時代を超えて流れる価値や美しさへの認識

January 16 [Thu], 2014, 21:13
 奈良の若草山にモノレール建設計画があると報じられ驚き呆れ
て怒りすら覚えた。東大寺や奈良公園一帯と奈良町、そして若草
山と連なる一帯は古都として悠久の時間を刻んでおり、また総合
的な景観が歴史価値でもあり大和の美を成している。
 若草山を奈良市街から眺めると美しい。
 先人達が1400年近くも守り続けてきた空間美、景観美であるが
奈良県がこの若草山に登山用のモノレールを建設しようという計画
を策定してユネスコの日本支部から異例の待ったが出されたとの
ことである。当然である。
 若草山はただ単に見晴らしの良い山ではない。その歴史価値や
景観認識、空間美の認識が欠落した役人の机上の空論に驚き呆れ
怒りすら覚えるのである。
 最近このように違いが分からない人達が増えてきているように感じ
られてならない。日本人の劣化というのか危機感を覚える。
 物質としてしか物事を認識できない、物理的にしか物事を考えられ
ない発想は当座の利益、関係業者との相関という狭い視野から生じ
ているのであろう。価値を知らないとは恐ろしいことである。

 奈良では以前にも平城京跡地の広大な空間美の中にバイパスの
高架を建設しようという案が持ち上がった時期があった。あの時も
歴史空間や文化財の価値を知らなさすぎる発想に驚き呆れたもの
であったが、幸いにして奈良市民の良識のほうが勝り計画は立ち消
えとなって時空を超えた美しさの時間の流れる広大な歴史空間美や
空間美である平城京跡地は美しいままに守られた。
 今では朱雀門が復元されまた大極殿も復元され、奈良の都の姿が
偲ばれる美しい空間となって整備されている。この空間も一歩間違え
れば破壊されているところであった。
 しかし残念なことに昨年開催された奈良遷都1300年祭に際してこ
の平城京跡地の朱雀門前の朱雀大路がそれまでは当時の雰囲気を
彷彿とさせる広い空間美であったところへイベント用の駐車場を設ける
ためにアスファルトで朱雀門に向かって正面左の一帯を舗装してしま
い、イベント終了後もそのままの状態にされてせっかくの朱雀門前の
朱雀大路跡の風景が台無しになっている事が極めて残念である。
 とかく行政は箱モノを設けたり手を加える事が何かを成したと錯覚し
がちであるが、先人達が守り続けてきた歴史空間や都市景観、空間美
は何も手を加えない事で美しさや価値を守れるという事を自覚すべき
である。

 敗戦により日本的な美や歴史史跡、文化財の全否定が生じ、しばらく
昭和40年代前半頃まで我が国全体で価値あるものの破壊や放置、無
自覚の状態が続いた。歴史文化財や歴史財産という自覚と意識が高ま
ってきたのはこの20年来ではないかとすら思われる。
 京都においても四条大橋から三条大橋の間の鴨川の風景は美しく広
大な空間美でもあり都人が1200年以上も守り続けてきた都市空間や
空間美であったが一時期、この間に新たに橋を建設しようという理解に
苦しむ案が浮上した時期があった。京都の人々の良識が勝りこの愚案
も実現には至らなかったが一歩間違えていれば、鴨川の美しい歴史空
間は破壊されていたのである。
 日本の日本たる風景、日本的な美、日本的な価値というものを意図的
に破壊しようとする働きが行政機関を通じて機能しているのではないか
とすら疑ってしまう程に歴史景観を破壊するような作業や計画が時折持
ち上がってくる。
 役人を始め多くの日本人が物事を物理的に物質としてしか判断できな
いようになりつつあるのであれば危機である。
 形而上的なもの、時代を超えて流れ続けている空間や美しさといった
存在に対する価値を忘れていくならば私達自体が廃れていくことになる。
 我が国の政治や行政、人々の発想や意識に足りないものは都市空間美
や歴史空間美といった感覚である。

 美しく古都の景観を構成している若草山にモノレールを建設しようという
愚案を奈良県が計画していたという事態にうなされるように溜息をつきなが
ら東京の飯田橋の夜道を散策していた。
 ふと東京大神宮の前を通りがかったので月夜に照らされた境内に立ち寄
った。周囲にビルが林立して狭い境内ではあったが凛としていて透き通る
ような空気に包まれていた。ここは東京のお伊勢であり明治13年に明治天
皇のご意向で伊勢神宮の分霊として創建され、我が国初の神前結婚式を執
り行ったとして有名だそうである。
 境内には仕事帰りの若い女性が多く参拝しており、各々が真摯に本殿に
手を合わせていた。絶え間なく若い女性が訪れてくるので神社関係者に今日
は何か催しでもあるのかと尋ねればいつも通りであるとのことで、平素から
仕事帰りの若い女性で賑わっているとのことであった。
 若草山のモノレール建設案で不愉快になっていた私であったが、この境内
の光景にどこか胸が撫で下ろされるような、安堵したような、清々しいものを
感じた。この光景で自ずと賑わっているならばまだ我が国は救われるという
思いが胸をよぎった。
 次々と仕事帰りの若い女性が時には着物姿で境内にお参りしていた。
Comment
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー 絵文字 プレビューON/OFF

不正な自動コメント投稿を防ぐため、チェックボックスにチェックをしてください。

利用規約に同意
 X 
禁止事項とご注意
※本名・メールアドレス・住所・電話番号など、個人が特定できる情報の入力は行わないでください。
「ヤプログ!利用規約 第9条 禁止事項」に該当するコメントは禁止します。
「ヤプログ!利用規約」に同意の上、コメントを送信してください。
P R
プロフィール
  • プロフィール画像
  • ニックネーム:元・東大阪市議会議員きむら・まさはる(45歳)
読者になる
2014年01月
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新コメント
築地博士
» 日本政府の韓国への輸出規制について (2019年07月11日)
うぼで
» 諸事実に何を見るか (2019年07月02日)
うぼで
» 各野党の見解について (2019年06月16日)
うぼで
» 愛子さまを次の天皇にとの議論について (2019年05月26日)
和歌川のサギ
» 令和元年明けましておめでとうございます (2019年05月01日)
うぼで
» 安倍政権が企む皇統断絶 (2019年04月27日)
星のブランコ
» 統一自治体選挙と地域の四方山話 (2019年04月15日)
うぼで
» 今上陛下は譲位されるのであり退位ではない (2019年03月23日)
アフリカの星
» 今上陛下は譲位されるのであり退位ではない (2019年03月16日)
Yapme!一覧
読者になる
月別アーカイブ
カテゴリアーカイブ
https://yaplog.jp/japanbland/index1_0.rdf