2016年2月20日、品川プリンスステラボール。この日は、待ちに待ったナンノこと南野陽子のデビュー30周年記念コンサート当日である。
思い返せば、僕がはじめて彼女が歌っている姿をブラウン管で見たのが、セカンドシングル「さよならのめまい」で「ザ・ベストテン」にスポットライトで登場した時だ。恥ずかしながら、僕が住んでいる岩手県では、当時フジテレビ系列はネットしておらず、お隣宮城県の仙台放送が写らないと、フジ系のテレビは見れなかったのである。家では仙台放送も写らず、「スケバン刑事」は放送されていなかったのだ。(後々、IBC岩手放送で再放送される事になるが。)
なので、南野陽子というアイドル歌手の存在は知っていても、歌っている姿も演じている姿も見た事が無かったのである。そんな流れがあっての、1986年1月の「ザ・ベストテン」。なぜか当時の第一印象は、「あまり好きじゃないかも・・・。」だった。これはおそらく、気が強そうな印象を受けたせいで、なんか好きになれなかった。テレビでお目にかかる機会が少なく、馴染がなかった為、何の思い入れもないまま普通にスルーしてしまっていた。そんな印象だったナンノに対し、思いが変わってきたのは、それから1年も先になる。1987年1月、「楽園のDoor」がリリースされてからだ。
この頃も、まだどこか好きになれず、正直「なぜそこまで売れているんだろう?スケバン刑事効果なんだろうけど、見た事もないし。」と思っていた。しかし、オリコンでは初の1位を獲得し、ベストテンやトップテンでも上位にランクインされ、毎週のように曲を聴いて、姿を見ているうちに、とうとうナンノにハマり出したのだ。サビのフレーズ♪心ごと〜♪の後の振り付けがなんとも可愛く、いつの間にかすっかりハマっていた。楽曲も来生たかおが作曲していて、僕が大好きな「セーラー服と機関銃」や「セカンド・ラブ」と同じく、哀愁漂うマイナー調の楽曲。まさに僕好み。なんで、今までナンノを好きになれなかったんだろう?と、自分を責め立てた。

そんな当時のさまざまな思いが去来する中、ステージがはじまった。ステージ中央にセットされたスクリーンには、彼女の代表作「スケバン刑事」が映し出された。そして、鉄仮面が外れる瞬間、ナンノご本人の登場!そこからは、怒涛のスケバンメドレー!これには、涙を流さずに居られる訳がない。気がつけば、涙が頬をつたっていた。小・中学生だったあの頃、本当に夢中になったアイドル・南野陽子が目の前に立っているのだ。デビューから30年。「楽園のDoor」以降、すっかり大ファンになり、新曲がリリースされると、必ずレコードを買い、ラジオへ電話リクエストをしていた学生時代。一時期は、もう二度と歌を披露してくれることなんてないのだろうと諦めた時もあった。そんなナンノが、またファンの前に登場し、当時と同じような華やかなドレス姿で、当時とさほど変わる事のない甘い声で歌っている。これまでの思いが走馬灯のように駆け巡る中、もう涙を流さずにはいられなかった。
僕の涙腺が完全決壊したのは、「秋からも、そばにいて」の時だった。この曲は、当時から一番思い入れがある楽曲だ。なぜならば、どうしても「ザ・ベストテン」での歌詞忘れ事件がいまだ頭から離れないからである。忘れもしない、1988年11月3日、第3位にランクインしていた時。ゴージャスなドレスを着ていて足元を気にしすぎたせいか、完全に歌詞を忘れてしまい、震えが止まらずパニック状態に。最後は、涙を浮かべながらの「どうもすみませんでした!」。あとで、本人も語っていたが、もう彼女はこのまま引退してしまうのだろうと思い、僕も放心状態となり、眠りにつけなかった事が思い出されてならないのだ。
もともと、彼女が歌う秋ソングが大好きだし、季節でも一番秋が好きだったので、毎日何度も繰り返し聴いていた楽曲。そこへ、そんな事件の想い出も重なり、もう歌い出しの時点で、あふれる涙を止める事が出来なかった。自分が一番大好きな歌、何よりも思い入れのある歌を、またナンノが歌ってくれている。もしかしたら、また歌詞を間違うんじゃないか?などという思いも同時に沸いてきて、ちかんじtょっと不安になりながらもステージを見つめる。しかし、今日のナンノは違う。当時よりも、しっかりとした力強い歌声で、完璧に歌い上げてくれた。これは本当に感動した。
今日、このステージを見に来るまでの間、僕自身も様々な事があった。体調を崩し、気持ちが下向きになった事も、仕事を辞めようと思った事もあった。けど、どうしてもナンノの30周年記念コンサートが見たくて見たくて、仕方なくて、いろんな事を耐え抜き、我慢して我慢して、そんな状況をくぐり抜けてのコンサート参戦だったので、本当に感動した。生きてきて良かったとさえ思った。それほどまでに、ナンノのコンサートは、僕にパワーを与えてくれたのだ。
この日は、90年代にリリースされたシングルも披露された。「ダブルゲーム」や「耳をすましてごらん」など。「ダブルゲーム」がリリースされた頃、時代はすでにアイドル冬の時代到来。80年代後期、ナンノ含めアイドル四天王と言われていた、中山美穂、工藤静香、浅香唯も、それぞれアーティスト路線へと変更し、アイドルからの脱皮を図っていた。「ダブルゲーム」は、テレサ・テンのような歌謡曲路線を意識して作られたものだ。
当時のナンノは、まだアイドルイメージが強かった為、ちょっと大人すぎるなあという印象を受けたが、今回のステージで改めて聴いてみると、かなりしっくりきた。スタイリッシュなコート姿で歌われたこの曲。まさに、年齢を重ねた今だからこそ、等身大で歌える楽曲になったんだなあと感じた。
衣装替えタイムを利用しての、懐かし映像コーナーも楽しかった。当時のアイドルCMの登竜門とも言われた、グリコのチョコ&ポッキーのCMや、JRのCMも本当に懐かしかった。そして、南野陽子は本当に美少女だったんだと今更ながら改めて実感した。
最後は、「はいからさんが通る」「吐息でネット」「話しかけたかった」という春のイメージ満載の大ヒット曲3連発でフィナーレ。この時も、涙腺がヤバかった。これぞ、アイドル・南野陽子の極致である。欲を言えば、「はいからさん〜」は袴姿で拝見したかったが、これは欲を出しすぎである。会場からの親衛隊コールも懐かしかった。いつも、トップテンを見ていて、幼心に、大人になったら、自分も一度はやってみたいと思ったものだ。コンサートホールで、あの声援に包まれると、時代をタイムスリップしたかのような感覚に陥り、何とも心地よい気持ちになる。80年代当時に、この雰囲気をリアルで体感したかったなあと感じたが、それは欲張りというものである。
その後、アンコールもあり、無事コンサート終了。ひと通り見てみてすごく感じたのは、彼女の歌声やパフォーマンスの完成度が高かった事。近年、テレビで歌披露していた時には、緊張やテレ隠しからか、途中で「あ〜!」とか「ごめんなさい!」とか言ってて、(そこがナンノらしいところでもあるが。)せっかくのステージもどこか「おちゃらけ」に感じてしまう事がしばしばだった。
しかし、今回は30周年記念コンサートという事もあり、最初こそ緊張で声がイマイチだったが、本当に素晴らしいステージで、歌手としてのブランクを全く感じさせなかった。流石である。これまでも、松本伊代、堀ちえみ、菊池桃子、荻野目洋子などの30周年記念ライブを見に行っているが、みんなそれぞれに完成度が高く、激動の80年代にトップアイドルとして君臨していただけあるなあと感心した。
最後の最後は、握手会に参加。握手前にトイレで歯磨きをしていた方もいたようだが、ナンノとの握手が近づくにつれ、手に汗が滲んできて大変だった。とうとう目の前にしたご本人は、本当に美人で若々しかった。「岩手から来ました!」「またぜひコンサートやってください!」と告げる事が出来、本当に満足した。そして、何よりも手が柔らかかった事が忘れられない。
一通りステージを見て、改めて感じたのは、どの楽曲も彼女の声質、音域を十分に理解した上で、彼女ならではの個性や魅力が最大限に生かされるように作り込まれている事。譜割にしても、お世辞にも歌唱力があるとは言えない彼女の声の伸び方がきれいに聴こえるように仕上がっているなあと。彼女自身がよくスタッフに恵まれたと語っているが、本当にその通りだと思う。そんなスタッフ達と一緒になって作られた作品なので、本当に良質なものばかりなんだと感じた。
そして、何よりもナンノ自身がどの作品、どの商品についても、魂と愛情が込められているなあと。MCでのグッズ紹介の時にも感じたが、昔から発揮されていたセルフプロデュース力がいかんなく発揮され、今回のダイアリーパンフも誕生したようだし。そんな部分が、周りから見れば「ワガママ」と誤解され、89年頃のバッシングに繋がったのかもしれないが、そのセルフプロデュース力があったからこそ、いまだ第一線で活躍し続けているのだと思う。
女優としての南野陽子も、、もちろん素敵だが、往年のファンとしては、やはりアイドル、歌手としての南野陽子をずっと応援していきたい。今回のコンサートを見る限り、全くブランクを感じさせず、完璧主義な彼女らしく完成度の高いパフォーマンスが出来ている。今回の為に、よほどの努力があったのだろうが、40代後半にして、あの華やかさは、なかなか出せるものではないだろう。まだまだ、歌手・南野陽子のステージを見守っていたい。
今回の記念コンサート、どうやらDVD化する予定が無いらしい。が、しかし、あれだけのパフォーマンス、あれだけのお客様が詰めかけた素晴らしいステージをパッケージにしないなんてあり得ない!ぜひとも、歌手・南野陽子の記念すべきステージを商品化していただき、1人でも多くの方に見ていただければと強く願いたい。そして、今回が最後と言わず、またいつか必ずコンサートを開催してほしい。南野陽子は、僕らにとって永遠のアイドルなのだから・・・。
