輪郭のない人間たち 映画『その夜の侍』感想

December 23 [Sun], 2012, 8:50
映画『その夜の侍』

またまた堺さんの作品です。
今注目度が非常に高い俳優同士、山田孝之とのがガチンコ対決。

堺雅人がその笑顔を封印し、妻を殺した山田孝之への復讐を誓う中年男を演じるということだった。
ぶ厚い眼鏡にくたびれた作業服姿の堺さんの写真を見たときに、観る!と決めた。

『その夜の侍』というタイトルにも、悲しい男たちのストイックで救われない復讐劇、壮烈極まりないフィルム・ノワールなんじゃないかなぁ・・・と勝手に想像して楽しみに公開日を待っていた。

そう思って観に行った私のような人間は、愕然とするはず。

鑑賞後いろんなことを考えてしまったものの・・・・感想がかけないまま早一月。
この映画に対する自分の思いがどうもつかみきれないままでいた。
嫌悪感か、共感か、リアルか、同情か、おかしさか・・・・?
何か書きかけても、それは自分の本心をすくい切れていないような感じがするのだ。
ただ、とりあえず感想でも書かないと、この映画の奇妙な湿り気やみたいなものからわが身を引き剥がせないように思うので、なんとか書いてみる。

【注目すべき二人の俳優】

山田孝之と堺雅人、もはやどんな役でもできそう。
聖人君子でも、人間のクズでも、いじましい小市民でも、愛されるバカでも、カッコいいヒーローでも、かぶりもの役でも、人間以外のものでも。
完成されたベテランでも、人気先行の若手でもなく、次に何を見せてくれるか予想のつかない役者一本。だから興味が尽きない。

山田孝之は、『ウォーターボーイズ』のヘタレな高校生が可愛くて、その後の変貌をあれよあれよという感じで見ていた。『クローズZERO』での不良ッぷり、『闇金ウシジマくん』『勇者ヨシヒコ』でのはまりッぷりも驚いた。最近の『悪の教典』と『のぼうの城』でも「チョイ役にしてヒドい役」といってもいいような役だがさばさばとこなしている。
でも、『その夜の侍』の木島は、山田孝之史上でも間違いなくもっともヒドい役。これ以上ヒドイ役はちょっと思いつかない。(山田自身は、「すごく普通」と言ってるけど)。それでも、アップの顔にはドキッとするような変な色気が横溢している。それは確か。

堺雅人もなんでも出来るんだけれど、これまでは割合求められる役に共通項が多かったように思う(特に映画)。『ゴールデンスランバー』『ツレがうつになりまして』『鍵泥棒のメソッド』『ジャージの二人』・・・「愛されるヘタレ」ばっかりですね。
『南極料理人』『武士の家計簿』『ジェネラル・ルージュの凱旋』みたいな「優秀だけど、ちょっと変わった人」の役とか、脇役になれば、真面目で不器用なエリート、というのも多い。(『新選組!』『南極大陸』『日輪の遺産』)。ニセ外国人詐欺師というのもあったけれど。
堺さんは今年ブレイクしたと言える。『リーガル・ハイ』は多くのドラマファンを唸らせる素晴らしい出来だった。『大奥』でも難しい役に挑戦。そして『侍』。
この三作品を観比べると改めて驚きますぞ。

【観たかった?観たくなかった?こういう堺さん(この項、飛ばしちゃっていいです)】

ヘタレやダメ男も多い堺さんだけど、この映画は極北的にダメで、またそれがいつものようなほのぼの感にもつながらない。またなんと言ってもビジュアル的にここまで行っちゃったというのも凄い。
映画の出来とは別として、私がおぼろげに期待していた堺さんとの落差が激しかった。

小さな鉄工所を経営する中村健一が堺さんの役。
妻をひき逃げによって失い、生きる気力を失った男。出所してきたひき逃げ犯の木島宏に復讐することを目標にして生きている。(実は生きるために復讐という目標を持ったという方が適切か)

ヴィジュアルは覚悟していたものの、ちょっとショック・・・。
あのヘアスタイル・・・朝起きたまま鏡など多分見ることもないんだろう。汗ばんだ前髪が額に張り付き、頭髪が薄くなりかけている雰囲気すら感じさせるんだからすごい。
いつも同じ服装。上着代わりの作業着、汗で変色しているTシャツ。
設定が真夏だということもあり、汗の臭いや、鉄工所の鉄の焼ける匂い、古い日本家屋の湿けった畳やふすまの匂い、商店街の匂いなど、じっとりと画面から立ち上がってくるよう。

分厚く大きめな眼鏡は、ひどく汚れていて表情がろくに見えない。眼鏡の奥の眼がおどおどと小さい。まともないきいきとした表情も少なく、どんよりと鈍い顔つき。
笑顔がまったくと言っていいほどないけど、後半のグダ泣きはいくつかある。(無表情のほうが不可解で気味が悪くて面白い)

なんと言っても驚いたのは、臍の上まで来るような大きなよれよれパンツと、パンツのゴムの上に乗った、ぷよぷよたるんだ腹回り。全体は痩せてるくせに、プリン依存症のために糖尿になりかかっているのだという。
むむむむむ・・・・役作りとはわかっていても、目の当たりにするとかすかにショックがないと言えばウソになる。

まあ、ファンなら堺さんの役の広さを知っているから、「腹プヨ」も役作りだとわかるし、堺さんのダメージにはならないと思うが・・・。
二枚目で腹プヨが許されるライン(ファンが減らない)とはどのラインなのだ?佐藤健や生田斗真だったら役者生命に関わる。中井貴一や佐藤浩市なら許されそうだが高橋克典や三上博史は?山本耕史は?
いや、堺さんも『大奥』トップの美形であるということを思うと・・・つらい人にはつらいかも。

だけど、これで堺雅人の役の幅は、さらに1.5倍くらいに広がった!吹越満の守備範囲のあたりまでは行ったかも。
・・・・いや、すみません。いくらなんでももう腹プヨの話はここまでにしましょう・・・。

以下、内容に関するネタバレを含みますのでご注意ください。
今後鑑賞予定の方はその後に・・・・。






・・・ゴメン、また長いです。







(ミニミニあらすじ)
5年前の8月、健一の妻は自転車で帰宅する途中、木島宏(山田孝之)が運転するトラックにはねられて死亡。木島は逃げたものの、結局は捕まって服役して出所してきた。健一は生きる力を失う。
事故から5年経つ日が近づく頃、出所した木島の元に健一からと思しき脅迫状が届くようになる。
「お前を殺して、俺は死ぬ。決行まであと○日」
次第に「その夜」が近づいてくる・・・・・。

以上、ごく単純な話なのだが、その復讐劇に登場する人間たちと、彼らが繰り広げる奇妙なシーンがこの映画の見もの。

しかし、「緊迫した魂のぶつかり合い」だの、「重厚な人間ドラマ」だの、「人間の心の奥底をあぶりだしている」だの、なんだかそういう誉め言葉がどうもしっくり来ない感じがするのだ。

人間たちはひどく歪んで奇妙のようにも見えるが、彼らこそがそこかしこにいる「ごく普通の人間」のようにも感じられる。

【復讐する健一側の人々】

《主人公健一》
妻が死ぬ直前に留守電に吹き込んだメッセージが切ない。
「ケンちゃん、ケンちゃーん、聞いてる?またかくれてプリン食べてるんでしょ?」で始まる、日常のなんでもない言葉。

健一は、妻のメッセージを何度も何度も再生し続け、妻の衣類の匂いを嗅ぎ続けて生きている。葬式直後だろうと思って見ていたら、5年経過していたというのに驚いた。この演出がうまい。
妻が死んでから、健一の時間は止まったままなのだ。
帰らぬ妻との時間が失われたことをどうしても自分の中に位置づけられない人間の弱さ。滑稽さ。惨めさ。それがこれでもかと延々と描かれる。
笑いもあるが、見続けるのがつらくもあった。
遺骨の四角い風呂敷包みも、長机の上に置いたまま。
衣服だって五年前と同じように妻が脱いだ場所にそのまま置いてあるんじゃないかな。いつも妻に「糖尿になって死んじゃうから」やめるように叱られていた、プリンのバカ食いもやめられない。もはや依存症。

《義兄青木》
妻の兄青木(新井浩文)は教員。「おれ、健一さんには幸せになってもらいたいんだよ」と言い、なにかと親切に世話を焼こうとする。職場の女教師を健一の後添えにと考え、紹介もしてくれる。
彼の親切はあまり歓迎されているようには思えない。
健一が「たわいのない話をしよう」と縋りつく人間から、青木は微妙に外れている。
それは、青木のまともさが、自分のだらしなさを批判しているようで、苦痛に感じられるのかもしれない。
兄妹そろって口うるさいタイプだが、妻の口うるささはあんなに再生するほど恋しがっているのに。(いや健一は、生前は妻の電話にもうるさがって出なかったね)

紹介された女教師は、こんな健一を受け入れようとしているようにも見える奇特な女性。
彼女に妻の得意料理について聞かれ、健一が答えるシーンが面白い。
「カレー・・・いつも大量で、水っぽくて、具が大きくて、火が通ってない」のだそうだ。それでもそのまずいカレーのある生活を失ったことが耐えられない健一。
「私は、あなたと結婚できるようなそんな男ではありません!」と必死ではねつける。

《従業員たち》
鉄工所の作業員である佐藤(でんでん)や久保(高橋務)は健一のグダグダな日常をやんわり受け入れている。まさに健一の望む「たわいのない話」ばかりしている、理想の従業員?
(それにしても、あの状態でこの鉄工所が5年普通に持ちこたえていることが信じられない・・・・)

健一の側の人間たちは、木島側の人間たちに比べれば少しは、優しさや思いやりを持って生きているように見える。けれど別な種類の人間というわけでもない。

《歌のうまいホテトル嬢》
健一が復讐決行日の前に一夜を過ごそうとする、ホテトル嬢(安藤サクラ)も奇妙な味わい。健一が「君はなぜ、こんなことしているの?」と聞くと「暇だから。ものすごく暇だから」みたいな答え。
彼女がベッドの上をステージにして『三日月』を歌い上げる。上手すぎて、笑ってしまう。
自堕落なんだけど、ものすごく普通にも思える。

【復讐される木島の側の人々】

《ひき逃げ犯木島》
木島は、考えうる限りのどうしようもない人間。
自分の不注意で健一の妻を死なせてしまったのに罪悪感のかけらもない。チクッた人間を逆恨みの感情を抱いてもいる。非常に切れやすく暴力的。
出所後も自堕落。事故時トラックに同乗していた同僚小林(綾野剛)のアパートに転がり込み、綾野の彼女の作る飯を食べて図々しく暮らしている。

こんな奴は友人も失って野垂れ死にするに違いないと思うのだが、不思議と人は去っていかない。木島に都合のいいような行動をとってしまう人間たちがいる。
誤解しないで欲しいのだが、一種の人徳があるとか不思議な人間的魅力があるとか言うのでは・・・・絶対ない!!!!

《年下の同僚・小林》
綾野剛演じる小林は、教師青木とともに一番「まとも」な人間かもしれない。疫病神で暴力的な木島を誰よりもよく知っていながら受け入れざるを得ないのは、事故時に同乗していたという点もあるのかもしれない。木島のタカリを断ると切れて手がつけられないとわかっているからかも。
彼は恋人も居るし、身なりも整えてタクシー運転手の仕事もしているからダメ人間ではない。ラストで意思的な行動も見せた。

《ダメ男・星》
星(田口トモロヲ)は、告げ口を疑われ、木島にさんざんに暴行を受け、最後は灯油をかけられ火をつけて殺される寸前まで行った。死なずに済んだのは暴行に木島が「あきた(疲れた)」から・・・。
しかしその後、信じられないことに木島と一緒に行動している場面が多い。

《ダメ女・バイト警備員》
工事現場のバイト警備員をしていた若い女(谷村美月)は木島にあきれるような難癖をつけられ、財布を取られてレイプされる。星は一緒に暴行するわけではなく助けるわけでもなく、気の毒そうに見ているだけ。
彼女のその後の行動も絶対ありえない。

ありえないのに、なんとなくこの映画の中ではリアリティのようなものを伴っているのはどういうことなのか。
それが、この映画の一番の謎でもあった。

【この人間たちに思わず寄せそうになる共感を、どうはね返そう・・・・?】

映画には、非常にやるせない「あるある」「わかるわかる」感覚を持った。
セリフの構成、各シーンの構成がみごとで、思わずクスリと笑いたくなる場面がたくさんあった。

しかし、「ダメな人たちなのに、なんだか人間的で憎めない(愛おしい)」などという「温かい感想」には着地したくない。

鑑賞後しばらくして、この映画のヘタレ感と結託しそうになる自分を、「断固拒否したい!」という気持ちが沸々と生まれてきた。
君たちの生き方共感なんかしたくない・・・・!

自分の中にもある大嫌いな部分を、彼らが平然と体現しているから、そう思ったのだと思う。

その気持ちは、この映画である意味もっとも衝撃的な場面、「プリンの中身を叩きつける」シーンに通じる。

プリンを叩きつける勢いで、以下、『その夜の侍』についての勝手な解釈を繰り広げることにする。反論歓迎。

叩きつけたあとで、しおしおとコンビニに行って、「1個だけ」と自分にイイワケしてプリンを買ってしまう可能性もあるのだけれど・・・・・・・。

【愛憎でも利害でもなく、惰性で生きてるだけ?】

この映画には、一見バラエティ豊かな人々が登場しているように見えるけれど、みんなどこか似ている。
復讐する側とされる側が、雨の中で一個の塊に見えてくる。

登場人物すべてが怠惰すぎて、それを許しあって生きてる感じにうんざりした。それは、どこか自分の中にもある怠惰さに通じるから。

もう、この国にオトナなんていないんじゃないか。そう思うことは良くある。
この映画の登場人物も、大人になりそこなった人間ばかり。
殺人事件が起ころうと、世界の終わりが来ようと、彼らは変わりそうにない。

健一は愛する妻を失ったショックで悲しみから立ち直れないのではない。
日常を進めてくれる妻が居なくなって、動けなくなったまま5年経ってしまっただけなのだ。
留守電を再生し続け、妻の服の匂いを嗅ぎ続け、プリンを暴食し続けるのは、すべて自分への甘やかし。「奥さんを心から愛してたもんね〜」とかいうのとはちょっと違う。
よくいる日本の夫。妻はお母さんなのだ。
あの妻の遺骨の包みは、斎場から自宅に持ってきてとりあえず卓上に置いて、きっとそのまんまなのだろう。お墓に遺骨を入れ、位牌を入れる仏壇を買うような意欲も気力もないのだ。妻も浮かばれない。

こう見てくると「妻への愛(?)」というものすら疑問。非常に疑問。
親を失った子供のようになすすべもなく立ち竦み、泣き暮らしている。

問題なのは、日常をいかに過ごすか、なのである。
「復讐」などは、ぼんやりした健一の頭に突然差し込んだ思いつきイベントみたいなもの。非日常的なテンションが生まれ、なにがしかのアドレナリンも出たようだ。
しかし、結局健一はどこかでわかっていた。自分がそんなことできる人間じゃないということを。そこまで徹底的に木島を憎めるほど、健一は人間の形をしていない。

クライマックスの雨の中の乱闘シーン。あのシーンの二人は、一番愚かしくも愛しかった。獣に戻ってひとつに溶け合ったように見えた。

この映画全体を通して一番衝撃だったのは、乱闘中に健一が木島に縋るようにして言ったあのセリフ「○○○○○○○○○がしたいんだ」。
あまりに核心的なセリフ。この一言から、なんとなくこの映画の人間達がわかったような気がした。

なじんだドラマトゥルギーではこの映画はなんだかわからない。
ドラマや映画よりずっと、我々に、我々のの日常に近いのだ。

人は愛憎で生きているのではないらしい。
かといって利害で生きているわけでもない。
しいて言えば、惰性で生きてる、という感じかなぁ・・・。

【誰かにペースを作ってもらわないと日常を生きていけないのが人間なんだろうか・・・・?】

崩れ果てた彼らの食生活がそれを物語る。
「朝、セブンイレブン。昼。牛丼、夜、魚民・・・・(延々続く)」
読み上げながら健一は言う。「君の全てがここにある」
とっても、腑に落ちる。

大昔から生物は腹が減ったら獲物を獲った。
人間の時代、腹が減ることを予想して農耕牧畜を始めた。
そして現代、人間はダラダラと惰性で生きて、腹が減ったらコンビニやマックや牛丼チェーンに行って空腹を満たすだけの生物になったらしい。(木島はそうなのである)

自分もそうなんだけど、全くシバリがなく自由だと、他人がペースを作ってくれないと、人間はどんどん自堕落になる。
かつて人間の形を保たせていた、共同体や家族制度やしきたりや習慣が次々と絶滅し、自由を手に入れても持て余して自分をダメにする人間の方が多い。

「部屋を片付ける」「ハローワークに行く」「おしゃれして出かける」。前向きな行動一つ起こすのにも結構なエネルギーが要る。
次第に時間が溶けるように過ぎるようになる。時間の刻みがなくなると、次第に人間の輪郭もなくなったように感じる。
誰かにペースを作ってもらわないと、人間は人間の形を保っていられないのだろうか。

【本能も規範も自我もなく生きるためのパターン】

自我、というのは本能の壊れた人間の行動のバックボーンになるもののはず。しかし実は自我もまともに育たず、社会的な規範も地方共同体も崩れ果てた。
そんな現代の「社会適応法」について、映画に即してちょっと整理してみる。

《パターン1》仕事に就いたり、家族を持って役割を押し付けあったりする。
これがもっともまっとうな形。
健一が一気に崩れたのもこれがなくなったからだろう。
青木が健一に世話を焼かずにいられないのは、親切心だけではなく、なんとか自分を保って生きている(なんとか輪郭を持って生きている)自分の身内に、妻を失って自我が溶けたような人間がいることがなんとなく不安なのではないか。

《パターン2》愛とか夢とか復讐とかの「物語」を持とうとする。
これがあった方が、生きてる張り合いがありますから。

谷村演じる警備員は、一応「部屋に何か(ゴメン忘れた)を買う」のを目標にしてバイトをしている。本当に自分の欲しいものだというほどの感じはないがとりあえずの生活の張りにはなってる?
若い女の子にしては変わったバイトだが、「こういう職業に就きたい!」という感じじゃない。行き当たりばったり。

健一だって、「地道に前向きに再出発する」のが一番正しいと自分でわかっていても、「妻を殺した男への復讐」という物語にのめりこむ方が楽なのだ。

就職戦線から逃げるように「大きな夢」を目指している人も・・・多いよね。

《パターン3》宗教に走るorオタク活動に身を捧げる。
よく言われることだが、誰か(何かの)の熱狂的ファンになって、そのことだけを考えて生きる、というのも宗教に似ている。
変な宗教でなければ、それで精神が安定するんなら、それもいいと思う。自立していればなお問題なし。

《パターン4》瞬間瞬間の欲望に従って生きる。
もう反省だの自分の人生を見つめたりするのはするのはやめてしまって(または疲れ果てて)、「腹減った」「眠い」「むかつくから誰か殴りたい」という衝動が起こればそれを満たそうと動くだけ。これは生物的な「本能」とは明らかに違う。統合されずバラバラな幼児退行的衝動だ。
このメンタリティの人間がオトナになってこの世界の多くを構成していったらコワイ(もうなってる?)。
木島とホテトル嬢(安藤サクラ)が似ているが、迷惑度が全然違う。

【輪郭も中身もない、気味の悪い普通さ】

《パターン5》自己愛も思考も放棄してしまう。
(自分なんかめんどくさい。どうでもいい)

一番気になった田口トモロヲと谷村美月(の役)に関してはもう・・・・木島よりひどいんじゃないだろうか。
憎むべきものを憎むことなく、自分を害するものから逃げることもない。人殺しに加担しろと言う雰囲気なら加担する。
巻き込むものがあれば巻き込まれてしまうが《パターン3のように、意思的に巻き込まれるのでもない。
監禁されてストックホルム症候群を起こしているわけでもない。そんなにマゾっぽさも感じられないのに。

エゴイズム=自己愛すら失い、考える力もなくしてしまっていることに驚く。
それももともとなかったのではなく、放棄した(または麻痺した)感じなのだ。

でも、そういう人間は普通にいるのかもしれない。

DVの夫から離れられずに生きる。いじめっ子が自分をいじめる集団から逃げずくっついて生きる。これを止めれば全てうまくいくと思っていても、パチンコや酒がやめられない。集団自殺の流れに乗って、なんとなく死んでしまう。
主体性を捨て渡して誰か(何か)の奴隷になっちゃう方が楽という人々が、理屈には合わないが現実には普通にいたりするんじゃないか。

輪郭があるように見えて、中身は空っぽだったり、崩れかかったりしている。
外部的シバリが輪郭を支えていなければ、中身がどろりと溶け出して外に流れて混じり合ってるんじゃないか・・・。
欲望だと思っているものは、自分の欲望なのか、他人の欲望なのか、チェーン店舗が作り出してくれているものなのか。
他人と自分との境界すらあいまいになってしまった。

この映画に深さとか濃密とかはあまり私は感じなかった。
このごく普通っぽい、日常的な異常性が怖い。

でも、ドロドロになった輪郭は自分で修復することができる。
怠惰を打ち払う意思の力が必要だが。
プリンを叩きつけ、断捨離して古い毛布は処分しよう。
ご飯はちゃんと作ろう。「基本的生活習慣」を保とう。
たわいのない人間関係を大切にしよう。

(おお、こんなまともな感想にたどり着くとは

◆◆◆
それにしても、なんで『その夜の侍』なのかな。
ずっと謎だったけど、「侍」って一番輪郭のはっきりしている存在だよね。中身のあるなしに関わらず、「武士とはこうあるべきだ」という既存の倫理に縛られているから。この映画の登場人物と正反対だから対比させたのかな?
(多分的外れだけど、こういう見方もこの映画は許してくれそう)

さあ、たっぷり書いたので、これで心置きなくカッコいい右衛門佐に会いに行こうっと
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by 日本インターネット映画大賞 December 30 [Sun], 2012, 0:46

まみすけさんへ。

『その夜の侍』宣伝番組あったんですね。
教えてくださってありがとうございます。

>見たら気分が悪くなるから
見ない方がいいって

冗談でしょうけれど・・・。
気分が悪くなる人もいるのかもしれないけれど、面白い映画だと思いました。だからこそいろいろ語りたくなるので。

大奥もいいけど侍もね!!
と、ちょこっと宣伝したい気持ちです。

ではまた。

by きのこ December 28 [Fri], 2012, 14:23

多分この映画の宣伝で
お昼のバラエティに堺さんが出てましたが、


見たら気分が悪くなるから
見ない方がいい
って
自分の映画の宣伝しないといけないのに
毒をはいてたのを
思い出しました。


それをみた
番組出演者は
そー言われると
見たくなりますよね
ってフォローしていましたが(^_^;)


あ、
わたしも年末年始のお休みに
大奥を見に行きます(≧▽≦)


ブラックな堺さんが
楽しみです。


by まみすけ December 25 [Tue], 2012, 18:13
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