ん…色っぽい 『池永康晟画集 君想ふ百夜の幸福』より

December 05 [Tue], 2017, 12:46
ある本を買うために書店に行った。楽しみにして手にとったが、立ち読みしたらちょっとがっかりした。その本をそっと置いて静かに立ち去ろうとしたとき、近くにあった1冊の画集が目に飛び込んできた。



『池永康晟画集 君想ふ百夜の幸福』(池永康晟著、芸術新聞社、2014年)である。素敵な絵だ。手にとってパラパラとページをめくると、そこにあらわれた文字列にハッとした。



「ん…色っぽい」
むかし化粧品の広告にあったフレーズを思い出した。もっとぴったりな表現があるかもしれないが、私の貧弱なボキャブラリーではほかにでてこない。
画集なので本文というわけではないが、ほぼ全体にわたって「さおとめ金陵M」で組まれている。和字書体「さおとめ」は明治時代の小学校教科書に使われていた活字書体から復刻した書体である。漢字書体は中国明代の木版印刷による歴史書から再生した書体なのだ。もともと本文として存在していたのだが、どちらも「色っぽい」ということからはかけ離れているように感じる。
それなのに、なんということだろう。色っぽいのだ。その文章とタイポグラフィによって、「さおとめ金陵M」の魅力が引き出されている。逆に「さおとめ金陵M」が、そのタイポグラフィとともに文章を引き立てているのだとすれば、まさに適材適所だと思う。生みの親として、こんなにうれしいことはない。
私はこの画集を手に取り、レジに向かっていた。


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