『クローズZEROU』

April 21 [Tue], 2009, 5:50
今日は『クローズZEROU』について書かせてください。

でもって、この映画になじみのない人々にちょっと宣伝させていただきたいと思います。
この映画を食わず嫌いしている人に説明するのはやや難しい。見れば即わかるのだが・・・・。

めちゃくちゃカッコよかった!ハマる!萌える!揺さぶられる!

『クローズZERO』(T)も良かった。「しょせんただの不良映画」と高をくくって見た「T」に開始後5分でやられました。その後も中毒のように何度も見てしまう。録画してるのに、TVでやってればまた見てしまう。なんででしょう・・・。
Uがその上を行ったのかどうかはわからないが、同様の興奮の余韻が続いています。

●人気イケメンいっぱい登場させた、ただの不良のケンカ映画でしょ。
その通り!
小栗君が言ってた通り、学ラン着てケンカする映画、それだけです。(そのなかで最高なものができたと言ってますが)

●老けた高校生ばっかり出てきて、ありえない設定で、リアリティなんて何もないんでしょ。
その通り!
高校を舞台としているのに、先生や授業の影も形も出てこない。
Tの冒頭の入学式に先生と父兄がちょっと出てきて、あっけなく退場した後、Uに到るまで全く登場しないので驚いた。
卒業証書が出てくるが、どのようにして各科目の単位を得たのか、学校の運営はどうなってるのかも不明。家庭や親の姿も全くなく、どこに帰って、風呂に入って寝て着替えているのか全く不明。(源治だけは家と父親が登場するけれどヤクザの組長だし)

●カッコばっかり追求して、ストーリーも典型的パターンなんでしょ。
その通り!
多分みなさんが想像しているストーリーそのまんまです。
しかし脚本に書かれていること以外に、映画の行間のようなところから立ち上る思い、熱さ、男同士の絆や友情みたいなものがそこかしこに現れて、何度見ても飽きさせない。

●高校生の暴力行為や飲酒喫煙はたとえフィクションとしてでもイヤですね。
その通り!
・・・私も嫌いですが・・・・。ある意味でストイックで純度の高い映画とも言えます。

だって、将来の安定した生活のために勉強していい大学を目指し、長生きするために健康に気を使い、人に嫌われないためにいい人でいようとする方が、自分の利益や効果を狙っていると言う意味で濁っているかもしれないじゃないですか・・・・。

ケンカにも彼らなりの美学が不思議と貫かれていて、刃物を持つことを潔しとせず、陰湿な弱い者イジメなどは一切ない。


【滝谷源治@小栗旬】

今回Tと比べて一番大きな違いは、役者自身が自主的に役や映画を作り上げている点じゃないかな・・・・。
最後の作品としての意気込みが全員に感じられる。全員がクローズを誇っている。
公式のキャストブログなど見ると、雰囲気が伝わってきて楽しいですね。

まず主演の滝谷源治(小栗旬)について言えば・・・実は見せ場は減っているような気がする。小栗君ウォッチだけを言えば、Tの方がいいんじゃないかな?

驚いたことに、映画の3分の2くらいはヘタレでダメな源治なのです。
Tで鈴蘭のてっぺんをとったはずなのに、二年のリンダマンに勝つことにこだわり、何度も挑戦してそのたびに負けている。芹沢軍団に勝ったことでなんとなく行き先を見失い、鈴蘭をアタマとして束ねることには全く関心なし。伊崎(高岡蒼甫)らGPS幹部がヤキモキするのに、「鳳仙はGPSだけで十分」と甘く見ている。
自信も失い、父親にパンチも入れられず、その父も銃弾に倒れたのに何もできない。鳳仙学園に鈴蘭幹部が一人また一人と襲われているのに、ライブハウスでアンニュイに酒と煙草。

人望を失った源治の下には、決戦の朝にも兵隊が集まらない。「解散だ」と仲間を見捨てて出て行くように見せ・・・・・。
そこからは怒涛のケンカアクションの百花繚乱です。ごくせんの逆?途中で髪をかき上げてゴムで縛り、たった一人で鳳仙スキンヘッド軍団に近づく映画チックなシーン。そしてTで感嘆したあの鞭のようなしなやかな動き、華麗な高いジャンプと体重を感じさせない着地。そして今回は前回になかったような一人一人とのアイコンタクト、呼吸の合わせ方。かぁっこいい!!

しかしそこまでの小栗旬の演じ方に非常に興味が持てます。こんなに強く見せない不良映画の主役って・・・。
特に印象的なのは、鈴蘭の幹部が次々による襲われている中、源治がたった一人で鳳仙のヘッド鳴海大我と夜の街で出会うシーン。煙草の火をくれた鳴海に、源治が目をパチクリさせてごく普通に会釈する。

『情熱大陸』で蜷川さんが小栗君について語っていたことを思いだします。「小栗はハムレットやロミオをやるべき俳優であり、悪そうでおしゃれで、しかも叙情がある」と。
「叙情がある」・・・蜷川さんいいこといいますねェ!!掃いて捨てるほど居るイケメン俳優と一線を画すのは、演技の上手い下手よりもこれかと思います。
運河にたたずんでも、殴られてぶっ倒れても、後姿で煙草を吸ってもなんでも画になってしまう・・・で、叙情があります。

しかしながら、転校生源治のケンカによるステップアップを話の骨格としたTほどには単独のケンカもなく、あのハートをわしづかみ!にする長髪をかき上げるポーズも少なめ。

多分小栗君はUの中で痛いほど源治が感じた、「強いだけでは人をまとめられない」というのをシンクロして痛感しているらしい。Uでは特に、始めバラバラだった鳳仙と鈴蘭のメンバーをまとめ、いい作品を全員で作るんだと言う意識を煽り、制作側にとって頼もしい主演であったらしい。
映画公開前、マジックアワーの三谷さんを髣髴とさせるほど映画の宣伝番組に出続けたのも、「みんなで作ったみんなが主役のクローズ」を一人でも多くの人に見てもらえるならばと思ったからだろうし、それであんなに自分の映画を宣伝することに対して晴れ晴れとしていたのかな。

「メインよりサブキャラの方が人気が出るもんなんですよ」とは、これまでさんざんサブキャラとしてメインを食ってきた小栗君だからのセリフでもありましょうが、それでも主演が小栗君でない『クローズ』は想像もできない。

【光るワルメン列伝】

そういうわけでますます魅力を増したワルメン軍団。
ちょっとづつ。

●百獣の王芹沢多摩雄(山田孝之)も変えてきてます。Tのバカっぽくて殴られても気づかないくらいバカ強い芹沢が好きだったけれど、今回はグッと常識人で馬鹿さが減ってしまった。でもヘタレな源治を気遣い、伊崎とタイマン勝負をし、時生との友情も熱く、最後は狂戦士漆原との戦い。
卒業証書の並べ方にも象徴されるように、こいつら本当に気心知れてるんだな・・・と思わせます。
最初のほう、靴さえ履かずに裸足でボロボロな姿で拾い食いするなど、ますます貧乏になった模様。しかし毛の濃い感じと、身体に厚みが出た感じで、重量感が出てよかったです。

●伊崎(高岡蒼甫)、オトナで熱いキャラは特に変わらないのだけれど、よりセクシーになりました高岡君。「ちょっと預けろ。俺がいいって言うまで動くな」と源治を諭すセリフもツボでしたね。週刊誌ネタでちょっとビジュアルも卑しくなってたらどうしようと思っていたのですが、そんなこと全っ然なかったです。

●笑わせ役になったのは三上兄弟。芹沢軍団からGPSに鞍替えしたのだけれど、彼ら業の筋は通っている。そして時生のヘッドギアに「素敵な帽子だ・・・・」と感動したり、「セメダインを使う時がきたぞ」と言って見たり、とにかくアドリブギャグが冴えててよかったです。

●三上兄弟にもいじられまくりだった牧瀬(高橋努)。前回合コンと「前漏れ」シーンが強烈だっただけに、今回の青カン目的のデートも痛いやらおかしいやらでもう大変。
しかしマッキー強いんです。四人同時に襲われた時も最後まで持ちこたえ、鳴海に「男だなぁ・・・」と惚れられる。

●鳳仙のヘッド鳴海大我(金子ノブアキ)はちょっと珍しい男で・・・クローズの出演者にしては哲学的言葉が多い。「男は素手だろ」と鷲尾を諭し、「しっかり見てろ!」と生きざまを後輩に見せようとする。
美藤に「俺にはかぎ分けられるんだ・・・本物の男の匂いが・・・ホモじゃねェよ」と語るシーンがあるけれど、私にいわせればプラト二ックボーイズラブの権化。
彼は死んだ美藤の兄を愛してるし、弟のことも鳳仙軍団のことも一人一人愛してるし、鈴蘭の敵たちのことも、芹沢や源治や牧瀬のことも本当に愛してる。
ケンカに美学やルールを設定したがる、モラリストなのが玉にキズ?「土足厳禁だろ!上履きをもってこい!」と言ったり、大勢に追い詰められる牧瀬と一対一で戦うために軍団を去らせたり(おにぎり食いながら言うんですが)する。鋼の肉体美とサムライスピリットのナイスガイですが、ちょっとずれたユーモラスなシーンも多いです。

●美藤竜也(三浦春馬)は鷲尾への強烈キック以外は戦いに参加しなかったものの、物語り全体を明日へとつなぐいい役割でした。「静」を貫いていたのもいい。

●面白い役回りだったのは鈴蘭から鳳仙に転校した鷲尾(波岡一喜)。服役したOBの川西との類似を際立たせているのだろうけれど、苦しくなると刃物を持ち出し、体育館に火をつけると言う卑怯な手段を使うという二流の男。クローズ世界の中でのねずみ男?
こういう奴は最後まで許されないのかな・・・とおもったら、最後、源治の度量の広さが引き立ちましたね。

●他にも、剃りこみの激しくなったチュータや、芹沢と源治との三角関係も萌える戦いの場に復帰した時生(桐谷健太)や、ボコられ方がハンパじゃなかった筒本(上地雄介)や、鳳仙の印象的な面々など一人一人輝いていたのですが、きりがないので・・・。
紅一点の黒木メイサ、これだけ邪魔じゃないうるさくないヒロインは珍しいほどです。それでいて歌う姿はカッコいい。

Tのアクションではなんだかみんな口の周りが殴られすぎてオバQのようになってましたが、Uではなぜか目の周辺を殴りあったのか、源治を筆頭にパンダみたいな顔になってます。痛いけれど気持ちいいほど徹底した殴り合い。

気になったのは・・・校舎内での攻防戦で、誰一人としてパイプ椅子で敵を殴ると言う簡単な方法を使わなかったこと。鷲尾あたりに一度パイプ椅子を振り上げてもらって、「拳の方が早いぜ」とぶっ飛ばしてもらいたかった。

鳳仙の校舎内には凶器になるものがたくさんあるのに、決戦に備えてか廊下の片側にまとめて片付けられているのがなんだかおかしい。体育館への放火は鳴海にしたら卑怯で耐え難いことだろうが、その良い訳もせず引き受ける。鈴蘭の大軍団を目にした途端不利を感じたのか屋上でのタイマンを申し出る。
鳴海の性格かなとも思うけれど、鳳仙のモラリズムはちょっとキレイ過ぎるような気もした。

【外の世界とのリンク】

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
三池崇史は、「カッコいい男の戦いの映画」の舞台として、ヤクザ映画の世界よりももっと徹底し純化された暴力の世界を、学ラン高校生の中に設定した。
今はヤクザ映画は「ダセェ」。いろいろ背負っているものがあり、重かったり哀れだったり、便所の臭いや加齢臭が漂ってきたでしょう・・・。

しかし・・・・舞台をありえない高校に設定し、リアルな日常世界を排除したように見えて、『クローズZERO』TにもUにも、画面の背景から「弱虫で物見高い我々の住む日常世界」が垣間見える。

かつて鳳仙との抗争で、刃物で相手を殺してしまったOB川西(阿部進之介)は、映画の中でもがいてももがいてもヤクザにもなれないハンパもの(一般人)として扱われる。
最低の自分から這い上がろうと足掻いてますます絶望的な状況になっていき、再び刃物を取らざるを得なかったような川西の弱さと惨めさには、現役鈴蘭生にはないリアルさを感じる。
Tで生死も定かではなくなっていたやべきょうすけ演じる拳さんは、川西を身体を張って救ってくれた。今回拳さんは源治との絡みも全くないのだけれど、良かったです。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
不思議なことに、他の不良高校生登場作品である『ROOKIES』や『ごくせん』で必須アイテムのように出てくる「夢」や「友情」は『クローズ』ではもいっさい語られない。
「夢にときめけ!明日にきらめけ!」だの「おまえら仲間を大切にしろよ!」だの先生が不良高校生に教えてくださるような世界は、TVドラマの中だけにして欲しいですね。
夢や友情や家族・・・・そんなべた付いたものは、三池監督はあえて語らない。しかし友情やリスペクトは、映画の行間から豊富に立ち上ってくる。(背中合わせやアイコンタクトも豊富。自ら見つける萌えポイントに事欠きません)。

意味や内容より、フィジカルな映像の勝った『クローズ』は、「テレビドラマと映画の違い」まで教え直してくれます。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
家族について語らなくとも、対立するヤクザ組織の頭である遠藤憲一と岸谷五郎(源治のパパ)は、今回病気や怪我で倒れる姿を見せる。大人が倒れることは、源治達をいやおうなく卒業へ向かわせる一つの要因かもしれない。
ここには、「あんたもそろそろ将来のこと考えなきゃダメだよ」なんて言うオフクロ的な存在はないけれど、映画のフレームは時の流れを映しこみ、我々の住む日常と切れてはいない。

全ては刹那。一瞬の季節のきらめき。
Tで拳さんが「せいいっぱいまっすぐに生きるお前らにはなんのまじりっけもねえ」と言った時、荒れた鈴蘭の日常が、かけがえのないような時間と空間だったと言うことがわかる。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
汚れまくった街の中で、運河の風景がとても優しく効果的だ。前作と同じく、学校を取り巻く外の映像には鉄さびや港の匂いが漂い、なんだか泣けてくる。

また学内では全く泣きのないドライな映画なのだが、対照的に音楽が泣ける。前作と同じく一曲目は「ワイルドサイドのともだちに〜〜〜」(THE STREET BEATSの『I WANNA CHANGE』)とシャウト。他のどの曲もウェットなロックで泣かせてくれる。



やっぱり、たまらなく好きな映画だなぁ・・・。
ご覧になった方は是非、ご感想をお寄せ下さい。

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rukaさんコメントありがとうございます。
洋画をよく見るのでしょうか・・?私もかつては洋画の方が・・・と思ってましたが、今は日本映画が面白くて見てます。でも『スラムドックミリオネア』は是非観たい!

クローズはケンカと言っても陰湿さや残酷さはないので大丈夫なんですが、やはり2時間自分が耐えられるか心配なのは『彼岸島』です。
耐えられる内容だったら原作と比べて批判されるだろうし、さりとてそのままやられたらあまりにエログロ残虐スプラッター。だんだん心配になってきました。

by きのこ April 22 [Wed], 2009, 8:02

きのこさんこんにちわ
映画「クローズZERO U」を
ご覧になられたんですね
テレビの映画宣伝で「クローズZEROU」を
見ましたが凄まじいケンカですねえ〜
宣伝見た時「うわあ〜!すごい!」と
驚きました^^;

私も今まで見てた映画では
「仮面の男」と
「インディペンデンス」そして「グラリエーター」
「パーイレーツオブカリビアン」などを
見てましたが、まだ見てない映画が
「ウォーターフォース」です。
*伝説のネッシーのお話しだったかな?

by ruka339 April 21 [Tue], 2009, 10:23

追記。クローズzeroTの感想は昨年10月31日、567番の記事にあるので、興味を持ってくださった方はよろしく!

by きのこ April 21 [Tue], 2009, 8:30
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