行列のできるブログ 丸山法師の徒然草

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『月刊Hanada』1月号

丸山和也議員が『月刊Hanada』1月福袋号(2018年11月26日発売)に寄稿した「対韓司法紛争なら日本は圧勝する」を転載いたします。

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対韓司法紛争なら日本は圧勝する

●司法が政府の尻を叩く国
 韓国の最高裁(大法院)が下した「徴用工」判決に対して、私はそれほど悲観していません。逆に「良い機会」とすら捉えています。今後は司法を舞台にした国際紛争のステージに入っていくことが予想されますから、これを契機として、この際法廷でしっかりと白黒付けるべきだからです。
 韓国側は、いわゆる「徴用工」は二十二万人いると主張していますが、仮にそのうちの多くが集団訴訟を起こしても、日本はたじろぐ必要は全くありません。「では、法廷できっちり決着を付けようじゃありませんか」と堂々と受けて立てばいい。
 「そんなことをしたら韓国の思う壺じゃないか」と疑問に感じる方もいると思いますが、少し冷静に考えていただきたい。もし、いま過度に政治的に騒ぎ立てればこれこそ韓国の思う壺です。そうすればするほど日本は政治的解決を模索し、ある程度譲歩して資金を拠出したり、基金をつくって支援に当たるなど落としどころを探りかねない。日本が過去に繰り返してきた失敗と同じことが再び起こらないとも限りません。
 資金を受け取ったとしても「それはそれ。こっちの事案は未解決だから不十分だ。賠償金を支払え」などと韓国側の要求は永久に終わらないでしょう。
 ここは司法の場で徹底的に対峙し、相手を打ちのめすしかない。この問題はもはやそうした段階に来ていると考えるべきです。
 韓国には日本でいう地裁、高裁、最高裁に該当する通常の裁判所の他に憲法裁判所があるのですが、この両者が互いに張り合うようにして過激な判決を打ち出し合い、国民受けを狙う。特に日本関連の事案では政治以上に政治的な反日を打ち出す傾向が見て取れます。
 他方、日本の司法は政治的影響力のある事案に対しては、余りにも消極的に判断を避けて自制する傾向がある。そうした問題になると「それは政治の場で議論すべき」と白黒付けることを避けてしまうのです。
 韓国では逆に政治的な問題であればあるほど、また韓国政府が動かなければ、司法が政府の尻を叩き、動かすような判決を下すことが往々にしてある。日本では「韓国司法が政治の手先になっている」と騒ぐ人がいますが、むしろ逆で、司法の方が先鋭化して政治はそれを制御する力量に乏しいと私は見ています。
 もちろん、文在寅大統領が自身の息のかかった金命洙氏という地裁の所長に過ぎなかった金命洙を最高裁の長官に大抜擢するなど、今回の判決の背景には文大統領の意向が色濃く反映しているといった見方があることはそのとおりで、批判的に見て行く必要はあります。
 ただ前提として、まず日韓両国の司法の姿勢の違いと、韓国では時として政府が制御できなくなるほど“暴走”する点を理解しておくことは、今回の件に限らず韓国と対峙する上で非常に重要です。

●韓国司法の酷さを実体験
 そもそも韓国は「法治国家」とは言えない側面が多々あります。私自身、国際法務の観点から見て、韓国は法治国家として疑わしいと感じた経験があります。
 約二十年前のことです。私は韓国企業を相手取った国際仲裁事件の日本企業代理人となり、数千万円の債権を勝ち取りました。韓国の裁判所でも判決の効力が承認されたのですが、待てど暮らせど判決の執行ができない。裁判所が債権回収に動こうとしなかったのです。日本の裁判所では到底考えられません。
 相手側の代理人である弁護士に申し入れても「企業に伝えます」と言うばかりで、いつまで経っても支払いは行われない。こちらも韓国人の弁護士を雇うなど四方八方に手を尽くしたものの、結局、債権回収できず、一銭も支払いはありませんでした。勝訴した日本側の企業は弁護士費用だけかかり、泣き寝入りです。最後はこちらの弁護士とも怒鳴り合いになりました。ところが、何を言っても「いや、やっているんですが動かないんですよね」の一点張り。この韓国人弁護士も、はじめからどこかやる気がなかった。
 困り果てた私は、古い友人で韓国人の検事OBにこの件を話したところ、こう言われました。
「あまり大きな声で言えないんですが、韓国では日本への恨みがあって、日本人のために韓国人の財産を没収する強制執行なんて不可能ですよ。彼らはそんなことやりたくないんだ。そういうレベルなんだよ。気の毒だけど、諦めるより仕方ない」
 これが当時の韓国司法の実態でしたが、今も大きくは変わっていないと思います。

●韓国のデタラメさを説く
 今回、最高裁で判決が確定したので、今後、二十二万人いるとされる「元徴用工」らは既に訴訟委任状を提出するなど、集団訴訟の準備を着々と進めていると考えられます。
裁判が行われれば、今回同様、原告の勝訴は確定的で、あとは勝ち取った「賠償金手形」をどこで現金に換えるかという執行の問題に入ってきます。
 日本企業が不当判決として賠償金の支払いを拒めば、原告は当該企業の資産差し押さえなどの強制執行手続きを取ることになります。
 今回の新日鉄住金は、韓国国内に製鉄所などの目立った資産を保有していないとされていますが、もし韓国国内に資産を有する企業は、いまからでも資産移転や第三者への名義変更など予防的措置を講じたほうが得策です。
執行対象物がなく韓国国内で強制執行できないとなれば韓国側が取る行動として考えられるのが、日本国内での強制執行に及ぶ可能性です。
 しかし結論から言えば、日本の裁判所はこの請求を高い確率で棄却するでしょう。なぜなら、過去にも同様の賠償請求訴訟が起こされてきたが一審では全て企業側の勝訴が確定しているからです。一九六五年に締結された日韓請求権協定で個人補償も含め全て解決済みである、という国と国との約束が明確に存在する点を裁判所も当然認める。
 問題は、韓国側が強制執行を求めて第三国で提訴に及ぶ可能性です。その確率が極めて高いと私は見ています。
 たとえばアメリカ。中でも韓国系住民も多く、韓国系議員が何人もいるロサンゼルスやサンフランシスコといったカリフォルニア州に持ち込むことが想定されます。特にサンフランシスコは慰安婦像が立つなど、韓国系住民のネットワークが強い地域として知られています。司法は政治的影響力を受けないとされていますが、少なからずそうした雰囲気が判決を左右しないとも限りません。
 しかし、そこで日本の企業側はたじろがず断固として闘うべきです。恐れず堂々と真っ向から受けて立つ。日韓請求権協定の効力が有効であること、日本の裁判所でも請求権は棄却されていること、韓国側がいかにデタラメかを徹底的に説き、こちらが世界の司法の常識だと主張することが重要です。

●政府は弁護士の紹介を
 もちろん、訴訟ですから敗訴する危険性はあります。裁判に絶対はありません。州や裁判官によっても判断は分かれるでしょう。中にはおかしな判決を下す裁判官もいます。
 しかし、全ての裁判で敗訴することはまずあり得ません。弁護士としての経験から申し上げると、アメリカでも勝つ公算は極めて高い。日韓請求権協定を無視した「協定詐欺」とも言える韓国司法の判断や無理筋の論理からしても、かなりの高確率で勝訴すると私は見ています。
 そのためにも政府は政治的には毅然とした態度を取ることに加え、外務省や法務省を通し、国際司法について日本企業にレクチャーしたり、国際法務を得意とする弁護士を紹介するなど、積極的に企業をバックアップしていくべきです。
 政府が国際司法裁判所に提訴するのも一つの手ですが、周知の通り、相手国である韓国の同意を必要とするため、裁判が行われることはほぼ不可能です。「『韓国は不利だと思っているから出てこられない』と世界にアピールできる」という見方もありますが、そもそもそうした批判を気にする国でしょうか。韓国は平気でしょうし、世界もあまり気にしないでしょう。
 他方、注意すべきは、本件があくまでも韓国司法の不当さを問わねばならない性質上、もし日本政府がこの判決に対して政治的な批判ばかりしていると「韓国の司法に日本が介入するとは何事だ!」「内政干渉だ!」と逆に韓国に日本非難の口実を与えかねないことです。
 民事訴訟として世界の司法の舞台で堂々と勝訴することで、韓国に対して「今後はどんなに無茶な判決を出しても、結局は国際司法で否定されるだけだ」と思い知らせる。これこそが最も効果的です。
 日韓請求権協定では「協定に関する紛争があれば外交経路で解決するものとし、解決できない時は第三国を交えた仲裁委員会に付託する」となっていますが、仲裁人の選定方法など、細かな規定がなんら書かれていないため、仲裁が開始されることすら困難です。また、開始されない場合についての規定も明記されていないので、物事が一向に前に進まない。その間、政治的な批判合戦を繰り広げているだけでは、ビジネス面の影響や対外的イメージを考慮した日本企業が「お金で済むなら」と和解に応じてしまう畏れがあります。

●「ゴネ得」を許してきた日本
 現に、過去に賠償請求訴訟を起こされたケースでは、一審で勝訴した後、高裁で和解をしている案件が見受けられます。企業が和解内容を明かさないため詳細は不明ですが、高裁が企業に対して、「訴訟に勝ちはしたけど、相手も気の毒だし、人道的観点からも、少しお金を払ってはどうか」などと勧めた可能性もあります。日本政府は企業に対して「絶対に和解に応じてはならない」と伝えるべきです。そのためにも本腰を入れた政府のバックアップが求められるのです。
 もし、勝てもしない裁判で莫大な和解金がもらえるとなれば味をしめた韓国側が次々に訴訟を起こすことは、目に見えています。これまでそうした韓国の「ゴネ得」を許してきてしまった。金輪際それを許さないようにするのが、司法の場での決着を付けるということなのです。
 「裁判でとことんやって白黒付けましょうよ」と言ったほうが企業の利益にも、日本の国益にも適う。世界に対しても「日本は堂々としている」と好印象を与えられる。今回の案件では世界のマジョリティーは日本に味方するでしょう。
 当初想定していたよりも勝てない、これまでのように日本は押せば必ずどこかで折れてくると思ったが全く検討外れで折れてこない、裁判に時間も費用もかかって韓国側のメリットにならない――こうした状況に陥れば韓国側も困惑します。このように、司法の場から戦略的に韓国を追い詰めるほうが得策です。

●日本は甘く見られている
 これまで日本は国際訴訟に極めて消極的でした。これは日本の弱点と言えます。以前から国際社会は「司法紛争」の時代に突入にしていたにもかかわらず、日本では和解や調停を好む傾向があった。いわば世界からは「日本はイチャモンをつければ金を払う」と見られていた。
 かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた一九八〇年代、日本企業に押されに押されていたレーガン米大統領は、日本の弱みを探るためタスクフォースを作り、研究を重ねました。そこで、「日本は物づくりにおける品質の良さやアフターサービスの面ではアメリカより優れているが、『紛争』には弱い」と結論付け、日本の大手企業を相手に次々と訴訟を起こしたのです。
 日本企業は多額の賠償金や和解金を支払わされて震え上がってしまった。日米貿易摩擦での出来事として周知の通りです。
 当時からすれば日本も少しは国際司法紛争に慣れてきたと言えますが、まだまだ不十分です。調停や和解は国内的には好まれるかもしれないのですが、国際的には逆に相手に見透かされて利用されてしまいます。
 今回の「徴用工」判決もそうです。「今後、一千件、二千件、一万件と訴訟を起こせば日本は音を上げて、政治も企業も落とし所を探るために動き出すだろう」――そう韓国から甘く見られている節があります。
 しかし、歴史の評価の問題と法的な取り決めは全く別のことですから、法的紛争では、もはや韓国の脅しには屈することなく、粛々と司法の場で決着を付ける。五年、十年かかろうともこの闘いに勝利すべく企業も国も腹を据えて取り組んでいくべき時に来ているのです。韓国との国際司法紛争はこれからが正念場を迎えます。日本は一歩も引かず韓国の思惑を司法の場で粉砕すべきであり、政治は応援団、司法が主役です。

まるやま かずや
一九四六年、兵庫県たつの市生まれ。六九年、早稲田大学法学部卒業、国家公務員上級職試験合格後法務省を経て、七〇年に司法試験に合格。七六年四月、渡米。ワシントン大学ロースクールに入学し、卒業。八〇年に帰国、「丸山国際法律事務所」代表として、企業間の紛争・交渉等を中心とした国際法務を得意とする他、個人の問題にも幅広く取り組む。「行列のできる法律相談所」(日本テレビ)で人気を博した。二〇〇七年に参議院議員に初当選。これまで、自由民主党政務調査会司法制度調査会長、法務部会長などを歴任。
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プロフィール

丸山 和也
丸山 和也 Kazuya Maruyama

1946年兵庫県生まれ。69年早稲田大学法学部卒業、上級職試験合格後法務省を経て、70年に司法試験に合格。75年渡米。ワシントン大学ロースクールに入学し卒業(LLM)、その後ロサンゼルスの法律事務所に3年間勤務。80年に帰国後、弁理士登録を経て特許事務をも扱う。企業間の紛争・交渉等を中心とした国際法務を得意とする他、各種特許紛争および個人の問題も幅広く取り組む。07年、参議院選挙に当選。
現在、「丸山国際法律特許事務所」代表。主な著書に、「正義の判決」(小学館)、「行列のできる丸山法律塾」(小学館)、「丸山法律相談所」(二見書房)、「ビジネスマンが行列する法律相談所」(学研)、「蓮の花は泥沼に咲く」(新紀元社)、「臨終デザイン」明治書院、「だまされる人の共通点」主婦の友インフォスがある。
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