雨の朝。

February 10 [Sat], 2007, 12:30
 ふと、目が覚めた。

 枕もとの時計を見ると、予想よりだいぶ早い。
 珍しいことに、目覚ましがなる前に起きたようだった。

 ぼんやりとしたまま、もう一度目を閉じて、ベッドの上で寝返りを打つ。
 雨音が、した。

 目を閉じたまま耳を凝らすと、軒先から伝い落ちる滴が、地面ではねる音が聞こえる。
 昨日の夜まであんなに晴れていたのに、一体いつから降り始めたのだろうか。
 外は、なかなかの雨模様だった。

――今日って言ってた。
 早朝の便でここを発つと言っていた人を思い出し、もう一度寝返りを打つ。

――雨に、濡れたのかな。
 それを知る術はないし、知る必要も無いのだけれど。
 少し、気になった。


 ただそれだけ。


 のろのろとベッドから起きだして、ノートパソコンの電源を入れる。
 見知った人達からのメールを眺めた後、返信する。
 それが一段落着くと、パソコンを閉じて洗面所へ向かった。

 ひねった蛇口から出てきた水は、思った以上に冷たかった。
 慌ててお湯加減を調節し、歯を磨いて顔を洗う。

 化粧水やら乳液やらを叩き込みながら、キッチンへ向かい、冷蔵庫を開いた。
 適当なものが見つからず、冷凍庫をを開くと、数日前にまとめ買いしたベーグルが目に留まる。

 半分に切ったベーグルをトーストにして、バターとジャムを塗って頂く。
 大満足の朝食を終え、コーヒーを手に部屋に戻ると、もの言わぬパソコンが目に付いた。

 ため息をひとつついて、暖かいカップを両手で包む。
 昨日までの暖かさとは打って変わって、今日は冷える。


――朝早かったら、もっと寒かっただろうな。
 手の中の暖かいコーヒーを一口に含むと。
 あたしはもう一度パソコンを開いて、ニュースに目を通した。


 あの人からのメールは、なかった。

the reason why

March 03 [Sat], 2007, 0:10
ちょっとくたびれた、スーツにネクタイ。
剃り残しのある顎。
頭にちょっと、白いもの。

後で30代前半だと聞いたが、とてもじゃないが信じられなかった。
実年齢より老けて見られる性質だと聞いて、思わず頷いてしまった。


初めて会った時。
彼は、あたしの目から見ても充分、胡散臭げだった。




「お父さん、いつまでも飲んでるのっ」
あたしが声を張り上げると、父は途端にいじけた顔をした。

「なあ?最近、この子は僕に厳しいんだよ」
そう言って、隣に座る彼に管を巻く。

「僕にも厳しいですよ」
キッチンからやって来たあたしを見て、彼は泣き真似までしてみせた。

あたしは腰に両手を当てて、2人を見下ろす。
「あたしは別にいいけど?明日2人が寝坊しても」

そう言い捨ててキッチンへ戻ると、後ろから2人の声がぎゃあぎゃあ聞こえた。
「全く」
制服が汚れないように、もう1度エプロンをつけて、あたしはシンクに向かう。

1人1人だとそうでもないのだけれど。
あの2人が揃うと、途端に子どもっぽくなる。
「30過ぎた…1人はそろそろ定年間近なのに。2人で、全くもう」
溜息混じりに呟く。

最近、気づいたことだけど。
あたしの好きな人は、父に似ている。

――娘は、父親に似た人を好きになる。
何てことが言われているのを聞いた事があるけれど、ここまで来ると手に負えない。