり方が変わったから問いって物質がなくなったわけではない』と指摘しました」

「やがてその方向で問題が解決され、ニュートン力学とは違う量子力学という分野ができました」

「いまでも、突っ込んでいく度に生まれる壁、混迷が絶えずあるわけです。ノーベル賞を受賞した小林さん、益川さんは、素粒子のその奥にクォークがあることを証明して、ミクロの世界にもう一つ入り込んで混迷を解決しました」

「日本の物理学はマルクス・エンゲルスの見方を自然をとらえることだけではなく、学問の世界に方法論として生かしている珍しい例ですね」

「このようにマルクス・エンゲルスがつかんだことが実証されている。みなさんがいろいろな分野を研究される場合に、マルクスの自然観をつかんで、、現代の自然観にいかして、それぞれの分野をつくりあげてほしい」

不破さんは、学生に熱いメッセージを語って、話は社会観へとうつりました‥(つづく)。
 

みんなマルクス流になってしまった!
2009.11.02 [Mon] 17:35

不破哲三さんをまねいた「マルクスは生きているセミナー」。10月30日(金)におこなわれた第1回目「大学時代にマルクスが必読な理由」の様子についての報告の続きです。

大学時代にマルクスを学ぶ意味を、大きく2つの点について話してくださった不破さん。話は、自然観の話へうつりました‥

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マルクスの自然観をとらえるキーワードは「唯物論」「弁証法」。

「今はあまり『唯物論か観念論か』と議論にはならないですが、我々の時代には、政党選択よりも、この世界論の選択が大事、というくらいでした」

「唯物論は『物質があって精神や意識をうみだした』という見方」
「観念論は『精神や意識が先にあり、それがうみだしているのが物質』という見方」

この「唯物論か観念論か」が、いまあまり議論にならないのはなぜか?

「自然があって、そこから人間がうまれたということはあまりに当たり前になってしまった、ということに違いがあるのではないでしょうか」

では、なぜ違いがうまれてしまったのか?

「マルクスの時代も同じですが、『自然科学の発達』があります。人間の生命、意識の問題は物質から説明できないということが、観念論の論拠でした」

「意思の自由は説明できるのか」
「生命の神秘は説明できるのか」

と。

「19世紀にマルクス、エンゲルスは、生命や精神とは何かについて『生命はタンパク質の存在様式である』(『自然の弁証法』『反デューリング論』)だと、ズバっといいました。まだ、ここに科学的な解明がない時代だったのに、です」

「私が大学の時代にも科学的な解明はまだなかったが、その後、科学的な答えが出されました」

として、不破さんは生命論の分野についてDNAの構造の発見(1953年)、精神活動の分野では「ニューロン』ネットワークなどの構造の解明、の二つの事例を詳しく紹介しました。

「そして、こうした科学的な発見や解明の結果、精神や生命の分野にも観念論の入る余地がなくなり、唯物論の立場をおおまかにのみ込んでしましました」

「みんなマルクス流になってしまった」
 !!!!!


不破さんは、つづけて、唯物論か観念論のどちらの立場にいるのかを確かめる「3つの質問」を紹介しました(質問に「○」ならば唯物論の立場)。

「あなたは、人間がうまれる前に地球があったことを認めますか?」
「あなたは、人間がものを考えるとき、脳の助けを借りていると思いますか?」
「あなたは、他人の存在を認めますか?」

「いまならほぼ誰でも、この質問に"○"と答えるだろうが、オカルトを信じたりするなど落とし穴がある。なりゆきまかせ、大ざっぱな唯物論ではなく、自覚的な唯物論者になることが大事」

「マルクスの唯物論を自覚してほしい」

‥お話は「弁証法」のことへとうつりました‥(つづく)
 

マルクスを読む自由はあるが
2009.11.01 [Sun] 11:55

不破さんの第一回目の講演の様子についての報告の続きです。

‥といっても、これは、実行委員会が聞いたものを独断と偏見で(?)紹介していますので、聞き間違えているところもあるかもしれませんどうぞご了承ください。

と、言い訳はさておき(笑)本題へ。

不破さんが東大の学生として過ごしたのは、戦後直後の1946年〜53年。

「そもそもマルクスの本は、45年8月の終戦まで危険思想の中の一番ヒドいものとして扱われていた。例えば、スタンダールが書いた『赤と黒』という本を持っているだけでつかまった。赤は共産主義、黒は無政府主義、そんな題名の本は危険だ、と。しかし実際は赤は軍服をさし、黒は僧服をさしていた。そんな時代でした」

「戦争が終わり、書物を読む自由がやってきた。待ち望んだことだった」

マルクスがようやく自由に読めるようになったばかりの時代にマルクスに親しんだ不破さん。そんな不破さんからいまの日本社会のマルクスへの接し方を見ると‥

「時代は変わり、マルクスへの接し方も変わっている。買うのも自由。読むのも自由」

「しかしその当時から共通していることもある。それは、体制側の人にとって、若い人たちに読んでほしくない本であるということ。昔は大学にも、マルクス経済学と近代経済学、それぞれ学者がいたが、今では、あまり大学でマルクス経済学そのものに触れる機会は少ない。買うのも自由、読むのも自由であるが、触れる機会は昔と比べて少なくなっている」

「マルクスはもう『古くなった』『死んだ人』」

と扱われている、と。

「確かにマルクスは1883年に死んでいる。しかし、マルクスの死後126年の間に、自然の見方でも社会の見方でも『なるほどその通り』と実証されたことがたくさんある」

‥話は、マルクスの自然観、社会観に続きました。
 

世界を丸ごととらえるためにマルクスを
2009.10.31 [Sat] 17:34

昨日は550人の参加で無事に成功することができました!2時間以上にわたった公開セミナーにご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました

さて「大学時代にマルクスが必読な理由」と題した今回の不破さんのお話。途中、DNA螺旋の図など(スラスラとキレイに!)を板書しながら、わかりやすくお話しいただきました。

「この世界を、丸ごと全体として捉えるために、
 マルクスを読んでもらいたい」


と講演の最初に、こう断言した不破さん。

なぜ丸ごと捉える必要があるのか?

「人間として、我々はこの世界で生きていくことになる。21世紀は歴史に残る激動の世紀となる。若い世代はまさにこの激動の時代を生きていく人びと。その人たちが、目先のことにとらわれて、ただ闇雲に生きていくだけでいいのか。ぜひ、この激動の時代を、生きがいのあるものにしてほしい。マルクスを読むことが、大きくかかわる」

「学問が細分化されている。自分が学んでいる分野が、我々が生きている世界のどの部分になるのか。社会全体を捉えて自分の専門も深めてほしい。自然、そして社会の全体をつかむことが大事。マルクスと、その盟友のエンゲルスは、彼らが生きた世界の、知識の全般をつかむ努力をした。学生という、勉強することが仕事の時期に、ぜひ、マルクスを読んでほしい」

と話したうえで、⑴マルクスの自然観、⑵マルクスの社会観、について講演しました。


…まだまだ紹介したいこといっぱいの不破さんのお話ですが、いっきに全部紹介すると長くなるので、ちょっとずつ紹介していこうと思います



ちなみに、講演会後、こんな感想が寄せられました。

「単なる主義ではなく、一つの大きな体系としてのマルクスの思想が伝わった。一つ一つは漠然と知っている事柄だったが、不破氏の説明によって新たに整理された気がする」(東大文T・1年)

「とにかくマルクスの世界をとらえる際の視野の広さが伝わってきて、感銘を受けた。既存の状況を大いなる流れの一断片としてとらえているのは本当におもしろい。大変わかりやすかった。文理それぞれ楽しめる話だった」(東大文T・1年)

「…歴史の一段階という考え方が物理学をはじめとする科学にも適用されているということをはっきり自覚させられて驚いた。研究を続けていって、得られた結果に満足せず、その結果が歴史の一段階であるとみなし、再び疑問にぶつかったときも、挫折することなく研究していくことがとても大切であると感じた。その分野でもいえることであると思うので、重要な考え方である」(東大理T・1年)

「世界をプロセスの複合体でとらえる、という言葉が印象的でした」(東大理T・1年)

「マルクス経済学が恐慌を理論に含んでいるというのに興味を惹かれました。話のくすぐりの入れ方がとても上手でした」(東大文T)

「マルクスについては、ほとんど名前しか知らないような状態だったので、その基礎の基礎を聞けたことで、今後、学んでいくうえでのとっかかりとなったと思います。お話の本筋ではないものの、観念論と唯物論の対決に関する部分が、いかに唯物論的な見方に無意識でとらわれているのかがわかって、おもしろかったです」(東大文学部・4年)

「マルクス経済において資本主義が歴史の一段階であるということは知っていたが、コノ歴史の一段階という考え方が物理学を始めとする科学にも適用されているということをはっきりと自覚させられて驚いた。研究を続けていって得られた結果に満足せず、その結果が歴史の一段階であるとみなし、再び疑問にぶつかったとしても挫折することなく研究していくことが、とても大切であると感じた。どの分野でもいえることだと思うので、重要な考え方だ」(東大理T・1年)



さてさて、さらに期待高まる次回のセミナーは来週11月6日(金)。

テーマは「マルクスの眼で見た21世紀の日本と世界」

昨日のお話をベースにしながら経済危機、貧困と格差、環境破壊‥現代の問題に、マルクスの目でズバズバ切り込んだお話が聞けるハズ

もちろん「昨日は行けなかった」「聞き逃してしまった‥!」という方も大丈夫&大歓迎です
 

不破さん登場!セミナーがスタート!!
2009.10.30 [Fri] 18:54

ついにマルクスセミナーがスタート!しました

開場直前には100mにおよぶ入場待ちの行列ができ、18時の開場後、あっという間に第一会場の1313教室がいっぱいになってしまいました。

第一会場がいっぱいになった18時10分過ぎ、講師の不破哲三さんが登場!!!!!!(不破さんの写真が小さくてすみません

その後、第一会場の後ろは立ち見、立ち見、立ち見‥。

さらに第二会場もほぼ満席となり、先ほどから不破さんのお話が始まっています!!

不破さんが東大に入学した頃のことから、マルクスの世界観のお話へ‥。

500部ほど準備した資料はほぼ全部配布。会場は熱気いっぱいで、窓が開けられました‥(笑)