日本語フォントのなかの欧字書体(K.E.Libraの場合)

September 02 [Wed], 2015, 15:24
日本語フォントのなかにも欧字書体がある。これも制作しないわけにはいかない。漢字書体、和字書体が過去の優れた活字書体(もしくは書字・刻字)を再生してきただけに、欧字書体も同じ考え方をしようと思い制作をはじめた。
漢字書体「志安」に対応する欧字書体は K.E.Libra である。漢字書体が元朝体なので、欧字書体はイタリック体と合わせることにしたのだ。制作の参考にしているのは、アントニオ・ブラドーがルドヴィコ・デリ・アリッギの制作した活字を用いて印刷した『Vitasfortiae』 (1539年) のこのページである。



ここにあるだけのキャラクターを抜き出してみることから始めた。ご覧の通り、ちいさなタイプサイズから拡大したので、エッジがシャープでない。これだと解釈の幅が大きくなってしまい、過去の復刻書体とイメージが違ってしまうことが懸念された。



そこで、Monotype Blado、Centaur Italic、Adobe Poetica など既存の復刻書体を参考にすることにした。なかでもCentaur Italic をおおいに参考にしたのだが、最初の試作の段階では結果的に強く影響を受けすぎてしまった感があった。試作していたものとは大幅に変えなければならなくなり、全面見直しを始めた。



とくに意識したのは、日本語フォントのなかの欧字書体だということである。まず傾斜角度。もともとの参考図版では大文字は正体だったが、小文字に合わせて斜体にした。傾斜角度も参考図版の小文字にあわせた角度とした。
小文字は、参考図版よりも少し広めの方向で設計した。これは和字、漢字と混植することを前提にして、参考図版に合わせると少し黒めに見えるからである。同様に、サイドベアリングもやや広めにして、明るく見えるようにした。

●『Vitasfortiae』 (1539年) と「K.E.Libra」の比較


以下、最初の組みテストである。ここから調整を繰り返しながら完成へともっていくことになる。その第一ステップだ。








日本語フォントのなかの欧字書体では英語だけではなく、フランス語、ドイツ語、スペイン語などのヨーロッパ各国語が組める。代表的な言語でテストしてみた。それぞれの言語は翻訳ソフトによるものなので、正確ではないかもしれない(自動的に翻訳されたままのテキストで、組版としての調節は何もしていない)。イメージとしてみるだけである。

キリル文字、ギリシャ文字は、日本語フォントではプロポーショナルの文字は必要ない。文章を組んだ状態で検討したいという制作上の都合で、この組見本を作成してみた。ギリシャ文字に至っては、アクセント符号付の文字を制作していないので、適時ほかの文字に差し替えている。




なお、日本語書体としてのキリル文字、ギリシャ文字は全角の記号用なので、キリル文字の小文字は試作したイタリックではなく、正体の書体を単に斜体にしただけのものにする。ちなみにギリシャ文字は正体の書体であってもイタリックになる。




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