紙屋悦子の青春

2006年09月20日(水) 0時39分


地味な内容ですが、いい映画でした。
病院の屋上から過去を回想する老夫婦。
彼らの青春時代、
終戦直前の鹿児島にあるごく普通の民家の
お茶の間だけで物語が語られます。
登場人物は5人だけ。
会話のやりとりの大半はワンカットの長廻しで
音楽もほとんどなし。

それでも終始映画の世界に引きこまれる作品で、
ただ会話しているだけなのに、空気感や登場人物の
感情が伝わってきます。
原作は戯曲だそうですが、舞台劇を観ている感もありました。
この時代では当たり前の、
戦争中の普通の人々の情景なんでしょうけど、
携帯やPCやいろんなものが発達した今、こういう映画を見ると
不便な時代のほうが人の気持ちは豊かだったのではないかと
ちょっと考えさせられます。
本作は黒木和雄監督の遺作となってしまいました。

敗戦の色が濃くなった鹿児島。
両親を東京の空襲で亡くした紙屋悦子(原田知世)は、技師の兄(小林薫)
と自分と同級生の兄嫁(本上まなみ)と3人で暮らしていた。
兄の後輩で航空隊所属の明石(松岡俊介)が悦子の見合い相手を
連れてくるという。
ところがその日、兄夫婦は熊本の工場へ臨時召集されることになり、
見合いは悦子一人になってしまった。
兄に聞いた来訪時間よりも早く着いた明石は同僚の長与(永瀬正敏)を
紹介してすぐいなくなってしまう。
全く会話は弾まないが、長与の実直な性格は伝わった。
実は悦子は密かに明石に思いを寄せていた。
明石は数日後、大事な作戦で出撃に参加すると挨拶に来る。
「長与はほんにいいやつです」と悦子に告げると、
明石は去っていくのだった。

登場人物の会話だけで成立させている作品なんですけど、
行間が読めるというか、映画に登場しないいろんな情景も観客に
想像させてくれます。
悦子が勤めている駅の駅長が話し好きで多分こんな人だろうなとか、
兄の勤める工場や、明石や長与のいる航空隊基地って多分こんな
だろうとか、おはぎを女二人で多分お話しながら準備している情景とか。


昔の日本人って礼儀正しかったんだなぁって改めて
思ってしまいました。
来客があると判ったら慌ててもてなす準備を考える。
やって来るとちゃんと玄関先で出迎えて、正座して挨拶する。
兄が明石と会話してるシーンも、女性は一歩下がった場で
正座して聞いているとか。田舎の一軒家なんですけど、
みんなちゃんとしてます。
実際はここまでだったのかはちょっと判りません。
先輩、後輩のたての関係や、しばらくいない身内の兄へ手紙を出すとか
今ほとんど身の回りにそんなのないので、久々にいいなぁと
新鮮に感じてしまいました。まぁ自分がシャンとしてない
からなんでしょうけど。(苦笑)

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