米谷さんのこと

2012年09月15日(土) 23時51分

私は高校を卒業した昭和54年の春、京都の友禅屋さんに弟子入りしました。

2番目の姉のKやんがすでにその友禅屋さんで修業していたこともあり
修学旅行の自由時間に夜、見学させてもらいました。

田舎の女子高生で緊張していてそのときのことはよく覚えていないのですが
旅行中に二条城も訪れふと庭をみるとスケッチをしている人がいて
美術部では油絵など描いていましたが、そのときに
「京都に住んでこんな風に絵を描いていたい!」と思ったのを覚えています。

当時そのお店は、大(おお)先生・若先生を筆頭に
姉も含め4人の先輩・同期の男の子が修業していました。
上下関係は昔に比べると厳しくなくなったようでした。
親元を離れたヘタレの末っ子の私は慣れないこともあり
姉にずいぶん助けられました。

仕事部屋のすぐ横、三畳の部屋に住み込みで修業することになりました。
初めは「地入れ」という染色の前にする作業に使う呉汁を作ること。
階段下で毎朝大きなすり鉢とすりこぎで
前日から浸しておいた大豆を擂ることから始まりました。

しばらくすると小さな梅のつぼみの白を塗らせて貰いました。
そして徐々に任される範囲が増え3年ほどすると色は先生が指定されましたが
一反の着物をまかされるようになりました。
そうこうして6年後に結婚のため群馬に戻りました。

自分のことが長くなってしまいましたが・・・

ここからが本題です。

当時の仕事場に一枚の大きなパネルが掛かっていました。
組合青年部の作品展に出された作品のようでした。
「松かさ」をモチーフにし、茶系統の色合いで幾何学模様のように
美しくデザインされているものでした。
私なども毎年秋に作品を作っていましたがデザインが本当に苦手で
松かさのような物でも
デザインするとこんな風になるんだなぁと感心したものです。
その作者の「米谷さん」は、私が入ったときには
すでに10年の修業を終えられ独立されていると聞きました。
真面目で努力家で弟子の見本のような方だと
先生や先輩にも聞いていました。




ついぞお会いする機会もなく何十年も経った先日
インターネットで友禅のことを調べるともなく見ていたら
なんと米谷さんのサイト(クリックどうぞ)を見つけたのです。

ちょうど数日後に菩提寺の「知恩院団体参拝」を控えており
工房を見学させていただく事になりました。
兄弟子とはいえ私は相当緊張してしまっていました。
団体参拝の宿泊ホテルの夕食もそこそこに
「2〜3人なら工房見学できますよ」というお言葉に甘えて
いつも仲良くしていただいている近所の主婦お二人を誘って出かけました。




最寄りの駅まで迎えに来てくださった米谷さんは
とても優しく気さくな方で、すっかり緊張もほぐれました。
京都らしい佇まいにこれまたとても優しそうな奥様が
仕事場に案内してくださいました。

私は部屋に入るなり眼に飛び込んできたいろいろな物・・・
伸子張りされた生地や机・電熱・「ふね」という染料置き場
染料を入れる茶碗、大小の刷毛、筆、竹製の筆立て、色見本・・・・
もうなんだか胸が一杯になって・・・
同行の二人の存在をすっかり忘れるくらい興奮してしまいました。

そして米谷さんの作られた作品・・・
これはもう・・・・・・・それはそれは素晴らしいものでした。
サイトで拝見してはいたものの
実物の美しさには言葉もありません。


あけび↓




てっせん↓


下絵はもちろんですが糸目などもご自分でされるのだとか。





他にもたくさん素晴らしい作品を見せていただきました!
地色の色もご自分で塗り分けされていてそれがまた柔らかな良い味です。
他にもシダやカヤツリグサ・ニラの花などなど
身近な花を美しくデザインされた作品は素晴らしいです。

米谷さんのこのてっせんの作品はこの秋に開催される
京の名工展」にて見ることが出来ます。


私も友禅の仕事を辞めるときに若先生から着物を作りなさいと
真っ白な反物をいただき作ったのが「てっせん」柄でした。


こうしてみると同じモチーフでも雲泥の差ではありますが
大先輩と偶然にも同じ花に取り組んだことがとても嬉しかったです。

米谷さんは小作品も作っておられ、どうしても欲しくなり、
いただいた染め額や袱紗を嬉しくて宿に帰ってからも何度も何度も出しては締まって
その晩は興奮してなかなか寝付けませんでした。

工房見学は一時間ほどと思ったのですが
私が我を忘れてしまい30分も超過しました。


きちんと整頓された工房に掛けられた「のれん分け」の「のれん」が
一つの仕事をやり遂げた方の生き方を物語っていました。


  • URL:https://yaplog.jp/kamaneko/archive/1390
コメント
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かま猫
 根保孝栄・石塚邦男さん
コメントありがとうございます。
お返事が遅くなり申し訳ありません。
そうですね、長い年月でしか培われない美しさに圧倒されました。
もっともっと観ていたかったのですが団体旅行のあいまの
数時間なので残念でした。
2012年11月01日(木) 0時44分
根保孝栄・石塚邦男
すばらしい工房ですね。伝統工芸の美しさ。
その見事さには息を呑むものがあったでしょうね。
わかります〜ね。
2012年10月26日(金) 14時10分
かま猫
 nyankaiさん
ぜひ京都に行かれたら米谷さんの作品をご覧になってください。
実物は本当に感動します!!!

いつか糺の森でヒガンバナを探してくださいましたっけ。
ヒガンバナを見る度にそのことを思い出します。

2012年09月23日(日) 0時16分
京都は、私にとっても特別な所です。
偶然ですが、数日前に私もてっせんの写真を載せました。
西陣織の見学はしたことありますが、いつか友禅も見てみたいです。
かま猫さんの着物、すてきですよ。
2012年09月22日(土) 13時28分
かま猫
 いちじんさん
コメントありがとうございます!
そうですね〜もう京都からは遠く離れてしまったし
技術的にも鈍っているだろうしと思っていましたが
米谷さんのおかげでまたちょっとやりたくなってしまいました。

倉渕に・・・そうなんですか!
高崎に行くには家からだと国道406で行くのが一番近いので
倉渕は必ず通りますが・・なんか看板見たような・・?
2012年09月19日(水) 23時35分
いちじん
若い頃、京都で本友禅の仕事に
本格的に取り組まれていたのですね!
6年間の貴重な経験を
群馬の地で
是非、生かしてください。
期待しています。

倉渕の方には
着物を作るために絹を
絹を織るために蚕を
蚕を育てるために桑をと
頑張っている女性(東京人)がいますよ。
2012年09月19日(水) 0時44分
 あんずさん
長い文を読んでいただきましてどうもありがとう。
あんずさんは私よりももっと芸術にかかわってきたかたですし
お気持ちよ〜〜くわかります!
昔は仕事を仕事としてしか(作品制作も)楽しんだり意欲を持ったりできなかったように思います。今だったらもっとこういう風に作品を作ったのにとか考えます。年を経てそれをまた形に表していくのもいいのではないかなと思います。80歳から絵本作家になったおばあちゃんもいますもんね。、またいろいろ話しましょうね!

 京の友禅屋さん
読んでいただいてありがとうございます。
写真やリンクも快くお許しくださってありがとうごいざいました。
もっと上手に伝えられたらいいのですが書ききれなかったこともあるようなきがします。
本当に楽しい時間でもっともっといろいろな事をお聞きしたかったです。いつかまた京都に行ったときにお邪魔してもいいですか?
大先生の二条の母屋などのこともお聞きしたいです。
ずいぶん淘汰された業界で今の時代に着物関係の仕事に就いているだけですごいのに賞を取られたりしてすごいです。
カルチャーセンターもあるけれどやるんだったら本友禅を、と、私にはうぬぼれたことを言ったときにわかってくださったようで、それがとても嬉しかったです。
2012年09月17日(月) 9時59分
ありがとうございました。
作品や物創りの過程、仕事場など詳しく紹介をしていただき
少し気恥ずかしく思っています。
これからも生涯現役をめざして、自分らしい作品が
制作していけたらと思っています。

がま猫さんも何時の日か、友禅染めを再開される事を
願っていますよ。
お手伝いする事がありましたら言って下さいね。
2012年09月16日(日) 19時42分
あんず
こんばんは。かま猫さんはかけがいのない経験を積んでこられたのだなぁと、今更ながら感心してます。
すばらしい作品に出会うと、勿論感動はするんですが、自分が何もできてないなぁって、不甲斐ない思いと焦りがわいてくるのが正直なところです。
2012年09月16日(日) 18時38分
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