豊田勇造と、みっつの書体

January 16 [Thu], 2014, 8:30
「豊田勇造ピースライブ読本」は、ライブのときに無料で配布された冊子である。制作はさいたま市の「市民じゃ〜なる」だ。その活動内容をくわしく知らないのだが、突然、この「豊田勇造ピースライブ読本」が郵送されてきた。欣喜堂の書体を気にいってくれたということのようだ。ありがたい。
 豊田勇造というフォーク・シンガーについてもまったく知らなかった。1949年京都市生まれだから、私より5歳ほど年上だ。関西フォーク創世紀から、一貫してメッセージ・ソングを歌い続けている。ライブ映像は「YouTube」で見ることができ、エッセイは「青空文庫」で読むことができる。

 最初の「豊田勇造ピースライブ」は、2003年4月29日に、さいたま市の「アートスペース芸術村」というところで開催されている。「市民じゃ〜なる」にとって初めての音楽イベントだったそうだ。
「豊田勇造ピースライブ読本2003」は手作り感たっぷりの小冊子なのだが、だからこそ挑戦的かつ刺激的なデザインをされているようだ。24ページある本文が、和字書体「あけぼのM」で組まれている。近代明朝体と合わせるために、合成フォントの機能で「あけぼのM」をすこし大きくしてあるようだ。
「あけぼのM」は本文用の書体として制作したので、これだけの文章の量で使われるのをみるとうれしくなってしまう。プロポーショナルではないのだが、並べただけで意連を感じさせ、思いのほか読みやすいのだ。もともとが、そういうフォルムになっているのだろう。
 それにしても、2002年9月に発売されたばかりの「和字 Revision 9」をいちはやく購入してくれている。市民活動とか関西フォークに「あけぼのM」のまったり感はあわないとは思ったが、小冊子の制作者の好みというよりも、なにかに挑戦したいという意欲が感じられた。読者からの評判もよかったようだ。



 つぎの「豊田勇造ピースライブ」は、2004年4月29日に、前年と同じ「アートスペース芸術村」で開催されている。
「豊田勇造ピースライブ読本2004」では、30ページの本文と歌詞のページが、和字書体「えどM」で組まれている。2003年12月に発売された「和字 Tradition 9」に入っている書体だ。おそらく発売してすぐに購入していただいたのだろう。
「えどM」は癖のある書体である。本文用として制作したのだけれど、実際には使いにくいのではないかと思っていた。そういえば「和字 Tradition 9」のCDジャケットも「えどM」が選ばれていたのだった。使う人から学ぶことことも多い。それにつけても、近代明朝体のなんでも受け入れる包容力のすごさ……。



「九条の会・さいたま」という団体が結成され、その団体が主催者となって「豊田勇造ピースライブ」が開催されるようになった。2005年7月18日に、ひきつづきアートスペース芸術村で開催されている。
 開催日が遅くなった分、「和字 Succession9」が間に合った。2005年5月の発売だった。「豊田勇造ピースライブ読本2005」の制作は「市民じゃ〜なる」だ。そして、32ページにおよぶ本文書体には、「和字 Succession9」に入っている「ふみてM」が使われた。さらに、同年11月23日の「五十嵐正史とソウルブラザーズ ピースライブ読本2005」にも本文書体に「ふみてM」が使われている。
「ふみてM」も「和字 Succession9」のCDジャケットに選ばれた書体だ。これを本文書体にもってくるなんて、さすがミニコミ誌の底力だ。商業印刷ではさすがにこうはいかないだろう。こういったところから新しいウェーブが巻き起こることを期待している。



 その後、音信はとだえてしまったが、「市民じゃ〜なる」は活動を継続されているようだ。「豊田勇造ピースライブ読本」が制作されているかどうかはわからないが、「和字Ambition9」も含めて、欣喜堂の書体をどこかで使い続けてくれていると信じている。
 豊田勇造は、「東日本ファン支援ライブプロジェクト」などで意欲的に活動をつづけている。
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