渡辺浩一さんを偲ぶ会

May 23 [Sat], 2015, 18:38
「こわれ者の祭典」オーディションメンバー、筋ジストロフィーの表現者、渡辺浩一さん(生き様発表会)が今月、お亡くなりになりました。仲間と大好きなお酒を飲んでいる時の突然死だったそうです。筋ジストロフィーという重い病気を抱えながら、1人暮らしを続けて、
仲間と共に駆け抜けた浩一さんの人生を振り返る第29回「生き様発表会」(どうしたら病気を理解しあえるか?)が明日、開催されます。
今回、私はゲスト出演させていただき、浩一さんについて書いた文章を朗読させていただく事になりました。何卒、よろしくお願い致します。

第29回「生き様発表会」〜どうしたら病気を理解しあえるか?〜
協力費 500円 午後2時開始
場所 十字園(訓練棟)(新潟県新潟市西区上新栄町1丁目2番12)
司会 小林優子
出演 YOPPY ひまわり 他 ゲスト:月乃光司
問合せ
W&Y実行委員会
090-5542-5962

★下記ですが、6年前に渡辺浩一さんについて書いた私のエッセーです。

「あぁ、僕たちのやってきたことは正しかったんだ・・・」
そう思えて、とても幸福だ。

62歳で、筋ジストロフィーの渡辺浩一さんは新潟市に住んでいる。
お名前を知らない以前から、赤い衝突防止用のランプを付けた電動車椅子に乗っている姿をお見かけしていた。

雨の日はカッパを着て赤いランプを光らせながら、晴れの日は大きな帽子を被り、新潟市内の路上を走り回っている。
付き添いの方もいず、いつもお一人で軽快に走っている。

新潟市ではちょっとした有名人で、
「あの赤いランプを付けた電動車椅子のおじさん知ってる?」 と問うと、多くの人々が 「あぁ、あの人ね! 街で見かけたことがあるよ」 と口々に言う。

まさに 「路上の走り屋」 という感じで、外を駆け回っているのだ。

一昨年、僕たちのやっている心身障害者のパフォーマンス集団 「こわれ者の祭典」 では出場者オーディションを開催した。

応募されてきた履歴書の中に、あの赤いランプを付けた電動車椅子に乗った姿のお写真があった。
僕は 「あっ! あの人だ!」 と嬉しくなった。

オーディションの当日、パフォーマンス審査があるのだが、歌や詩の朗読などの表現が多いなか、浩一さんは自分自身の人生を語る 「辻説法」 のような新しいスタイルのパフォーマンスを行い、満点を取りオーディション合格となった。
(もっともオーディションに参加した8人は全員、満点合格となりましたが・・・)

浩一さんのことをいろいろ知った。
以前は施設にいたが、今はアパートで一人暮らしをしていること。
ヘルパーの方が定期的に訪れて、身の回りの世話をしていること。

新潟市のはずれの方に住んでいながら、2時間もかけて中心部へ電動車椅子で毎日のように出かけていくこと。
同じように施設にいた筋ジストロフィーの仲間を誘い、同じアパートの別室に住まわせたこと。

「助けをかりながらも、自立すること」、これが浩一さんの信条だ。

筋ジストロフィーは体の筋肉が少しずつ弱っていく病気だ。

浩一さんの身体も少しずつ弱り、不自由も多くなってきている。
それでも、外に出かけて友達と会い、街の空気を感じながら暮らしている。
60歳を過ぎて、人前で何かをやったことなど一度もないけれども、オーディションにも参加した。
もの凄くポジティブなのだ。

オーディションメンバーと半年間練習を繰り返し、全員で新潟市民芸術文化会館能楽堂の舞台に立った。

浩一さんは同じくオーディション合格した統合失調症のYOPPYさんのギター伴奏に合わせて朗々と自分自身の人生を語る 「説法」 を行い、最後に 「今度、生まれてくる時も、私は障がい者になりたいー!」 と絶叫すると、感動したお客さんの多くが涙を流していた。

浩一さんはその後、YOPPYさんらと 「生き様発表会」 という新グループを結成。
老人ホームへの慰問、県外への遠征などと精力的に活動を続けている。

僕は今年、新しいチャレンジとして 「坂口安吾作品朗読会・安吾絶唱」 というイベントを計画した。
今までは自作詩を読む機会が多かったが、文学作品の朗読をやってみよう、と思ったのだ。

「誰に出演してもらおうか」、そう考えた時に一番最初に思い浮かんだのが、浩一さんの顔だった。

あれだけ素晴らしく自分を語る人ならば、作家の坂口安吾作品も見事に表現するのではないだろうか。
早速、出演をオファーするとOKしていただいた。YOPPYさんに再びギター伴奏を頼んだ。

僕の自宅と浩一さんのアパートが近いこともあり、朗読会に向けて練習をした。
浩一さんは坂口安吾作品 「白痴」 を朗読するのだが、これが本当に鬼気迫るような迫力がある朗読なのだ。僕の予測は当たった。
戦時中に主人公が空襲の中、火の海になった街を、か弱い女性と駆け抜ける場面を浩一さんが読む。

「そっちへ行けば死ぬだけなのだ」 女の身体を自分の胸にだきしめて、ささやいた。
「死ぬ時は、こうして、二人一緒だよ。怖れるな。そして俺から離れるな。火も爆弾も忘れて、おい俺達二人の一生の道はな、いつもこの道なのだよ」
(坂口安吾「白痴」より)

浩一さんの朗読を聞くと、目の前を逃げていく二人の姿が見えるような感じだった。
それにしても、凄まじい朗読の才能だ。

練習の為、浩一さんのアパートに行くと嬉しくなって笑ってしまった。
アパートの外壁に「坂口安吾朗読会・安吾絶唱」のチラシが何十枚も貼られてあるのだ。
宣伝をしていただいてありがたいのと同時に、「浩一さんは朗読会を楽しみにしているのだな」 と嬉しくなる。

それにしても、人生の無限の可能性には驚かされる。60歳を過ぎるまで舞台に上がったことが無かった人に、これ程の表現力があったのだ。
現在、精力的に表現活動を続けている浩一さんは誰が見たって 「青春真っ只中」 だ。

そして僕が一番嬉しかったのは、「こわれ者の祭典」 のオーディションが浩一さんの才能の引き出すきっかけの一つとなったこと。
今、共に活動するYOPPYさんと浩一さんが出会うきっかけとなったこと。

7年間 「こわれ者の祭典」 の活動を続けていてバッシングを受けることも多々あるけれども、こんな時に 「あぁ、僕たちのやってきたことは正しかったんだ・・・」
そう思えてとても幸福だ。

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プロフィール
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  • アイコン画像 ニックネーム:月乃光司
  • アイコン画像 誕生日:1965年2月3日
  • アイコン画像 現住所:新潟県
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高校入学時から対人恐怖症・醜形恐怖症により不登校になる。引きこもり生活、通算4年間を過ごす。24歳よりアルコール依存症になる。自殺未遂、アルコール依存症により精神科病棟に3回入院。27歳から酒を飲まない生活を続ける。自伝的小説「窓の外は青」(新潟日報事業社)を平成13年に出版(新潟市民文学奨励賞・新潟出版文化賞受賞)。新潟日報にて「心晴れたり曇ったり」5年間連載。 ネットラジオ「月乃光司のハート宅配便」司会を務める。新潟薬科大学応用生命科学科非常勤講師。

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