家族の痕跡 いちばん最後に残るもの 

November 19 [Sun], 2017, 6:31
「家族」この奇妙な共同体
 冒頭《「家族」この奇妙な共同体には、実に多くの矛盾と逆説が詰め込まれている。家族は、絶望であって希望である。》と始まって《「人間」と「家族」だけは、変われば変わるほど変わらない。〜私たちはいかにして「家族」と共存しうるのか。〜》と終わる本書を読み終えた後、読者は否が応でも自分の家族を見詰め、自分自身と家族のありかたについて考えざるを得なくなるだろう。

 私たち一人ひとりの幸不幸は、好むと好まざるにかかわらず、家族という「ほかのいかなる人間関係よりもマシな形態」の在り方に依存していることを自覚したのだから…

 引用した部分の前半に続いて《つまり家族は、絶望であって希望である。人間がそうであるように。》という件があるのですが、同じことを自分自身の言葉に置き換えると「最も理解され認められたい対象は家族であるにも関わらず、真に理解された認められたという感じが得にくく、かつ仮に理解された認められたという感じが得られたとしても満足できない対象が家族なのかもしれない。」と思ってしまいました。

 岸見一郎先生が、アドラーの教えとして、原因論ではなく、目的論を説いていますが、やはり、私たちの気質を形作っているものが、家族に起因しないはずはないと思います。アダルトチルドレンはともかく、ダブルバインドは、どんなに健常な親でも、気分が良くない時には、やってしまうのでは…

 私が、斎藤環先生の存在を知ったのは、佐藤優さんの『嫉妬と自己愛』に収録された対談でした。これからも、著書を発見したら、手に入れて読みたいと思います。


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わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何 

July 29 [Sat], 2017, 18:39
 紀伊國屋書店に、表紙をこちらに向けて陳列されていることの多い、平田オリザさんの本…裏表紙の写真の風貌から、手に入れることを躊躇していましたが、特に後半が期待を超える内容で、気付きをいただきました。

 最近、私自身も薄々感づいていたことですが…コミュニケーション能力とは、コンテクストを共有していない者同士が、相手の立場を理解して(理解しようと努力して)、相手が上手く表現できない"本当に求めているモノ(言霊)"を、提供できる(提供しようと努力する)ことなのではないでしょうか?。「多くの市民は、役割を無理して演じることを自分の人生として受け入れ、楽しさと苦しさを同居させながら人生を生きている。」という捉え方は、平野啓一郎さんの「分人」に通じる考え方です。私たちは"役割を演じること"を恥じる必要はありません。

 この本は、企業でマネジメントに携わる人たちに読んで欲しい内容でした。決めつけてはいけませんが、そのような人たち程、「自分と相手(部下たち)のコンテクストが違うかもしれない、だから、解り合えないのかもしれない。」という疑問の持ち方ができず、相手に対して自分の価値観を理解することを求めてしまいがちだと思うからです。違うコンテクストを理解しあい、その中でお互いのパフォーマンスを発揮する方法がきっとあるはずです。

 この本にも、ダブルバインドという言葉が出てきます。ダブルバインドは、親から子へだけではなく、組織(上司)から構成員(部下)へも示されます。本来であれば、子や部下のクリエーティビティーを育み、パフォーマンスに繋げていかなければならないはずの家庭や組織で、クリエーティビティは、摘み取られたり、踏みにじられたり、しているのかもしれませんね。


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自由とは何か 

July 23 [Sun], 2017, 11:57
 あとがきで、佐伯啓思氏ご自身が「本書で、うねうねとあぜ道を歩くかのように論じことを、もう少し体系的に論じたいと思うけれど…」と書いているように、読者の一人としては、自問自答の軌跡を歩かされた疲労感が半端ない

 佐伯啓思氏は、あぜ道と言っていますが、一人の読者としての感想としては(実際には残りのページ数が少なくなっているのに)体感的には、いつまでたっても頂上に近づいていないように見える登山のようでした(ワインディングロードという意味です)。

 …しかし、マイケル・J・サンデル教授の<正義>とは何か?という問いと同じように、答えのない(コンテキストによって変化せざるを得ない)課題に果敢に挑み、導き出した(現時点での)結論に向かって読者を誘うガイドとしての役割を果たしている。頂から見下ろす景色は、雲に阻まれ鮮明とは言えないけれども、達成感はありました。

 私が持っている数少ない政治哲学関係の本であるマイケル・J・サンデル教授関連の本を再読します。


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フロイト―その思想と生涯 (講談社現代新書 383) 

June 04 [Sun], 2017, 5:39
・私が精神分析に出会ったのは、20代の頃なので、かれこれ30年以上の歳月が流れてしまったのだが、この本を読んで「もっと早く出会いたかった」と思わずにはいられなかった…

・その理由は、訳者の言葉に要約されている…「精神分析の理論はフロイト自身の体験と密接に関連しているので、フロイトの伝記を無視しては了解しにくい。本書は、一貫して、精神分析の成立の過程をフロイト自身と結びつけて小説風に明らかにしている。著者が(精神分析)の専門家でないために、かえって精神分析全般を、だれにでもわかるように述べることに成功している。」
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「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代 

May 13 [Sat], 2017, 20:51
 現代は承認の不安に満ちた時代である。自分の考えに自信がなく、絶えず誰かに認められていなければ不安で仕方がない。ほんの少し批判されただけでも、自分の全存在が否定された絶望してしまう。そんな人間があふれている(P8)。仲間の承認を得るために自分の本音を抑え、仲間の言動に同調した態度をとり続ける若者は少なくない(P10)。
 他の考え方を持った人々の意見にも耳を傾け、書籍やテレビ、インターネットを介してさまざまな価値観を理解し、なぜそのような考え方をするのか、その理由を考えるようにすること。そして、そこに共通了解を見出そうとすること。その繰り返しが、「一般他者の視点」による判断力を培ってくれるだろう(P213、P214)。「見知らぬ他者」の承認を確信することで、また自分の意思で行為を選択することで、自由と承認、両方の可能性を切り開くことができる(P216)。
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生き延びるためのラカン 

May 13 [Sat], 2017, 20:46
 私は、ラカンを少しも知らないくせに「欲望は他人の欲望である」を引用しまくっていました。改めて、ラカンという大海の岸で貝殻を拾ってみると、その大きさと深さに唖然とします。

 内田樹先生の本を読んで、ジャックラカンに「人間の欲望は他者の欲望である」という言葉があることを知りました。ある意味、私も、人が欲しがるモノやコトを求めて生きてきましたが、定年を1年4ヵ月後に迎える今になって、遅ればせながら「人の欲望する成功、競争に勝つこと、求めているものを手に入れる」ということが難しいことに気づき、満たされない夢から覚めるために、この本を読み始めました。

 並行して読んでいる、佐藤優さんの『嫉妬と自己愛』には、佐藤さんと斎藤環先生の対談が掲載されているのですが、今まで齋藤環先生を知らなかったことが悔やまれます。私の人生を変えてくれた精神分析、心理学、哲学などの先生方の中に、斎藤環さんも加わっていただこうと思います。まるでドローンが見せてくれる視界のような俯瞰した視野が新鮮です。

 曖昧な記憶と照し合せる限り『生き延びるためのラカン』は、20代の頃、伊丹十三さんと岸田秀先生との対談『哺育器の中の大人』を読んだこと以来の衝撃だった。「シニフィアン」「シニフィエ」なんて言葉が出てくるもんだから、丸山圭三郎さんの『言葉とは何か』と『ソシュールを読む』の事項索引を引きながら読み進めた。私に最も恩恵をもたらしてくれたLectureは、10「対象a(タイショウアー)をつかまえろ!」だ。「対象a」とは「欲望の源泉」のこと…決して確かめることは出来ないが、求めてやまない「恋人の心」のようなものだ…

 この本を理解する妨げになっているのは、先ず「現実界」「象徴界」「想像界」を説明するための「シニフィアン」「シニフィエ」という、あれ『生き延びるためのソシュール』でしたっけ(・・? という部分で、次に「エディプス・コンプレックス」「去勢」という、あれ、『生き延びるためのフロイト』でしたっけ(?_?) という部分がたたみかけてきます。そして、実は、この辺が私にとっての難関でした。

 精神分析という世界を知っていて良かった…と思わせてくれる本でした。思わず岸田秀先生の『ものぐさ精神分析』と『続・ものぐさ精神分析』を引っ張り出してきてきてしまいました。そして、いまさらですが、丸山圭三郎先生の『言葉とは何か』と『ソシュールを読む』に術語解説(事項索引)や人物紹介(索引)が付いていることに気がつきました(なぜか“言葉とは何か”の人物紹介にラカンの文字がありませんが…)。

 ラカンの考えをもう少し知りたい。何か良い本が無いかな?と思っていたところ、講談社現代新書『ラカンの精神分析』新宮一成 著に出会いました。これは、これで、ラカンへの理解、ヒトへの理解を深めるための世界を見せてくれそうな本です。読み進めるのが楽しみです。 
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レジリエンス入門 

May 13 [Sat], 2017, 20:39
 「私達の感情を作りだしているのは出来事そのものではなく、出来事に対する私達の解釈である」出来事を冷静に解釈できるようになりたいです。

 物理用語の「外圧による歪み」という意味の「ストレス」に対して「レジリエンス」は、その歪みを跳ね返す力です。嫌なこと、辛いこと、悲しいことを経験すると私たちはへこんだり、途中で挫けそうになったり、落ち込んだりします、そんな嫌な気分をもとの正常な状態に戻す力です。レジリエンスは、視点を増やすことによって鍛えられ、強化する過程で一生の財産となる「グリット(遠いゴールに向かって興味や情熱を失わず、とてつもない長期にわたって、継続的に努力し続けることによって、物事を最後までやり遂げる力)」も手にすることができます。

 本書では、自分の身に起きた好ましくないできごとを、すべて自分以外のせいにする人のことを「被害者」と定義し、「自分の人生は自分しだいで何とかできる」と主体的な考え方をできる「主体者」「選択者」になることをすすめています。

 内田先生は、副交感神経を自分の意思で活発に働かせるために、呼吸法をはじめとするマインドフルネスの実践をすすめています。マインドフルネスの目的は、今に意識を向け、今の自分にきづくことが目的とのことです。「今の感情に気づくことによって、感情をなだめることができる。」と書かれています。

 この本の本筋からは若干はずれることなのかもしれませんが、「脳はもともと複数の課題に集中することができず、同時に二つのことを並行して行うと、結果的により多くの時間がかかる(浪費)だけでなく、ミスも増え、脳の認知機能低下(ストレスホルモンの一種であるコルチゾールの値が高くなり、免疫力の低下、海馬の萎縮)にもつながる」というところが気になりました。私は、典型的なナガラ族(テレビを横目で見ながら本を読む)なので、海馬がなくなっているかも^^;

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私とは何か――「個人」から「分人」へ 

May 13 [Sat], 2017, 18:46
 著者の平野啓一郎氏さんは、たった一つの「本当の自分」など存在しない。対人関係ごとに見せる複数の顔が、すべて「本当の自分」であると、「分人(dividusl)」という新しい単位を導入した。
 
 この本は、流山おおたかの森S・Cにある紀伊國屋書店で、タイトル買いしたものです。最初は「分人」という文字ずらとしては平易な言葉に込められた意味を直ぐに理解することが出来ず、積読になっていましたが、読み進めるにつれ「分人」という概念の発見は、フロイトの「自我」「エス」、ラカンの「欲望は他者の欲望である」「対象a」と並ぶ大発見なのではないか?と思いました。

 「平野啓一郎さんは、心理学者でも精神科医でもなく一人の小説家である…」平野さんは私たちが、このように「他者から本質を規定されて自分を矮小化されることを恐れている」と書いている。私たちは、コミュニケーションを交わす相手ごとに、その相手にフィットした自分の中の「分人」を発動させ、適応することによって、人間関係を円滑にし、人生を楽しんでいる。平野さんは、世間から小説家と規定されているが、この本で「分人」という単位を提案する姿は、紛れもない心理・精神の探求者であり、私は、大きなパラダイムシフトの兆しを予感させる。

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傷つくのがこわい 

April 09 [Sun], 2017, 15:16
 7年前に読んだ本の再読。自分の矯正したい部分に、緑色の蛍光ペンで印がついていました。あの時よりも冷静に読めるのは、先行して読んだ『満たされない心の心理学』『自分には価値がないの心理学』のおかげです。

>傷つくことは、より深い自己洞察のチャンスでもあります。傷つくことを糧にして、成長していきたい。傷つくことを恐れる心、傷つきから立ち直ろうとする心、これを建設的なエネルギーにできれば、かえってチャンスに変えることができるでしょう。また、自分が傷つくのが嫌ならば、それだけ他の人を傷つけないように配慮することができるのです。

 >高いプライドの根底には、自己無価値感があるのです。高いプライドは、この自己無価値感の上に建つ砂上の楼閣だからこそ、傷つきやすいのです。

 >嘘をついたり、自分を偽ったり、逃げたり、言い訳したりすると、そうしている自分に(人間としての誇りが)傷つきます。人前では演技し、家に帰ると別の自分。こうした自分の欺瞞性のために自己嫌悪し、傷ついている若い人は少なくありません。
 

 私たちがピンチを逃れるために思わず打ってしまう戦術は、短期的には功を奏すかもしれませんが、長期的に見ると賢い戦略とは言えないのかもしれませんね。

 >何かをしなければならないとき「自分」が評価されると思うと、落ち度があってはいけませんから、自分を守ろうとする方向への意識が向きます。恐いのです。ただ「役割を果たすのだと割り切れば「自分が傷つく恐れは低くなります…〜

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アドラーに学ぶ よく生きるために働くということ 

April 09 [Sun], 2017, 14:56
 岸見一郎先生は、単にアドラーが残した言葉を伝えるだけではなく、哲学者としての視点からの解釈を加えることによって、アドラー心理学を現代に蘇らせる仕事をなさっているような気がします。
 2014/12/24『嫌われる勇気'13/12/16』、2015/01/24『アドラー心理学入門 (ベスト新書)2014/6/27』、2016/11/20『アドラー心理学実践入門 (ワニ文庫)2014/6/27』、2016/11/22『人生を変える勇気 (中公新書ラクレ)2016/10/14』、2017/01/21『幸せになる勇気2016/2/26』、2017/02/19/『アドラーに学ぶ よく生きるために働くということ (ベスト新書)2016/7/9』と刊行順とは違うが、岸見一郎先生の本を読んできた。

 本書は、序盤、同じ文章が何度も繰り返されるので若干読みにくいが、アドラー以外の先人による言葉も引用され、最後の第四章では、心理学というよりも哲学、哲学というよりも宗教?と思えるような昇華を見せる。どれか一冊を選ぶということであれば『実践入門』を薦めるが、脳に擦り込みたい方には、本書も決して無駄にならない。


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    ・70年代のブリティッシュロック-最近はあまり聞いていませんが
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