もういちど本居宣長!

November 16 [Sun], 2014, 18:57
『本居宣長』(田中康二著、中央公論新社、2014年7月24日)を読んでいる。以前、『本居宣長〈上・下〉』(小林秀雄著、新潮社、1992年)を読みはじめたことがあるが、難しすぎて途中で挫折した。そのようなレベルの筆者にとっても、これならどうにかついていける。入門書として最適ではないかと感じられる。
 本居宣長(1730−1801)の70年の生涯が、10年ごとに章立てしてまとめられている。「文学と思想の巨人」とサブタイトルにあるように、その両分野における著作のすべてが簡潔に取り上げられている。
 それはともかく、全体像をあらわしたいという著者の主旨とは異なるかもしれないが、筆者が興味を持ったのは「第六章 学問の完成」の「一、版本というメディア」のなかで、宣長の版本観が論じられていることであった。その最後の一節を以下に引用しておきたい。

「(前略)自著の刊行に際して、細心の注意を払って上梓することを自らに課した。稿本(下書き)は初稿、再稿を経て清書してから板下を作った。刷り上がった校正(ゲラ)も校合刷で確認し、二番校合を取って再確認することもあった。そのようにして、ようやく版本が出来したのである。このような作業を含めて出版である。それゆえ、出来上がった版本を手に取った時の宣長の喜びは想像に余りある。単に自著を一度に大量生産するといった姑息な考えではなかったのである。」

筆者の手元に、宣長の著作が一冊ある。



「第五章 論争の季節」で取り上げられている『字音仮字用格』(本居宣長著、錢屋利兵衞ほか、1776年)である。印刷は後年のものかもしれないものの、安永5年(1776年)とあるので、もともとの板下と同じだと考えられる。
 筆者は、勉誠社文庫10『玉あられ・字音假字用格』(勉誠社 一九七六)所収の「字音仮字用格」をベースにして、和字書体「もとい」を2005年に制作した。あれから10年が経過した今、原資料に立ち返り、あらためて全面的に見直したいという衝動にかられている。
 「もとい」はすでに定着しており、多くの方に使っていただいている。少し過剰な解釈をした感じではあるが、これはこれで悪くはない。したがって、「もとい」のバージョンアップではなく、「もとい」は「もとい」として温存しておいて、まったく別の書体としたほうがいいのではないかと思う。



 その際には、堂々と「もとおり」という書体名にしたいと考えている。

●『字音仮字用格』と「もとおり」の比較
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