女の崇拝 3

October 15 [Wed], 2008, 16:55
最後にひとつ。

家出娘の捜索。
17世紀。


アブラハム・ア・サンタ・クララによる証言

多くの男は自分の女の健康を祝して女の柄つきのグラスだけでなく、女の半靴から酒を飲む。
コリドン氏は最近かれの美しい夫人アマリリスに、わたしはあなたをどんなに愛しているか、その証拠に、私はあなたの健康を祝して、あなたの寝台の下においてある錫の便器で、あえて酒を飲むほどであると保証した。
最近かしこいが、はなはだずるい女中がわたしに、わたしはある奥さんに仕えておりますが、そこのご主人は便所にいる奥さんに、いつでも紙をもっていって、奥さんの手数をはぶくことにしておられますと話してくれた。
この女中はドアの隙間から、じぶんの目でこの美しい光景を眺めたことを、わたしに断言したので、わたしはそれだけ早く、それを信じることができた。

女の崇拝 2

October 14 [Tue], 2008, 4:10
蚤になりたい男は、ここにもいます。

恋人の美しい脚。
ドイツの銅板画。



カール・ザイファルトによる証言

男はしばしば黒い蚤になりたいと願わなければならない。
そうすりゃ、寝台の中にとんだり、そうでなければ、地面をとんだりできる。
それどころか、多くの男はしばしば、
ああ、わたしが令嬢が部屋の中で、腰をおろす物でありたい。
ああ、わたしは前だれ、犬、猫などでありたいと願う。

女の崇拝

October 13 [Mon], 2008, 12:40
18世紀の女性に対する無茶苦茶な崇拝とはどのようなものだったのか。
当時書かれた文献をあげて、その息遣いを探ってみましょう。


女房の尻にしかれた亭主。
ドイツの風刺的銅板画。


ヨハン・ミハエル・モシェロシュ(ドイツの風刺家、1601−69)による証言

・・・そしてわたしが近寄るときに、かれらに何が欠けていたかに、耳をかたむけますか。
それはため息をつく、嘆く、欲する以外、何もなかったのです。
ああ、わたしは、ああ、わたしはいつ、ああ、わたしは持ったか、ああ、わたしはいつ幸福だったか。
ある男はこう言う。
私は蚤になって、せめてわたしの恋人の部屋の中をはねまわることができたなら。
そんなにたくさんの、大きな力をもっている、蚤はわたしよりなんと幸せな生き物であることよ。
わたしはそばに寄って、味をみることもできない・・・・。
もっとばかなほかの男は、恋人にときどき接吻を与えるために、もしおれが便所の板であったなら、なんという幸福だろうかと思った。
わたしはこの阿呆にとくに同情して、かれが板だけでなく、便所そのものであること、またかれの恋人がかれの口に、ほんとうに深い肉体的恋愛を証明できることを、多くの友情から彼に期待した・・・・

女の時代はマゾヒズムの時代

October 10 [Fri], 2008, 18:59
ギャラントリーとは、女に対する崇拝の精神であることは前に述べました。
17、18世紀はそれが主流になった時代ということですが、それは本当に女性の地位が歴史上ありえないほどに向上した時代だったということなのでしょうか。

答えは、否です。

この時代は確かに女性が権力を公に手にすることができたし、女性がとにかく崇拝はされていました。
けれども、それは本当の意味での向上ではありません。
この一見向上したかのように見える女性の立場は、むしろあべこべに、女性にとっての一番の屈辱を前提にした、ということにあるのです。
この時代の女性に対する崇拝は、最大の屈辱の上にしか成り立たないものでした。

では実際、なぜこのような構造がうまれたのでしょうか。
それを知るためにはまず、当時の女性の本当の立場を知っていなければなりません。

植木に水をやる女。
フランスのギャラントな色彩銅版画。


この時代、男と女とは明らかに対等ではありませんでした。
女が本当の意味で向上するためには、男と女は対等でなければなりません。
けれども、この時代の女性は、ほんとうの権利というものは何一つ与えられていなかったし、それどころかむしろ、男の支配は絶対的なもので、女性がそれに逆らうなんていうことはできないような仕組みにさえなっていました。
例えばこの時代は、女性の不貞が性の享楽にとって一番願わしいことだと思われていた時代でしたが、それにもかかわらず法律は、女性のほんのちょっとした姦通に対してでも、世にも惨たらしい刑罰を与えたり、修道院に死ぬまで送り込む、なんてことがたやすくできるような仕組みになっていました。

ところが、ここまで権力が集中し全能になってしまうと、
人間とは奇妙なことを思いつくようなのです。


男性は自分の欲望をどこまでも気まぐれに発散することにすっかり慣れてしまったせいなのか、今度はついに自分の気まぐれや欲望の奴隷に成り下がってしまった。
そして、世にもふざけた気まぐれが、とうとう一般的なものとなってしまうのです。
これはどういうことかというと・・・・男性は自分の奴隷、つまり女性に、自分の主人としての権利を与え、そして自分はその奴隷となって、奴隷に仕えることになった・・・・わかりやすく言えば、なんとマゾヒズムがこの時代の恋愛の法則になってしまったのです。

だからこの時代の風潮は、見た目が女性を持ち上げているからといって、それをお気楽に喜んでいては「単なるおバカさん」になってしまいます。
そうならないためには、同じようにこの文化を愉快がるにしても、この前提はしっかりおさえておかなければなりません。


ところでこれを見ると、確かに女性にとってはとても屈辱的な時代であると思わざるをえませんが、それでも私は、こんなおちゃらけた構造の社会がほんとうに世の中に実在していたのだ、ということ自体がとても面白いな、と思うのです。
この、崇拝によって侮蔑を誤魔化すという仕組みは、現代でもいまだに普通に使われている手法ではあるのですが、それが社会全体を支配していた時代、このような時代が一体どのようなものだったのかということを想像すると、ついどきどきしてしまうのです。

ギャラントリーの法則

October 09 [Thu], 2008, 17:40
ギャラントリー(galanterie)という言葉があります。
これはギャラン(galant・・・りりしい、(男性が)女性に対して親切な、色っぽい、粋な、といった意味の形容詞)の名詞形で、本来は「さっそうとした様子、女性に対する慇懃さ、女性へのお世辞、ラブレター、色恋」などといった、色々な意味で用いられる言葉です。
けれども、特に17世紀ヨーロッパの社交界では、「上流青年貴族たちの貴婦人に対する好ましい礼儀作法やおしゃれな風俗」という意味に使われ、この時代のひとつの主な美意識になっていました。

このような美意識が主流になった世の中とは、どのような感じなのでしょうか。

ルイ15世時代のファッション
簡単に言うとそれは、女に対する理屈抜きの崇拝が流行った時代です。
君主専制主義の時代は、「女の時代」と呼ばれています。
実際この時代の女性たちは、影の王様として時代を支配したのではなく、かなり大っぴらに世の中に、支配権を持った人物として登場しました。

例えば有名な、『18世紀の女』を記したゴンクール兄弟の文章をあげてみると、それが実際どのような感じだったのか、もう少し雰囲気が伝わってくるかと思います。


「女は1700年から1789年までは、すべてのものを動かす大仕掛けなゼンマイであっただけではない。
女はうんと高い権力、フランスの思想界の女王のようなものだった。
女は社会のてっぺんにすえられた観念、つまりあらゆる人の目がそれを仰ぎ見、あらゆる人の心がそれに憧れるという観念であった。
女とは男がひざまずく肖像、男がうやまう姿であった。
宗教が幻覚、祈祷、あこがれ、精進、服従、信仰によって人間をひきつけるすべてのものは、いつとはなしに女によってとりかえられてしまった。
女は信仰がつくるものをつくった。
女はたましいと心を満たした。
 ルイ15世とヴォルテールが支配した間は、女は無神時代の天を代表するいっさいであった。
すべての人が、女を崇拝するのに血まなこになった。
すべての人が、女を持ち上げるのに一生懸命になった。
偶像崇拝はすべての人の手によって女を地上から天上に持ち上げた。
女をうたわないような作家は一人もいなかったし、女に翼をかさないようなペンはひとつもなかった。
女は地方の都市にさえじぶんを崇拝する詩人、じぶんにうつつになる詩人をもった。
そしてドラ(フランスの詩人、1734−80)やジャンティ・ベルナール(フランスの詩人、1708−75)が女の足の下にふりまく香煙から、女を神としてあがめる雲が作られた。
その雲は鳩のはばたきにつらぬかれ、花の雨に打たれて、女の玉座や祭壇となった。
散文、詩歌、絵筆、のみ、竪琴は、まるで神にたいするように、女にうつつになった。
そして女はとうとう、18世紀では幸福、よろこび、愛の女神となったばかりでなく、詩的なもの、とくに神に捧げられたもの、すべての精神的向上の目標、人類の女をかりて示された人間の理想になった。」



この記述を見ると随分と大げさなように思いますが、この時代に書かれた色々な文書に目を通してみると、段々にこれが単なる誇張表現であるとは思えなくなってきます。
この、バカバカしいほどに極端な崇拝というものが、どうやら本当にこの時代の流行だったようなのです。
そしてこの流行は、ヨーロッパの各地に存在していました。
その中で最も洗練した形でこの精神が表れていたのが、フランスだということです。
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現実の、よく知っているものとは全く別次元の、別の法則によって作られたものが大好きです。
しかもその世界観が強固であればあるほどしびれます。
理想郷というものにも似ているかもしれない。

●コレクション、陳列、カタログ的なもの

厳選されたものが沢山並んでいる状態を見ると震えます。

以上、とても個人的なものなので、偏りや思い込みが激しいことも沢山あるかと思いますが、もしよかったらおつきあいくださいね。
よろしくお願いします。
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