goes round

February 23 [Fri], 2007, 10:10
甘辛ごちゃ混ぜ、オムニバス形式。
短編集。

本編での更新ご無沙汰な人たち、これから公開予定な人たち、などごちゃませ。
裏設定で、色々繋がってたりします。


1週間連続更新達成☆2007/2/23~2007/3/1

「goes round」

01.留守番電話           11.保険
02.オレンジジュース        12.迷子
03.過剰サービス          13.キーホルダー
04.似非                14.BGM
05.オークション           15.缶コーヒー
06.参観日              16.不協和音
07.ノラネコ              17.文庫本
08.電池切れ
09.食パンの耳
10.プラスマイナスゼロ

お題提供:誰でもトライ20のお題 様より■□薔薇□■<お引越し?現在リンク先不明>

01.留守番電話

February 23 [Fri], 2007, 10:20
『ピーという発信音の後…』

留守番電話にメッセージを残すつもりなどない。
恵美は、小さな溜息と共に受話器を下ろした。
カランと音を立てて、硬貨が返ってきた。それを取り出して席に戻る。

恵美が席に着くのを見計らったように、店員の1人がコーヒーを手にやってきた。
礼を言って、2杯目のコーヒーを受け取る。

もう何度もここを離れようか、と考えたか分からない。
それでも店から離れられないのは、恵美がここを出てしまったら、藤原と連絡が取れなくなるからだ。

02.オレンジジュース

February 23 [Fri], 2007, 10:32
ごゆっくりどうぞ、と笑顔の店員さんが離れるのを充分待って。
あたしは口を開いた。

「何、これ?」

ちいにいは、何てことないように言った。
「オレンジジュースだろ」
「見てわかるよ、それぐらい。何でオレンジジュースなの」
「お子ちゃま用」
ちいにいの返答に、あたしは自然と顔が険しくなった。

03.過剰サービス

February 24 [Sat], 2007, 1:38
運ばれてきたチーズケーキに、智は目を瞬いた。
「あの」
「はい?」
「あたしが頼んだのは、コーヒーだけなんですけど…」

とりあえず、言ってみる。
すると彼は笑って答えた。

「ただ今、試食サービス中なんです。よかったら、どうぞ」
「試食サービス…」
確か以前来たとき、1度スコーンを試食させてもらった気がする。

納得して頷いた智は、店員さんに礼を言って、ありがたくチーズケーキを頂いた。

04.似非

February 24 [Sat], 2007, 1:43
綺麗な女の人にケーキとコーヒーを出した直登がカウンターに帰ってくる。
その顔を見た小春は、思わず毒づく。
「何あの顔」

知らないうちに、思いっきり棘のある言い方になってしまった。
けれど直登は、そんなこと全然気に止めていない。

「惚れた?」
彼女ににっこり微笑まれ最高の気分のまま、戻ってきたらしい直登は、まだニヤけていた。
それが気に食わなくて、小春はもう一度口を開く。

「見るからに、似非っぽい」
「な…っ」
にやけ面を止めて、やっとこっちを見た直登に、小春はにっこり笑った。

「下心丸見え」
チーズケーキの試食サービスなんて、やっていない。
店員であることをいいことに、あの人と「お近づき」になりたかっただけの癖に。

05.オークション

February 25 [Sun], 2007, 1:20
ランチタイムギリギリに跳び込んだお店。
本日のおすすめランチは、かなりお買い得だった。
あの値段で、この味。

たまたま目に付いたから入ったのだけど、どうやらアタリだったようだ。
――この店の常連になりそう。

「ねえ、晴菜」
「……誰があたしの名前を呼んで良いと言った?」
いそいそと動かしていた手を止めて、晴菜は目の前に座る男を睨んだ。

「晴菜…ちゃん?」
「『高遠さん』」
可愛い子ぶって小首を傾げた前園に、晴菜は冷たい視線を送るが効果はないようだ。

06.参観日

February 26 [Mon], 2007, 0:24
会計を終えて、あたし達は店の外に出た。
まるで付き合いたてのような、初々しい雰囲気。

ううん。違う。
そんなものじゃない。他所他所しい。

あたしは、隣に立ついっくんを見上げた。

好き。
好きだよ。

ほんとに好きだよ。


あたしの言葉に、いっくんは、ん、と頷いた。
――俺も。好きだったよ。
いっくんの言葉は過去形で。
本当に終わりなのだ、と告げていた。

07.ノラネコ

February 27 [Tue], 2007, 0:32
ノラネコを、手懐けてしまった。

ちらりと後ろを振り返って、亨は小さくため息をついた。
小さな黒ネコが、頼りない足取りで後ろをついて来ている。

足早に歩いてみたりしたが、結局後ろが気になって戻ってきてしまうのだ。
すると、亨の姿を見つけた黒ネコが再び彼の後を追う。
それの繰り返しだった。

――ウチ、ネコ飼えたっけ?
家族の誰かがアレルギーを持ってたっけ、とか考えたけど。
そもそもあのマンションはペット禁止だった。

こうして悩んでいる間に、目の前で黒ネコの尻尾が通りを行く人に踏まれた。
あがった悲鳴に、亨は慌てて黒ネコに近寄る。
抱き上げて体を見渡すと、目立った外傷は見られなかった。

――骨、だいじょうぶかな?
尻尾に手をやるが、黒ネコは先ほどの痛みを忘れたように、もうゴロゴロと喉を鳴らしていた。

――どうするかな。
途方にくれた亨の耳に、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「高坂君」
顔を上げると、同じクラスの委員長が立っていた。

08.電池切れ

February 28 [Wed], 2007, 0:41
梨絵は机にうつぶせた。

「……ダメだ」
1人呟く。

自由登校になった3年生の階に、人は疎らだった。
さっきまで教室にいた数人も、先ほどここを出ていった。
一緒に行かないかと誘われたけれど、それを断ったのは別に他に用があるわけじゃない。

「もう電池切れだよ…」
ただ、一目でいいから。

会いたかった。

09.食パンの耳

March 01 [Thu], 2007, 0:21
「希恵」
書店から出てきた希恵は、自分の名前を呼ぶ声に気づいて顔を上げた。

ブレザーに身を包んだ、背の高い男。
近寄ってくる男を、希恵は眉間をひそめたまま見つめた。

「希恵?」
それを不審に思ったのか、彼がコチラを覗き込みように身をかがめた。
彼が比較的、長身なのに比べて、希恵は割合背の低いほうだった。

「『お姉さま』」

殊更偉そうな口調でそう言った希恵に、遼は苦笑した。
「はい、はい。お姉サマ、今お帰りですか?」
歩き出した希恵の腕の中から、さり気なく荷物を取り上げた遼は、顔をしかめた。

「こんなに何買ったの?」
「参考文献」
図書館で取り扱ってない本を見つけて、思わず手に取るとこんな量になってしまったのだ。
店員さんが三重にしてくれた袋がその重さを物語っている。

「ネットで買えばいいのに。ウチまで届けてくれるんだから」
「買う前に中身を確認したいの」
「へえ?」

二人並んで歩きながら、希恵は隣に立つ男をちらりと盗み見た。
――弟だ。
遼は弟だ。今まで何度も繰り返してきた言葉を、頭の中で呟く。

例え血は繋がっていなくても。
遼は弟だ。