自家組織による再建B・・・SIEA Flap

March 08 [Thu], 2007, 0:45
乳房再建の種類の第5回目です。
今回は私が受けたSIEA Flap についてご紹介します。

SIEA Flap (浅下腹壁動脈皮弁)
Superficial Inferior Epigastric Artery Flap


前回のDIEP Flap の章で、Free Tram Flap が第一世代、DIEP Flap が第二世代と説明しましたが、本日のSIEA Flapはさらに進化した第三世代の再建と言えます。SIEA Flap は基本的にはDIEP Flapのバリエーションです。違いは、ドナーサイトから取り出す血管です。

DIEPでは筋肉に通じた穿通枝を使うのに対し、SIEAでは皮下のすぐ下の脂肪組織で見つかる血管を利用するため、腹直筋を使わないだけでなく、一切、筋肉に影響を与えません。腹直筋を切ると、人によってはトイレで力めないこともあるそうですが、SIEAでは腹壁の強度はそのまま温存され、生活への支障はありません。現段階では自家組織を使う再建のなかでももっとも低侵襲な方法とされています。術後の痛みも少なく早い回復が望めます。



ただし、このSIEA Flap はどんな患者にも適応できるわけではありません。再建に適したSIEA が見つからないケースもあるし、見つかっても非常に細い血管であるため、移植した皮弁を支えるのに耐えられそうにないと断念されることもあります。

SIEA Flap を使った乳房再建を1997年から手がけている英国 Queen Victoria Hospital のDr.Z. M. Arnezによる「Breast reconstruction using the free superficial inferior epigastric artery (SIEA) flap (source: British Journal of Plastic Surgery 1999) には以下のように書かれています。

Absence of the SIEA is quite common; in our last 20 breast reconstructions the SIEA was absent in eight cases (40%). In six cases it was identified, but its diameter was less than 1.5 mm so the SIEA flap was abandoned in favour of other solutions. The SIEA flap cannot be used in patients who have previously undergone high ligation of the long vein,inguinal hernia repair or groin dissection.

SIEA が不在なのはよくあること : 最近の我々の20件の乳房再建のうち、SIEAは8件(20%)で不在でした。6件のケースでは特定はできたものの、血管が1.5ミリ以下であったため、他のソリューションを採用し、SIEA Flapは捨てられたのでした。 SIEA Flapは、患者が以前にヘルニア(他の病名がわからず)などの手術を受けていると使えません。

上記は1999年の記事なので、現在はテクノロジーの改善により血管径はもっと細くてもつなげるようになっていますが、それでも米国MICROSERGEON.ORGサイトでは以下のように、「適切なSIEAが無い患者もいる」と明記しています。

Some patients do not have adequate superficial inferior epigastric vessels - a determination that is made intraoperatively. The decision is made on the basis of vessel size. These patients can typically be reconstructed with the DIEP flap.

「数名の患者は適切なSIEA を持っていません − 決断は手術中に下されます。決定は血管のサイズに基づきます。これらの患者はたいていDIEP Flapでの再建ができるでしょう。」


またPeroforator を使う場合より手術時間は短縮できますが、短小口径血管柄であるために、より複雑で高度な技術を要することとなります。米国でもSIEAを行っているのは限られた病院です。

This flap is technically more demanding than the DIEP flap because of the small vessel size, and should only be performed by experienced microsurgeons and microsurgical teams. (source: 米国MICROSERGEON.ORG)

「この皮弁は血管のサイズが小さいために、DIEP Flapよりもさらに技術が要求されます。マイクロサージャリーの経験を積んだ外科医とチームによってのみ、実施されるべきでしょう。」



9時間にも及ぶ手術を受けた割りに、1週間で退院でき、抜糸した翌日から出社して普通に仕事ができたのは、SIEA Flapのみを使った手術だったからです(SIEA/DIEPの併用も多い)。手術後に病室にやってきてくれた薫大将が、「今、考えられるお腹からの再建で、もっとも身体に優しい方法でできたからね」と言ってましたが、現在、そのことを実感しています。術後やっと1ヶ月たったところですが、すでに走ったり泳いだり、ストレッチしたり、はたまた9cmヒールでおしゃれしたり.....日常生活で何のトラブルも生じていません。


                            −−−まだまだ続く


<注意>
ここで書いている医療情報は、一患者である私が医師に聞いたり文献を読んだりして得た情報に過ぎず、正確さや新しさについては保証できません。私自身がSIEA Flapを使った再建手術を受けたのと、それに関する情報がまだ日本では少ないために、そちらの紹介や経験談がどうしても多くなりますが、特定の再建方法や医療機関などを推奨するものではありません。


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アンズ
SYNDIさん、

お腹に傷があっても、もともとの胸の皮膚が使えるならば(エクスパンダーで拡張とか)、腹部表皮を胸の皮膚としては使わないので(真皮は付けたまま、胸の皮膚の下に移植される)、問題ありません。 

SYNDIさんの場合は、インプラントで皮膚は十分伸ばされているはずですから、大丈夫ですよ。 実際、米国ではインプラントで硬さに違和感があったり、カプセル拘縮やリップリングができたため抜去して、このメソッドで再建しなおした例も紹介されています。


March 20 [Tue], 2007, 13:19
アンズさん、ドナーの傷の写真も公開なさっていたんですね。
質問に答えていただき、どうもありがとうございました。

私は帝王切開をしていて、おなかにあらかじめタテにつーっと傷があるんです。(曲がっていて、へたくそな傷です。笑)
仮にこれをやったら十字になるのかしら?それともタテの傷は切り取られる場所に含まれてしまうかな?と一瞬考えてしまいました。(帝王切開をしていてもおなかは再建に使える、とは言ってもらってましたが・・・)

マイクロサージャリーはこれから広まってゆくんでしょうね。
私もオプションとして知っておきたいと思います。(今はシリコンがばっちり収まっておりますが、これで長く暮らしてみないとなじむかどうかがわかりません)

また来ます。
どうぞよろしくお願いいたします。
March 20 [Tue], 2007, 1:24
アンズ
SYNDIさん、

こんにちは! ようこそ。

ドナーの傷はここで公開しています。 まだ術後数日の写真なので生々しいのですが、、、、2〜3年たった方の傷跡は、個人差もありますが、かなり目立たなくなっています。

私はナグちゃんにも診て貰ったんですよ。 でもリンパ節隔清の跡は、インプラントではカバーできないと言われて選びませんでした。


March 17 [Sat], 2007, 10:46
こんにちは。はじめておじゃまします。
最新の術式による情報は貴重ですね!

質問があるのですが・・・・。
自家組織を取った場所の傷口はどんな様子でしょうか?

私はシリコンによる再建を選択したのですが、その理由のひとつが「新しい傷が増えるのを避ける」ということだったもので・・・。
March 17 [Sat], 2007, 3:10
アンズ
さつきさん、

SIEAだと離床が早いです。さらに、私が受けたのはSIEAでも薫大将による改良版で、短くて細い血管がつなげる技術と環境があれば、手術時間の短縮とコスト削減がのぞめるそうです。

私は全摘手術のときの入院は2泊3日でしたよ。リンパ液を抜いてもらいに、通勤前に主治医のもとへ何度か通ったけど。昨夜の宮崎ますみさんも1泊って言ってたよね。
March 11 [Sun], 2007, 23:12
アンズ
starさん、

旅行のカタログ見てたら、無性に泳ぎたくなってしまって。
昔、ウィンドサーフィンやってたときの水着を着てみたら、傷が隠れたので、れっつらゴーと。

まだ筋トレは再開していないけど、
ストレッチとウォーキングだけやってます。
会社帰りにジムに行きたいので、オフィスのトイレ(着替えコーナー付きトイレがある)でテープ剥がして行こうかと検討中です。
March 11 [Sun], 2007, 22:52
アンズ
うきふねさん、

ありがとうございます!

サーバにアクセスできず、今、リンク貼れましぇ〜ん。
hotmai もアクセスできないし、一斉メンテでもしてるのかね?
March 11 [Sun], 2007, 22:41
アンズ
merryさん、

7ヶ月間の抗がん剤の治療中と、その後の足の痺れや足の爪の剥離などの副作用があった1年くらいは、さすがに高いヒールの靴が履けなかったんです。それで履いてない靴がたくさんあって、今ごろ、せっせと履いてます。今年流行のペタンコのバレリーナシューズも買ったのに、まだ出番がありませ〜ん
March 11 [Sun], 2007, 22:37
STARさんとほぼ同時期に手術されたんでしたよね。
もう、泳がれているんですか?
術後の回復がすごく早いのですね!!
SIEA Flap も中々なもんですね。
阪大の先生のDIEP Flap の説明を受けて
もし、健側に転移したらそれで同時再建しようと考えていたけれど
SIEA Flap も考えの視野に入れておこう!!
私は通常の全摘手術でも1ヶ月以上入院していたのに
最近は、手術の進歩も目まぐるしいですね。
March 11 [Sun], 2007, 4:12
star
おおお〜〜〜泳いでますかぁ。。。
追い抜かれてしまいました。。。。
私のほうが3日先輩なのに・・・まだ、運動する気になれません。
体力はバッチリなんですが、、、水が・・・溜まってしまいます
March 10 [Sat], 2007, 1:24
今日も素晴らしい
またリンク貼らなくちゃ!!

March 08 [Thu], 2007, 21:24
こんばんは!
筋肉を取らないのは良いですね。
なんら変わりなく生活できることは術後の心のメンタルな部分でも
すごく嬉しいことだと思います。
ヒールをはいて颯爽と歩いて仕事してるアンズさん、想像できます。
きっと英語とかも堪能だし、かっこいいんだろうなーーー。
憧れます!!
ところで自家組織を使っての再建はやせたらなくなる?!ってことは
ないのかな。。。
March 08 [Thu], 2007, 18:30
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