【猛毒】ニセクロハツの毒成分・中毒症状・見分け方など

November 04 [Tue], 2014, 17:18
公開日:2014年11月4日|最終更新日:2018年9月18日


ニセクロハツ

ニセクロハツ(偽黒初、学名:Russula subnigricans )とは、ベニタケ目ベニタケ科ベニタケ属に属するキノコの一種。和名は「ニセ」と付く通り、クロハツによく似ていることが由来である。

ベニタケ科ではあまり強い毒を持ったキノコが見られない一方、本種はベニタケ科でも突出して毒性が高く、猛毒キノコの一つとして知られている。クロハツと誤食される例もあり、注意を要する。

特徴

夏〜秋にかけて、シイやカシなどの林の地上に発生する。日本以外では中国、台湾、韓国など、東アジアに広く分布する。

傘は初め中央が凹んだまんじゅう形、のち成熟すると浅いじょうご形となる。表面は灰褐色〜黒褐色でややスエード状。
ヒダは白ではなくクリーム色で、柄に対して直生〜やや垂生し、幅広く疎。
柄は傘と同色〜やや淡色で、硬く丈夫。
肉、ヒダは傷つけると赤色に変色する。この変色性はクロハツとの区別に重要なポイントとなる。

胞子はクロハツとほぼ同じで、類球形、表面は微細なイボと不完全な網目模様があり、大きさは7〜9×6〜7.5μm程となる。

毒成分

宮城で採取されたニセクロハツ(実際はニセクロハツの類似種だが詳しくは後述)を調べてみた結果、毒成分はルスフェリン、ルスフェロール類(細胞毒)、カナバニン、3-ヒドロキシバイキアインなどが単離されたが、どれもマウスに対する急性毒性は示さず、ニセクロハツの主毒成分は不明であった。

その後、京都で採取されたニセクロハツを調べたところ、マウスに対し致死性を示す毒成分が新たに発見された。その毒成分の名は「2-シクロプロペンカルボン酸」。実にシンプルな構造をしており、生物が持つ毒素の中では極めて小さな分子量であることも分かった。


画像はニセクロハツの毒成分・2-シクロプロペンカルボン酸の構造式

この毒成分は重度の横紋筋融解症を引き起こすことで知られる。横紋筋融解症とは、骨格筋の融解を起こし、ミオグロビンなどの筋細胞成分が血液中に流出する症状で、この流出したミオグロビンが心臓、腎臓などに障害を起こすのだ。

同様に2-シクロプロペンカルボン酸を含むキノコとしてはTricholoma equestre(キシメジ・シモコシの近縁種、または同種)が存在する。

中毒症状

摂取すると数十分〜数時間で嘔吐や下痢など消化器系症状を起こす。

その後、縮瞳、呼吸困難、言語障害、背中の痛み、肩こり、四肢の痙攣、横紋筋溶解、血尿などの症状を引き起こし、最悪の場合は腎不全、心臓衰弱により死に至る。致死量は2〜3本ほどとされている。

症状の一つである血尿とは、横紋筋融解症によりミオグロビンが血液中に流れ、それを排出しようと尿と一緒に出るもので、ミオグロビン尿症とも呼ばれる。つまり実際に血が混じっている訳ではない。

中毒例

ニセクロハツによる中毒例が初めて発生したのは1954年、京都府で中毒死が報告されたが、この当時はクロハツの近縁種に猛毒菌は存在しないと考えられていたので、この時の死亡原因は不明だった。

1958年になると、再びクロハツの近縁種による中毒例が2件も発生し、3名が死亡した。この際、中毒の原因は当時まだ新種だったニセクロハツによるものとされた。続いて1972年にも食中毒が発生し、中毒者は5名だったが、幸いにも死者は出なかった。

それから長らくニセクロハツの中毒例は報告されていなかったが、2005〜2007年に次々と中毒例が相次いで報告され、4名が死亡した。これにより当時不明だったニセクロハツの毒成分の早急解明が求められた。

またしばらく中毒例は報告されることは無かったが、2018年9月に再びニセクロハツの中毒例が報告された。本種を食べた男性は死亡が確認されている。

国内における中毒例は1958〜2018年にかけて、7件と16名の中毒者が報告され、うち8名が死亡している。つまり中毒者はほぼ半数が死亡しており、本種の非常に高い毒性が伺える。中国でも多数の中毒者が出ているという。

クロハツとの見分け方

クロハツとニセクロハツを一目で見分けるのは難しいが、傷つけた際の変色性で見分ける方法がある。

上記に述べた通り、ニセクロハツは傷つけると赤色に変色する特徴があるが、クロハツはそこから数十分ほど経つと赤から黒色に変色するので、これにより区別できるのだ。

また、クロハツモドキというキノコもあるが、クロハツと同じに変色し、ヒダが非常に密なので、見分けは容易。

ニセクロハツは白色から赤色に、クロハツクロハツモドキは白色から赤色から更に黒色に、これで見分け方はバッチリ!……なのだが、残念ながらクロハツ、クロハツモドキも現在では有毒として扱うのがほぼ常識である。

クロハツは元々生食で中毒しやすいことで知られていたが、海外では毒キノコに分類され、死亡例があるという事実もある。火を通しても食べない方が無難だろう。

ニセクロハツの類似種

実はニセクロハツには複数の類似種、不明種が含まれていることが分かっている。宮城と京都で採取されたニセクロハツの毒成分が全く異なることも、これらが別種であることを裏付けている。その中で猛毒成分を含んだものこそが通称「真のニセクロハツ」である。

実際、本種の類似種の一つとしてアカハニセクロハツ(仮称)が存在する(ニセニセクロハツとも呼ばれるらしいが、あんまりな呼び名である)。その他にも類似種がいくつか存在すると思われるが、真のニセクロハツとの見分け方は確立されていない。

余談だが、「真のニセクロハツ」という表現自体、意味は分かるが冷静に考えたらおかしい気がするのは、自分だけではないと思う。



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