ブックレビュー(321)ー『陸軍省軍務局と日米開戦』 

June 22 [Fri], 2018, 18:00
日米開戦直前の日本陸軍省、軍事政策を立案する軍務局の武藤章局長以下、佐藤賢了(軍務課長)、石井秋穂(同高級課員)を主要登場人物とし、東条英機首相の意を汲んで日米開戦を避けようと取り組んだ様子を、小説風に仕立てた作品。日本史の知識が乏しくても、素直に読む事ができる点が良い。

一方、日本陸軍が志向した対ソ連戦を睨んだ国力増強(=陸軍力の整備)のために、中国東北部の支配を試みて日中戦争に至っていた時期である事を忘れるべきではないだろう。彼らは単なる平和主義者ではなく、日米戦争が陸軍にとって利点に乏しいと合理的に判断したまでの事だ。

歴史とは複雑で、色々な視点で見ないと本当の理解にたどり着かないと思う。
一つの見方として、戦にはやる参謀本部と対照的な軍務局の動きを学ぶには、良い教材だった。

ブックレビュー(320)ー『戦争調査会』 

June 19 [Tue], 2018, 18:00
先の戦争が終結した直後の1945年11月、当時の幣原内閣が日本人の手で開戦・敗戰の過程を明らかにしようとした試みを紹介する本。
結局、GHQにより廃止されてしまうが、こうした点が日本人自身による戦争の正確な理解と真の意味の反省(教訓を後世に活かす)を損ねてしまったのかもしれない。

ブックレビュー(319)ー『第一次世界大戦』 

June 16 [Sat], 2018, 18:00
日中戦争の歴史を紐解くと、日本陸軍は第一次世界大戦を経験することがなかったため、航空機や戦車の活用を中心とした機械化を進めず、日露戦争の戦訓をベースにして時代遅れの戦い方をして負けたという指摘に出会う。
だが、軍に限らず多くの日本人にとって、第一次世界大戦は馴染みがない。近代史でもせいぜいオーストルアの皇太子暗殺事件を発端としたバルカン半島の紛争が、同盟関係の連鎖反応によって欧州中に拡大した・・・というレベルの教えでしかない。
実際には、帝国から国民国家へ移り変わり、女性の社会進出など多くの点で「近代化」を進める要因ともなった。だが、日本にとっては中国・青島や南洋諸島を得た程度でインパクトは少なかった。
こうした日本人によって印象の乏しい第一次世界大戦を概説的にまとめた一冊。網羅的で散漫と捉える向きがあるかもしれないが、読み易く導入に最適なものだと思う。

ブックレビュー(318)ー『ナマコ』 

June 13 [Wed], 2018, 18:00
だいぶブックレビューをサボっているので、短いものを怒涛の勢いで更新。

椎名誠の小説。ノンフィクションではないが、実在の人物をモデルにしているとのこと。
タイトルのとおりナマコにまつわる話で、行きつけの飲み屋の店主がナマコに興味を持ち、知床にいる知り合いの漁師を頼りにナマコの仕入先を開拓にいく。そこで出会った人々とのやりとりを描いた、ロードムービーのような作品。
大人しいと思っていた店主の過去など、様々な発見をする主人公(椎名誠の目線)と一緒に地味ながら金の成る木であるナマコを探す旅へ出たい人はどうぞ・・・

今夜は映画評論(118)ー『13時間 ベンガジ秘密の兵士』 

June 10 [Sun], 2018, 15:00
Amazonプライム会員のため、ちょくちょく映画を見て元を取るようにしている。
その中で、日本国内で公開されなかった本作があったので見ることにした。ド派手な作風が持ち味のマイケル・ベイ監督作品というだけで、暇つぶしには最適だ。

【粗筋】
2012年、リビアのベンガジはカダフィ政権崩壊に伴い内戦状態となっていた。危険地帯で諸国が引き上げる中、米国はクリストファー・スティーブンス大使率いる外交使節を置いていた。一方、CIAは、「アネックス」という秘密拠点を領事館の近くに設け、武器の闇ルートの監視など工作活動を行っていた。
秘密拠点の警護は、民間委託されたGrobal Response Staff(GRS)が担っており、そこへ海軍特殊部隊SEALsを退役して不動産業を営むジャック・シルバ(ジョン・クラシンスキー)が加わる。ジャックを含む6名は、元SEALs、元海兵隊、元陸軍レンジャーで構成されており、長くリビアにいる者も多かった。
2012年9月11日、武装勢力により領事館が襲撃される。その様子を知ったGRSは、任務外ではあるが急いで救出しないと大使が危険と判断し、CIA局員の"チーフ"に救出作戦を進言するが、退けられてしまう。しかし状況は悪化、我慢しきれずにGRSは作戦を強行する。
しかし、現地を強襲するが大使は見つからず、次はCIA拠点が襲われると判断して一旦引き上げ、防御を固める。合流した領事館警備チーム2名とGRSだけで、波状攻撃を仕掛ける武装勢力と対峙する。
本国ではドローンにより状況は認識していたものの、秘密拠点であることなどを理由に支援は全く来なかった・・・

【感想】
ベイズム、とも呼ばれるマイケル・ベイ監督の火薬満載のアクションが本作でも見られる。とは言え、実際には武装勢力に襲われて反撃している様子を描いており、必然とも言えるから却って抑制的な演出と言って良いかもしれない。むしろ、襲撃された領事館の通りを挟んだ民家では住民が呑気にサッカー観戦をしていたり、地元の日常と異邦人に降りかかる非日常の光景が対比され、印象深い。
焦るCIA職員と必死で拠点を守ろうと使命感に燃えるGRS。戦う男たちの姿はベイズムの面目躍如である。

武装勢力の迫撃砲で負傷した領事館警備隊員に声を掛けたGRS隊員がそっと銃を手から外すと、半狂乱になって「俺の銃はどこだ!」と喚くので、弾倉を抜きスライドを引いて弾を抜き取り、再び手に持たせるという細かい場面も関心した。
丸腰で怯えるリビア人通訳に銃を持たせるが、再三再四「俺に銃口を向けるな」と繰り返したり、銃の取り扱いの基本を教えてくれる(笑)

家族とFaceTimeで連絡する場面、一旦退役したのに戦場に戻ってきてしまった事の悩み、ちょっとした戦闘の「間」に家族を思い出してしまうという呟き、色々と細かい演出が繋がれていて割と見応えのある作品だった。なぜ劇場公開されなかったのだろうか・・・

今夜は映画評論(117)ー『ペンタゴン・ペーパーズ』 

May 25 [Fri], 2018, 19:00
こちらは4月21日に観た『ペンタゴン・ペーパーズ』。メリル・ストリープとトム・ハンクスのW主演でスピルバーグ監督、恐ろしい豪華布陣で劇場もほぼ満席、儲かる作品なのだろうなと思った。

【粗筋】
夫の死によりワシントンポストの社主となったキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)は、家族経営の会社を株式会社にすることに奔走していた。一方、編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)が、ライバル『ニューヨーク・タイムズ』に追いつこうと苦戦する中、ベトナム戦争に関する秘密報告書のスクープをタイムズ紙が報じる。ブラッドリーはあの手この手を尽くして、機密文書"ペンタゴン・ペーパーズ"を入手しようと試み、また政府からの報道禁止措置に対して立ち向かう。

【感想】
政府が真実を隠蔽しようとするのを暴く正義のメディアの姿と取るか、個人経営だった地方紙のサクセスストーリーと取るか・・・。ただ、何かイマイチ物足りない。それというのも、我々が既知の事を辿る歴史書のようなものだからか。内幕とも言える主演者の奮闘が主題と取れば、人物劇とも解釈できるかもしれない。
なお、この続きは『大統領の陰謀』として40年前に映画化済み。

今夜は映画評論(116)ー『レッド・スパロー』 

May 19 [Sat], 2018, 19:00
映画『レッドスパロー』、4月5日に観てから時間が経ってしまったが、レビューを残しておく。

【粗筋】
原作はCIA職員だったジェイソン・マシューズの小説。
ロシア・ボリショイバレエ団のトップだったドミニカ・エゴロワ(ジェニファー・ローレンス)は、公演中の事故で足に怪我を負い全ての地位を失い、退団する。しかも、その事故は恋人だった相方が浮気の果てに起こしたと知る。母親は難病で治療費が必要、そのような絶望的な中でロシア情報庁SVR副長官である叔父のワーニャ・エゴロワ(マティアス・スーナールツ)から生活費などと引き換えに仕事を提示される。
その仕事は、ハニートラップ工作員“スパロー”。養成学校での訓練を経て、SVR内部の情報提供者と接触していたCIA工作員ネイト・ナッシュ(ジョエル・エルガートン)に接近し、情報提供者をあぶり出す任務に就く。

【感想】
スパイ小説らしい、騙し・騙される展開。ナッシュも彼女の身分と知りつつ、逆に寝返らせようと仕掛けるが、一方の彼女もそれに応じるが…また騙す。しかし、最後の最後まで、彼女は全員の一歩先を行く展開。
なお、ハニートラップの実技指導(エロ)や拷問の場面(グロ)が苦手な人は決して観ない事。

今夜は映画評論(115)ー『ホース・ソルジャー』 

May 12 [Sat], 2018, 23:41
夕方の予定まで時間ができたので、以前予告編を見て気になっていた『ホース・ソルジャー』を観に行く。
9.11直後、タリバン掃討で協同する北部同盟ドスタム将軍の支援に派遣された、米陸軍特殊部隊グリーンベレーODA595の実話に基づいた作品。山岳地域であるため、彼らに馬が貸し出され、ほとんど乗馬経験を持たない隊員12名が北部同盟と時に衝突しながら戦い、やがて信頼を勝ち得た末に要衝マザリシャリフを奪還する・・・という話。

冒頭で任務を言い渡すマルホランド大佐は、『ブラックホークダウン』でデルタフォース隊員を演じたウィリアム・フィクナー、ODA595の隊員には『ザ・シューター』でドジな新人FBI捜査官を演じたマイケル・ペーニャと『ボーダーライン』で非合法活動を行うデルタフォース隊員を演じたジェフリー・ドノヴァンと、個人的に馴染みの顔ぶれが出ており、それぞれの作品がちらつき集中できなかった・・・

映画自体としては、アフガン到着時に案内するCIA準軍事工作員が、「50km先の別の部族へカネを届けてくる」と言って別れたっきり再登場しなかったり、あえての演出なのか伏線を拾い忘れたのか分からない、大味な展開。再現ドキュメントとしての価値があると言えばいいのだろうか。

ブックレビュー(317)ー『日本軍兵士ーアジア・太平洋戦争の現実』 

April 06 [Fri], 2018, 20:00
『皇軍兵士の日常生活』と似た内容であるが、こちらはより戦場での日本兵の悲惨な実態に迫ったもの。
数値を上げてその悲惨さを浮かび上がらせる。
直接戦闘による死は35〜40%、残りは病没。しかもその半分は病気というよりは、飢餓によると推定させる・・・これだけをもっても、補給がままならない状態で戦争を続けた日本軍の無茶を理解できるだろう。兵士の平均体重は、当初60kgだったのが54kgにまで落ち込んだという。
限界を超えた無理のある組織は、その構成員に犠牲を強いる。今日言われるブラック企業は、同じ過ちを犯してはいないだろうか。十分な準備をせず、精神論を振りかざして現場の人間に実施を強要し、失敗すれば責任を負わせる。歴史から何を学ぶかに、国の成熟度が現れる。だが日本では現代史を学ぶ機会が乏しい。大丈夫だろうか。

ブックレビュー(316)ー『皇軍兵士の日常生活』 

April 03 [Tue], 2018, 20:00
相変わらず、日本兵について知りたいと考えている。特に陸軍は「徴兵」の比率が高く、日本各地から人々が集まったという点で、当時の日本社会を反映していたと言っても良いと思う(無論、営内での独特の慣習があるのだが)。
その点で、営内の生活をつぶさに調べた本書は日常生活が見えて面白い。それは、様々な格差の集合体だった。暴力、軍事郵便、会社員が兵役に就いた際の補償金、食事・・・そして極め付けは戦死の伝えられ方まで。

軍隊である以上、階級に基づく「区別」は存在する。しかし、それ以上に動員や補給の限界を超えて戦い続けた日本軍には、余裕の無さがもたらす「差別」が存在していた。食料の配分など最たるものだろう。
無理のある組織の内情、それは現代社会にも教訓を示していると思う。

プロフィール
  • プロフィール画像
  • アイコン画像 ニックネーム:さのってぃ
  • アイコン画像 性別:男性
  • アイコン画像 誕生日:5月2日
  • アイコン画像 血液型:A型
  • アイコン画像 職業:会社員
  • アイコン画像 趣味:
    ・映画-主に戦争映画
    ・旅行-公共交通機関を使っての国内旅行
読者になる
■趣味■ 国際政治の勉強、旅、写真、乗り物全般、読書、物書き、映画を見ること、街歩き、酒場巡り ■好物■ 北海道、夜景、Suicaのペンギン、熊、水曜どうでしょう(TV番組)、海上自衛隊、東急電鉄・バス、ボーイング777-200(JAS仕様)、ラーメン二郎、日本酒、スコッチ、スターバックスコーヒー、矢井田瞳、鬼束ちひろ、サザンオールスターズ、ボケの利いた女性
2018年06月
« 前の月  |  次の月 »
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
Yapme!一覧
読者になる