あえて清朝体とする

October 06 [Sun], 2013, 17:55
この書体のキャッチフレーズは「清朝官刻体」と名付けられた。書体名は「蛍雪」である。明代の刊本字様を「明朝体」ということで「正調明朝体」としたのだから、清代の刊本字様を「清朝体」として、まあ「正調清朝体」でしょ……と思っていた。
 清代の地方官庁による官刻本として曹寅が主管した揚州詩局で刊行されたものがあった。康煕年間には、武英殿刊本をしのぐ品質とされ、康煕帝の命により編纂された唐詩全集である『全唐詩』があげられる。嘉慶年間にはいると、嘉慶帝の敕命により董誥らが編纂した『全唐文』が刊行された。揚州詩局の刊本こそ、まさに清代の刊本字様であり、「清朝体」と言うべきものだと、ぼんやりと考えていた。


●『全唐文』(董誥編、揚州詩局、1818年)

 ところが、そうはいかなかったようだ。わが国には、活版製造所弘道軒の清朝活字を発端とする「清朝体」という書体があったのだ。そのために「清朝体」というキャッチフレーズにすると、ユーザーが混乱するというのだ。小学館の国語辞典『大辞泉』には次のように書いてある。

 せいちょう‐たい【清朝体】
 和文活字書体の一。楷書体のうち毛筆書きに似せた書体。あいさつ状・名刺などに用いる。

 しんちょう‐たい【清朝体】
 ⇒せいちょうたい(清朝体)

 わが国の「清朝体」が、清代の刊本字様と関係があるのかどうか、私にはわからない。かつては「しんちょうたい」と言ったようだが、なぜ「せいちょうたい」というようになったのかも知らない。明代の刊本字様を「明朝体を手書きにしたもの」とされるぐらいだから、清代の刊本字様を「清朝体」と言うことに、わが国では抵抗があるというのもやむをえない。それでも中国の清代に生まれた書体であるということには違いないわけだから、CDR版のキャッチフレーズは「清朝官刻体」となった。「清朝(官刻)体」ということだし、書体名ではなくキャッチフレーズだし、まあいいか……という気になった。
 それでも欣喜堂ウェブサイトや書体見本帳などでは、分類名として「清朝体」を使うようにしている。宋朝体、(元朝体)、明朝体とくれば、清朝体がいちばんぴったりくるのである。これ以外は考えられなかった。軟体楷書というほうがわかりづらいように思った。またDLサイトのうち、「designpocket」では「清朝体」のカテゴリーになっているが、検索で混乱するという話しは聞いていない。

漢字書体「蛍雪」のこと。
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