15.缶コーヒー

December 12 [Wed], 2007, 1:20
「あ」

がこん、という音と、ほぼ同時に。
彼は声を上げた。

声をかけるべきか、何事もなかったかのように通り過ぎるべきか。
思わず足を止めてしまった美也子は、数秒逡巡した後、口を開いた。
「………どうしました?」

「――間違った」
自動販売機から取り出した缶を見せるように、彼は振り返った。
掲げる缶は、無糖の文字が。
「カフェオレを買うつもりだった」
そう言って薄く笑った彼に、美也子は曖昧に笑い返す。

居心地の悪さを感じ始めた美也子は、乱れてもないファイルを抱えなおした。