16.不協和音

April 17 [Thu], 2008, 1:04
考える前に口を開いてしまうのは、あたしの悪癖。
照れて悪態をつくのは、あたしの習性。


「は?何つった、今?」
渇いたその声に、口にした本人が驚いた。




「………………………………………そう来ますか」
そう呟いたショウが、軽く項垂れる。

「そう返ってくるんじゃないかって、ちょっとは予想してたけど」
「だから、何つった、今?」
重ねて尋ねても、ショウは視線を逸らしたまま。

「予想より、激しいけど…」
呟き始めたショウの胸倉を掴んで、顔を上げさせる。
「聞いてんの?」
「…・・・聞こえてマス」
「だったら、返事ぐらいしなさいよ」

両手を挙げたショウと
それに、掴みかかるようなあたしの姿。
不穏な空気を感じ取ったのか。
近くに座る高校生らしいカップルが、こちらを見ているのが分かった。

確かに、この体勢は、周囲の詮索を煽る。
さっさとショウの襟を放したあたしは、乱れただろう髪を軽く整える。

「……ヒノって、どこまでも武道派だよね」
しみじみと言葉を噛み締めているらしい、ショウにあたしは鼻を鳴らす。
「何言ってんの?今日のあたしの格好見てから、言いな?」

スカートと7cmのピンヒール。

「希恵さんの借り物でしょ?」
「…………何で、希恵の服って、分かるわけ?」
「ヒノの自前スカートは、1点。冠婚葬祭モノだから」
「は、は、は」
乾いた笑いと共にショウの頭を叩こうとしたら、生意気にも避けられた。

避けた腕を掴んだショウは、こちらに上半身を寄せる。
「それより僕、さっき話真剣なんだけど」
「寝言は寝て言え」
掴まれた腕を振り払おうとすると、力が込められ阻止される。

「僕達息ぴったりだから、絶対上手くいくよ」
「フザケンナ」


「ヒノ?」



「ヒノちゃん?」





「ひろのちゃん?」







「紘乃紘乃紘乃紘乃紘乃紘乃紘乃紘乃紘乃紘・・・・・・」
「聞こえてるよっ」
赤くなっているだろう顔を見られたくなくて、窓の外を見たまま。
小さく笑ったショウが、あたしの右手を両手で包み込んだ。

「――こっち見て?」
優しい声に逆らえなくて。
窓の外に向けていた顔をショウに向ける。
視線が合うと、ショウは、優しい顔をしていた。

そんな顔するなんて、ずるい――もう、目が離せなくなるじゃない。

「紘乃が恥かしくなくなるまで、何度でも言うから」
そう言って、ショウは1度言葉を切った。

握り締めたあたしの手に、軽く額を当てて
ショウは、ゆっくり顔をあげる。






「結婚しよう」



――あたしを泣かすなんて、良い度胸じゃないか。

16.不協和音
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