我が名は金陵

September 27 [Fri], 2013, 8:30
この漢字書体の名称は「金陵」である。「正調明朝体」というのは書体名ではなくて、キャッチフレーズなのだ。朗文堂でCDジャケットを作成するときに、「明朝体」という語をつけないと売れないということで、このキャッチフレーズをつけていただいた。
 総合書体のフォントデータには、書体名「KOきざはし金陵M」「KOあおい金陵M」「KOさおとめ金陵M」、コピーライト「有限会社今田欣一デザイン室」と入っている。登記の際に深く考えず「有限会社今田欣一デザイン室」としてしまったが、今では「欣喜堂」にしておけばよかったなと思っている。
 雑誌などで取り上げられるとき、「欣喜堂」とされる場合と、「朗文堂」とされる場合とがある。これは、開発会社を記すか、販売店を記すかという、それぞれの編集方針の違いである。基本的には、欣喜堂で企画制作し、朗文堂でCDR版を販売するということである。
 CDR版については朗文堂にほぼ丸投げである。CDジャケットはもちろん、朗文堂ウェブサイトはもちろん、ブックレットなども朗文堂で作成していただいている。


●Robundo Type Cosmique ブックレットより

 最初のブックレットの「まだ四角四面は好きですか?」というフレーズは朗文堂によるものだ。朗文堂の主張を色濃く反映した文章は、制作者ではとても書くことのできないものだ。販売促進のためには、ある程度のインパクトは必要なのだ。
 ユーザーにアピールするためには、現在の状況から考える必要がある。現代の本文用明朝体にたいしての「正調明朝体」であり、「まだ四角四面は好きですか?」という問いかけである。現代の本文用明朝体との違いをあきらかにして販売を促進しようという作戦なのである。
 ユーザーからは「明朝体を手書き風にした書体」というコメントが実に多いのだ。現在の明朝体から見れば決して間違いではない。使用する上では、南京国子監の『南斉書』を復刻したものであることなど、あまり関係ないのだろう。


●南京国子監『南斉書』より

 ただ制作者としては、純粋に「中国・明代の刊本字様を、現代の日本語組み版で使えるようにしたい」ということだけだったのである。歴史的には、明朝体を手書き風にした書体ではなく、宋朝体を直線的にした書体である。ましてや意図的に抱懐を締めて、古拙感を出そうとしたのでもないのだ。この意味で「正調明朝体」というキャッチフレーズは合っているのだろう。
「金陵」という復刻書体について、「個性を感じる」というコメントがあった。もちろん、原資料そのままの「再現」ではなく、現代の活字書体としての適性を考慮した「復刻」ではある。それでも復刻書体なので、むしろ没個性だと思っていた。
 できるだけ原資料を忠実に「再生」しようとして、独自の解釈はしないように心がけた。それでもなおかつ、そこに自分の筆跡のようなものが醸し出されているとしたら、それが真の個性というべきものなのかもしれない。

漢字書体「金陵」のこと。
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