ドーキンス説と岸田説は矛盾しない―利己的な遺伝子@―

September 20 [Thu], 2007, 2:13

リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」(THE SELFISH GENE)ようやく読み終わりました。

これは面白い!やはり読んでよかった本でした。(棚旗さんまさんありがとう)
単純にして美しい仮説は、それだけで感動的です。そして、あてはまる範囲がとっても広い。

なるべく、多くの人に記事を読んでもらいたくて、自分の理解した範囲をできるだけ単純化して書きたいので、そのあたり大目に見てください。

【簡単に単純に】

まず第一原理。
生物は、遺伝子(ジーン)の乗り物(ビーグル)に過ぎない。

成功した遺伝子(現在多く存在している遺伝子)の特徴の第一は、無情な利己主義である。

しかし、遺伝子にとっての利己とは、単純にその生物個体の子孫が増えることではない。

遺伝子の目的は、単に自分の今乗っているビーグル(生物)の子孫が増え、自分の複製である遺伝子が増えることでもない。

生物界全体に広がっている遺伝子すべてを「遺伝子プール」と考える。

遺伝子の利己的目的は、そのプールの中での自分と同じ遺伝子を増やすことである。
ほぼ遺伝子的に近い兄弟や従兄弟を助けるために自分を犠牲にすること(利他的行動)も、この考えから説明していける。

利他的、自己犠牲的に見える行動でも、遺伝子のやることはよくよく見るとすべて理に適っている。
遺伝子プール内に自分と同じ遺伝子を増やすという意味では合理的で利己的なのである。(利己的でない遺伝子を持った種は、やがて淘汰によって滅びる。)

翻って生命とは何か、といえば、「自己複製するシステム」である。(納得できなくともとりあえずそう思って欲しい)

自己複製するシステムとしての遺伝子は、自分の遺伝子を少しでも増やすためにありとあらゆる戦略を行う。
(無論意思があってやるわけではない。結果的に少しでも進化的に安定な戦略をとった遺伝子が増えていく、ということである)

自然界において成功する遺伝子の特徴は「長命、多産性、複製の正確さ」の三点である。

」遺伝子が増えていくために「進化的に安定な戦略」を「ESS」と呼ぶことにする。
(一時的に急に個体数が増えても、将来的に安定性がなく絶滅するようではESSとしては失格)


メチャクチャ単純にすると、以上のようなことが基本だと思いますが・・・。(主に1〜3章)

この「利己的遺伝子」論で、生物の進化も、共生の不思議も、昆虫の利他的行動も、なぜ性別があって減数分裂をするのかも、すべて説明できる。本能的行動すらも。
る。

【本能の定義にはドーキンスが必要】

長らく「人間は本能が壊れた動物である(岸田秀)」の「本能」とは何かと探してきたけれど、この美しい、「利己的遺伝子」説と「別に」本能を見つける必要は何もない。

遺伝子が、自らのESS(進化的に安定な戦略=一番安定してその遺伝子が将来増えていく方法)のために、生物の神経機構(脳や脊椎や延髄など)に組み込んでいるプログラムのことを本能という。

・・・・というのが、抽象的ながら、私は一番わかりいいと思います。
蜘蛛がああいう巣を作るのも、渡り鳥が季節を覚えて移動するのも、文化ではなく、「生まれつき持っている能力=本能=あらかじめ最適にプログラムされたもの」。

私の読んだところ、人間(と一部の類人猿)を抜いた範囲ではドーキンス論はほぼ完全にあてはまる。

社会性昆虫のように複雑で、道具として生きているだけの個体が多い種についても、じっくり数学的な説明(でも数式がないので安心)を聞けば、なるほどキレイに説明が付く。ドーキンス仮説があまりに美しく応用がきくものだから、あらゆる事象にドーキンス論を当てはめて飯の種にしている人も多いんじゃないかと思うくらいです。

これは、岸田説と似てますね(私もあらゆる場面で岸田理論を使いたがります)
。第一原理がシンプル極まりなく、不明なぼんやりしたところが何もないから応用範囲が広いのでしょう。

では・・・・この2つの理論は並び立つのか??

「本能が壊れた」とはドーキンス的にはどう説明できるのか?

利己的遺伝子論ではどうにも説明の付かない人間の諸行動について(小山田様が側室が生んだ前夫の子が死ぬの悲しんだように・・・遺伝子論からは、他人の子供を育てるのは間違っている)は、ドーキンスはどう説明するのか?

それは意外にあっけなく、四章「遺伝子機械」にて明らかになりました。

【遺伝子機械の進化の果てに】

遺伝子機械とは、生物を遺伝子の乗り物と見た呼び方です。

「自己複製子」が生まれたもっとも初期には、むき出しのDNAが原始のスープの中に漂っていた。それが次第に蛋白質の膜を持つ(単細胞生物のこと)ようになると、膜を持たない遺伝子より膜のある遺伝子の方がESS的に有利だったため、生物は細胞を単位とするようになった。

ドーキンスは、生物の身体を遺伝子のコロニー(植民地)、細胞を遺伝子の科学工場と考えています。

また、生物は自分の身体を守るため(体の中の遺伝子を守るため)、外敵に対して鋭い牙ら、速い足やら、強い嗅覚やら、それぞれの武器を備えています。

さて、それでは人間は・・・?と言えば、子どもの時良く聞いたように、人間は、鋭い牙も速い足もないけれど、大きな脳があり、考える力がある・・・というわけですね。

考える力の発生・・・その過程は、遺伝子がどのように未来を「予言」するかという話に始まります。

それはリスクを伴う、一種の賭けであるが、遺伝子は生存機械に、平均してうまく行く決定を下すように神経系をプログラムしておくしかない。

別な方法の一つは、生物に「学習の能力」を組み込んでおくことである。
報酬となるリスト(甘味、快感など)と嫌なことのリスト(苦味、苦痛)を与えておき、「嫌なことが起こったらもうしない」「いいことが怒ったら繰り返す」というプログラム。

このプログラムの利点は、プログラムに組み込む細かい規則の数を大幅に減らせること。予測できない環境の変化に対処できること。

しかしこの「学習」は、基本的に試行錯誤を繰り返すことになる。一度で死んでしまうような試行は、学習にはならない。また甘い味の毒や、砂糖の取りすぎによる健康の害などは予測されていない。

さらに進んだ「未来を予言する」方法は、「シュミレーションの能力」。
いくつかの選択肢を考え、それぞれの道をとった時にどういうことが起こるかを「想像する」。

「意識」が生じるのは、脳による世界のシュミレーションが完全になり、それ自体のモデルを含めなくてはならなくなったときであろう。

おおおお・・・・私の興奮状態をよそに、ドーキンスは続ける。

主観的意識・・・なぜそのようなものが生じなければならなかったかは、現代生物学の前に立ちはだかるもっとも深い謎である。

意識とは、実行上の決定権を持つ生存機械が、究極的な主人である遺伝子から解放されると言う進化傾向の極致だと考えることができる。

脳は遺伝子の独裁に叛く力さえ備えている。例えばできるだけたくさん子供を作ることを拒むなど。

おお、これぞ「本能が壊れた」といいうる状態??

遺伝子は行動に基本的なチカラを振るっている。
しかし、次にすることを一瞬一瞬決定してゆくのは神経系である。

遺伝子は方針決定者であり、脳は実施者である。
しかし脳はさらに高度化するにつれて、次第に実際の方針決定をも引き受けるようになり、その際学習やシュミレーションのような策略を用いることになった。

この傾向が進めば、論理的には結局、遺伝子が生存機械にたった一つの総合的な方針を指令するようになるであろう。つまり、「我々を生かしておくのにもっとも良いと思うことを何でもやれ」、という命令を下すようになるであろう。

ああ、これはつまり・・・・遺伝子機械(生物)が進化し、脳が意識(多分岸田説による自我や文化や宗教やなどの「幻想」、栗本慎一郎的には「パンツ」)を持つようになり、ESSをいちいち精密なプログラムとして生物に組み込んでおくことを徐々にやめ、意識に自由と自主権を与えることなのじゃないだろうか?

しかし、現代の人間レベルでは、あらかじめ組み込まれたESS的完成度の高いプログラム(本能的なもの)に比べ、意識の作り出したESS(正しい生き方やらあるべき人間やら)は、間違いが多い。生物の本能に比べると、結果的に矛盾だらけ。戦争、快楽的殺人、誇大妄想的支配欲、自殺、セックスレス。
利己的遺伝子も、人間に「意識を持たせること」がESS的に正しかったのかどうか、頭を悩ませているんじゃないだろうか・・・・。結果はまだ出ていない。

遺伝子の「進化的に安定な戦略」のもとに生物の神経系に施されたプログラムが、人間においては脳が学習やシュミレーションをするために、大幅に省かれている。
これが、「本能の壊れた状態」と言いうるんじゃないでしょうか?
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