引き続き伊坂幸太郎

July 09 [Wed], 2008, 2:20


『重力ピエロ』(2003年・新潮文庫)
『アヒルと鴨のコインロッカー』(2003年・創元推理文庫)


引き続き、バッグに携帯と財布と伊坂幸太郎の日々です。

週末は『重力ピエロ』、記事アップのあと一気に読んでしまいました。
週明けからは『アヒルと鴨のコインロッカー』を持って通勤です。

感想も書きたい。
いろいろこの作品群について話したい。
けれど、読んだことのない人には、感想は読まないほうがいいと心から思う・・・・。
白紙のままで一行目から出会いたい。出会って欲しい。

◆◆◆◆

白紙でないと、例えば、『アヒルと鴨』。
これもすごくいい滑り出しなのですが、映画の主演が〇太君だという知識があるだけで、「ああ、これが〇太君がやった役か」と思ってしまったのが惜しい。
鍛えた(?)脳内キャスティング能力がここでは仇になります。(〇太君はお気に入りだし、かなり合っている部分もあるだけになおさら辛い)

ところが、私は途中からこれはやっぱりオダギリジョーではないか・・・?!と思い始め、そうなったらもうオダギリ河崎しか空想できなくなってしまった。
ちょうど半分まで読んだ今の時点の気持ちですが・・・・。

悪魔を思わせる美貌。誕生日の違う女365人の女と付き合いたいというほどの女たらしと見えて、全く女性に恋などしそうにないような冷たさ。奇妙な優しさと人懐っこさと、時々正気を疑うほどの異様な行動。傍若無人で何を考えているかさっぱりわからないのに、時々ひどく傷つきやすそうに見えたりする。
ただし年齢が・・・・大学院二年くらいに見えるというのから考えると『転々』で大学8年生をやったとはいえツライか?ただし私の脳内では、『HAZARD』時代のジョー君が闊歩しています。

サラさんが『オーデュポン』の桜を是非オダギリさんに・・・・と書いてくださいましたが、伊坂幸太郎にはオダギリさんを寄せるものがあります。

まず騙されたと思って、とにかく一冊、買って(借りて、奪って)読み始めて欲しい。
『オーデュポンの祈り』からがいいように感じますが、とりあえず「オダギリジョーでイケル小説」という邪な目的で『アヒルと鴨』(創元推理文庫)でもいい。

『パンドラ』と『ヘドウィグ』も終わったし、磐音様を待つ間、またはオリンピックが始まるまで、ちょうどいいかも・・・(ほとんど番宣のノリか)。

と、さもさも熱心な伊坂ファンのように書いていますが、ファン歴わずか半月でどっぷんこ、です。

後は「続きを読む」の方に書きます。もちろん抑え目ながらネタバレありです。





【重力ピエロ】

まず、新潮文庫で読める『オーデュポン』『ラッシュライフ』『重力ピエロ』の三作を読んできました。

伊坂さんは凄い・・・・この三作、どれも面白さと新鮮さは素晴らしいのに、三作とも全く違った手法の小説ですね。

三作の中では一番既視感があるテーマ。家族の傷の話。弟の出生にまつわる疑問と家族の苦闘。例えば天童荒太にも似たようなテイストの話があるし・・・家族の愛憎(含む殺人)の話というのは、現代の小説のテーマとして一番ポピュラーでしょう。

特に本作はその本命という感じ。美貌で絵の才能に恵まれ、独特の考え方を持つ弟。彼は家族にとってもっとも忌まわしい出来事が原因となってこの世に生まれた。
その彼をサラリと生かすことを決めた血のつながらない父は末期ガンの床にあり、独特なやり方で全肯定的に愛してやった母は早くに死んでしまった。兄は、弟を気遣い心配し、また尊敬し、そしてほんのわずかだが弟の中に理解しがたいものがあることを感じている。
ある事件を家族3人で仲良く追いながら、次第に弟がその中心にいるような疑惑にとらわれる。

連続落書き事件、連続放火事件、遺伝子の暗号、のあと最後に訪れる犯罪。
サラリと軽妙なイメージの確立しつつあった作者にしたら、随分と重い話である。
この作者の『罪と罰』と評していた人もいたような。
しかし読んでいくと、やっぱり作者らしいテイストがいろいろとある。

作者の趣味興味をうかがわせるたくさんの要素が出てくるのは毎回だけれど、この作者に限っては「知識のひけらかし」や「趣味の良さの披瀝」というような嫌らしさは感じられない。

度々登場するボブディランやジャズの名演も、作者がこれまでの人生で折に触れて超越的なものを感じ、何かそこに自分が希求したものがあるように思えた「神の啓示の一端」のようなものなのかなぁ・・・と思うようになった。

『ピエロ』でも、ガンジー、ピカソ、ゴッホ、エッシャー、ラスコーの壁画、ゴダール、マイケルジョーダンのバット・・・・。いろんな啓示アイテムがちりばめられている。

個人的に面白かったのは、バタイユへの抵抗感。黒澤が「あのおやじが嫌いでね」と語り、春も高校のとき何度も読み返した結果否定するに至ったという。
しかし「バタイユを読む探偵」というような言い方には敬意も感じられる。

私は岸田秀で解けないエロティシズム問題に関してはバタイユのみが鍵を握っていると勝手に思っているほどのバタイユ注目派なので、作者が一方ならぬ興味と葛藤を抱いているのを知ってちょっと嬉しくなりました。
「性」の問題が前面に表れている本作において、バタイユの登場は面白いし、この路線がこれ1本で終わるわけがないという予感も感じます。

【大きな画があるようで】

伊坂作品には、一つ一つの作品で完結しない大きな画が背後にあるような気がしてならない。
読めば読むほど大きな画の存在が感じられて、ピースを埋めるように次の本が読みたくなる。

よく言われることですが、伊坂作品では他の作品に登場した人物が出てくる。

『ラッシュライフ』で作者の分身のような感じがした泥棒黒澤が、今度は余技の探偵として登場する(ミステリで一人事件を解いて行くあの探偵さんたちとは全然違うけれど)

また、オーデュポンの主人公伊藤が、青葉山の自殺の名所に現れて春と語る。意味がないようにも思えるが作者が好むという「神様のレシピ」という言葉が心に残る。

けれど、そのようにはっきり当人が登場するばかりではない。
似たような役割を持った特長的な人物が、多くの作品に共通して出てくる。

●神に似た存在、超越し、先を見通すことのできる者が出てくる。カカシや教祖のように。

●また極悪非道、作者によって容赦なく憎まれる存在が必ず出て来る。オーデュポンの城山、ラッシュの大金持ちの画商、ピエロの葛城、アヒルと鴨のペット殺しの若者たち。彼らは作者の意を汲んだ人物によってスッパリ消される事が多い。

●オーデュボンの桜(脇役であるこの人物の印象は凄まじい)、ピエロの春、そして多分河崎も・・・?みな美しく気まぐれで魅力的である。

不思議なことに、伊坂作品において「犯人」は罰されていない。ホームズ・乱歩・京極・そして古畑任三郎に至るまで結局倫理的にはどうあれ探偵的存在によって犯罪は明らかにされ、多分刑罰に服する・・・・このパターンからひどく逸脱している。

そりゃあ今どき二時間ドラマじゃあるまいし、崖の上での告白する犯人に手錠をかける(または海に飛び込む)ような結末は誰も書かないだろうけれど、「彼の罪は露見し、そしてそれは罰(刑事罰じゃなくても)を受ける(だろう)」というパターンが、少なくとも今まで読んできた中ではないじゃないですか!必ず殺人だってあるのに・・・。

桜は孤島ゆえの特殊事情なのかと思うけれど、ラッシュではいくつかの殺人も手から手へリレーされて「あれ?」という感じで終わる。
特にリアル感のある『ピエロ』ですらも、(結末ネタバレだから反転させていただくけれど)、実の父親を殺した弟が自首しに行こうとするのを、落書きをしたことの謝罪に行かせる(仙台銘菓「萩の月」を持って!)ことで済ませるというのは、兄の行動としてどういうモノなんだろう・・・?

考えるとわからない。
ただ、この作品では父親と母親が素晴らしく良く描けていて、彼らが心から慈しんで育てた「最強の兄弟」がつまらないことはしないだろうと思わせる。この四人の家族は愛しすぎるのだ。
ガンに侵されてもふわりとユーモラスで兄弟のことをひたすら見守る父親も、絵画展で春に暴言を吐いた審査員の女性を額で殴ったというような逸話をいくつも持つ母親も(そういえばこの母親も「アヒルと鴨」の麗子さんと重なる人物だ)。
「女性があまり良く描かれていない」と前回書いてしまったがそうでもなくなりましたね。この母親も、ストーカーの夏子さんも魅力的だし、「アヒルと鴨」でも女性達が重要な役割で多彩に出てきます。書き慣れた?(失礼)

『ピエロ』の暗さが「底」なのか、さらに底があるのかもわからない。
ありがちなのは、兄弟愛の陰にある嫉妬や憎しみ・・・というパターンだが、そういうより暗いほうに掘り下げていくものか、この世に萩島を設定するようなウルトラ技があるのか、

伊坂作品はインモラルなのか?
いやそうではない・・・現実に施行されている法ではなく、もっと上からの視点、神というか・・・それよりも鳥といったほうがふさわしいのか・・・。何かそこに作者の真意があるようにも見える。
超越した存在も二段構え。
カカシの優午や教祖高橋のような将来を見通す存在。
そういう力はないけれど美しく直感的で神か死神か悪魔かよくわからないような魅力的な存在。

どの作品もしっかり終わっているように見えて謎はいくつも残ったままになっている。

教祖高橋は何のために出てきてその後何をするのか?
優午を失ったあの島はその後どうなったのか?
桜と泉水はそのまま幸せに生きて行けるものなのか?
あの死体やあの死体やあの死体は、結局誰が殺したことになるのか?

ちょっといろいろ考え込んでしまいましたが。
伊坂作品は、なんの先入観もなく読み始めて本当に面白いし、一気に引き込まれて読めて、すごく心に残ります。当分他の小説が読みたくなくなるくらいです。

だけど、数日たって作品のことをふと思い返すと、いくつもいろいろな謎がさらに浮かんできます。さらには以前読んだ別の本の内容や登場人物のことまで鮮やかに思い返させられます。
本当に不思議な作品群で、ますます惹かれていくのを感じます。

長年の伊坂ファンの皆様、わずか三冊半読んだだけでこれだけ語りたる私を、どうぞ微笑んでお許しくださいませ。
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ゆりさん、お返事コメント昨夜書いたのに自分で承認し忘れて寝てしまいました。すみません。陽水オダギリさん堪能しました。昔の曲なのに6分超の長尺PVだったのが意外でした。それにしても横浜桜木町駅前というのがいいですね。・・・山崎まさよしの名曲を思い出します。

rukaさん、ブログなさってるんですか?良かったらURL教えて下さい。犬の話はあまりわからないのですが、是非覗いてみたいと思っています。
私もかつて一時ですが盲導犬を連れた方と親しくする機会があり、本当に人間の家族以上にその方にとって大切なかけがえのない存在なんだなぁとつくづく思いました。全然足りないのだそうですね。大変なことも多いと思いますが続けて欲しいと思います。
耕史君のCMの話は夢のような情報で、いっときいい夢が見られて良かったですね(ということにするしかないですよね)耕史君は大きめの犬が似合いそうです。

ちょっと記事の話をすると、今日読了した伊坂本『アヒルと鴨のコインロッカー』は、ペットショップが重要な舞台となり、また許せないペット虐待の話が出てきます。悲しくて又複雑な思いにさせられる話ですが、これも心に尾を引きます。
これから(0:30〜)WOWWOWで映画を放送するので、小説の前に映画でも良いと思います。(宣伝でした)

by きのこ July 10 [Thu], 2008, 23:42

きのこさんこんにちわ
1時2分ごろに書きました
山本耕史さんが介助犬CMに
起用されるお話しですが
同じ方からお返事をいただきまして
*私のブログへ
どうやら見間違いをされたそうです
介助犬のCMに出演されるのは
介助犬を使用されてる方が
起用されるそうです
ご迷惑をおかけしました
でも本当そうなってほしいなあ〜と
思いましたよ。

by ruka339 July 10 [Thu], 2008, 14:51

きのこさんこんにちわ
小説とは関係ない
お話しになりますが
実は私ブログをしてまして
ブロクにこられた方の情報を
聞いたのですが
今日か?昨日か?の
日経新聞夕刊に
山本耕史さんが介助犬CM現役起用と
ゆう記事があったそうです
正直盲導犬CMだったらなあ〜と
思ってましたが^^;残念

でも盲導犬も介助犬も
同じ仕事犬ですからね
その情報を聞いた時
「願い事が少し叶ったのかな?」と
思い、盲導犬ボランティアを
していて良かったです。

by ruka339 July 10 [Thu], 2008, 13:02

ゆりさん、とれたてジョー報ありがとうございます。
オダギリさんがプロモーションビデオに登場するということで、「弾き語りパッション」では陽水さんの歌声なんですよね。もしかするとTVでこのオダギリ映像に陽水歌が重なるんでしょうか?もしかしてそういうドラマも考えてる・・・?だったらすごく嬉しいんですが。
ちなみに、世代柄リアルタイムで陽水が大好きでした!

ご多聞に漏れずオダギリ日照りでしたが、『たみおのしあわせ』の初日舞台挨拶で今度こそ初めて生オダギリに会いたいとひたすら祈っています。しかしどうしてもピアプレリザーブが上手く行かなくて・・・。今週末の発売日にちゃんとゲットできるか心配です。
遠くからでもいいから一目お会いしたいなぁ・・・。

by きのこ July 09 [Wed], 2008, 23:29

追加ジョー報v
明日から視聴出来るようです♪

http://www.forlife.co.jp/inoueyosui/

by ゆり July 09 [Wed], 2008, 16:00

先日、あちこちのブログにて目撃ジョー報が寄せられてました井上陽水さんPV撮影!
ホントでした♪

http://www.oricon.co.jp/news/confidence/56180/full/

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080709-00000571-bark-musi

by ゆり July 09 [Wed], 2008, 11:05
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