にあんちゃん   216

January 14 [Mon], 2013, 14:03

『にあんちゃん』を見逃すところだった(汗)。
昨日の2時ちょっと前、立ち寄った子どもらを帰して こたつでウトウト交じりで石川淳の『狂風記』を読み始めた時Cメールが鳴り、どうせ娘がさっきの続きの件で・・・と思ったら、「急用で行けなくなりました」と友人から。
いったい何のこと? 今日は何にもないでしょ? 以前のメールの誤送信じゃないの?
と返信してしまった。ところが、
壁にべたべた貼ってあるチラシで、「映画なら15日でしょ?」と思っていたビラが社協の研修のビラで、その下が「呉徳洙(オ・ドクス)監督と映画を観て語ろう会」3回講座のチラシだった。
エッ? ヤヤッ? 今日の2時からではないか
今村昌平だし、心躍らせて待っていたのに 忘れてしまった!
慌てて、ゴメンと感謝の電話をして10分遅れでたどり着いたのだった
それが『にあんちゃん』。

前置きが長くなってしまうが、・・・今年に入って5日まではマァマァの日々。
友達とのだべりの日が二回あって楽しかった
ところが7日から、直接の対人関係のトラブルが2件続き、また訃報が週内に2件。年末25日からと合わせれば訃報は4件だ。最初の職場でお世話になった先輩もあり、親しいとは言えないが毎週ボランティアの現場で顔見ていた先輩もあり、悲しくて仕方がない。
2日前の金曜日は、早稲田松竹で『ニーチェの馬』と『ファウスト』の2本立てが11日までだから行くようにと山梨県からの指示で、2本観る体力はないが、12月に『狩人』を見逃したこともあり『ニーチェの馬』だけでもと出かけた。歩きの調子が悪く、足の裏に着地の自覚がない日で、高田馬場からの「徒歩6分」は二本杖で10分前にたどり着いたが、「立ち見となります」・・・。補助いすの交渉もならず。
で、仕方がない、残念ながら引き返した。元よりシネコンとは違いネット予約などない。
で、彼女のメールがなければ『にあんちゃん』も見逃すところだった。助かった。
ここで逆風ともおさらばしたいものだ。

この『にあんちゃん』は、小学校6年の時に本と映画の存在を知った。お兄さんがおそらく「若い根っこの会」のようなものをやっていたクラスメートが本を持っていた。その彼女はクラスでもよく出来る子だった。「ちょうせんじんは かーわいそ。せんそにまけて、おうちはぺっちゃんこ」と歌っていた。揶揄の気配を感じ、「何ちゅう歌だ!」と思っていたが、「若い根っこの会」だったかもと思えば、それが心から「かわいそう」だと思っていたのだと今ではわかる。それにしても、「せんそ」とは、朝鮮戦争のことか? 負けたというのは? 負けても勝っても、お家はぺっちゃんこにされてしまったのでしょう。
その『にあんちゃん』を読んだのだったか、また学校の映画鑑賞で観ていたのか、全く記憶にない。
その頃はアフリカのシュバイツアー博士に包帯を送ることに夢中だった。
教育が、足もとの日本で炭鉱や水俣病がタイヘンなことになっていることや沖縄をアメリカに差し出して知らん顔をしている現実を教えず、まして戦争や植民地政策の加害責任に気づくのに もう後10年近くもかかった、そういう時代だった。


佐賀県唐津近くの小さな炭鉱住宅に暮す4人兄妹の父親の野辺送りの場面から映画は始まる。
海に迫る山に階段状、段々畑のようにできた炭住街はとにかく貧しい。昭和28〜9年ごろは不景気が押し寄せ、10歳の安本末子の長兄(長門裕之)も臨時雇いから正職へと後押ししてくれる人もある中、逆に首切りに会う。社員も給料遅配や金券支給(相場は半分の値打ち)が続いた揚句、ヤマ自体が1年もたたぬうちに閉山となってしまうのだが。
長兄と姉(松尾嘉代)が他の町に働きに出て、末子はにあんちゃんとふたり、近所の家に預けられたり、逃げ出したり、頼れる人を見極めたり、・・・その時々の にあんちゃんのたくましい判断で暮すのだ。
土門拳の「筑豊のこどもたち」には、弁当の時間に図書(室)の本を拡げている子どもが何人もいて、弁当を持ってこれない子どもらの悲しみをそっと写した
にあんちゃんは弁当の時間は外で駆け回り、夕ご飯のために腹を空かせているのだ、と。そういう子だった。夕ご飯は、米を借りられないときは切干いもだけなのだが。
安本一家も在日だが、炭住街には在日のゴウツク金貸しばあさん(北林谷栄)もいればやさしい在日(小沢昭一)もいるし、日本人の面倒見のいい人情家(殿山泰司)もいれば一生懸命で けな気な保健婦さん(吉行和子)も、昔よくいた いい先生(穂積隆信)もいて、世界をなしている。
穂積隆信が特に良かった。てらわず、飄々と自然に人柄を滲み出しており、・・・あんなにいい役者だったとは思わなかった。
観賞を終わっての呉監督の話では、今村監督は「在日」の面を原作よりも抑制しているとのことだ。日本人にとって正面から在日の問題に向き合うのはキツイ、という判断ではないか、とのことだ。
今村昌平は随所にユーモラスな場面を入れ、さすがうまいし、見せるし、魅せる。
『にっぽん昆虫記』や『赤い殺意』は大好きだった。
近年の役所広司を使ったものも面白くはあったが。
川島雄三の助監督としての、伝説の『州崎パラダイス』や『幕末太陽伝』を観てみたいが、フィルムの映画は偶然の機会でもなければ観られないのだろうか。
今村監督のテーマは、庶民の生活の根っこの感情を追いかけるのが基本だったと思う。
そこには当然「社会性」が出てこないわけではないが、日本映画における今村昌平の影響力を考えれば、「社会派」と言えるものをもっと作ってくれれば、日本映画界も少しは変わったのではないかと、ものすごく余計なことを思うわけだが。・・・安本一家が「在日である」部分を抑えたと聞き、そんなことを思うわけです。
ハリウッドが、ベトナム戦争はもとより直近のイラク侵攻について片手で足りないほどの映画を作る。大量兵器はなかったと、CIAの間違いを少なくとも指摘する『グリーンゾーン』や『フェア・ゲーム』を始め、あの戦争への疑問を大所や兵士の側から出す視点で作っているし、イギリスではケン・ローチや息子このようにも頑張っている。
うーん、日本映画、足りないよね、と・・・オッと、横道だった。

上野英信の本で、筑豊の炭住の貧しさには私も胸打たれていた。
『三たびの海峡』でも、強制連行で強制労働の在日の苦難が胸に迫った。
しかし 安本さんは日記に「いまは、みんなくろうしているけれど、きっと私たち兄弟の上にも、明るい灯がいつかひかると信じています」と書いた。本当にそのようになったようだ
突然話は飛ぶが、都知事選に出られた宇都宮健児さんも少年期は極貧で、並大抵の生活ではなかったらしい
それでも安本末子さんも早稲田に進学し、宇都宮さんは東大在学中に司法試験に受かって弁護士になった。
しかし、永山則夫はそうはなれなかった。
永山則夫のいた世界では誰も彼をサポートしなかった。
永山さんに希望はなく、絶望と共に堕ち、4人もの殺人を犯すほどに転落した。
獄中で(獄外の支援者から)やっと人らしく扱われることを得て、人との信頼関係を知り、自分のように貧しく親の庇護を受けられない子どもたちを助けたいと志した
しかし殺されてしまった。
永山則夫は二度殺されたか。一度目は、貧しいものを痛めつける社会によって。そして2度目は死刑制度によって。

永山と宇都宮さんと私は同い年、安本さんは4つ上だ。





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