硫黄島からの手紙

2006年12月10日(日) 19時16分


「父親達の星条旗」の感想で、「敵=日本」というのを
意識しないような作り方に驚いたと書きましたが、
やはりアメリカ人兵士は物語にほとんど登場せず、
あくまでも日本兵たちの描写に終始する作品。
もし何も知らずにたまたまこの映画を観た方がいたら、
純然たる日本映画としか思えないんじゃないでしょうか。
この映画のカメラのこちら側にあのダーティ・ハリー=
クリント・イーストウッドが座って指示をしているのかと思うと、
ほんとに驚嘆せざるを得ません。
戦争を扱った映画ではどうしても一方的な目線に終始しますが、
今までほとんど見る事のなかった「公平な視点」が
この2本を通じて浮き上がってくるのが素晴らしい。
本当に近年観た戦争を描いた映画でここまで胸につかえる
2作になるとは予想していませんでした。

1944年アメリカ軍が硫黄島に総攻撃をかける日が
迫っている。
陸軍中将・栗林忠道(渡辺謙)が新たに責任者として
赴任してくる。
そんな中、パン屋だった西郷(二宮和也)は上官から
執拗にイビられ、死と隣り合わせの日々。妻とこれから
生まれてくる子供を思う手紙を毎日書いている。
兵力ではおそらく完全に勝てる見込みはない硫黄島の
攻防戦の前に、栗林は要塞のように島を洞窟状態にして
相手を狙う持久戦に持ち込む作戦を立てた。

同じ謙サンが出ていたハリウッド作品の
「ラストサムライ」も「SAYURI」もやはり日本のトンデモ描写が
若干出てきますし、そもそも英語しゃべってましたけど、
これは過去に例を見ないくらいウソ臭くなく日本人を
ちゃんと描いたハリウッド映画。
タイトルも「硫黄島からの手紙」とさりげなく日本語で
もちろんほぼ全編日本語。

謙サンも良かったけど実質的な主役だと言っていい、
二宮和也が思った以上にメチャクチャ良くてビックリ。
倉本聡のドラマ「優しい時間」でも印象的だったんですけど、
未だにサムライ精神が崇高だと信じるしか出来なかった当時の日本軍
の中で、「名誉の死より生きる事がすべて」だと最初から思っている彼の
役は今の日本人には共感出来るキャラクターのように思いました。

「父親達の星条旗」と本作を見比べると、同じ戦争でもこうも
状況が圧倒的に違ってたのかとやりきれなくなります。
アメリカ兵が硫黄島に向かう場面ではまだ笑顔があったり
冗談言ったりって気楽さが若干感じらましたけど、
日本兵はちょっとでも上官の気に障ると体罰だし、
アメリカって日本兵みたいに「死ぬ事」が
名誉な事だってバカみたいな刷り込みしてないですよね。

中盤の「自決」のシーンはかなりやりきれないショッキングな
ものなんですが、サムライ精神でこんなのやってた部分は
相当な理不尽さを感じます。○○○○バンザイも。

ラストあたりで二宮君が「もう5日も飲まず食わずだ」
って言うセリフとか、投降した日本兵が加瀬君に
「メシ食えるらしい」と言ってたりとか、ああいう
細かいセリフがほんとに悲しい。

そういう日本の兵士たちが、いかに間違った精神論に
よってムダに命を落としていた被害者であったかってのが
イーストウッドの視点からきちんと描かれていたのがスゴイ
と思いました。

「父親〜」ではアメリカ本土に彼らが戻るシーンがかなり出てきましたけど
戦中の街は戦争やってるってのがウソみたいな普通さ。
日本の現地の描写はあの憲兵のエピソードや
召集令状の場面のみでしたけど、その二つだけで充分狂ってた事が
伝わる場面になってましたよね。
犬好きとしては許せんエピソードです。あれは(怒)

とはいえ日本を軽視している訳ではありません。
「父親〜」はヒーロー的存在が不在の作品でしたけど、
この映画は栗林やバロン西の人物の高潔さをかなり肯定的に
描いているのも驚き。

日本軍の中にも高潔でマトモな人もいれば、二宮君の上官や
中村獅堂が演じた彼みたいなヤツもいるし、二宮君みたいに
ただ生きていたいと思う人もいるし、
そういういろんなタイプがいるという描き方は「星条旗」と同じ。
アメリカ兵の母から捕虜に送られてきた手紙について
二宮君と加瀬君が会話するシーンは特にこの2作の
メッセージがこめられている部分だなぁと感じました。

その加瀬亮の演じる清水の情けなく悲しい死に方の場面のように
アメリカ人にとってはネガティブに感じる部分も
含めて、この映画はアメリカでどう評価されるのかがとても
興味深いです。

アメリカでは12月20日におそらく小規模に公開されるらしい
ですね。
そういえば本作のプロデューサーはドリームワークスなんで
スピルバーグ。三船敏郎サン出てる「1941」って好きだったなぁ(笑)
あまりにこの2作とは違うバカ戦争映画でしたけど・・。

「硫黄島の手紙」は繰り返しは見るにはあまりにも
ツライ映画ですが本当に素晴らしいです。
泣かせるようなミエミエの演出は全く無いんですけど、
泣けて仕方ありませんでした。
ラスト、生きる事だけを考え常にマイペースで
ひょうひょうとしていた二宮君が狂ったように
暴れるシーンがとても印象に残っています。

そして耳に優しく残るシンプルな音楽は今回も最高でした。

kazuponの感想ー★★★★1/2
「父親たちの星条旗」と合わせて★★★★★

の合わせ技1本!2作両方を観るべき作品。

「父親達の星条旗」感想

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