いのちのすきま〜第7章

November 25 [Tue], 2008, 10:12
*注意*
これはフィクションとノンフィクションを織り交ぜた独り言のような
小説です。登場する人物・団体は架空のものです。
知人の日記から抜粋し着色しており、作者の個人的主観が多く含まれています。



             第7章『別れと向き合う時』


 病院を抜け出したり、体調が悪いことを隠しつつ、彼と会う日が繰替えされたが
さすがに連絡が取れなくなってしまう日が何度か続き、苦し紛れに「親の会社も
手伝うことになり、忙しいから昼間は電話に出れない時もあるし、夜は早く寝て
しまう日もある・・・」と伝えてみた。
 この時期、私は個室にいたので、普段体調のいい日は携帯を使っても何も
問題なかった。(内緒だったが・・・)しかし、体調が悪化したり、クリーンルーム
に入るときは、携帯の電源を切ることになっていたのだ。

 いつの頃からか、彼の態度がよそよそしい様な感覚を感じるようになった。
過去にもそのような時期があったし、そっとしておこうと思っていたが、病気の
話を言い出すきっかけを余計に失ってしまった・・・。それだけが今の私にとって
一番の心残りであった。

 ある日を境に、吐き気が止まらず、食事が殆ど食べられなくなった。ダイエット
に丁度いいかも〜なんて最初は気軽に捉えていた。いや、そう考えようとして
いた。肌の色が黄色っぽくなったように感じてきた。朝、目覚めると、びっくり
するほどの毛髪が落ちていた。髪をとかす事すら怖くなってきた。
 少しずつ、自分の状況を理解し、受け入れてきた。はっきり言ってほしいと
切実に思った。しかし、ここまで来て何も言わないのは、やっぱり自分の思い
過ごしかも・・・という希望ももてた。
私は本当に弱い人間だから、もし本当に悪性腫瘍があって、もう助からない
と直接言われていたら、多分耐えられなかったであろう。父の判断は正しかった
と今更思う。


 夜中の2時頃、彼からの着信があった。慌ててテレビを付けて電話を取った。
前日に普通に会っていたので、これといって特に話題もなく、いつも通りの
取り留めの無い会話を数分していた。

「お前に言わなきゃいけないことがある。」

突然振られたその台詞に、心臓が飛び出そうになった。病院の事がばれたの
だろうか、内定していた仕事で何かあったのだろうか・・・数秒の間に凄まじい
程の思考回路をフル回転させていた。ものすごい緊張感の中
「どうしたの?」
と、冷静を装い言葉を返すので精一杯だった。彼からの返答の言葉は
全ての思考回路を使用したにもかかわらず、全く想像できないものであった。

「好きな人ができちゃったかも。」

一瞬何を言っているのか理解できなかった。テレビのリモコンを持ち、テレビ
を消してみた。自分の行動自体理解できなかった。
沈黙が続いたので
「かも・・・?」
と聞いてみた。

「うん。」

普通の答えが返ってきた。
無言がしばらくの時間続いた。その間私は、再び思考回路をフル回転させ
た。忙しい脳みそだ・・・頭が悪いとこういう時に困るものだ。

「もう会えない。」

フル回転していた脳が止まった瞬間だった。脈拍が凄い勢いで跳ね上がる
のを感じた。呼吸が苦しくなり、頭が熱くなり、変な汗が出始めた。息が上手
に出来ない・・・「呼吸ってどうやってするんだっけ?」というような状態だ。
「ごめん、ちょっとかけなおす。」
なんとか電話を切り、ナースコールを押した。
安定剤と点滴を受け、少し落ち着いて電話をかけ直した。
かけ直すまで、何度彼の番号を見ては、携帯を閉じて・・・を繰り返しただろう。
何かの間違いであってほしい・・・ここまで切実に願ったのは生まれて初めて
だったであろう。

もちろん、その祈りは通じることも無く・・・あっけなく一番大切な存在を私は
失ってしまった。

「幸せになってね。  頑張ってね・・・。」

最後に精一杯で出た言葉だった。それしか言えなかった・・・。色んな言葉が
この世にはあって、生まれてきてから色んな気持ちや思いを伝えるために
沢山使ってきたであろうに、一番大切な時には・・・何も考えられない。

私はその瞬間に、一番大切な存在と同時に、自分が生きる意味、頑張ろう
という希望も失ってしまっていた。
もう死んでしまいたい。こんな試練ならもう受けることはできない。何故私
ばかり?もう頑張れない。この機械を止めたら死ねるんだろうか・・・貯まった
睡眠薬、導眠剤を全てゆっくり飲めば死ねるんだろうか・・・そんな事しか
頭に浮かばなかった。
私は世界で一人ぼっちになったような気分だった。

彼と過ごした8年間は、私にとっては長すぎたのだ。






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