ブックレビュー(107)―『日本人へ―リーダー篇―&―国家と歴史篇―』

August 06 [Fri], 2010, 23:21
今回は『文藝春秋』に連載されていた塩野七生の作品をまとめたものをレビューしたい。書店では平積みになり、かなりの売り上げのようだ。活き活きとした歴史小説を書く事で知られている著者が、現代日本をどう見るのかという点について興味がひかれるところである。
一篇一篇は大変短く、通勤電車の中やちょっとした空き時間で読める手軽さも、新書にうってつけである。だが、タイトルと内容についてはやや違和感も覚えるのではないだろうか。連載をまとめたもの故に仕方が無いのかもしれないが、特にサブタイトルにあるテーマが中心な訳でもなく、たまたまそういったテーマに近いものが寄り集まっているのに過ぎない。一貫した主張や評論を期待するのは難しい。そして、最も大切なことは、著者が「小説家」であるということだ。どんなに歴史上の人物の言葉で語ろうとも、それは現代に生きる人間が“想像”したものに過ぎない。

ただ、それにしてもイタリアから見える日本の情報発信力の弱さ、それから来る欧州での存在感の無さといった指摘については大いに考えなければならないだろう。
また、米国のイラク政策とローマ帝国の領土拡大の違いは、「パクス・アメリカーナ」という言葉の誤りに気が付かせてくれる。昨日まで敵であった国民に対して市民権や議席を与えて「ファミリア」として取り込むローマの強さは、経済学における「所有権理論」で説明できる合理性があったのではないだろうか。現代と歴史を行き来する小説家の観点は鋭い。

外から日本を見て「まったく情けない。しっかりしないと!」と叱咤激励してくれるから売れているのだろう。日本の低調さを裏返しに見たような気がする。何年か経って改めて読み返す時に、この本の本当の価値が分かるのかもしれない。



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日本人へ リーダー篇 (文春新書)塩野 七生 by G-Tools

塩野七生。

希望的観測によらない、びしばしの物言いが良いですね。
理想論、机上の?...
月のブログ  August 21 [Sat], 2010, 9:56
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