タックス・マニアック

December 13 [Wed], 2006, 8:44

  今日、住宅保険の領収書を見ていたら、おもしろい税金を発見した。

“TAXE ATTENTAT”=テロ税  
  一瞬「なぬ?」という感じですが、まあ正確に言うと「テロ(等の侵害行為の犠牲者を救済することを目的に被害者救援基金に充当するための)税」と訳したほうが正確です。とりあえず手元に税金についての詳しい資料がないので、その領収書の裏についていた説明文を訳すと、

「この税は損害補償を対象とする全ての契約(車の盗難及び故意による窓ガラスの破壊、住宅火災)並びに職業上の契約に適用されるものである。財務省によって毎年規定されるこの税金は、被災者に資金援助を行う“テロ及びその他の侵害行為被害者保証基金(FGTI)”に充当される」

ということだそうです。ちなみにこのFGTIという団体は、近年、テロが多発かつ大規模になっていくことに対応し、被害者に迅速かつ十分な支援を提供できるよう、1986年にできた団体だそうです。また、税額は一契約につき3.3ユーロで、この税収と、侵害行為の加害者がはっきりしているときはその賠償金という2つの資金源で、この団体は成り立っているそうです。

  テロ行為によって重軽傷または死亡した場合に受ける補償金は、特に上記の保険に入っている必要はないので、「テロ税」はまず支払った人だけが恩恵を受ける「保険」の機能は有していません。受益者はテロの被害者になりうるフランス人全員ということなので、本来ならば納税者が多岐にわたる所得税や消費税を財源とすべきなのですが、何で保険契約を対象にするのか?まあ、何事も「連帯」を強調する国なので、そこらへんは細かいこと言わず、支払能力のある人は払っていない人の分まで面倒見ましょうということなのか?ぎりぎり言ってもしょうがないですしね。それに、車を持っていたり、住宅を購入・賃貸した場合にはその種類を問わず全ての契約に課されるわけだから、まあ課税の対象は広いと言えば広いのか?

  ただ、20ユーロの保険にしろ、2,000ユーロの保険にしろ、税金は一律3.3ユーロというのもおかしな話だなあ。そこらへんは金額によって税額を増やしたり減らしたりすることはできなかったのだろうか?まあ、実際被害にあった場合は金持ちだろうが貧乏人だろうが同等の補償金が支払われるだろうから(補償は身体の被害のみとのこと)、税金の支払いも均一で、ということなのだろうか。そこらへんが「保険」っぽいなあ。

負担軽減競争?2

December 03 [Sun], 2006, 6:42
  社会保険料を引き下げて、消費税を引き上げれば、確かに輸出企業の競争力を高めるかもしれません。しかし、当たり前ですが、それはその国と貿易取引の関係が緊密な国(ドイツの場合はまさにフランスと言えるでしょう)を犠牲にして成り立つものです。ドイツ企業が保険料負担の軽減分を商品価格の引下げに充てれば、フランスにとってはこれまでよりも安い品物が国内に流入してくるわけですから、フランスの国内企業は大打撃です。そうしてリストラなんかが起これば(フランスの場合は難しそうですが…)、失業者が増大してしまいます。また、フランスの輸出企業にとってみても、ドイツの消費税が上がるわけですから、ドイツで売る品数も減少する可能性があります。
  となると、フランスが取るべき行動は、ドイツと同じような政策をとって、ドイツとの優劣関係をリセットすることが望ましいということになります。社会保険料を引き下げその分を消費税1%の引上げで賄おうとする今回の議会の報告書もこういう背景があるのではないかと思います。
  また、EU域内ではなく、域外との関係で競争力が強まるかとなると、これも難しいかもしれません。そもそもEUが世界の経済に与える影響は無視できないほど大きいので、EU経済が強くなればEUで使われているお金であるユーロの価値が高くなる可能性が出てきます。そうなると、EU域内に住む人々の購買力が上がるわけですから、品物を確保すべく輸入が多くなるわけです。逆に外国の人にとってはEUの品物の価値が高くなるわけですから買い物を控え、したがってEUの輸出は減る可能性があります。さらに、EUの輸出企業の競争力が著しく高まれば、それに対抗するべく他の国は奥の手(?)である自分の国の通貨の価値の下落を目指した為替介入に踏み切るかもしれません。そうすると、社会保険料の引下げで獲得した競争力向上はチャラになってしまい、残るのは(消費税による価格の値上げやそれに伴う給料の引上げ要求などを経ての)価格の高騰、ひどいときには価格が継続的に著しく上昇する「インフレ」が起こる可能性が出てくるのです。

  もちろん、「経済は生き物」と言われているように、政策の後に何が起こるのかは、誰にも予想はつきません。「社会保険料を引き下げて、消費税を引き上げる」という政策については、前回もお話したように私も一瞬納得しましたが、その前に、今回書いたようなことも「もしかしたら起こるかもしれない」ということもきちんと頭に入れた上で、「じゃあ、どっちがいいんだろう?」ということをより広い視野で考えなきゃいけないんでしょうね。

負担軽減競争?1

December 02 [Sat], 2006, 3:54
  前日の日本の読売新聞(HP版)を読んでいると、以下のような記事がありました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

政府税制調査会(首相の諮問機関)は1日、首相官邸で総会を開き、2007年度税制改正に向けた答申を安倍首相に提出した。減価償却制度の償却限度額をなくし企業の税負担を軽減することや、ベンチャー企業への投資促進税制拡充など、安倍政権が掲げる成長戦略に沿った企業税制整備が中心となった。(省略)
答申では、経済界が強く求めている法人課税の実効税率引き下げについて、「今後の検討課題」と方向性を明確にしない表現にとどめた。本間正明・政府税調会長(大阪大大学院教授)は会見で「委員は引き下げの方向で合意した」とし、年明け以降に本格審議する意向を示した。(省略)
一方、消費税や所得課税の抜本改革は記述せず、「社会経済構造の変化に対応した各税目のあり方を検討していく」と抽象的な表現にとどめた。政府税調は来年以降、消費税率引き上げの検討を始める方向だ。(省略)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  法人税を引き下げて消費税を引き上げるべきというのは、かなり前から経済界から主張されていることで、「あ、また今年もかあ?」という感じですね。確かに法人税負担は他の国に比べて高いし、逆に消費税負担は低いので、自然な流れなのかなあとは思うのですが、日本とは逆に法人税負担が比較的低く、消費税負担が圧倒的に高いフランスでも、「企業の負担を下げて、消費税を高くすべき」との議論がなされています。
  それは、議会の「産業の空洞化に関する検討会」が出したレポートに基づくものなのですが、要するにフランス企業の海外への逃避を防ぐために法人に対する負担を軽くしようというもの。ここには法人税そのものの引き下げのことも書いてありましたが、報告者である与党議員は特に、「消費税(TVA)を1%引き上げ、その分を社会保険料の企業負担の引き下げに充てよう」ということを主張しています。
  社会保険料というと、労働者と企業が折半するというイメージがありますが、フランスはその限りではありません。例えば、一般のサラリーマンが加入する社会保障制度では、企業の負担が圧倒的に高い!全部で36%のうち28.5%を企業が払っているのです!もちろん税金やらなんやらで他の分野では労働者の方が多く払っているかもしれないので一概にこれで「企業は大変!」とは言えませんが、ストが多く左派が常に一定の力を持つフランスでは政府の政策まで労働者よりであっては企業負担が集中し、海外への逃避が起こってしまうのも分かる気がします。しかし、何故この時期なのか?
  これには、ドイツの経済政策が影響していると思われます。すなわち、消費税(TVA)を3%引上げ、代わりに社会保障負担を引き下げるという政策が、来年の1月に施行されます。この政策により、企業は負担の引下げ分を商品の価格引下げに充てることができ、この安くなった商品を海外に持ち込めば、例えばフランスの商品よりも多く売ることができるのです。なので輸出企業にとってはとっても美味しい政策と思われているわけです。言い換えれば、この効果は、自分の国の通貨の価値を引き下げて輸出を促進する「為替の切り下げ」と同じ効果を持つのです。
  だから、この政策に対抗すべく「わが国も負けずに法人負担を軽くしよう!」という考えが生じ、議会での検討につながったのではないでしょうか?例えば、欧州の法人税率の平均は報告書によれば25%超、フランスは30%強。税金で見てもフランス企業は政府に比較的多く支払っているのです。でも、実際は「インフレが起こる!」などの懸念が主張されており、この政策が実を結ぶのはかなり不透明なのですが…。

  一方で、このような政策は本当に企業の競争力の強化につながるのでしょうか?私も一瞬納得しましたが、よくよく考えてみるとそうではないのかもしれません。それはまた次の機会にでも…。
P R
プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:le_projet
  • アイコン画像 性別:男性
  • アイコン画像 血液型:A型
  • アイコン画像 現住所:国外
読者になる
2006年12月
« 前の月  |  次の月 »
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
最新コメント
アイコン画像TS
» 未知との遭遇 (2006年12月01日)
アイコン画像黒烏龍茶
» 郷に従いたいのですが… (2006年12月01日)
アイコン画像
» パリから (2006年08月25日)
Yapme!一覧
読者になる