父親たちの星条旗

2006年11月03日(金) 1時32分


最近「911」を扱った映画が2本公開されましたけど、
何故あんなテロを起こすに至ったかを描く視点の映画も観ないと
何となく事実を公平に判断出来ない気がしていました。

ところがこの「父親たちの星条旗」はアメリカ側の視点、
「硫黄島からの手紙」は日本側の視点
で硫黄島で実際の起こった攻防戦の日々を描いているとか。
二つともアメリカ人であるクリント・イーストウッドが監督するというのは
公平でないのかもしれませんが、「ミリオンダラーベイビー」
や「許されざるもの」等の作風から想像出来た通り、
アメリカ側の本作も、アメリカ万歳の映画には当然なっていません。

硫黄島で戦う敵は日本軍なのに、
この作品では無為に砲火を浴びせられるイメージが強烈なだけで、
敵=日本という部分はあまり意識出来ないように作られているのに
ちょっと驚きました。
イーストウッドらしい、丁寧に作りこまれた良質な作品です。

太平洋戦争の末期、日本の南端の領土である硫黄島を征服する
為に米軍が上陸。擂鉢山に6人の兵士が掲げる星条旗の写真が
戦争に懐疑的になってきているアメリカ国民の気持ちに火を
つける役割になった。
旗を掲げた兵のうち、生き残った3人がアメリカに帰還し、
戦争国債キャンペーンの為に各地で行われるイベントに
英雄として引っぱり出される事になる。
彼らは硫黄島での生死の境目を想い始める。

戦争って「大いなる非現実なもの」だと思います。
街中で一人殺したら「犯罪者」だけど、戦場で沢山殺せば「英雄」
そんな非現実な事、ムチャを納得させるのは、人の気持ちを操作
する以外不可能。

最近、北朝鮮のニュース映像なんか観てると感じる、
国がらみのイメージ戦略の怖さ。
おそらく太平洋戦争の頃の日本なんてアメリカよりも
情報操作が酷かったんじゃないかなぁと思いますけど、
こういう映画を見ていると、いかに国がそういう洗脳的行為を
作為的にやっていたかが、手に取るように判りますよね。

この「6人の兵士」の写真イメージは、戦争イメージ高揚キャンペーンに
は最高のビジュアルだった訳で、今のスポーツ界なら新庄みたいな
ものかもしれません。(ちょっと違うか)

でもこのニュースを聞いていた当時の人も
「こいつらただ単に旗上げただけやん。なんでこいつらだけ
英雄扱いするの?国債買わすためやろ」って勿論思ってた人も
実際は物凄く沢山いたんじゃないかと思います。
民衆はそこまでバカじゃないはず。
当人たちは、それがイチバン辛かった筈で、原作者のドクの
父親が死ぬまで一切家族にはこの話をしなかったというのもなんとなく
判る気がします。

硫黄島には約7万人の米兵が上陸したそうで、今のお金に
換算したら食費だけでも一日500円/一人として一日に3500万!
って考えたらちょっとスゴイ。人件費として換算したら
いくらになる事やら・・。
でも戦争で儲かる企業や個人もいるんですよね。

ただでさえ俳優の顔を覚えられないタイプなので、
そんなに著名なスターが出ていないこの映画では
特に前半は誰がだれやらほとんど判ってませんでした(苦笑)
でも「クラッシュ」の監督、ポール・ハギスが脚本に参加している
からか、多くの登場人物の背景や物語が断片的に出てくる割には
後半になるにつれて判り易くなっていった気がします。

実は全米プレビューの頃、チラっと英語のレビューを目にして
しまったんですが、結構「残念な出来」と否定的なものが多かった
んです。
でも観てみたらなるほど、アメリカ人にとって勝利のイメージや
英雄伝説の胡散臭い部分をズバっと指摘している作品
だからなのかと思いました。
もっと「プライベートライアン」みたいなアメリカの良心的な
作品を期待していたんだろうと思います。
イーストウッドやるなぁ。

英雄として担ぎ出された3人の作者の父、ドク以外は
幸せな余生とは言えなかった事実。
戦意高揚に利用されただけだったという・・。
「自分は英雄なんかじゃない、あそこで見たもの、やった事
に誇れる事なんてひとつもない」
と言い切ったアイラのセリフが強く印象に残りました。

戦闘場面は「プライベートライアン」に近い臨場感でしたけど、
戦争中もアメリカの都市は現場とは別世界の日常なんですよね。
硫黄島のシーンはややセピアがかったトーンに統一され、
フラッシュバックによる戦場とアメリカ本土の対比が
とても効果的で、回想ではなく、同時期なのにこんなに現場と
本土では世界が違うものなんだってのが悲しいくらい伝わってきます。
「現場は大変なんだ!」

「戦争は無意味だ」なんて月並みなセリフは登場しませんけど、
全体を通して今でも起こる戦争についてあれこれ考えさせられる映画。
映画の中ではほとんど日本人の影は感じられないんですけど、
年末に公開される「硫黄島からの手紙」にリンクする部分が
どれくらいあるのか。
あの防空壕の中の自決の顛末なども描かれているのか興味深いです。
イーストウッド監督がどんな視点で日本人を描いているのか、
不安半分、期待半分

この2作を続けて見る事で、
作品のメッセージがより明確になるのなら、
映画史上でも類を見ない2部作の
大傑作になる可能性を秘めてるんじゃないでしょうか。

kazuponの感想-★★★★

追記
思った以上に「硫黄島からの手紙」も素晴らしい作品で、
書いたとおり2部作の大傑作になったと思います。
イーストウッドってすごい。

「硫黄島からの手紙」感想12/10

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手紙

2006年11月03日(金) 0時15分


この作品物凄く評判いいみたいですね。
自分すぐに感動してしまうタイプなんで、まずこの手の物語には
弱いほうなんですが・・。
この作品の不幸具合と演出がストレート過ぎて
正直ちょっと肌に合わないと思ってしまいました。
こういう映画の感想を書くのはいつもながら難しいです。

兄・剛士は直貴(山田孝之)の大学受験の費用がどうしても捻出出来なくて、
民家に一度だけ押し入って、はずみで年老いた女性を殺してしまった。
刑務所から毎月欠かさず弟を気遣う手紙を送る剛志。
進学を諦めた直貴は殺人犯の弟という事で、
どこに行っても結局は敬遠され、差別されてしまう。
彼の夢はお笑いで有名になる事。ところがそんな夢もすぐに兄の事が
原因で崩れていくのだった。

原作がそういうものなんでしょうけど、
多くのエピソードは昔見たことある感の古臭い
設定に感じたのが自分はダメでした。
「こういうのって不幸でしょ!」
って上から言われてる感をなんとなく感じてしまって。
親なしで貧乏な兄弟で、あんなに
真面目な兄(映画を観ている限りでは)が
大学受験の弟の費用のために強盗する設定とか。

例えば上京後の恋愛のエピソード。
合コンで一人だけ浮いてる彼が気になる女の子が社長令嬢。
兄の事を隠して交際〜お屋敷に招待されて食事会〜
「彼とは距離を置いたほうがいい」〜
許婚登場!「彼女とは別れてくれたまえ!」〜
「悪いが調べさせて貰ったよ!」〜「この金で無かった事にしてくれ」・・
ってこの展開って昼ドラのパロディみたいに思ってしまったんですよね。
こういのに自分はリアリティや深みを
やっぱり求めてしまうからいけないんだと思いますけど・・。(苦笑)

子供を公園に連れていくと近所のママさん連中が
サーっとみんな帰ってしまうとか・・。

人の心の闇や他人対する防衛本能なんて
絶対その人の気持ちになってみないと
わからない部分もあると思うし。
(加害側、その家族、被害者、身近にいる人)

現実的にはもっといろいろと複雑なんじゃないかと思います。
心で思っていても態度に出さないとか。
表面的には優しくても本質的には他人事と思ってるとか。
でもでも沢尻エリカの役じゃないけど、
理解あるべき、尊敬すべき行動を取っている人や
それを知ってた所で本人じゃないから
どうって事ないと意識すらしてない人も
もっと沢山いると思いますし・・。
この映画で彼に理解ある人が、親に見捨てられた由美子だったり、
自分も刑務所に入っていた先輩だったりってのも
気になってしまいました。

全然関係ないけど、最近観た「16ブロック」で
「犯罪者だったチャックベリーもバリー・ホワイトもやり直せた」
ってケーキ職人を目指すチンピラのモス・デフが言ってるシーン
を思い出しました。
そういうメッセージが別の物語の中にさりげなく
入っているほうが自分にはぐっとくるみたいです。

劇中の漫才はちょっとドン引きしてしまうくらい危なっかしいんで
すよ。そのへんもノレなかった理由のひとつでした。
原作はミュージシャンでラストに「イマジン」歌うそうですね・・。
うーむ。
そんな中であの漫才の相方の存在はなかなか良かったで
すね。ああいうツレとしての向き合い方ならいいなぁ。
ラストの漫才のシーンの彼の表情が一瞬変わる所が
この映画で一番いいと思ったシーンでした。

kazuponの感想ー★★★

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