橋下弁護士の弁護人懲戒慫慂発言を免罪 最高裁の不当判決

2011年07月31日(日) 21時45分
 最高裁第二小法廷(竹内行夫裁判長)は、15日、橋下徹弁護士がテレビ番組で、光母子殺害事件の弁護人らに対して懲戒請求を申し立てるよう呼びかけた発言について、不法行為に当たらないとして、弁護人らの損害賠償請求を棄却する不当判決を言い渡しました。
 判決は、橋下弁護士が、弁護人らが「本件否認の主張をすることは弁護士としての職責に反する旨を詳細に主張している」として、弁護人らの「本件弁護活動が本件被告人に不利益な弁護活動として、懲戒事由に該当すると考えていたとみるのが相当であ」り、弁護人らに「対する懲戒請求に理由がないことを知りながら本件呼び掛け行為をしたとの原審の上記事実認定は、経験則に反する」と判断しています。それにしても、経験則違反との判断までして、橋下弁護士に肩入れし、弁護団らをおとしめるのは異常というほかありません。まともな法律家であれば、橋下弁護士のテレビ番組の発言は、弁護人らが被告人に入れ知恵して否認させたとしか考えられないと根拠もなく決めつけ、懲戒相当の理由もないことを知りながら、視聴者に対し、弁護団への懲戒請求を集中させて、業務上や精神的な負担を与えようとの意図であったとしか見えません。すなわち、橋下弁護士の懲戒慫慂発言は、弁護人らが弁護人としての職責に反していることに対してでなく、弁護人としての職責をまっとうしたことに対して、非難を浴びせているのです。この程度の理解もできないのですから、この4名の裁判官は、いったいどんな「経験」をしてきたというのでしょうか。
 さらに、判決は、刑事事件の弁護人として、国民による様々な批判を浴びることはやむを得ないとして、橋下弁護士の発言も受忍限度の範囲であるなどといいます。しかし、1審判決が仔細に検討したような刑事弁護人の職責への言及もなく、まったく皮相な「表現の自由」論というほかありません。弁護士の役割に関する基本原則17は、「弁護士は、その職責を果たしたことにより、依頼者あるいはその主義と同一視されないものとする」とあります。分かりやすいやすい例としては、テロリストであっても、刑事処分をする場合には弁護人を付さなければならず、弁護人は、被告人の弁護のために、テロリストの反社会的思想に基づく主張を代弁しなければならない場面もありますが、それをもって、弁護人がテロリストと同一視され、迫害を受けることとなれば、刑事手続の適正は画に描いた餅となるでしょう。基本原則16では、「弁護士が、その職務を果たしたことにより、その安全が脅かされるときには、弁護人は、当局により十分に保護されるものとする」と定められていますが、弁護人が職責を果たしたことに対していわれなきバッシングを集中するよう唆す行為は、弁護人の安全を脅かすものというべきです。判決は、国際基準である基本原則に真っ向から反するものです。
 竹内裁判官は、補足意見において、懲戒請求が広く何人にも認められるとされていることを強調します。しかし、受訴の禁止が明確に憲法32条において否定されているにもかかわらず、濫訴が不法行為を構成する場合がありますし、同じく端緒にすぎない告発であっても、虚偽告訴罪は犯罪とされているのですから、懲戒請求が広く何人にも認められることを殊更に強調するのは論理的ではありません。
 また、竹内裁判官は、補足意見について、多くの視聴者が橋下弁護士の発言に共感したことが多数の懲戒請求がなされたことを重視しています。しかし、だからこそ、橋下発言の違法性が大きいのです。まさしく、被告人の否認の主張が多くの視聴者にとって「許せない」ものであるからこそ、単純に、弁護人が被告人の主張をとりあげて弁護活動を行うことをも「許せない」ことであると結びつける発言は、弁護人が職責を果たすことを問題視する危険性を有しているのです。しかも、その発言を弁護士がしているからこそ、多くの視聴者は一定の信頼をもってとらえているのです。この点をまったく無視して、橋下発言に共感した視聴者が多いことを合法とする根拠に挙げる竹内裁判官は、世論を笠に着て、弁護活動を制約する明確な意図を有しているものと批判されるべきです。
 以上のとおり、判決は、刑事弁護人の職責や弁護士自治への理解を欠いた軽薄な論理であり、弁護人が職責を果たしたことに対して、いわれなき非難を集中させられ、業務を妨害されたり、精神的な負担を受けようとも、国家として、保護を与えないということを明言したものといえるでしょう。
 いずれにせよ、このような不当判決があろうとなかろうと、他ならぬ弁護士が、弁護士自治制度の悪用を公然とメディアで呼びかけ、弁護士自治を破壊しようとしたことが許されないことは明白です。
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