ブロークバック・マウンテン

2006年03月19日(日) 11時40分


この映画の牧羊風景や、西部の田舎町の閉鎖的な雰囲気は
アメリカ人にどのくらいリアルに感じられるものなのかな。
ハリウッドデビュー作「いつか晴れた日に」を観た時にも
思いましたが、事前にアン・リーの映画と知らなかったら、
監督が台湾で映画を撮っていたアジア人だという事にまず驚くような気がします。

アメリカ映画の顔のひとつでもあった、ステレオタイプな「カウボーイ」
のイメージの間逆の所にある恋。
タフな西部の男なら封印すべきパンドラの箱を開けてしまった二人。
心の奥底にある恋愛感情の葛藤は、
異国人の彼だからこそ客観的に描けたのかもしれません。
「ロミオとジュリエット」じゃないけど、許されない恋ほど、
よけい想いは募ってしまうのは、どの恋愛も同じかもしれません。

ワイオミングのブロークバック山で、羊の放牧を管理する季節労働に雇われた
イニス(ヒース・レジャー)とジャック(ジェイク・ギレンホール)。
寡黙な西部の男たちだが、二人だけの仕事なので次第に打ち解けていく。
ある寒い夜、身を寄せ合ううちに自然な成り行きで性的関係になるが、
すぐにお互いの本質的ホモセクシュアリティは否定しあう二人。
二人だけのキャンプは間もなく終わり、イニスは以前から結婚の約束をしていた
アルマ(ミシェル・ウィリアムス)と、ジャックはロデオ会場で知り合った
農機具会社オーナーの娘ラリーン(アン・ハサウェイ)とそれぞれに
結婚し、子供も設ける。
しかし二人とも、あのブロークバックで二人で過ごした日々が忘れられず、
20年に渡って密会を重ねていく。

アン・リー監督は台湾時代に一度ゲイの題材を扱ってますよね。
「ウエディング・バンケット」で。
アメリカに帰化した台湾人の主人公が同性愛者で、台湾から父親が訪ねてくる前に
ゲイを誤魔化す為に中国人の女の子と偽装結婚しようとする物語。
かなりコメディタッチの映画でしたが、
「ゲイ」の青年が厳格な父親には自分の同性愛嗜好は理解出来ないだろうと
思っているのが騒動の根本にありました。

この台湾時代の監督2本目の映画と本作に共通するアイテムが「父親」と「結婚」

映画の中では典型的な西部の父親たちがやや否定的に登場します。
イニスの父は幼少の頃同郷でゲイだった男が見せしめで殺された現場を
イニスにわざと見せます。
ジャックの妻の父親は権力者独特の嫌な奴。
息子への教育方針に関してテレビを消したり点けたりして
やりあってるうちにジャックがブチ切れて言い放つセリフに象徴されます。
そしてジャック本人の父。ジャック亡き後訪ねてきたイニスを見る冷酷な視線。
自分達の恋愛はとうてい受け入れられない精神的な苦しみは
この父親達の世界で作り上げられた「タフな西部の男の掟」に反する事。
特にイニスは子供の頃の事件の事で「同性愛」=「死」という
トラウマがあって自分の本心から逃げようとしている図式が伝わってきました。
この父親像に関しては、アン・リー権威的なアメリカに対するの少し冷ややかな
視線を感じました。

興味深いのは二人の結婚。
どちらも女性と結婚して、ごく普通な人生を歩こうと一度は決めた
んじゃないかと思います。
ところが、そのつまらない日常が逆に二人が相手の事をより一層思う土壌になって
しまっていました。

その反面、イニスは娘との間柄は良好で、上の子は(下かな?)
母親よりも父を慕ってる事がなんとなく伝わってきます。
そしてジャックとイニスの妻たちよりも多分優しい女性に育っています。
彼女は父の魅力を判っているから、同じようにそれが判る
女性(ウェイトレス)に嫉妬している場面も、
イニスがジャックに惚れられている彼の魅力について間接的に説明してる
いいエピソードだと思いました。

イニスは寡黙で男っぽいけれども内面はとても優しい人。
ブロークバックでイニスが後ろからそっと抱きしめる過去がオーバーラップする
シーンがとても美しい。
このへんはアン・リー上手いなぁとホントに思います。

ヒース・レジャーは先日「ロード・オブ・ドッグタウン」
(この映画もオススメなんで、DVDにでもなったら是非ご覧下さい)
の胡散くさいサーフショップのオーナー役が素晴らしい!と
思ったばかりだったんですが、本作はその前の
「ブラザース・グリム」ともどれも全然違うタイプの
役でやっぱりスゴイですよこの人。
ジェイク・ギレンホールは「プルーフオブ・マイライフ」と
「ジャーヘッド」など最近よく見かけますが(笑)、
彼は逆にそんなに印象変わらないですよね;;
でも本作はその3本の中ではダントツに良かった気がします。

監督の台湾時代の「恋人たちの食卓」は、
父親が作るゴハンがとにかくめちゃくちゃ美味しそう!という事と(笑)
とても人間を深く掘り下げた映画で、大好きな作品なんですが、
近作「グリーン・ディスティニー」は豪華な反面ちょっと以前の良さが
無くなったように感じてました。。
この作品はまた以前の監督のスタイルに戻ったようで嬉しくなりました。
これでオスカー取っちゃったので、これから自分のやりたい企画が
もっとやり易くなったんでしょうね。期待します!

「恋人たちの食卓」もそういえば「父親」と「結婚」が出てくる映画だったなぁ。

kazuponの感想ー★★★★

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Brokeback Mountain (2005)@imdb

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