組み合わせの妙

December 10 [Tue], 2013, 19:36
日本語書体八策

日本と中国、欧米の古い書物などから復刻した和字書体、漢字書体、欧字書体が、三位一体となって奏でるよき調和となるように、それらをあらかじめ組み合わせて、日本語の組版を可能にしたのが「日本語書体八景」である。



( 暫定版 2015年4月22日更新)

「日本語書体八策」の、和字書体・漢字書体・欧字書体の組み合わせは、どのような考えできめているのかについて記しておきたい。

和字書体分類私案 『富嶽三十六景』に因んで
漢字書体分類私案 『二十四史』に因んで
欧字書体分類私案 「黄道十二宮」に因んで


●「さきがけ」+「龍爪」+「K.E.Aries」
●「もとい」+「龍爪」+「K.E.Aries」
●「うえまつ」+「龍爪」+「K.E.Aries」(※「かもめ」)

「めばえ・ひのもと、宋朝体、ヴェネチアン・ローマン」の組み合わせを基本としている。そもそも江戸時代の木版印刷字様を取り上げようと思ったのは、宋朝体との組み合わせを前提としたものであり、その中でも「さきがけ」(和字書体三十六景)の粗さが、四川刊本字様の「龍爪」と合うように思ったのだ。「さきがけ」のほかに、おなじ「めばえ・ひのもと」カテゴリーに属する「もとい」と「うえまつ」組み合わせも想定している。
商品化にあたっては、「いぶき・ひのもと」に属する「かもめ」との組み合わせを考えた。いずれも「和字書体三十六景」に含まれている。近代明朝体と組み合わされていた「かもめ」だが、その力強さは「龍爪」となじむのではないかと思ったのである。

●「ひふみ」+「陳起」+「K.E.Aries」
●「あおい」+「陳起」+「K.E.Aries」(※「もとおり」)
●「にしき」+「陳起」+「K.E.Aries」

「さきがけ」+「龍爪」+「K.E.Aries」の場合と同じく、「めばえ・ひのもと、宋朝体、ヴェネチアン・ローマン」の組み合わせを基本としている。「和字書体三十六景」の「さきがけ」や「もとい」を四川刊本の「龍爪」と組み合わせているので、あらたに「和字書体十二勝」として「ひふみ」を制作している。漢字書体は臨安書棚本字様の「陳起」、欧字書体は「K.E.Aries」を流用することにしている。「ひふみ」のほかに、おなじ「めばえ・ひのもと」カテゴリーに属する「和字書体三十六景」の「あおい」と「和字書体十二勝」の「にしき」との組み合わせを考えている。
また「もとい」の別バージョン「もとおり」や、「さかえ・ひのもと」の「みなみ」の字面を小さくした「こみなみ」も「陳起」となじむだろう。

●「ばてれん」+「志安」+「K.E.Libra」
●「すずのや」+「志安」+「K.E.Libra」(※「げんろく」)
●「いけはら」+「志安」+「K.E.Libra」(※「ひさなが」)

「やまと、元朝体、イタリック」の組み合わせを基本としている。和字書体は、元朝体と相性がいいと思われる「ばてれん」を選んだ。元朝体は「志安」だけしか試作していない。欧字書体はイタリックの「K.E.Libra」とした。「ひふみ」+「陳起」+「K.E.Aries」との兼ね合いを考えて、ここはどうしてもイタリックでなければならない。
商品化にあたっては、「ばてれん」のほかに、おなじ「やまと」カテゴリーから「げんろく」と、明治時代の活字書体の「ひさなが」との組み合わせを考えた。いずれも「和字書体三十六景」に含まれている。写本ベースの和字書体も「志安」となじむだろう。

●「かもめ」+「金陵」+「K.E.Taurus」(※「あおい」)
●「きざはし」+「金陵」+「K.E.Taurus」
●「さおとめ」+「金陵」+「K.E.Taurus」

「いぶき・ひのもと、明朝体、オールド・ローマン」の組み合わせを基本としている。和字書体は、明治時代に制作された書体の中から、築地活版製造所五号活字の「きざはし」を選んだ。原資料は近代明朝体との組み合わせだが、動的な結構は「金陵」に合うように思われた。したがって「きざはし」は最初から字面を小さく設計してある。「きざはし」のほかに、おなじ「いぶき・ひのもと」カテゴリーに属する「さおとめ」と「かもめ」との組み合わせも考えた。いずれも「和字書体三十六景」に含まれている。
「めばえ・ひのもと」の「あおい」は、もともと明朝体風の漢字書体と組み合わされていた。「さおとめ」は清朝体風の漢字書体と組み合わされていたが、明朝体とも相性がいいと思われた。ほかに「はやと」との組み合わせも、実際によく見かけている。「いぶき・ひのもと」カテゴリーに属する和字書体は、近代明朝体と組み合わせると少し小さめになる。

●「ほくと」+「武英」+「K.E.Cancer」
●「たおやめ」+「武英」+「K.E.Cancer」
●「あずま」+「武英」+「K.E.Cancer」

「さかえ・ひのもと、過渡期明朝体、トランジショナル・ローマン」の組み合わせを基本としている。「さかえ・ひのもと」カテゴリーに属する「ほくと」もまた近代明朝体と組み合わされていたのだが、「武英」と組み合わせても違和感がない。「ほくと」(和字書体三十六景)のほかに、おなじ「さかえ・ひのもと」カテゴリーに属するとしている「たおやめ」(和字書体三十六景)、「あずま」(和字書体十二勝)との組み合わせも考えた。

●「さくらぎ」+「蛍雪」+「K.E.Virgo」
●「まなぶ」+「蛍雪」+「K.E.Virgo」(※「はなぶさ」)
●「しおり」+「蛍雪」+「K.E.Virgo」(※「まどか」)

「かなめ・ひのもと、清朝体、オールド・ローマン」の組み合わせを基本としている。清朝体は、清代の木版印刷字様なので、和字書体は明治期以降の教科書に用いられた楷書体と組み合わされた「かなめ・ひのもと」カテゴリーと合っていると思う。「さくらぎ」のほかに、ほかに「まなぶ」や「しおり」と組み合わせる。
商品化にあたっては、「いぶき・ひのもと」カテゴリーに属する「はなぶさ」、「まどか」との組み合わせを考えた。いずれも「和字書体三十六景」に含まれている。「まどか」はもともと楷書活字と組み合わされていた。「はなぶさ」は近代明朝体と組み合わされていたが、清朝体との相性がいいと思われる。
※欧字書体は「K.E.Virgo」が基本だが、商品化にあたっては「K.E.Taurus」と組み合わせている。

●「くれたけ」+「銘石」+「K.E.Sagittarius」
●「くらもち」+「銘石」+「K.E.Sagittarius」
●「はるか」+「銘石」+「K.E.Sagittarius」(※「くろふね」)

「くまそ、銘石体、サン・セリフ」の組み合わせを基本としている。「くれたけ」のほかに、「和字書体三十六景」の「くらもち」、「和字書体十二勝」の「はるか」との組み合わせも考えた。「くらもち」は、「くまそ」カテゴリー(ゴシック体)であるが、もともと2分の1活字として制作されていた。「銘石」との組み合わせを考えて、少し正方形に近づけて、字面も合わせて設計している。
商品化にあたっては、「和字書体三十六景」に含まれている「くろふね」との組み合わせを考えた。

●「ことのは」+「方広」+「K.E.Pisces」
●「みなもと」+「方広」+「K.E.Pisces」
●「たまゆら」+「方広」+「K.E.Pisces」

「えみし、経典体、スラブ・セリフ」の組み合わせを基本としている。辞書の見出しとして使われていた「ことのは」は「えみし」カテゴリー(アンチック体)なのだが、これに組み合わせる漢字書体をさがしていて、仏教経典に使われていた「方広」を見つけ出したのである。
「ことのは」(和字書体三十六景)のほかに、「みなもと」、「たまゆら」(どちらも和字書体十二勝)と組み合わせた。

※「日本語書体八策」には含まれないが、組み合わせの候補として次の4パターンも考えている。
●「はやと」/「はなぶさ」/「まどか」+「鳳翔」+「K.E.Gemini」
●「ひばり」/「めじろ」/「うぐいす」+「上巳」+「K.E.Leo」
●「ふじやま」/「ますらお」/「めぐろ」+「端午」+「K.E.Capricornus」/「K.E.Aquarius」
●「たかさご」/「さよひめ」/「あけぼの」+「臨泉」+「K.E.Scorpio」


日本語書体三傑

和字書体で「おゝ◯◯」と名付けた書体がある。「おゝはなぶさ」ファミリー、「おゝくれたけ」ファミリー、「おゝことのは」ファミリーで、それぞれ「はなぶさ」「くれたけ」「ことのは」を大振りにしてファミリー化したものだ。「日本語書体八策」につづく企画として、「日本語書体三傑」という名称を思いついた。

●「おゝはなぶさ」+「美華」+「K.E.Vergo」
「ゆたか・ひのもと、近代明朝体、モダン・ローマン」の組み合わせを基本としているのだが、近代明朝体には、明治時代以降の「いぶき・ひのもと」も「さかえ・ひのもと」も違和感なく組み合わせられる。そこで「いぶき・ひのもと」カテゴリーだが字面を近代明朝体に合わせた「おゝはなぶさ」(和字書体三十六景)をメインとした。

●「おゝくれたけ」+「伯林」+「K.E.Sagittarius」
「くまそ、呉竹体、サン・セリフ」の組み合わせを基本としている。近代明朝体「美華」に対応する呉竹体(ゴシック体)として「伯林」を開発している。和字書体は字面を呉竹体に合わせた「おゝくれたけ」(和字書体三十六景)を組み合わせることを基準とした。

●「おゝことのは」+「倫敦」+「K.E.Pisces」

「えみし、安智体、スラブ・セリフ」の組み合わせを基本としている。近代明朝体「美華」に対応する安智体(アンチック体)として「倫敦」を開発している。和字書体は字面を安智体に合わせた「おゝことのは」(和字書体三十六景)を組み合わせることを基準とした。

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欣喜堂は活字書体設計をおこなっている会社です。日本・中国・欧米の書写と印刷の歴史にはぐくまれた活字書体の開発をめざしています。
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