「おろかで、好きじゃ」 ―「風林火山」第36回ー

September 10 [Mon], 2007, 2:53
(記事アップ後しトラブル?内容の大半がゾックリ抜け落ちたようです。9月11日直しました。できれば読み直していただけるありがたいです)

【突然の衝撃】

「風林火山」ももう第36回、終盤も近いのですね・・・。
今日は36回「宿命の女」。
特になんとも思わず見始めたのです。そろそろ小山田信有の最期が近いのも知っていたけれど、まさかまさかそれが今日であったとは・・・!それもあんなにあっけなく、あっさりと・・・・!

【始まりはごくコミカルに】

あわよくば於琴姫を刺殺に行く勘助は、勘助を慕う原虎胤の娘リツに出会って茫然。
内野聖陽さん、このところ意識的に身につけているかのようなコミカル演技。
「ヤバイ・・・!」と目を引ん剥いて、口を下のほうでひん曲げる、あの顔はキュートです。

ところでこの二人すごくお似合い!勘助、こっちになさい・・・!
(惚れてくれる女に世話焼いてもらって、今からでも山内一豊様みたいな幸せモノになれるよ!!)

琴「その顔はいつから?」
勘「この顔は生まれつきでございます」
琴「まあ、かわいそうに。そんな恐い顔で生まれつくなんて」

怒る気もなくなりますね。天然堂々たる姫様です。
子供がいることも隠す素振りもなし。
由布姫のことを聞いても「私より、美しい方ですか?」

本当に困っている勘助カワイイ。由布姫命の勘助に、どう答える術があるのでしょう・・。
いつまでも由布姫にばっかり忠義立てすることもないのにね・・・と思わず気楽に考えてしまう。
信虎に敗れた武将の娘であるから、於琴姫は由布姫と同じ立場である。
しかしあっけらかんと強い和子を生みたいと言う於琴。

勘助「姫様は美しい。お心が美しくあらせられます」(由布姫にはかなわねぇという気持ち)
琴「心もか?」
脇でリツが笑いをこらえている気配。

於琴姫は産まれた子は四郎様の下になるのだと承知してくれた
→勘助は姫様も和子様も守る、と約束。
このくらい鈍感でいいのだ、というこの後の展開への伏線?

この後のリツとの目配せがいい。リツ≒ミツ、ピッタリじゃないですか・・・!
勘助「(脇のリツをしっかり見て)よろしいな」
リツ「父上には言わぬ」
勘助「(しつこく振り向き)まことじゃな」
リツ「くどい」まるで、吹き出して笑ってしまいそうなところを、無理に仏頂面を顔を作っているような勘助、なかなかよろしゅうございまする。それにしても似合ってるなぁ・・・。

この回の背景は今川との駆け引き。こちらから娘を差し出す代わりに嫡男太郎の正室を今川から迎えようという勘助の対駿河戦略。
晴信の悩みは、後に今川を攻め滅ぼした時に太郎が自分を恨みはせぬか、ということ。(人間的に成長しましたね・・・・女癖以外は)。

今川トリオ(義元、寿景尼、雪斎)の疑いを、知将駒井君が水際で返すところが鮮やかでした。「それは、不吉なものを読み取った駒井の機転であった・・・」カッコいいナレーション。

【勘助、小山田を訪ねる】

用向きは、今川との婚儀に際し、北条との取次ぎ役を小山田に頼みたいとのこと。

勘助「そのお取次ぎ役を小山田様にお願いしとうござりまする」
小山田「ほう、それはお屋形様のお下知か」ははは、あいかわらず、こそこそとお屋形様に取り入っておるか」

小山田様らしい皮肉ではあるけれど、もはや悪意は感じられない。気心の知れた友人に対するような軽口。

勘助「これは異なことを。それがしはお屋形様の命を受けて動いているに過ぎませぬ」(汗をかきかき・・・の勘助)
小山田「お家に叛くことはないか」
勘助「ございませぬ」
小山田「この先、今川家と戦を構えることはないと申すか。もしあらば、御曹司様、太郎様を裏切ることになろうぞ。そうなれば、誰が得をするかと思うたのじゃ。誰がもっとも喜ぶかと思うたのじゃ。それは、諏訪の・・・」
勘助「(必死で遮って)小山田様・・・・」
小山田「フフフフフ・・・おなごは怖い。そちのことを恐いと思ったことは一度もないが、おなごは恐ろしいのう勘助。ことに、子のためを思うおなごは。そなたのことをわしは、今ならば解せる」

謎のようなことを言って人払いする小山田様。

小「勘助、そちは、美瑠姫のことをどこまで存じておる」
勘「(略)何も存じてはおりませぬ」

疑惑を話す小山田様。小山田と美瑠の間に子どもが生まれたが、二月も早かったと明かす。驚く勘助。
小山田は前夫の子であろうと疑っており、疑いは今でも晴れていない。

小「しかしわしは、そうであっても、美瑠を憎む気にはなれぬ。わしの父はかつて、武田に負けた。家を守るために武田に下った。そのおかげでわしは領地を継ぐ事ができた。
美瑠のしたことは、したことは・・・真にあっぱれ。そうは思わぬか」

勘「何ゆえ、それがしにおあかしになりますか」
小「面白いからじゃ・・・・実に面白い」
笑う小山田様。
「そちは、由布姫様を支えてやれ。武田のことよりも由布姫様のことを思うて生きておるそちが、わしは、愚かで、好きじゃ」

ここでガーン、と来ました。
小山田様は勘助を見抜いている。
勘助はお家よりも、由布姫様に殉じようとしているのだ。報われずとも、何の損得もなしに、狂気のようにそう思っていると。
そして、自分もまた勘助と同じように狂っているのだと。たかが一人の女のために狂っているから、勘助に語りたかったのだと。「今なら解せる」とはそういうこと。

まるで、遺言のように、勘助に思いのたけを打ち明けている。やめて小山田様、そんなに透明にならないで。
挫折した野心ゆえのアイロニーも、仇に外様として仕えねばならぬことへの鬱屈も、裏を見てきたがゆえの人の足元を見抜く目も、どこに行ってしまったの?

そして続く、信じがたいような愛の言葉。
「わしは、美瑠を好いておる。美瑠が安堵して眠る姿を見るのが、なによりも好きじゃ。
これほど、愚かなことはなかろう」
勘助の目を見て、いっそ明るく話す。楽しい冗談のように。
皮肉屋だった小山田様はそこにはいない。
もう、何も欲しくなどないようだ。このままで良い。家督など、弟にくれてやって良い。欲しいものはもう手に入った。ただ一つの気がかりは美瑠の子の身体のこと。
「しかしその子が病での。よくなればいいが、美瑠にとってはようやく、ようやく生まれた子じゃ。助けてやりたい」

【悲劇のドミノ】

そこへ屋敷より使い。小山田の願い空しく、牛王丸が死ぬ。

呼べど呼べど目を開けぬわが子に、抱きとめる小山田の胸に泣きながら身を投げる美瑠姫。(真木よう子は「ゆれる」の時のように、情熱的で悲劇的な役です)。

抱きとめながら複雑な表情の小山田様。どう見るのか。美瑠を。美瑠の子を。
「さだめじゃ。恨んではならぬ。強く生きるのじゃ。美瑠。わしは、そなたの側から離れぬ」
愛の言葉なのだと思う。しかし、その胸の中の美瑠姫には別な表情。

そこに生まれたのは、新たな恨みなのか、疑念なのか。
自分は何をしているのだ・・・亡き夫の子を産み、それを人知れず育てていくことが自分の使命だったのに、それを果たせず、仇の家来である男に身を投げている。
これ以上愛してはならぬ。自分も、小山田も幸せになってはならぬ。夫に、殿に、わが子に申し訳ないのだ。

年が明けて激震。

晴信「小山田が寝首を掻かれた?」

小山田の弟弥三郎(浅利陽介)が報告に来る。
「悲嘆にくれる側女の恨みが武田家の家臣である父上に向けられたと思います」

白い寝間着で布団にうつぶせる小山田様。死に顔は美しいが、微笑んでは居ない。起こったことを、ただそのまま受け止めたようにも見える。

美瑠はフラフラと雪の中を歩いていた。
「父上、殿、牛王丸、仇は、討ちましたぞ。仇にこの身を任せた子の私をお許しください。仇敵を愛した私を・・・無慈悲な定めよ。これでお気に召されたか!!
朝日に照らされ、首を突いて死ぬ。叫ぶような最期のフレーズに気性の激しさが出ているが、最後に小山田への愛を認めずにはいられなかった・・・。

【戦国メロドラマ〜最初から今まで〜】

小山田様が「狂い」始めたのは26回「苦い勝利」だった。
志賀城の奥方美瑠姫に一目惚れし、戦勝の恩賞として貰い受けようとする。
「諏訪攻めにてそちがお館様へ勧めたことと同じであろう。それとも、お館様には和子様が生まれ、このわしは寝首をかかれるとでも申すか?(不気味な高笑い)」

志賀城の頃、晴信も狂っていた。敵の生首を並べ立てさせ、女子どもは市を立てて売り払った。
小山田様も、落城の炎の中、勘助に鬼畜めいた狂った笑いを見せていた。

しかし第27回「最強の敵」では、小山田様の実は純粋な略奪愛は、もう証明されてしまった・・・。
「わしは一目で惚れたのじゃ」「そなたはここで幸せになるのじゃ。しばらくはゆっくりと休むが良い」・・・
少し展開が速すぎて、予想通りだけど、もうちょっとじらして欲しかった。
「幸せ」なんて言葉、時代劇には似合わない。ましてや小山田様には・・・と思った。

美瑠姫が早急に身を許したのは、もちろん前夫のタネを小山田の子と偽って残したかったからに違いない。

でも多分、小山田様はわかっていたのだ。愛する姫の心の中に、何があるか。それでも愛した。お腹の子ごと守ろうとし、幸せにしてやりたい、と願った。そうすることが、自分の今まで空っぽだった部分を、埋めてくれるのを感じていたのだろうか。

小山田様の静かに続いていた暗い情念・・・父の犠牲によって生きながらえている自分への罪悪感、仇の元に仕えて生きる屈辱感が、激しい情熱の美瑠に出会って「愛」という形で燃え上がってしまった。

だから、美瑠姫も、小山田に惹かれ、次第に心も小山田を受け入れ、それが美瑠姫の罪悪感となった。

まるきりメロドラマだ・・・。
典型的な・・・・。韓流か、昭和前半か・・・。
だけど夢のような、とても切なくて美しいメロドラマだ・・・。
はっきり言って、好きだ・・・。
泣いてしまった・・・。

【晴信と勘助に残ったもの】

晴信は、己の罪を自覚した。
志賀城における無慈悲なやり方がこの遠因となったのだ。駿河の姫を娶り、駿河を滅ぼそうとしている自分はなんなのか、考えたに違いない。
由布姫や於琴姫に、いつ寝首をかかれてもおかしくない自分の立場にも、思いが至ったでしょうか?(案外気づかなかったりして)

勘助は、疑念の渦巻く満座の中、涙を溜めて言う。
「さにあらず!さにあらず・・・」

「小山田様は、わが子のごとく、そのお子をお育てになろうと思われていたのです。報われずとも、わが子のごときに育てようと。小山田様のご心中、何一つ偽りなどございませぬ。なにとぞ、お察しくださいませ!」
勘助は、自分のことを語っているのだ・・・。由布姫に寄せる思いは本当でも、四郎を自分の子のように思って育てていても、晴信に対する気持ちには一点の曇りもないと。

報われずとも・・・。
・・・いや、十分に報われているのだ。
存分に愛することができれば、側にいて守ってやることができれば、愛されることなど求めない。求める必要もない。

だからずっと言ってるじゃないですか。「武士道とは、無償の愛」だと。

板垣、甘利の壮絶な死にざまも良かったけれど、繊細な小山田様らしい純愛メロドラマも、ツボにはいりました。すごく。
やや唐突で短めなのは仕方がないけれど、見事に完結させてくれてありがとう。

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ままこっちさん、魅力的な問題提起ありがとうございます!
「利己的遺伝子」説では、「自分の種でもない子を育てずに済んで良かった」ですが、もちろんそうは思いません。

以下思いつくままに。

小山田様は自分の父が武田に降伏し、そのおかげで自分が領地を継げた、ということを生涯重荷にしていた。
譜代の家臣たちと違い晴信への忠誠心はないが、家臣団の中で役立つ存在であり続けることで、領地や一族の安定を保ってきた。小山田様の皮肉な性格はこれが元。

>美瑠のしたことは、したことは・・・真にあっぱれ。

仇の私を騙して亡夫の子を後世に残し、いざとなったら私を殺しもするだろう。苦い忍従を選んできた自分にはできない生きかたを美瑠は見せてくれた。

だからこそ、愛しい。自分や領地や成功などどうでも良くなってしまうほどに。
男としては「これほど愚かなことはない」けれど、美瑠の安らかな寝息の側に寄り添うこと以上の幸福などいらない。

「愚かで、好きじゃ」は、勘助より自分に向かって言ってるんでしょう。たかが一人の女のために狂ってしまった自分が、実に面白い・・・。

美瑠の復讐に手を貸してやろう。自分ができなかったことを、美瑠はやるかもしれない。
騙された馬鹿な夫になって、美瑠と子どもを一生守ってやろう。こんな気持ちを美瑠に語れば、あの一途な想いが崩れてしまう。恨まれたまま、騙されたままでいい。

美瑠の子が死んだとき、そのような自分の思いが崩れてしまうのを感じた。
美瑠の思いを遂げさせてやることができなかった。
しかしそれは私や小山田家ににとって幸運なことである、と家中には思うものも多かろう・・。

運命の皮肉に、己の無力さがふと笑えてしまったのかな・・・?と思う。美瑠も自分も、運命の前ではただ弄ばれるばかりでしかないから。

しかし力強く「恨んではならぬ。わしは、そなたの側から離れぬ」と言う小山田様は、二人で新しい人生を生きて行こう、ともう一つ別な展望を持ったようにも見える。

だが絶望し、小山田を愛してしまったことさえ罪であると思った美瑠は、小山田の差し伸べる愛に我が身を委ねることは許せなかった。
死に行く小山田様は、「それでこそあっぱれ、私の愛した女だ」と思ったのではないでしょうか。

うーん、私が考えるとだいたいそういう方向に行きがちですね・・・。そちらにもお邪魔します。

by きのこ September 19 [Wed], 2007, 23:28

きのこさん(亀コメントですみません)
#36、ワタクシ的に最大の謎は、子どもが病死した時に泣き崩れる美瑠姫を抱きとめる小山田殿の「ふっ」という微笑み、なんです。
いろいろな意見をblogで読みましたが、どうもしっくりこなくって・・・きのこさんだったら、どう解釈されるかな?と思っていたんですが、その辺はいかがでしょうか。
話はいよいよ終盤ですね!こんなに面白い大河に、3年ぶりにあたって本当に楽しかったので、終わりに近づいていくのは残念ですが、これからも毎週「ガン見」していきますーーー♪

by ままこっち September 19 [Wed], 2007, 9:19
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